「早く死ね」とダイレクトメッセージを送ってきた60代男性の心を浄化した52歳僧侶の"許しの返信"
プレジデントオンライン / 2025年1月19日 7時15分
■「貪り、怒り、愚かな心」に囚われない
まず、今生(この世)での注意を書きますと、心が三毒に囚われないようにしなくてはいけません。三毒は貪(とん)・瞋(しん)・痴(ち)の三つのことです。
この三毒を持っていると、必ず今生で罪を重ねてしまい、今よりも悪い状況に落ちる可能性があるからです。つまり、人間界よりも下の世界に行ってしまう可能性が強くなります。
先日、私に一通のダイレクトメッセージが届きました。それは「早く死ね」という内容のものでした。おそらく私のYouTubeや、テレビ番組、書籍などを見てそう思われたのだと思います。
時々、このようなメッセージをいただきます。その都度、私はこう返信します。
「私は今、52歳ですので、あと50年以内には死んでしまうと思います。それまでしばらくお待ちください」
■「早く死ね」と言われてもキレ返さなかった
すると返信がすぐに来ました。
「俺は今、60代後半だから、50年も待てない。すぐに死ね」
と言うのです。そこで私は、再び返信をしました。
「そんなことを言わずに、50年頑張ってください。せめて100歳くらいまで元気でいてください」
すると10分ほどの間をおいてこう返ってきました。
「三木さんのほうこそ頑張って長生きしてください」とメッセージをくださったのです。
もしも一通目のメッセージを見て私が怒ったとします。そして感情に任せて「そっちこそ死ね」と返していたとします。
すると向こうもさらに腹を立てて、やがては刀傷沙汰になっていたかもしれません。ですから、怒りの心を起こさず、相手に対して慈悲心を持つことで回避できたのだと思います。
これが罪障(※)を作らないための方法です。そして、このときの相手を許すことで、一つ過去の罪が消えるのです。
※前世、前前世、前前前世と、長い輪廻の中で犯してきた罪
■嫌なこと、苦しいことは罪を消すチャンス
このメッセージが来たときには、私はとてもショックで、悲しい気持ちになりました。見ず知らずの人から「死ね」と言われるのはとても辛いことです。
しかし、これはもしかすると、過去世に私が誰かに対して「死ね」と言ったことが、現世に現れたのではないかと思ったのです。もちろん、記憶はありませんが「前世か前前世で誰かに言った罪が、今、返ってきているのかもしれない」そう思ったのです。
そう思って、相手に対して慈悲心を持った返信をしたところ、この方も優しい言葉を送ってくださいました。なんとなく一つ罪が消えたような気持ちになれました。
そう考えますと、嫌なことや苦しいこと、辛いことなどは罪障を消すチャンスタイムなのです。
しかし同時に、罪障を作ってしまう可能性もあるわけです。
簡単に言えば、嫌な相手が出現したときには、許すという心を持って接しなければいけないのです。
■お釈迦さまが弟子・阿難を褒めた理由
ここでお釈迦さまと弟子のエピソードを紹介します。この話は、お釈迦さまの肉体が亡くなるときのお話です。
お釈迦さまはもうすぐ自分の肉体から離れようと考えておられました。そして横になっておられると、それを察した弟子の阿難が、何か言いたそうにしていました。
「阿難よ、何か聞きたいことでもあるのか。遠慮なく聞きなさい」とお釈迦さまはおっしゃいました。
すると阿難は「お疲れのところをすみません」と気遣いながらこう聞きました。
「誰とでも善き友になるように努めて、そして善き友となり、その善き友に囲まれて暮らすことは、仏教の教えの半分くらいを理解したということではないでしょうか」
そう尋ねました。するとお釈迦さまは次のように答えられました。
「阿難よ。あなたは大きな勘違いをしている。誰とでも善き友となるように努め、そして善き友となり、その善き友に囲まれて暮らすことは、仏教の半分を理解したのではない」
そして続けてこう言われたのです。
「仏教の半分ではなく、それこそが仏教のすべての教えなのです。よく理解しましたね、阿難」
そう言って阿難をとても褒められました。
■全員が善き友になる=争いごとがなくなる
このエピソードを聞くと、仏教はとても簡単な教えだと思えますが、そうではありません。
まず「誰とでも善き友となる」ということは、どんなに嫌な人間に対してもそう接しなければいけません。これはとても難しいことです。
そして、どんな嫌な相手でも「善き友となる」とは、相手にもそう思ってもらわなければなりません。
それだけではなく「善き友に囲まれる」とは、たくさんの人たちと、という意味です。
最終的なことを言えば、世界中の人間と、善き友になるということです。
これができれば、世界中から争いごとも戦争もなくなるということです。
もしこうなれば、罪障も新たに生まれることもありませんし、過去の罪障もすべて消し去ることができるのです。
しかし日々生活を送る中で、これも簡単なことではありません。ではどうすればよいのでしょうか。
■ゴミを投げつけられても怒らなかった
少し私の話をさせていただきます。
私はゴミ拾いをしながら歩くことがあります。初めは目的もなく、ただゴミ拾いをしようと始めたのです。そして、ゴミ袋のゴミの量が自分の積んだ功徳ということにしようと考えました。そうすることで、ゴミ拾いがありがたいことに思えたからです。
