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50代以降は「腟ケア」を積極的にすべき…激痛に悶え泣きながら指を入れ続けた60歳女性に見つかった病気の名前

プレジデントオンライン / 2025年1月19日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/spukkato

加齢に伴う病気の中には、健康診断や血液検査だけでは早期発見できないものがある。自身の経験をもとに男女の性機能について取材を続けてきた径書房代表の原田純さんは「60歳を過ぎたころ、助産師さんの強い勧めで腟ケアを始めたら、日本人女性の70%が予備軍とされる病気が見つかった」という――。

■欧米では「腟ケア」は当たり前だが…

8年ほど前『ちつのトリセツ 劣化はとまる』(径書房)という本を書いた。オイルを使って、腟や女性器をセルフケアする健康法を紹介・奨励した本だった。

そのころすでに欧米では、オイルを使って腟や女性器をセルフケアすることが医療行為として普及。当たり前に行われていた。それなのに日本では、一部の例外を除いてほとんど誰もそのことを知らなかった。

先進的な医療を積極的に取り入れていた聖路加産科クリニックは、その例外のひとつ。安産につながるとして、妊婦に腟のオイルケアを勧めていた。ところが、実際にそれを行った女性は約50%。残りの約50%の女性は、「女性器に触ることに抵抗を感じる」として、腟のオイルケアを行わなかった。

自分の体だ。しかも安産につながるとして、医療関係者から勧められていたのだ。それなのに日本人女性は、自分の女性器に触れることに、これだけ抵抗を感じている。これはいったいどういうことなのだろう。

■腟はそもそも「デリケートゾーン」ではない

『ちつのトリセツ』が出版された2017年ごろ、これまた欧米で、「フェムテック」という言葉が使われ始めた。女性を意味する「フェミ」と「テクノロジー」を合体させた造語で、女性特有の疾患やトラブルを軽減させる商品やサービスを提供する産業の総称である。女性をターゲットにした、新しい市場のカテゴリーの誕生だ。おかげで日本でも、腟や女性器のケアに使うオイルなどが、大量に販売されるようになった。

その影響だろう。「ちつケア」は「フェムケア」と呼ばれるようになり、かつて「デリケートゾーン」と総称されていた女性生殖器は、日本を代表する女性泌尿器科医・関口由紀氏の提唱により「フェムゾーン」と呼称されるようになった。

デリケートゾーンをフェムゾーンと言い換えることについて、関口医師は、次のように語っている。

「女性生殖器は、そもそもデリケートな部位ではありません。排泄やセックス、妊娠や出産を担う、体のなかでは極めて頑丈な部位なのです。それなのにデリケートゾーンなどと言われると、簡単に触ってはいけない場所、なにか特別な場所のように思われてしまう。そのせいで多くの女性が、自分の生殖器に触ることすらできずにいる。これは、女性にとって大きなマイナスです」

最近、日本では、これまであまり問題にされなかったり、隠蔽されたりしてきた女性差別や性犯罪が、厳しく批判されるようになってきた。前時代的な日本の性文化が、変わりつつあるのだろうか。

あやしい。と、私は思う。

■59歳の私に「セックスはしていますか?」

自分の女性器に触ることができない、あるいは触ることを避ける。そういう女性は、いまでも少なくない。いや、少なくないどころか、ほとんどの女性が「触るのはお風呂で洗うときだけ」なのではないだろうか。以前は私もそのうちの一人だった。

私が、『ちつのトリセツ』を書くことになったのは59歳のとき、聖路加産科クリニックで、医療関係者に腟のオイルケアを奨励する講演を行った助産師のたつのゆりこ氏と出会ったことがきっかけだった。

そのたつのさんと、初めてお目にかかったときのことだ。

初対面で席に着いてすぐ、「セックスはしていますか?」と訊ねられた。たじろぎながらも「いいえ、20年以上していません」と正直に答えると、たつのさんが突然、真顔になり「それは大変。原田さんの腟はカチカチになっていると思います。すぐにオイルケアを始めてください」と言った。そんなことを言われるとは思ってもいなかった私は、思わず言葉を失った。

子どもを一人もうけたものの、最初の結婚に失敗した私は、数年後、再婚。だがその相手とは、結婚直後からセックスレスになった。私が拒まれたのだ。最初の数年は悩んだり苦しんだりしたが、いつしか、セックスなんてしなくていいと思うようになり、セックスレスのまま20年以上、結婚生活を続けていた。

■それでも躊躇していたら、衝撃的な一言が…

たつのさんと初めて会ったころは、セックスレスとは別の理由で離婚を前提に別居していて、もう男性とお付き合いするのはこりごり、一生、独りで生きていくと決めていた。セックスも、もう二度とすることはない。それでいいと思っていた。

