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「新1万円札は渋沢栄一、では裏に描かれているのは?」プロが予測する中学入試の時事問題「必須5大ニュース」

プレジデントオンライン / 2025年1月20日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/petesphotography

首都圏の私立・国立中学校の8割以上が何らかの形で出題している「時事問題」。2025年度の入試では、時事問題に何が取り上げられるだろう。プレジデントFamily編集部では時事問題の出題傾向に詳しい3名に、24年の出来事から、出題の可能性が高い5つのトピックを選んでもらった。主に社会科や理科で出題されることが多い時事問題は、配点は高くないものの、合否のボーダーラインを超えるための「数点」になる可能性もある――。

※本稿は、『プレジデントFamily2025冬号』の記事の一部を再編集したものです。

■「ニュースの基本」を知っておく

サピックス小学部社会科教科責任者の住田俊祐さんは「地理・歴史・公民からなる主要分野の勉強を深めることに軸足を置きつつ、ニュースの基本を知っておくことが大事です。ニュースそのものについて掘り下げるというよりも、ニュースをきっかけにすでに学習した内容の理解度や受験生本人の考え方などを聞いてくる問題が多い傾向にあります」という。

個別指導塾テスティー塾長の繁田和貴さんは、「2025年は、例えば戦後80年など、○周年が多いメモリアルイヤー。“周年問題”を好む学校は多いですよ。また、“2025”は、九九の合算(1×1+1×2+……9×9)の数であるなど、算数の問題としても作問されやすい」とも。

各校の過去問を出版する「声の教育社」社長・後藤和浩さんはこうアドバイスする。「時事問題は範囲が広大なので、何月までの出来事が出るのか、学校の説明会で聞いてみるといいでしょう。おおよその範囲をすんなり教えてくれたり、『ウチは受験生の負担を減らすために時事問題は出しません』とズバリ答えてくれる学校や担当者もいます」

■①新紙幣発行

2024年7月に発行された新しい「日本銀行券」。

一万円札の肖像は、近代日本の産業発展に貢献した渋沢栄一。第一国立銀行(現みずほ銀行)の設立や、約500社の企業の創設に関わった実業家だ。

五千円札は、日本の女性教育の先駆者である津田梅子。津田塾大学の創設者として知られ、岩倉使節団の一員として渡米し、女性の高等教育に生涯をささげた。

千円札は、細菌学者の北里柴三郎。破傷風菌の純粋培養に世界で初めて成功し、医学の発展に寄与した。北里大学の学祖。

新紙幣の特徴は、最新の偽造防止技術が導入されたこと。3Dホログラムの立体的な動きの強化、透かしの精緻化、特殊インキによる色変化技術が採用されている。また、ユニバーサルデザインの観点から視覚障がい者が手触りで紙幣の種類を判別できる識別マークも改良され、より使いやすくなった。

デジタル決済が進む中での新紙幣発行という点でも注目された。

「名前だけでなく、顔もしっかり覚えましょう。写真やイラストなど、問題にビジュアルを入れる学校は増えています」(後藤さん)

「新紙幣のユニバーサルデザインにちなんだ出題もあるかもしれません」(住田さん)

「新紙幣に登場する3人の功績は押さえておきましょう」(繁田さん)

●出題されそうな関連ポイント

【キャッシュレス】

近年、紙幣や小銭を準備しなくてすむクレジットカードやスマホでのバーコード決済など、キャッシュレスでの支払いが普及している。「今回発行されたものが最後の紙幣になるという声もあります」(後藤さん)


【北里柴三郎】

「近代日本医学の父」と呼ばれる北里柴三郎はドイツ・ベルリンから帰国後に、福澤諭吉の支援を受け、慶應義塾大学医学部の初代学部長に就任したほか、私立伝染病研究所も創設。「2020年から猛威を振るった新型コロナをはじめとする感染症対策の礎を築いた人でもあります」(繁田さん)


【図柄】

表面の人物だけでなく、裏面に描かれているものにも要注目だ。一万円札は東京駅丸の内駅舎、五千円札は藤、千円札は葛飾北斎の「富嶽三十六景」の一つ「神奈川沖浪裏」。細かい描写も偽造防止の一環。「かつて渋沢栄一が紙幣の肖像の候補になったものの最終的に選ばれなかった理由の一つとして、偽造防止に役立つ『ひげがなかったこと』があるといわれています。現在は偽造防止技術も発達し、ひげの有無や性別に関係なく採用されるように」(住田さん)

■②能登半島地震

2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県の能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生。輪島市や志賀町で震度7、珠洲(すず)市などで震度6強を観測した。

「能登地震」と日本語で書かれたニュースの見出し
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

気象庁は大津波警報を発令(11年の東日本大震災以来)。その後も揺れが続き、建物の倒壊、道路の寸断、火災の発生など、甚大な被害が発生した。この地震での直接的な死者は227人、避難所などで体調を崩して亡くなる災害関連死も150人以上に。

この災害への対応として、自衛隊、警察、消防による救助活動に加え、ヘリコプターや船舶を活用した物資輸送、避難所の設置と運営、医療支援チームの派遣などが行われた。ただ、山崩れなどで道路が寸断され迅速な支援が困難なうえ、過疎化と高齢化が著しい地域だったこともあり、被害の規模が大きくなった。

