認知症リスクは3倍、寿命は10年縮まる…「悪口を言う人」に最低最悪の人生が待っている科学的理由
プレジデントオンライン / 2025年1月22日 16時15分
※本稿は、樺沢紫苑・田代政貴『感謝脳』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■悪口は脳と身体に悪い
「ありがとう」を言っても、何も変わらない(連載第1回目参照)。もしそうであれば、「悪口」の影響かもしれません。
悪口やネガティブな言葉が多いと、「感謝」しても効果が得られないのです。そんな人たちの典型的なパターンを見たところで、そうなってしまう科学的な理由について、解説していきましょう。
結論から言いますと、「悪口」が多い人は、脳と身体へのストレスが増えて健康に悪い。認知症リスクが3倍に高まり、寿命も縮まる。不安や恐怖を感じやすく、最悪の人生になります。
① 認知症リスクが3倍に!
東フィンランド大学の研究によると、世間や他人に対する皮肉・批判度の高い人は認知症のリスクが3倍という結果になりました。
悪口を言い続けていると、ストレスホルモンであるコルチゾールを分泌します。コルチゾールは、記憶の保存に関わる海馬の神経を破壊し、過剰なコルチゾールは前頭前野の神経ネットワークのつながりを40%も破壊します。
悪口を言うことで、認知症を発症するほどのダメージを脳に与えるのです。
■悪口は心臓に悪い
② 寿命が縮む
楽観的な人と悲観的な人、いわゆる「ポジティブ思考」と「ネガティブ思考」の人を比べた研究では、「ポジティブ思考」の人は、10歳以上長生きしています。別の大規模研究でも、「ポジティブ思考」の人の寿命は平均より11~15%長かったり、また、「ネガティブ思考」の人は、「ポジティブ思考」の人と比べて、心疾患の発症率が2倍以上高かったりなど、多くの研究があります。
①に出てきた東フィンランド大学の研究でも、皮肉・批判度の高い人は死亡率が1.4倍にも跳ね上がり、批判的な傾向が高ければ高いほど、死亡率は高まる傾向がありました。悪口が多い、ネガティブな言葉が多い人は、寿命が縮むのです。
悪口を言うとアドレナリンが出ます。あるいは、怒ったときにもアドレナリンが出ます。たまになら良いのですが、1日の中でも何度もアドレナリンを出す生活は、心臓に悪いのです。
■ストレスを増やしてしまう
③ 悪口は、ストレス解消にならない
居酒屋に行くと、会社員による、上司や会社の悪口大会が開かれています。午後のカフェにいくと、ママ友の皆さんが、姑や夫の悪口大会を開いています。悪口が大好きな人は多いですね。
悪口が好きな人は、次のように言います。
「悪口を言うとスッキリする。悪口はストレス発散になる」
しかし、悪口を言っても、ストレス発散にはなりません。科学的には、完全に間違いです。
なぜならば、悪口を言うと、ストレスホルモンであるコルチゾールが高まるからです。
ストレス発散になるのなら、コルチゾール値は下がるはずです。たとえば、有酸素運動を30分すると、コルチゾールが高い人も、その値が正常値まで下がります。
前述のように、悪口を言うとアドレナリンが出ます。たとえば、ボクシングをしている人や喧嘩をしている人も、アドレナリンが出ます。戦闘状態になると、アドレナリンを大量に分泌します。
悪口とは「言葉による攻撃」です。悪口を言っているとき、脳は「戦闘状態」となり、アドレナリンを分泌するのです。アドレナリンによる高揚感は「楽しい」と認識されます。つまり、脳の過剰な興奮を「ストレス解消」と誤認するのです。
アドレナリンもコルチゾールも、ストレス状況で分泌されるストレスホルモンです。
悪口で、その両方が分泌されますから、「悪口を言う」ことは、ストレスを減らすことではなく、間違いなくストレスを増やすのです。
■悪口を言うのは言われるのと同じ
④ 他人への悪口は、自分に悪影響を及ぼす
あなたは悪口を言われたら、どんな気分になりますか。とてもショックを受け、ものすごく嫌な気分になるはずです。
オランダのユトレヒト大学、ライデン大学の興味深い研究があります。被験者には、「賛辞」「侮辱」「中立」の言葉を発してもらい、その間の脳波の変化を測定しました。「リンダは最悪」「ポーラは嘘つき」のように、主語に名前を入れて発声してもらいます。
実験の結果、侮辱の言葉が自分に向けられたものか、他人に向けられたものかにかかわらず、脳波に同じ反応が現れたのです。
ということは、主語は関係ないのです。リンダが発した「リンダは最悪」と「ポーラは嘘つき」では、同じ悪影響が脳で起きているのです。
つまり、侮辱の言葉、ネガティブな言葉を発すること自体が、脳への害であるということ。他人の悪口を言っているつもりで、自分が悪口を言われているのと同じ悪影響を自分自身が受けてしまうのです。
■メンタル疾患の入り口に…
⑤ 扁桃体が肥大する
ネガティブな感情や体験が多い人は、そうでない人と比べて扁桃体が肥大している、という研究があります。
これは、私は非常に恐ろしいデータだと思いました。
扁桃体は脳の警報装置です。生き延びるために、身に危険を及ぼすものを察知する役割があります。
この扁桃体、「バカヤロー!」「死ね!」といった言葉を聞くだけでなく、自分で話しても興奮するのです。扁桃体は、毎日訓練されるので、肥大します。結果として、「小さな不安」にも反応するようになり、常に「不安」や「恐怖」を引き起こします。いつも心配なことが頭から離れなくなるのです。
他人の悪いところがさらに目について、悪口が言いたくなる。他人の些細な言動にイラッとしたり、怒りが湧いてくる。感情もコントロールできず、不安定になります。こうなると、ほぼメンタル疾患の入り口です。
■悪口を相殺するには
⑥ 悪口が感謝の効果を相殺する
ノースカロライナ大学のフレドリクソン教授は、ポジティブ感情とネガティブ感情の比率は3対1が理想的であると言います。この比率を維持することで自己成長につながり、幸福感が高まると考えられています。
別な研究では、離婚しないカップルのポジティブ・ネガティブ比は、5対1以上。業績の良い企業、チームでのポジティブ・ネガティブ比は、6対1以上と言われます。ポジティブ・ネガティブ比の考え方は、幸福心理学の中でも非常に重要な理論となっています。
「ネガティブ言葉」を1回言うと、「ポジティブ言葉」を3回言って、ようやくバランスがとれるのです。つまり、「悪口」を1回言うと、「ありがとう」を3回言わないといけない。悪口が感謝の効果を相殺するのです。
バランスをとるだけでなく、感謝の効果を十分に出すためには、「悪口」1回に対して、「ありがとう」を5回言う必要がある。「悪口」を1日10回言う人は、「ありがとう」を50回以上言わないといけない。どうみても無理です。
ですから、他人への悪口、誹謗、中傷、あるいは「自分はダメだ」「自分には無理」といったネガティブな言葉は、極力、言うべきではないのです。
本書『感謝脳』を読んで実践しても、「効果が出ません」という人は必ずいると思います。そういう人は、悪口やネガティブ言葉をたくさん言っているはずです。悪口が多い人には、感謝の効果は出ないのです。
悪口を言うと寿命が縮まる。「ありがとう」と言うと寿命が伸びる。あなたは、どちらの言葉を発したいですか?
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精神科医
作家。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。YouTubeやメルマガで精神医学の情報を発信。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』『精神科医が教える ストレスフリー超大全』『読書脳』ほか。
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(精神科医 樺沢 紫苑、感謝の研究家 田代 政貴)
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