投資の神様も実践…エミン・ユルマズ「1年半後の日経平均5万円」をにらんで"割安銘柄"を仕込むワザ
プレジデントオンライン / 2025年1月25日 10時15分
■2025年は質の高い銘柄を割安に仕込むチャンス
日本は「失われた30年」を脱し、黄金期に突入しています。アベノミクスが始まった2013年を起点にして、株価上昇は10年続きました。そして日経平均株価は昨年、1989年12月29日以来、約34年ぶりに史上最高値をつけました(2024年2月22日、日経平均株価3万9098円68銭)。
私はその当時、「4万円をつけた日経平均株価は、しばらく揉み合った後、調整しながら再び上昇し、5万円を目指す」というシナリオを想定しました。
では、それはいったいいつになるのか。2025年中に達成するのは難しいでしょう。昨年の相場は調子が良すぎたため、今年は大きなアップサイドは期待できません。
しかし、日本株の上昇は2050年まで続き、「日経平均株価は30万円に到達する」と私はかねて主張してきました。その考えはいまも変わりませんので、現在の日本株の株高はまだ序の口だ、というのが私の考えです。
日経平均株価が2025年中に5万円を超えるのは難しいと思いますが、今年の揉み合いを経て2026年の半ばまでに到達する可能性はある、と考えています。その意味で今年は、質の高い銘柄を割安に仕込むチャンスとなるでしょう。
■2025年の株式市場はボラティリティが高くなる
ただし、今年の株式相場は昨年より予測しづらい状況にあります。最大の理由は1月20日に米国で第2次トランプ政権が発足したことです。トランプ氏の政策は日本企業にも大きな影響を及ぼしますが、どんな政策が実行されるか、憶測も含めてすでにカオス状態にあります。
2016年に第1次トランプ政権が発足した後のことを振り返ってみると、トランプ氏がおかしなコメントをSNSに投稿し、「朝起きたら相場が荒れていた」ということがよくありました。今回は、ここにイーロン・マスク氏の言動も加わります。
こうしたことを原因に、相場が相当に荒れる可能性が高く、ボラティリティ(変動)の高い相場になることは覚悟しておいたほうがいいでしょう。
トランプ氏は自由奔放な発言をしていますが、その本心は読めません。
かつてアメリカが建設した「パナマ運河をアメリカに返すべきだ」と言ったり、デンマークの自治領である「グリーンランドをアメリカ領にすべきだ」と言ったりしています。どこまで本気かどうかは判断できません。
■米国株は2025年のどこかで大きく調整する可能性……
2016年と違うのは閣僚人事です。前回は共和党の伝統的な人事に依存しなければならない面がありましたが、今回は思想的にトランプ氏に近い人で固めています。そのため、多くの人が「馬鹿げたことだ」と思っている発言でも、実現してしまう可能性があります。
一方で「政府効率化省」のトップに指名されているイーロン・マスク氏は「国家予算を2兆ドル削減する」などと発言しています。それを実現するには、公務員を大量に解雇しなければなりません。政府予算の削減にはなるかもしれませんが、実際にそんなことを実行すれば、アメリカの景気が相当に悪くなることは目に見えています。
トランプ氏がどこまで本気で政策を実現していくかわかりませんが、「トランプリスク」についてはあらかじめ覚悟しておく必要があります。とくに米国の株式市場は上昇が続いて、すでに割高になっていますから、今年のどこかで大きく調整する可能性が高いと思います。
■リーマンショックのような暴落はない
とはいえ、リーマンショックのような暴落があるかといえば、そこまでの危機が顕在化するような材料は現時点では見当たりません。
多くの人はリーマンショックが突然起きたと思っています。しかし、1、2年前から不動産ローンの焦げ付きなどが起きていたのです。そうした材料が積み上がって金融危機につながりました。
リーマンショックのときのようなリスク要因は、いまのところ見当たりませんが、マグニフィセントセブン(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、メタ・プラットフォームズ、テスラ)を中心とした「テックバブル」が弾ける可能性は十分あります。
それでも、リーマンショックのように暴落する形にはならないでしょう。仮に弾けるとすれば、2000年代初頭のITバブル崩壊時のようにじわじわと株価を下げていき、後から考えると、「あのときが天井だった」という形になる可能性が高いと考えます。
その意味では過度に心配する必要はなく、値動きに一喜一憂せずに中長期視点で資産運用を続けていくのがいいと思います。株式の個別銘柄に投資している人であれば、今年は安くて質の高い銘柄を買うのが1つの投資戦略になるでしょう。
■上がる株と下がる株が明確に分かれる1年
株価指数のアップサイドが限定的になる一方で、個別銘柄では「上がる株」と「下がる株」が明確に分かれる可能性があります。
その中で注目したいのは、ローテーションです。ローテーションとは、これまで注目されていなかった銘柄やセクターに光が当たることです。トランプ氏の政策がそれを加速させると考えられます。
たとえば、すでに動き出している「防衛関連」「銀行株」「IR(カジノ)関連」は、日本株もおそらく恩恵を受けるでしょう。また、日本の個人消費は若干戻ってきています。個人消費の回復の恩恵を受ける内需関連銘柄、あるいはインバウンドも期待できるでしょう。
■「IPビジネス」「自動車」関連銘柄の動向に注意
とくに最近の傾向として消費は「モノ」から「コト」へ移行しています。体験を支えるコンテンツや知的財産(IP)をたくさん持っている企業が1つのポイントになるでしょう。