「災害が多い日本では、自然災害の問題は毎年出ます。こうした事態に直面したときに『あなたならどうするか』を受験生に問う学校も少なくありません」(住田さん)

「どこで起こったのか、能登を含む北陸地方の地図で位置関係を確認しましょう」(後藤さん)

「P波、S波、マグニチュード、震度などの関連用語と意味はしっかり理解しておきましょう」(繁田さん)

●出題されそうな関連ポイント

【過去の震災】

「震度7」を観測した地震は、1995年1月の阪神・淡路大震災、2011年3月の東日本大震災、16年4月の熊本地震、18年9月の北海道胆振東部地震などがある。「今回の地震は夕方に発生しましたが、(1923年の)関東大震災は昼時で食事を作っている家が多かったから大規模な火災が起きたなど、地震発生の時間帯と被害の関係を問う出題も予想されます」(後藤さん)


【高齢化社会】

「輪島市や珠洲市など、被災した地域では65歳以上の高齢者が約半数(全国平均では約29%)でした」(繁田さん)。能登には古い耐震基準で建てられた家屋が多く、耐震補強が遅れていたことも被害拡大の要因だといわれる。


【伝統工芸品】

「この地震では伝統的な産業も打撃を受けました。輪島市では“輪島塗”の多くの工房や職人が被災しました」(繁田さん)。また、日本海を望む傾斜地に1000枚以上の田んぼが広がる「白米千枚田」と呼ばれる棚田にも多くの亀裂が走った。

■③「円安」と「物価上昇」

円安とは、日本の通貨「円」の価値がアメリカの「ドル」に対して下がること。

例えば、1ドルと交換できるのが100円から150円になると、50円分価値が低くなる。以前は1ドル=100円以下という円高の時期もあったが、2022年から円安傾向に。24年は一時1ドル=160円を突破するまでに円安が進んだ。

円安になると、国民の生活はどうなるか。顕著なのは、外国からの輸入物価が上昇すること。

そのため、輸入依存率の高いエネルギー(ガソリン、電気・ガスなど)や食品(小麦製品、油脂類、加工食品など)の価格に影響が出る。

物価上昇で商品の値上げが増加する一方、中小企業を中心とした社員などの賃金は伸び悩んでいる。政府は物価高騰対策や企業への賃上げ促進策を展開しているが、家計のやりくりに苦しむ家庭が増えている。

「物価高になると、あなたの貯金の価値は上がるか下がるか」を考えさせるような問題が出そうです」(繁田さん)

「円安だとなぜ外国人観光客が増えるのか、それも考えておきましょう」(後藤さん)

「サピックスが今回調べたところ、中学の先生が受験生に知っておいてほしい時事テーマの1位が『円安と物価上昇』でした(2位はアメリカ大統領選、3位は少子化問題)」(住田さん)

●出題されそうな関連ポイント

【インバウンド】

円安でますます増えたのが訪日する外国人観光客(インバウンド)。経済を活性化させる半面、オーバーツーリズム(過度な観光地化によって、地域住民の生活環境などに悪影響を与える状態のこと)などの問題も発生しており、利点・欠点がある。「難関校では、観光税をとったり入場料を上げたりするほかに、観光地の混雑を軽減させる方法を受験生に考えさせる問題も見られました」(住田さん)


【物流2024年問題】

2024年春からトラック運転手の時間外労働に関する規制が強化されたことで、運送業界で人手不足が深刻化。「スーパーへの生鮮食品の配送の遅れなどが生じ、物流コストもアップ、最終的に食品価格が上昇しました」(繁田さん)


【戦争と物価】

物価高の傾向は2021年以降、コロナ禍からの経済活動の再開による需要の回復などから始まり、22年2月からのロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにさらに上昇。続く23年10月からのイスラエルとパレスチナ(イスラム組織ハマス)の衝突は、中東から輸入する原油価格を押し上げ、日本の物価上昇率を一段と上げた。「アラブ人とユダヤ人の対立、国連の平和維持活動などは押さえておきたいところです」(後藤さん)

■④異常気象

猛暑だった2024年夏。栃木県佐野市では7月29日に最高気温41.0℃と今年最高を観測。過去最高記録まで0.1℃に迫った(41℃に達するのは全国で6例目)。

『プレジデントFamily2025冬号』
『プレジデントFamily2025冬号』

7月の国内の月平均気温は統計開始の1898年以降で最も高くなった。8月以降も暑さは継続し、福岡県太宰府市では猛暑日(1日の最高気温が35℃以上)が連続40日と観測史上国内最長に。

次々と発生する積乱雲が列をなし、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水域「線状降水帯」が東北地方など全国にたびたび発生。河川の氾濫や土砂災害の危険性を高めた。都市部でも、局地的大雨「ゲリラ豪雨」の発生頻度が高まり被害が相次いだ。

「異常気象に関連して、地球温暖化、温室効果ガス排出量ゼロ化、太陽光など再生可能エネルギーの利用拡大といった出題もありそうです」(繁田さん)

