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30年ぶりの「政策金利1.0%」時代が来ようとも…お金のプロが「住宅ローンは変動型一択」と断言する納得の理由

プレジデントオンライン / 2025年1月23日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tatiana Sviridova

日本に「金利ある世界」が戻ってきた。しかし、現役世代の大半は低金利・デフレ時代を生きてきた。いったいどうすればいいのか。『金利で損しない方法、教えてください!』を上梓したファイナンシャルリサーチ代表の深野康彦さんは「日銀が追加利上げをすれば、30年前の水準になる。今後は、政策金利1.0%以上になりうることを前提に考えるべきだ」という──。

■30年ぶりの金利水準

2024年最後の金融政策決定会合で、日本銀行は追加利上げを行いませんでした。植田和男総裁曰く、経済、物価の好循環は予定通り進んでいるが、追加利上げを行うにはもうワンノッチ材料が欲しい、というのがその背景のようです。

「ワンノッチ」が何を意味するのかは定かではありませんが、総裁の発言を斟酌すると、2025年度の賃上げ(春闘)が鍵を握るようです。ただ、マーケット参加者の予測では、早ければ1月、遅くとも3月の金融政策決定会合で追加利上げを行い、政策金利は0.50%になることが見込まれています。

政策金利0.50%は、2008年9月のリーマンショック前の水準に肩を並べることになりますが、0.50%までは許容(予測)の範囲。0.50%を上回る利上げが行われるか否かが2025年の日本銀行の課題になるはずです。なぜなら、日本銀行の政策金利が0.50%を超えていたのは、約30年前の1995年9月以前まで遡(さかのぼ)らなければならないからです。

■「政策金利1.0%以上であってもおかしくはない」

30年ということは、大まかに言えば、50歳代前半以下の世代は政策金利0.50%超の世界を知らない、言い換えれば「未知との遭遇」になるわけです。

このため、実際に政策金利が0.50%を超えるのは至難の業(わざ)と思えるものの、2024年9月に日銀の田村直樹審議委員は、2026年度頃には政策金利は1.0%以上であってもおかしくはない、といった発言を行っているのです。

審議委員が具体的な政策金利水準に言及したのは前代未聞ですが、日銀内部では水面下で1.00%に引き上げるロードマップができているのかもしれません。ということは、政策金利が1.00%まで引き上げられることを前提にしつつ、2025年からは「金利ある世界」を上手に渡り歩いていく必要があるといえるでしょう。

以下本稿では、「預金」「投資」「住宅ローン」「生命保険」の分野について、金利がある世界の考え方を順に述べていきます。

■金利ある世界の「預金」戦略

低金利下では見向きもされなかった「預金」

2025年年初の金利水準は決して高いとはいえませんが、それでも1年前の2024年初旬と比較すれば、見てくれはかなりよくなったといえるはずです。たとえば、メガバンクの1年物定期預金金利は、1年前は0.002%だったものが足下では0.125%と、62.5倍も上昇しているのです。

たった0.125%程度で見栄えがするとか言うな! と怒られそうですが、預金金利は1990年代前半に自由金利になっているのです。

自由金利は各銀行が自由に預金金利などを決めることができるため、現在でもネット銀行などの金利は目を見張るものがあるからです。

■ネット銀行の預金金利に注目せよ

たとえば、恒常的に高めの金利を出しているオリックス銀行の1年物の定期預金金利は0.85%。さらに、SBI新生銀行はインターネット限定で0.80%もの金利を提示しています。ネット銀行は、冬・夏のボーナス期には「特別金利」などと称してキャンペーンを行っていて、ソニー銀行は0.80%を提示しています。

さらに、銀行は本格的に預金者の獲得に動き始めたようで、新規口座開設者限定でUI銀行が0.65%、auじぶん銀行は新規口座開設にプラスして一定の条件を満たせば1.00%(内0.15%は現金還付)です。ついに1.00%を提示する銀行が現れました。

預入期間1年未満であれば、1.00%を超える銀行もあります。政策金利が0.25%の段階で早くも預金者争奪戦が起こっているのですから、今後追加利上げがあれば、1年物で1.00%の金利は当たり前になるかもしれません。

■金利上昇局面の鉄則「預入期間が短いもので繋いでいく」

メガバンクや地方銀行は金利競争には加わってこないでしょうから、定期預金で得をしたいと考えるならばネット銀行を利用するのがベストです。

ただし、定期預金というのは、満期まで金利が変わらない固定金利商品。

2025年は金利の上昇局面にあたることから、金利が高いからといって預入期間が3年や5年の定期預金はお勧めしません。金利上昇局面では預入期間が短いもので繋いでいくのが基本になるからです。

金利は1年物が高めとなっていることから、1年物で繋いでいき、金利のピーク圏で預入期間の長い5年や10年物、あるいは新型窓口販売方式(新窓販)国債の10年物などに預け替える戦略がよいでしょう。

デジタルグラフ
写真=iStock.com/Prae_Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prae_Studio

■金利ある世界の「投資」戦略

「投資」に関しては、これまでの金利のない世界のようにアクセルを思い切り踏み込むような投資スタンスは控えるべきといえます。

2024年7月末に日銀が政策金利を0.25%に引き上げるまでは、投資において、金利はほぼ無視していい水準でした。ところが、金利があることが明確になった8月以降は株価が乱高下しているのはご存じの通り。

今後、さらに政策金利が上昇してくれば、徐々にリスクを取らなくてもお金を増やすことができるようになることから、株価は上がりにくくなるわけです。

■金利上昇で業績低迷、株価下落

金利上昇によって企業が利益を上げにくくなることも、株価上昇にはネガティブ要因となります。とくに借入が多い業種、たとえば不動産や商社などは株価が上がりにくくなると考えられます。