たとえば、任天堂はまもなく新しいゲーム機の発売を予定しています。するとゲーム関連が注目されます。同様にソニーもIPビジネスに力を入れていますから、注目されやすいでしょう。
一方でトランプ氏は、米国が輸入する製品に対する関税を引き上げると言っていますから、日本の自動車関連企業にはしばらく厳しい時期が続くと思います。自動車関連企業の業績が回復するのは、2025年度の第4四半期くらいになるか、場合によってはもう少し先になるかもしれません。
自動車関連に限らず、製造業は全体として追加関税の影響を受けますから、昨年のように好調な業績を出すことはできない可能性が高いでしょう。いずれもトランプ氏次第です。「どうなるかわからない」ことを前提に考えておいたほうがいいでしょう。
■株式投資で資産を増やすために必要なこととは
新NISAをきっかけに個別銘柄への投資を始めた人の中には、昨年8月の暴落でいまだに含み損を抱えている人も少なくないでしょう。そもそも個別銘柄への投資で利益を得るには、企業の価値と価格の差について理解する必要があります。
株式市場では、必ずしも価値=価格で取引されているとは限りません。価値を大きく上回って取引されることもあれば、逆に価値を大きく下回って取引されることもあります。
たとえば、コロナ禍(か)ではモノの流通が止まってしまい、本来は1万円の価値のものが転売ヤーによって、2万円、3万円で売られたりしました。同じように世の中で話題になっているモノは、本体の価値よりも価格が高くなっていることが多くあります。
こうした現象は定期的に起きます。それを見越して価格が上がる前に仕込んでおき、高くなったら売却して利益を狙うこともできます。ただし、この方法は事前に兆候を察知するのが難しいので、私はおすすめしていません。
■本来の価値より安く放置されている企業を探す
私がすすめているのは、本来の価値よりも安く放置されている企業を見つけることです。その企業の「本来あるべき株価の位置」と「株式市場での評価」の間に乖離(かいり)があればチャンスです。評価されていない価値を取りにいくのが投資家の仕事です。
なぜ、本来の価値より安く評価されることがあるのか。
相場は常に合理的に動くとは限りません。ときには非効率に動いたりします。たとえば人気分野に投資マネーが集まると、そのセクターは割高な状態が続き、反対に割安になるセクターが生じたりします。あるいは何らかの理由で投資家が躊躇(ちゅうちょ)して買われず、割安なまま放置されることもあります。理由はさまざまですが、相場には非効率な部分があります。
しかし、相場が非効率だからこそ、私たち投資家が儲けることができるのです。仮に相場が100%効率的に動いていれば、ありとあらゆるすべての情報が価格に織り込まれます。結果的に株式市場は経済成長率やインフレと同じ程度しか上がらなくなるでしょう。
■割安な銘柄を見つけキープする
だからこそ、相場が非効率であることを理解して、過大評価されている企業と過小評価されている企業を見分ける力を養うことが重要です。
これが有効なのもあと20年、30年かもしれません。万能AIができて、すべての情報を取り込んで、相場に織り込まれるようになれば、株価指数と同程度にしか儲からなくなり、個別銘柄への投資の有効性は消えてしまうでしょう。
割安に放置されている銘柄を探すには、企業の「本来の価値」を見極める必要があります。基本は企業の業績であり利益でありキャッシュフローです。さらにはPER、PBR、PSRなどの指標も役立つでしょう。
■割安状態が是正されるまでキープする
割安な銘柄が見つかったら、それを買って割安な状態が是正されるまでキープします。それが数カ月単位のこともあれば、3~5年になることも少なくありません。
この企業の時価総額は「これくらいであるべきだ」と考える水準までたどり着くまではキープします。反対に考えている時価総額に到達したら「まだ上がるかも」などと考えずにすぐに売ります。
相場環境はどうであれ優良企業を割安な価格で見つけるのは投資の王道であり、ウォーレン・バフェット氏を含むバリュー投資家はこの手法で巨額の財産を築いてきました。今年も企業の本質に注目し、相場のノイズにさほど耳を傾けないようにしましょう。
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エコノミスト
トルコ・イスタンブール出身。2004年に東京大学工学部を卒業。2006年に同大学新領域創成科学研究科修士課程を修了し、生命科学修士を取得。2006年野村證券に入社。2016年から2024年まで複眼経済塾の取締役・塾頭を務めた。2024年にレディーバードキャピタルを設立。著書に『夢をお金で諦めたくないと思ったら 一生使える投資脳のつくり方』(扶桑社)、『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)、『大インフレ時代! 日本株が強い』(ビジネス社)、『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)『米中新冷戦のはざまで日本経済は必ず浮上する 令和時代に日経平均は30万円になる!』(かや書房)などがある。
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(エコノミスト エミン・ユルマズ 構成=向山勇)
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