「気象や気候に絡む出題は社会科だけではなく、理科の問題として出ることもあります。その中には知識を応用して考える問題も増えていますよ」(住田さん)

「『線状降水帯』と漢字でちゃんと書けますか?」(後藤さん)

●出題されそうな関連ポイント

【内陸部や盆地】

水は「温まりにくく冷めにくい」という特徴があるため、海に囲まれた沖縄など海辺や水辺では昼夜の温度の差が小さくなる。一方、「水の少ない内陸部や盆地などでは、昼夜の温度差が大きくなるものの、夏は日中の太陽熱が海などに逃げないために異常なほどの高温となることがあります」(後藤さん)。


【エルニーニョ現象】

太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象で、数年に1度、春から冬にかけて発生する(逆に、海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象)。「2つの現象は、日本を含め世界の異常な気候の要因となっています」(繁田さん)


【熱中症特別警戒アラート】

2024年度から気温・湿度・輻射熱により算出される暑さ指数(WBGT)をもとに発出されるようになった熱中症特別警戒アラート。全国の58の予報区などを単位としてWBGTが35(予測値)に達すると予想され、熱中症が生じる恐れがある場合に環境省や気象庁から発表される。

■⑤アメリカ大統領選

アメリカ大統領選は4年に1度、オリンピックと同じ年に行われるビッグイベント。

アメリカ国旗を背景にした投票箱に投票用紙を手に。アメリカ大統領選挙のコンセプト
写真=iStock.com/IherPhoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/IherPhoto

2024年の同選挙は11月上旬、共和党の前大統領であるドナルド・トランプ候補が、米国初の女性大統領を目指した民主党のカマラ・ハリス候補を下し、大統領に返り咲くこととなった。民主党と共和党の二大政党で争われるアメリカの大統領選は、それぞれの党が約1年間をかけて候補者を1人に絞る。

有権者は州ごとに人口に応じた数の選挙人を選び、選挙人が候補者1人を選ぶ(間接選挙制)。伝統的な価値観を大事にする(保守)共和党は、主に白人層、地方に支持者が多いとされ、シンボルカラーは赤。福祉や人権を重視する(リベラル)民主党は、黒人や移民、都市部に支持者が多く、シンボルカラーは青。

しかし、現民主党政権への不満から、今回は黒人や移民たちの一部の票も共和党に流れた。

●出題されそうな関連ポイント

【自由民主党総裁選】

2024年9月には、国内の自由民主党総裁選と立憲民主党の代表選挙が行われた。自民党では、9人の立候補者の中から石破茂氏が、立憲民主党では4人の立候補者から野田佳彦元首相が選出された。石破氏は10月に与党(自民党・公明党)の支持を得て、第102代内閣総理大臣に指名された。すぐさま衆議院を解散して、同月下旬に実施した総選挙では、与党は過半数割れとなった。その後、特別国会での首相指名選挙の結果、石破氏は第103代内閣総理大臣に。


【選挙権の変遷】

2025年は、1925(大正14)年に満25歳以上の男性すべてに選挙権が認められた普通選挙法成立からちょうど100年の年。そして、選挙権が満20歳以上の男女に付与された1945(昭和20)年は80年前。満20歳以上から満18歳以上に引き下げる法改正が成立した2015(平成27)年は10年前のこと。「そうした意味で、2025年はメモリアルな年となります」(繁田さん)


【都知事選】

国政政党の総裁・代表選だけでなく、2024年は地方選挙も実施された。7月の東京都知事選では史上最多の56人の立候補者から、現職の小池百合子氏が元広島県安芸高田市長の石丸伸二氏や元参議院議員の蓮舫氏などを破り、3回目の当選を果たした。

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住田 俊祐(すみだ・しゅんすけ)
サピックス小学部社会科教科責任者
サピックスの社会科教師として首都圏の各校舎で教壇に立ちながら、サピックスが授業で使用するテキストや、塾内外に向けて実施するさまざまなテストの作成に関わる。

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繁田 和貴(はんだ・かずたか)
個別指導塾テスティー塾長
開成中学、開成高校を経て東京大学経済学部を卒業。開成中高在学時代に数々の逸話を残してきた通称「開成番長」。2006年に個別指導塾TESTEA(テスティー)を開校。社長業を務める傍ら、スタディサプリ講師としての活動や、数々のメディアで勉強法や親子の関わり方について発信している。2023年春発売の著書『中学受験で「合格する子」と「失敗する子」の習慣』は発行部数11,500部を突破し、全国の書店やECサイトにて好評発売中。

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後藤 和浩(ごとう・かずひろ)
声の教育社 代表取締役
塾講師を10年経験したのち、声の教育社へ入社。編集者時代は年間500回以上の入試問題をひたすら解き、解説を編集するという日々を過ごす。息子の中学受験も経験。三度の飯より過去問が好き。首都圏を中心に中学・高校入試の受験情報の発信などを行っている。

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(サピックス小学部社会科教科責任者 住田 俊祐、個別指導塾テスティー塾長 繁田 和貴、声の教育社 代表取締役 後藤 和浩)

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