その反面、銀行は金利上昇で利ザヤが改善されるのでフォローの風になる等々、業種ごと、あるいは同業種内でも金利上昇による影響によって明暗が分かれると思われます。

個別株で儲けるには、銘柄選択眼が問われることになっていくでしょう。

■オルカンに加え、バランス型ファンドも選択肢

すでにNISAを始めている人も多いと思います。中でもオルカン(全世界株式インデックスファンド)や米国のS&P500を積み立てで購入している人は、銘柄を変更する必要はありません。日本の政策金利が引き上げられたとしても、オルカンの日本株への資産配分割合は6%前後に過ぎないうえ、NISAはそもそも短期で白黒つける制度ではなく、中・長期で資産形成を行うための制度だからです。

2025年から始める人も、皆と同じ商品を購入していれば安心と考えるなら、オルカンやS&P500で始めることを否定はしません。

しかしながら、中長期で価格変動(リスク)を抑えながら資産形成を行うのであれば、セゾン・グローバルバランスファンドのような国内外の株式や債券に分散投資するバランス型ファンドを選ぶのが無難といえるでしょう。

ただし、資産が分散されている分、株式だけで運用されるオルカンやS&P500より運用成績は劣ってしまいます。

■金利ある世界の「住宅ローン」戦略

運用(資産形成)もさることながら、「住宅ローン」を借りている人は2025年以降の金利がどうなるのか? 気が気でないはずです。なぜなら、5~6年くらい前から変動金利で住宅ローンを借りる人が圧倒的に多いからです。

すでに借りている金利は半年ごとに見直されることから、日銀の追加利上げの有無に一喜一憂してしまうのです。

結論から言えば、変動金利で借りていても、あるいはこれから新規に住宅ローンを借りる場合も、基本は変動金利の住宅ローンを選ぶべきでしょう。なぜなら、現在の変動金利と過去の変動金利は異なるものと言っても過言ではないからです。

現在の変動金利は、さまざまな優遇措置が講じられた結果、銀行の店頭などに表示されている金利(便宜上「標準金利」)と、実際に融資される実効金利との間に2%前後もの差があるからです。このため過去数年、あるいは足下でも変動金利で住宅ローンを借り入れた場合の金利は0.50%前後であるはずです。

■変動金利が「フラット35」を超えるまで「6回の利上げ」

一方、完済まで金利が変わることがない全期間固定の「フラット35」の金利は1.86%です。

深野康彦『金利で損しない方法、教えてください!』(扶桑社)
深野康彦『金利で損しない方法、教えてください!』(扶桑社)

変動金利との金利差は1.36%ですが、この差が意味することがあります。それは、変動金利の適用金利がフラット35の金利を上回るためには、日銀は追加利上げを6回行わなければならない、ということです。

日銀をはじめとする中央銀行の金融政策は、通常0.25%刻み(または0.25%の整数倍)で金利の上げ下げを行います。現在、日銀の政策金利は0.25%ですから、6回、つまり政策金利が1.75%まで引き上げられるとフラット35の金利を変動金利の金利が上回ることになります。

日本の将来を俯瞰(ふかん)すると、誰もが納得するような好景気が到来し、かつ、その好景気が相応の期間続けば、政策金利が6回引き上げられて1.75%まで上昇する確率もゼロではないでしょう。

しかしながら、引き上げられた政策金利が、その後5年や10年といった中・長期間継続したことは皆無。2022年から物価が高騰した米国でさえ、政策金利を引き上げ始めてから、高金利継続、その後政策金利の引き下げまでの期間は約2年半だったのです。

ものごとに絶対はありませんが、一時的に変動金利がフラット35の金利を上回ったとしても、住宅ローンの完済までの数十年間に均せば、変動金利のほうが全期間固定のフラット35の金利を下回る可能性はかなり高いと考えられます。

■金利ある世界の「生命保険」戦略

「生命保険」についても簡単に触れておきましょう。

金利が上昇すれば生命保険の予定利率も上がるため保険料は安くなります。ただし、掛け捨てタイプの定期保険や医療保険、収入保障保険などの保険料は、残念ながら下がることはほぼありません。

保険料が下がるのは、「貯蓄保険」ともいわれる終身保険や養老保険。あるいは個人年金保険なども下がることが予想されます。

■今後は「円建て保険」も選択肢に

終身保険などは、すでに明治安田生命が積極的に予定利率を引き上げ、最大手の日本生命も引き上げを表明しています。

日銀の政策金利引き上げに伴い、保障を確保しながら貯蓄効果が期待できるようになるでしょう。学資保険も返戻率が高くなり貯蓄効果が徐々に高まり始めています。

低金利を反映して、貯蓄保険はこれまで「外貨建て」がメインでしたが、今後は円建ての保険にも目を向けるとよいはずです。

日本銀行の政策金利が引き上げられ「金利のある世界」になったことから、2025年はこれまでの「低金利脳」を「金利上昇脳」に変化させて、金利上昇の波を上手に乗りこなすようにしましょう!

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深野 康彦(ふかの・やすひこ)
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルリサーチ代表。1962年生まれ。中堅クレジット会社勤務などを経て、独立。完全独立系ファイナンシャルプランナーとして、個人のコンサルティングを行いながら、テレビ・ラジオ番組への出演、新聞・マネー雑誌・各種メールマガジンへの執筆など、さまざまなメディアを通じて投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。

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(ファイナンシャルプランナー 深野 康彦)

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