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だから節約貧乏になる…お金が逃げていく「NISA貧乏」「ポイ活貧乏」「キャッシュレス貧乏」の残念な思考回路

プレジデントオンライン / 2025年1月18日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MichaelDeLeon

お金の貯まる人、貯まらない人の違いはどこにあるのか。消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは「節約してお金を貯めようとする人がハマる落とし穴がある。まずは5つの思い込みを捨てることが大切だ」という――。

■お金が逃げていく5つの「思い込み」

2025年はご存じ巳年だ。巳=ヘビは、金運アップのご利益がある縁起のいい生き物と言われている。年収103万円の壁の引き上げや賃上げ期待が高まり、今年こそ金運が上向くのではと期待したいところだが、それを台無しにしてしまうような思い込みにはくれぐれも注意したい。

正解だと思えても、時と場合によってはそれにこだわるあまり逆効果を招くこともあるからだ。次から述べる5つを聞いて「その通り」と頷く人は、ひょっとすると金運を逃しているかもしれない。

1 「貯蓄よりも投資だ」

2024年の日経平均は3月に終値で初の4万円台をつけ、7月には4万2224円まで上昇した。「お金を増やすなら、やっぱり貯蓄より投資だ」と前のめりになった人も多いだろう。新NISAがスタートした年でもあり、日本中でだれもかれもが「NISAはやったほうがいい?」と囁き合った。筆者も80歳半ばで投資未経験のシニアの方にもそう聞かれた。いや、そんなことはない。投資すべきかどうかは、人それぞれだ。

まず、全く貯蓄がない人が、NISA積み立てなどに資金を集中するのはやめたほうがいい。特に、若年層ではクレジットカード決済で積み立てしている人も多く、ポイントのためにと背伸びした金額を積み立てに回しがちだ。そんな状態で、急な引っ越しなどまとまったお金が必要になると、使える貯金がない。

■「貯蓄より投資」の妄信は危険

いきなり生活費が赤字に転落するはめになる。もちろん投資商品を売却して資金を作れればいいのだが、その時たまたま相場が下がっていてマイナスが出ていたりすると損切りする決心がつかないもの。プラスに転じるまで手は付けず、生活費はカード払いでしのごうと考える。それが赤字の先送り、貧乏家計の始まりとなってしまう。

最悪なのは、借りてしのごうと考えてしまうことだ。投資にこだわりすぎると、お金を増やすどころか、借金生活へ陥りかねない。

貯金ゼロという人が月に1万円を積み立てるなら、半分の5000円でも預金に回した方がいいだろう。老後のためにお金を増やしたいのなら、今の生活を犠牲にしない金額に抑えるのが鉄則だ。

なお、すでに引退して老後生活にあり、これまで投資経験がない人にはNISAはお勧めしない。じっくり資産を増やす時期ではないし、定期収入がない人が無理にリスクを取ることはないからだ。ましてや大事な生活資金を減らしては大変だ。「貯蓄よりも投資」を妄信しては危ない。

投資
写真=iStock.com/jxfzsy
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jxfzsy

■ポイ活は貧乏の入り口

2 「ポイントは節約になる」

食費も日用品も値上げ続きで、節約志向は一層高まっている。物価高への対抗策として何をしているか問われて、「ポイ活」と答える人が増えた。お金と同等に使えるポイントは、確かにそれで買い物をしたりできるのでありがたい。節約のためにポイントをためるのは間違ってはいない。ただ、あることに注意しないと、かえって金食い虫になってしまう。

それが有効期限だ。昨年、NTTドコモは2025年10月(予定)より、dポイント(通常)の有効期限を変更すると発表した。現在は「獲得月から48カ月後の月末まで」となっているが、これを「最後にポイントを利用(ためる・つかう)した日から12カ月後まで」にするという。これは、dポイントを利用するたびに期限が延長される方式への変更で、よく考えるとポイントの失効を防ぐには、その一部または全部使って永続的に買い物をし続けなくてはならないシステムなのだ。

節約の助けにするはずが、気づくとポイントをキープするためにお金を払い続けているとしたら悔しい話だ。ポイントを守ることばかりに気を取られると、かえって出費が増え、お金は貯まらないだろう。

■現金払いをやめた人は要注意

3 「現金よりもキャッシュレス一択」

いよいよ日本のキャッシュレス決済比率は、政府目標の4割に近づいた。現金を全く持ち歩かないという若者も増えている。カードやスマホ決済で払えば、ポイントが付いてお得だからという理由だ。現金で払っても何のメリットもないじゃないかというわけだ。

しかも、キャッシュレス決済事業者は、どんどん魅力的な高還元率キャンペーンを打ちだしてくる。例えば、三井住友カードでは対象となるクレジットカードをスマホに設定しタッチ決済を利用することで、7%のVポイント還元を受けられる(対象となるコンビニや飲食店などの場合)。

