「勉強しなさい」以上にやる気をなくす…2万人合格させた受験のプロ「親が子に絶対かけてはいけない言葉」
プレジデントオンライン / 2025年1月20日 18時15分
※本稿は、渋田隆之『中学受験で合格に導く魔法のことば77』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■受験の「主人公」を親にしない
「中学受験の主人公は誰でしょうか?」
答えは「子どもたち」であると私は思います。そして、この記事をお読みいただいている皆様もその通りだと思われることでしょう。しかし、実際にコミュニケーションの場面では「親(大人)が主人公」になりがちです。
社会経験が長く、ボキャブラリーも豊かな大人が、わずか10年前後しか生きていない子どもと接するうえで、ぜひとも気をつけておきたいことです。
「あんたが、自分から朝から起きて漢字練習をすると言ったのに何でできないの?」
「受験をやめなさいとお母さんが言ったときに、泣きながら塾を続けさせてくださいと言ったのは誰なの?」
「模試の直しは、すぐにやるって言ってたよね?」
これらの言葉は、本当に本人が心から言ったのでしょうか? 大人がコントロールして、無理矢理言わせたかもしれないという気持ちを心の片隅に置いておくのも大切だと思います。
もう一度、お伝えします。
「中学受験の主人公は子どもたちである」
■子どもの悪口を言わない
お母さん(お父さん)が子どもの前で、お父さん(お母さん)の悪口を言わないことは大事です。また、やってはいけないのは、お子さんがいる前で本人のことを悪く言うことです。
他人の悪口については、言ったほうが多少は気が楽になるかもしれませんが、聞いているほうにはメリットはありません。子どもにもメンツやプライドがありますので、例えば塾で、大好きな先生の前で自分の悪いところを言われると、深く傷つきます。
お子さんは外から見えないけれど、中で成長を続けるサナギのような存在だと思ってください。親子関係は一生続きますので、中学受験を通してその親子関係が崩れるようなことだけはしてほしくないと思います。だからこそ、親はある程度の覚悟をもって、掛けてはいけない言葉を言いそうなときは、グッと我慢が必要です。
私は、親は「保護者」から「親」へと成長するという言葉が好きです。「私がいないとだめなんだから」ではなく、「木の上に立って、見る」で、グッと我慢する場面も必要です。
■子どもの言葉を遮らない
こちらが話し掛けたときに、子どもが返事をしてくれなかったり、何も言わずに自分の部屋に行ってしまったりして、イライラ・ザワザワした経験はないでしょうか?
子どもが反応してくれずに、無視をしている理由を勝手に自分の中で想像して、怒りや心配を増幅してしまうことがあります。悪いように考えてしまうと、その後のコミュニケーションに支障をきたしてしまいます。
たとえば、子どもが考え事をしていて気づいていなかったという可能性もゼロではありません。ドアをバタンッ! と閉めたように思えたのも、何かのはずみかもしれません。けんかの原因の中で、「誤解」が占める割合は多いような気がします。
こういうすれ違いを防ぐためにも、子どもと話をするときは、
① 背中ごしに話すのではなく、きちんと目を見て話す。
② 子どもが何か言いたそうなときに、その言葉をさえぎらない。
の2点が鉄則です。
子どもが親に望むことは、「きちんと向き合ってほしい」なのです。
■過去の失敗を持ち出さない
子育てでは、つい怒りのスイッチがオンになってしまうことがあります。そして、しばらく経ってから怒りを子どものためと正当化したり、自分を責めて落ち込んだりします。
その回数を少しでも減らすためにも、子どもの成長のためにも、過去にさかのぼって注意をしてしまわないようにしなくてはなりません。
「そういえば、この前も忘れ物してたよね?」
「塾に行きたくないの? ピアノも途中でやめたよね。またあきらめちゃうの?」
こういう風に問い詰められると、子どもは何もしゃべれなくなってしまいます。会話はキャッチボールが原則のはずですが、いつの間にかドッジボールや野球のビーンボールのようになってしまいます。
私は、講演会で「お子さんの目は、過去ではなく未来に向いている」という話をします。大人は今年と来年の生活に大きな差はありません。ひょっとしたら10年後も今と変わらない生活をしているかも。
しかし、子どもはそうではありません。
「子どもには、語るなら過去ではなく未来を」でいきましょう。
■他の子と比べない
これまで2万人以上の生徒・保護者と関わってきましたが、あらためて入塾から合格まで順風満帆に行ったご家庭は1つもなかったと断言できます。
私は、家庭でのようすは実際にはわからないA君と比べるより、ご自身の小学生時代と比べてみてくださいとお勧めしています。将来の目標が決まっていて、黙々とその目標に向かって頑張れていたでしょうか?