そんな私に、たつのさんは突然「腟をケアしろ」と言ったのだ。

たつのさんが勧めるオイルケアとは、自分の指にオイルを付け、その指を自分の腟に入れて腟内部をマッサージするというものだ。日本人女性にとっては、相当にハードルが高いケアである。

一呼吸置いてから訊ねた。

「自分の指を腟に入れて、オイルを塗るのですか?」
「そうです」

当然だ、という顔で、たつのさんがうなずく。

言葉が出てこない。それでも私は眉をひそめ、口をヘの字にして、全身で拒絶を表していたのだろう。そんな私の目をヒタと見つめて、たつのさんが言った。

「男性には触らせるのに、自分で触るのはイヤですか」

びっくりした。そんなふうに考えたことは一度もなかった。だが、その問いは、まさに正鵠を射抜いていた。情けないことに、私はまたまた絶句。

たつのさんはやれやれという顔をして大きなため息をつくと、気を取り直したのか、私に向かって、日本人女性が直面している腟や女性器の問題について話し始めた。

■日本人女性は自然分娩ができなくなる?

「いいですか。日本人女性は、ストレス・夜更かし・目の使い過ぎ、甘い物やジャンクフードの食べ過ぎなどで血流が悪くなり、体が冷えて乾いています。だから当然、腟も乾いて硬くなっています。性交痛で、セックスができない女性も増えていますよね。先日、うちの産院に、自然分娩をしたいと言って訪ねてきた女性は、性交痛でセックスができないからと、人工授精で妊娠したって言うんです。

セックスができなくなるほど腟が硬くなっているのに、自然分娩なんて、できるはずないじゃないですか。赤ん坊の頭は10センチもあるんですよ。腟口に弾力があって、柔らかくなっていないと、赤ちゃんは出てくることができません。そんなことすら知らないのです。私は、そのうち日本人女性はみんな、自然分娩なんてできなくなると思っています」

一気に話すたつのさんに気おされ、私は「はあ……」というマヌケな返事。そんな私に向かって、たつのさんが次の一撃。

「原田さんが、セックスをしていないことはわかりました。それではマスターベーションは? マスターベーションはしていますか?」

私はたじたじ。「いいえ」と答えたものの、声がかすれた。

「それならやっぱりカチカチになっているはずです。すぐにオイルケアを始めないと、大変なことになりますよ」

模型を使って患者に説明をする婦人科医
写真=iStock.com/megaflopp
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/megaflopp

■意を決し、鏡で自分の下半身を映してみた

日本人女性の体に異変が起きているのは本当かもしれない。だが、腟がカチカチになるなんて聞いたことがなかったので、それについては半信半疑。

たつのさんには申し訳なかったが、当時、私は60歳目前。たとえ本当に腟がカチカチになっていたとしても、いまさら子どもを産むわけでも、セックスをするわけでもないのに、なんでそんなことをしなければならないのかと思い、結局、私は腟のオイルケアはしないと決めた。自分の腟に指を入れるなんて、考えただけでもイヤだったのだ。

だがそれから一年近くが過ぎたころ、私はついに腟ケアを始めることにした。たつのさんから話を聞いたとき、即座に強い拒否感をもった私が、なぜ腟ケアを始めることにしたのか。その経緯についてお話ししよう。

最初の衝撃は、たつのさんと初めて会った直後にやってきた。「せめて鏡に映して、自分の女性器をきちんと見てください」と、たつのさんに強く言われ、仕方なく私は鏡を取り出して、自分の女性器をそこに映した。

鏡のなかの私の女性器(大陰唇・小陰唇)は、若いころに見たそれとは、明らかに違っていた。全体的に、乾いて萎んで小さくなっている感じ。まさに枯れている風情だったのだ。「へぇ、こんなところも老(ふ)けるのかぁ」。妙に感心してしまったが、さすがにちょっと傷ついた。

■大昔に見たそれは肉厚で張りがあったのに…

自分の顔は毎日、鏡で見ているから、若いころとの落差に突然、気づいてショックを受けるということはない。老いの兆候は徐々にやってくるからだ。けれども自分の女性器を最後に見たのは、もう何十年も前のこと。記憶のなかにある私の女性器は、大陰唇も小陰唇も肉厚でぷっくりしていて、全体的に張りがあった。それが萎んで、ぺたんこになっていたのだ。

老いを受け入れるのがイヤだったのか、老いに抗いたかったのか、私はちょっと腹を立てていた。鏡をパタンと閉じて鼻を鳴らす。「ふん、セックスなんて二度としないんだから、構うこたぁない!」。そのときは、そうやって無視を決め込んだ。頑迷だったのだ。