昨年末に話題になった東京都の「もっと!暮らしを応援 TOKYO元気キャンペーン」では、都内の対象店舗でQRコード決済(au PAY、d払い、PayPay、楽天ペイ)をすると最大10%のポイントが還元されるとした。あまりの人気に、キャンペーン期間が前倒しで終了したのは記憶に新しい。それほど多くの人が食いついて、お金を使ったというわけだ。

なお、キャッシュレスと一口に言っても、今どきはスマホアプリで支払うことが多い。先の三井住友カードのタッチ決済も、スマホではなくカードでタッチしてもいいが、還元率は7%ではなく5%に下がる。

電子決済
写真=iStock.com/AsiaVision
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AsiaVision

■まとめ買いが「お得」とは限らない

スマホを優遇した理由は、様々なキャンペーン情報やクーポンをアプリ通知に送れるというメリットが先方にあるからだろう。「この時期に決済するとポイント倍増です」「期間限定のクーポンも使えます」という情報を目にすれば、心が動かされてしまうものだ。

確かにキャッシュレスには現金払いでは得られないメリットがある。ただ、その代わりに無用な消費心をかきたてられることは覚悟しなくてはいけない。決済アプリを手当たり次第にスマホに入れて、キャンペーンを渡り歩くのは危険な兆候だ。意志を強く持って、利用するアプリを絞り込んだ方がいい。

4 「値上げ前にまとめ買いすべき」

民間調査会社帝国データバンクによると2025年は1.5~2万品目もの食品値上げが想定され、24年を上回る可能性があるという。特に、2~4月にかけては月当たり2000品目を超え、状況次第では月3000品目に達する値上げラッシュの可能性もあるとか。

特に影響が大きそうなのは「酒類・飲料」だ。缶ビールや缶チューハイ、輸入ワイン・ウイスキーなど洋酒、レギュラーコーヒー製品などが上がる。特に4月には大手4社でビール価格が最大10%ほど引き上げられ、23年10月以来の値上げとなるというのだ。

これを聞いて、「では値上げ前に買いだめしなくては」とつい考えるもの。しかし、買いだめが節約に効果があるかと言えば、イエスとは言い切れない。手元にあるお金が少なくなれば私たちはなるべく出費を減らそうと考えるが、まだ余裕があると思えば気にせず使う。

■情報感度が徒になることも…

買いだめには、それと同じ心理が働きがちだ。ストックが十分あると思えば、使う量を減らそうという意識は和らぐ。そればかりか、大量に買いだめして収納がふさがれてしまうと、他のものをしまえない不便が生じ、早めに消費しなくてはという気持ちになってしまう。

せっかく買いだめしたのに、いつもより消費ペースが上がってしまえば意味はない。買いだめが悪いとは言わないが、いつもの量プラスアルファ程度にしておく方が無難だ。そして、ムダ遣いを減らす意識を強めた方が、息の長い節約行動になるだろう。

5 「オトク情報は常にパトロール」

「ここのドラッグストアで買い物するときは、アプリのクーポンをセットして、15日に〇〇ペイで払うのが一番おトクです」「このファミレスは〇〇カードの特約店だから、カードで払うとポイントの還元率がぐんとアップする。だから外食はいつもここと決めている」――そんな他人が享受している「オトク情報」を耳にすると、感心する一方でなんだかおもしろくない。

自分だけが損している気分になってくるからだ。自分も「トクする側」に参加したい。そう考えて、さまざまなキャンペーン情報を探すようになる。SNSにはその手の情報発信が溢れており、いくらでも入手できてしまう。これなら、自分もオトクを見逃さずにすむだろう。周囲にも教えてあげられる――。こうしたオトク情報パトロールを習慣にしている人は少なくないようだ。

セールの看板
写真=iStock.com/Adam Webb
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Adam Webb

■お金持ちになれる人は「ブレない人」

情報収集力があり、効率よくポイントを稼ぎ、「今月はこんなにトクしました!」と語る節約達人は確かに素晴らしい。

しかし、オトクを打ち出すキャンペーンとは、例外なく消費喚起が目的だ。そのために普段利用しないドラッグストアやファミレスにわざわざ行くのは、節約になっているかと言えば怪しいだろう。

人間はどうしても、自分以外の人が気になるものだ。しかし、お金の使い方まで他人にあわせる必要はない。本当にお金が貯まる人というのは、自分のスタイルをしっかり守り、決してブレない人なのだ。

金運を上げるには、損得にこだわりすぎるより、少額でも「楽しかった」「満足した」という使い方を増やしていくことではないか。2025年を豊かな年にするためにも、そんなお金の使い方を続けていきたいものだ。

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松崎 のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト
『レタスクラブ』『ESSE』など生活情報誌の編集者として20年以上、節約・マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析してきた経験から、「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない 』(以上、講談社)ほか。

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(消費経済ジャーナリスト 松崎 のり子)

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