たとえ、中学受験を体験されていなくとも、なかなか難しいということが直感的にもご理解いただけるかと思います。
とはいえ、ちっとも机に向かわないお子さんを見て、平常心ではいられないお気持ちもわかります。今まで10回怒っていたのが、8回になっていたら御の字ではないかという感覚も必要です。
また、言葉もきつい言い方ではなく、2割引きの柔らかい言い方に変えてみるというのも大きな変化だと思います。
マニュアル本には、「ほめて伸ばそう」というような理想論が書かれてあるかと思いますが、その通りに完璧にできなくとも「受験生の親失格なのでは?」と思う必要なんてありません。たくさんの生徒をみて確信しているのは、子どもは完璧な親なんて求めていないということです。
■マニュアルに縛られない
マニュアル本の宿命として、自分の中に腑に落ちていない内容を使うと、逆効果になる危険をもっています。生兵法が大怪我の元ということです。
たとえば、「子どもはほめたほうが勉強すると書いてあるから、本当はほめたくないんだけど、ほめてみよう」という態度では、うまくいきません。気持ちは、言葉以上ににじみ出るものだからです。
子どもと接するときは、言葉より先に態度や姿勢にも気をつけておきましょう。メラビアンの法則は、7:38:55のルールと呼ばれることもあります。人間はコミュニケーションにおいて言語、聴覚、視覚の3つの要素から相手の感情や意図を読み取ると仮定しました。
そして仮に、この3要素から受け取った情報が矛盾していたとき、言語7%、聴覚38%、視覚55%の割合で判断に影響を与えるとするのが、メラビアンの法則です。この法則は、注意するときではなく、いっしょに楽しんだり喜んだりするときを考えるとよく理解できると思います。
子どもの成功を笑顔で迎えたり、いっしょにガッツポーズしたり、ハイタッチしたり。合格の瞬間に抱き合ったり、涙を流したりする。
そんな日を迎えるために、本記事がお役に立てたのならこんな幸せなことはありません。
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国語専門塾・中学受験PREX代表
教育コンサルタント・学習アドバイザー。神奈川大手学習塾で中学受験部門を立ち上げ、責任者として20年携わる。毎年、塾に通う生徒全員と直接面談を実施。保護者向けにも、ガイダンス、進路面談、カウンセリングを担当し、これまで関わった人数は2万人以上にのぼる。日々の思いを綴るブログ「中学受験熱血応援談」は年間100万件以上のアクセスを獲得している。2022年7月に中学受験PREXを立ち上げ、現在も継続して中学受験の最前線に立ち続ける。国内最大の受験人数を誇る首都圏模試センターの中学受験サポーターも歴任し、中学校と受験生の橋渡しとなる情報提供を日々行っている。一番大切にしていることは、ご縁があり指導することになった子どもたちとご家族のために、誠心誠意、ベストを尽くすこと。著書に『中学受験 合格できる子の習慣 できない子の習慣』(KADOKAWA)、『2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100』(かんき出版)、『親の声掛けひとつで合否が決まる! 中学受験で合格に導く魔法のことば77』(KADOKAWA)がある。
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(国語専門塾・中学受験PREX代表 渋田 隆之)
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