二度目の衝撃は、女友だちの一言から始まった。たつのさんに教わったことを話したら、彼女が「腟のトレーニンググッズを使ってみない?」と言ったのだ。サバけた女を気取っていた私は、ここで怖気づいたら一生の恥。なんでもないという顔をして、「そうだね、やってみようか」と答えた。鏡を見てムッとしてから、数カ月が過ぎたころだった。

彼女と共同購入したのは、中国の古代思想タオで、鍛錬のために現在も使われている「翡翠の卵」。名前の通り、鶏卵より少し小さい卵型の翡翠で、タオでは、これを腟に入れて腟口を締め、気を回す練習をするらしい。

■いざ入れてみると、泣くほどの激痛が

女友だちから電話。「簡単に入ったよ~」

「それなら、私だってできるに決まっている」と、生来の負けず嫌いが頭をもたげる。ビビる気持ちがなかったわけではないが、もう後に引くわけにはいかない。

私はベッドで横になり、卵を自分の腟口に当てて押してみた。入らない。卵にオイルを塗って再挑戦。入らない。なにくそと、力を込めて押し込んだ。メリメリという感じで卵が腟のなかに入っていく。飛び上がるほどの激痛に襲われた。それでも入ったことは入った。腟は鈍感な臓器だからだろう。入ってしまえば、それほど違和感はなかった。

しかし、入ったものは出さなければならない。卵についている細い紐を引っ張る。出ない。あせった私はベッドから出て、やおらうんこ座り。紐が切れたらどうしようという恐怖に襲われながら、必死になって引っ張った。グググッ、メリメリッと音がしたような気がした。出た。だが、座っていることもできないほどの激痛。ベッドの上で股間を押さえ、身もだえしながらひとしきり泣いた。本当に痛かった。

■湧き出た気持ちは、魂の叫びのようだった

痛みが過ぎ去ったあと、ベッドに横たわったまま、しみじみ思った。「私はもう二度と、セックスができない体になったんだな」

そのときだ。突然、「イヤだ!」と思った。自分でもびっくりした。その思いは、ふいに、自分の内側から、突き上げるようにして飛び出してきた。これはいったいどういうことだろう。私は、もう二度とセックスなんてしなくていいと思っていたはずなのに……。

自分でも意外だったが、認めざるを得なかった。

そうか、60歳になったというのに、私はまだセックスができる体でいたいのか。いい人がいたら、セックスだってしてみたいと思っているのか。

それ以降、私は自分のその気持ちについて何度も考えた。二度とセックスなんてしなくていいと思っていたのに、本当にできなくなると思ったら、なぜ急に、それはイヤだと思ってしまったのだろう。

老いに対する恐怖だろうか。だが、自分の萎んだ女性器を見て老いを実感したときとは、なにかが違う。もっと別の、強い気持ちだった。大げさに聞こえるかもしれないが、イヤだという思いは、魂の叫びのような感じだったのだ。

あの叫びは、私がずっと蓋をして、見ないふりをしてきた自分の気持ちだったのではないだろうか。私は、自分の気持ちを、ずっとごまかしてきたのではないだろうか。「セックスなんて二度としなくていい」と思っていたのは嘘ではない。けれどもそれは、私の強がりだったのではないだろうか。

■セックスレスになった私が本当に欲していたもの

考えてみれば、これまでの人生で、身も心も真に満たされたと感じるセックスなんて、ほとんどしたことがなかった。それでも、抱きしめられれば嬉しかったし、抱き合っていると深い安心感に包まれた。だからだろう。二人目の夫とセックスレスになったときは本当に悲しかった。寂しかったし、つらかった。

セックスがしたかったわけではない。私が欲していたのは、人に求められること・求め合うことだったような気がする。おそらくセックスは、その究極の形なのだろう。

それなのに、再婚した夫から拒絶されて数年がたったころ、私はそれをあきらめた。そして、人生にとって、セックスなんて大事なことではないと思うようになった。心身ともに満たされるセックスなんて幻想だと思い、望むことをやめた。そうやって、自分にあきらめを強いたのだ。

その結果、私は、ひねくれたニヒリストになった。愛なんてない。理想の夫婦なんて宝くじに当たるようなもの。なにごともなく、淡々と結婚生活が続けられれば、それだけでいい。寂しさから生まれた冷めた気持ちで、そう思っていた。

背中合わせに立つ夫婦
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■50代の7割がセックスをしない日本人の危機