そしてゴミ拾いをしていたある日、一人の男性が私にゴミを投げつけてきました。私は思わずその人のほうを見ますと、目が合ったのです。するとその男性は私を見ながらこう言ってきました。
「ゴミ拾いをしてるんだろ。俺のゴミをあげるから捨てておいて」
そう言われたのです。
私はこれを聞いたときに「なるほど」と思わず声を出していました。
「俺のゴミをあげる」という言葉は、まさにその通りだと思ったのです。徳を積ませてあげるということなのでしょう。
もちろん、この男性はそんなことは考えておられなかったでしょうが、私にはそう言われたように感じたのです。
これが「常住此説法」、つまり常にここに住んで、説法をしてくださっているお釈迦さまの声だと思います。密着するくらい近くに感じることができ、それにより考え方を変えることができるのは、人間が平等に持つ力です。
その力こそお釈迦さまの存在なのです。
■「徳ポイント」をプラスで終えるためには
このような考え方も、お経の解釈として間違いはないと思います。
相手やその行為を許していくことで、自身の罪障を消滅させていくというのも罪障消滅の方法です。
しかし、この方法には落とし穴があります。
善い行動、善い行いというものを「徳」と言います。
その「徳」を繰り返していくことを「積徳(せきとく)」、つまり徳を積むと言います。
この「徳」をポイントという表現に変えれば、「積徳」とはポイントを稼ぐことです。
実はこのポイントは、怒りの心や行動が生じたとき、減点の対象となってしまいます。
ですからまたゼロからやり直しということや、人によってはマイナスポイントが付いてくる場合もあるのです。
できれば今生をプラスで終わりたいものです。
自分は短気な性格なので、すぐにポイントをなくしてしまう。それならばいっそのこと、我慢をするのではなく好き勝手に生きてやろうと、投げやりに思う方もいるかも知れません。
■いつでもどこでも誰でもできる究極奥義
そんな人のために、罪障消滅の究極奥義があるのです。
それが「読経」です。お経を読むということです。
お経を読むということは「正法精気」を得るという行為です。しかも『妙法蓮華経』は、別名「罪障消滅経」とも言われています。ですから一心に「罪障消滅」を念じながら読経すれば、罪を軽くすることができるのです。
しかしながら、読経というものは、まったくお経の中身を理解しないで読んでも効果は少ないです。やはり理解をある程度していないと読み手も念がこもらないのではないかと思います。
そう考えると、今から『妙法蓮華経』の勉強をして、読経の練習もしてとなると、それもまた難しいことです。
ということで、私のような僧侶が、皆さまの代わりにお経を読んで差し上げるのです。しかし、なかなかお寺に行けない方もおられると思いますし、毎日となるとそれも難しいと思います。
そこで究極奥義とされるのが「南無妙法蓮華経」と繰り返し唱えることです。これは僧侶がいなくても自分でできます。
■『妙法蓮華経』と出会えたことは奇跡
もちろん、自宅とお寺の本堂とでは念の力に違いはあるかもしれませんが、少なからず「正法精気」を得ることができます。
末法時代を生きる私たちには、ありがたく楽な方法です。とても楽な方法で拍子抜けする方もいるかもしれませんが、実は非常に難しいことなのです。
なぜこれが難しいことなのかというと、それは縁がなければ出会えないからです。
『妙法蓮華経・妙荘厳王本事品第二十七』や『涅槃経』というお経などにその難しさが書かれています。要約すると次の通りです。
「海底に住んでいる片眼の亀さんがいました。その亀さんは、百年に一度だけ海上に上がることができます。そんな片目の亀さんの望みは、海上に出て、自分の甲羅がぴったりと挟まるサイズの穴が開いている栴檀(せんだん)という香木で休みたいというものでした。
あるとき、百年に一度の海上へ浮上する日が来ました。そして海上に上がっていくと、そこに偶然にも栴檀の浮木が流れてきて、その浮木には亀さんがぴったりと挟まる穴があり、そこで休めました」
百年に一度のタイミングで、木の種類も穴のサイズも思った通りのものに出会う確率は途方もなく低いものです。
末法の時代に生まれて『妙法蓮華経』に出会う確率は、これと同じくらい難しいということです。
縁というものは、自分の努力だけでどうこうできるものではありません。
『妙法蓮華経』と出会えたことは、私たちの想像を絶する確率なのです。
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光照山蓮久寺 第38代住職
1972年生まれ。京都府京都市出身。怪談を切り口にわかりやすく説法を説く「怪談説法」を確立。実際にあった相談に基づく怪奇現象、自身の体験など、現代の怪談を説法へと繋ぎ、考え方や生き方、死生観が変わる仏教の教えを説く活動をしている。テレビやラジオ出演のほか、YouTubeでの発信、イベント出演等多岐にわたり活躍中。著書に『続々・怪談和尚の京都怪奇譚』(文藝春秋)など。 YouTube:三木大雲チャンネル、三木大雲の人類大会議
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(光照山蓮久寺 第38代住職 三木 大雲)
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