それなのに、もう二度とセックスができないかもしれないと思ったとたん、抑え込んでいた気持ちが噴き出した。あの「イヤだ」は、そういうものだったのだ。

身も心も満たされるセックスなんて、一生、できないかもしれない。それでも、もう自分の気持ちをごまかすのはやめよう。私はいつか、自分が望んだ相手と、自分が望むようなセックスがしたいと思っている。可能かどうかは別問題。自分のなかにある、そういう気持ちを「ないこと」にはしない。自分の気持ちに嘘をつくのはやめる。そう決めたのだ。

それから私は、「セックスができない体になるのはイヤだ」という自分の気持ちに素直に従って、腟ケアを始めた。それは私が、自分の体に、そして自分がするかもしれないセックスに、主体的になる最初の一歩となった。

長い年月がかかったが、このような経過をたどり、60歳になってやっと、私は自分の女性器に抵抗なく触ることができるようになった。私を縛っていたタブー意識や、恥ずかしさや後ろめたさから、ようやく解放されたのである。

日本ではいま、50代の男女の70%近くがセックスをしていない。若い人たちも、セックスに大きな価値を見出してはいないようだ。私の40代半ばになる独身の娘も、「セックスなんてしたいと思わない」と言う。「恋人もいらない。めんどうだから」と言う。腟ケアを勧めても、ほとんど関心がないようだ。

交差点を渡る人々
写真=iStock.com/loveguli
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■中高年ほど腟ケアをすべき理由

大々的に宣伝されたフェムテック関連商品は、多くの企業が参入したものの、売り上げが思ったほど伸びていないらしい。腟ケアも、一部の女性にしか普及していないようだ。

経済的な問題もあるのだろうが、「セックスに関心をもたない女性のほうが上品だ」とか「セックスは男性がリードするものだ」などという、日本の前近代的な性文化の影響が大きいのだろう。多くの女性たちが、最近は男性も、性的な喜びに関心を失い、セックスから撤退している。

女性が自分の女性器を、自分のものとして触ったり使ったりできるようにならない限り、男女双方にとって、セックスが輝きを取り戻すことはないと、ここで断言しておく。

ここまで、セックスに主軸を置いて腟ケアを語ってきたが、腟ケアは、若い人だけでなく、中高年が行うことで、さらにその健康効果を発揮する。これには多くのエビデンスがあるが、中高年女性にとって、腟ケアを始めるのは、かなり勇気を要することだろう。

ということを考え、参考までに、腟ケアを行ったことで、私の体にどのような変化が起きたかを記しておく。くり返しになるが、私が腟ケアを開始したのは60歳のとき。遅いということはないのである。

■腟ケアで早期発見につながった2つの病気

頑固な便秘が治り、くり返していた腰痛もなくなった。猫背が改善され、がに股になりかけていた脚も真っすぐになった。冷え性が治り、頭痛も出なくなった。気づかずにいたら、間違いなく手術になっていたと思われる骨盤臓器下垂も改善した。

骨盤臓器下垂とは、進行すると「骨盤臓器脱」という、骨盤内の臓器が腟口から出てくる疾患になり、手術が必要となる。日本人女性の70%がこの疾患の予備軍とされていて、私もその一人だった。

原田純『ちつのトリセツ 劣化はとまる』(径書房)
原田純『ちつのトリセツ 劣化はとまる』(径書房)

さらに私は、日本人女性の50%が予備軍とされているGSМ(閉経関連尿路生殖器症候群)にも罹患していた。この疾患は、尿もれ、性交痛、生殖器の萎縮、外性器のただれや痒みなどが特徴だが、この疾患も、私の場合、腟ケアと骨盤底筋体操で改善した。

骨盤臓器下垂もGSМも、腟に自分で指を入れて確認すれば、早期発見が可能である。早期であれば、腟ケアと骨盤底筋体操だけで改善される。

たつのさんに教わった、腟ケアや骨盤底体操のやり方など、詳しくは『ちつのトリセツ 劣化はとまる』をお読みいただきたい。同書は10万部以上売れ、現在もなお売れ続けている。女性はもちろん、男性にもぜひ読んでいただきたい。

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原田 純(はらだ・じゅん)
径書房代表
1954年、東京生まれ。編集者。15歳で和光学園高校中退。1980年、長女出産。1989年、径書房に入社。竹田青嗣氏に師事。現在、径書房代表取締役。著書に『ねじれた家 帰りたくない家』(講談社)、岸田秀氏との対談『親の毒 親の呪縛』(大和書房)、『ちつのトリセツ 劣化はとまる』(径書房)『人生最高のセックスは60歳からやってくる』(径書房)がある。

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(径書房代表 原田 純)

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