「家に帰ってもやることがない。早く帰りたくない」長時間働く社員ほどストレスと疲労で苦しむ納得の理由
プレジデントオンライン / 2025年2月2日 9時15分
■先輩、同期、後輩…他人と自分を比較しない
こんにちは。産業医の武神です。
2025年が始まり、もう1カ月が経ちました。皆様、調子はいかがでしょうか。安定して仕事のパフォーマンスを出せていますでしょうか。産業医面談に来る多くの人は、パフォーマンスに波があるとおっしゃいます。しかし、中には常に安定してパフォーマンスを発揮していると感じる社員もいます。
そこで今回は、外資系企業でなぜか“安定したパフォーマンス”を出せる人に共通する2つのことについてお話ししたいと思います。
ひとつめは、他人と自分を比較しないことです。
社会人になると、先輩、同期、後輩というようにさまざまな年齢の人と仕事をすることになります。同級生と自分を比べて“自分のレベル”を把握してきた学生時代と違い、長く働く人の多くは、自分より仕事を知っている人たちです。そのような人たちと自分を比べても、自分が優れていることは稀です。
これは、異動や転職した場合も同じです。多くの人は、キャリアアップの転職をしますが、これは前の会社よりも“できる”人たちの集団に入っていくことを意味しています。他人と比較することは高い確率で自分を楽にはしてくれないのです。
ですから、安定して仕事のパフォーマンスを出し続けるためには、今日の自分の能力よりも、未来の自分の能力を伸ばすことへ発想を切り替えることが大切です。
■「自分よりできる人」を追い越したら成長が止まってしまう
他人と自分を比較するという発想では、たとえ自分よりできる人を追い越したとしても、そのことに満足したら、成長が止まってしまいます。また、自分より劣る人たちと自分を比べて優越感を感じていては、自分の能力が伸びることはなく、いいパフォーマンスを出し続けることはできません。
社会人にとって、他人と比べることにメリットはありません。つまり、他人と自分を比べること自体が間違っているのです。
同僚の出世や同期のボーナス、人事評価等、いずれも気になってしまうことはあるとは思います。しかし、大切なのは、昨日の自分よりも今日の自分、先週よりも今週、先月よりも今月、1年目よりも2年目、10年目よりも20年目というように、比べるべき対象は過去の自分であり、未来に向けて自分が成長していることなのです。
何事も初めてのことはできなくてもしようがない、いずれ自分はできるようになれるという考え方を持っている人こそが、安定して1年間いいパフォーマンスを出し続けられます。
■メンタル不調になる人は「趣味」がない
2つ目は、趣味や気分転換を持っていて、実践していることです。
私は産業医として10年以上にわたり計1万人以上の働く人たちと面談をしてきました。その3~4割がいわゆるメンタルヘルス不調で休職している人たちですが、彼・彼女らに「趣味、気分転換は何ですか?」と聞くと、最も多かった答えは、「ないです」です。
一方、忙しさや高いプレッシャーの中でも安定してパフォーマンスを出し続けられている人たちの多くは、趣味や気分転換があり、かつ実践していることがほとんどです。
仕事で嫌になることや負担になることがあったとしても、趣味や気分転換などの好きなことをやっているときは、それを忘れることができます。たとえば、夢中でサッカーやテニス、ゲームや楽器をしているとき、仕事のことをあれこれ考えることは難しいものです。もちろん、趣味はスポーツでなくても構いません。自転車、バイク、車の運転、楽器の演奏、あるいは友人と食事をする、映画を観にいくなど、自分にとって楽しいと感じられることをしている最中には、誰もが仕事のストレスから解放されるものです。
別の言葉で言えば、気分転換が上手な人は、幸せな時間=ストレスの少ない時間を生活のなかに自らつくりだせる人ということになります。
■仕事が大変な時ほど、趣味の時間を長くとる
趣味や気分転換を実践することには、直接的な効果3つと間接的な効果が3つあります。
直接的な効果は、趣味や気分転換をした日は、気分が良く、食事が美味しく食べられることが多く、また、よく眠れることが多いことです。これは誰もが経験していることではないでしょうか。
だからこそ、今趣味や気分転換のない人は、ぜひ新しい趣味や気分転換を作ってください。また、すでに趣味や気分転換がある人は、仕事でいろいろあった日や、自分がストレスを感じていると自覚がある時はぜひ、趣味や気分転換を意識してやってみてください。可能であれば、いつもより時間を長く、また、頻度を高くやってみると、とても効果的な気分転換になると思います。
■カラオケでも、読書でも、地域のボランティア活動でもいい
趣味や気分転換を実践することの間接的な効果の1つめは、心も体もリラックスすることができる点です。趣味や気分転換をしているときは、誰でもそれに集中し、夢中になっています。たとえイヤなこと、負担になることがあっても、趣味や気分転換をしている間は忘れられるという人が大半ではないでしょうか。そういう時間を持つことができると、単純に「いい気分」になれると同時に、心も身体もリラックスできます。その結果として、気持ちが満たされ、適度に疲れ、よく眠れるという効果がもたらされるのです。
趣味や気分転換は人それぞれ、なんでもいいのです。これまで私が出会った人たちも、「カラオケに行く」「美味しいものを食べる」「ウォーキングをする」「本を読む」など内容は千差万別でしたし、中には地域のボランティア活動に参加することを趣味にしている人もいました。
大切なのは、人と比べることではなく、自分が満足できるか否かです。「私はこれでリフレッシュしているんだ」という満足感を得られるのであれば、それだけでストレス解消の効果があります。また、ストレス耐性の高い人は、自己肯定感も高いと言われていて、好きなことをすることは「自己肯定感」を上げることにもつながるのです。
■無意識のうちに「思考のバランス」が整う
間接的な効果の2つめは、趣味や気分転換をやっていると、人は無意識のうちに思考のバランスが整うということです。ある物事が起こったとき、その原因を他人のせいにしすぎず、また自分のせいにしすぎずというバランスがとれ、楽観的かつ前向きになれるのです。
さらに、趣味や気分転換をするために、仕事を早く切り上げる、煩わしいお誘いにも「ノー」と言えるようになるなど、時間管理が上手になり、ストレス軽減だけでなく、効率のよい働き方が可能になります。たとえば、毎週水曜日19時からジムに行く人は、水曜日は特に効率よく仕事に取り組み、集中して仕事を終わらせるようになります。実際このような人は、水曜日だけ集中モードになるわけではなく、他の日でも集中モードになれるのです。
反対に、家に帰ってもやることがない人や、何か理由があって家に帰りづらい40代、50代のビジネスパーソンは急いで仕事を終わらせようとしない傾向にあり、時間管理を必要としないため、ダラダラと働いてしまいがちです。リフレッシュする時間のない生活を続けて、当然、ストレスも疲労も溜まる一方です。
■サードプレイスは心のよりどころになる
間接的な効果の3つめは、趣味や気分転換をしている人は、「仲間」と「居場所」があるという点です。たとえ会社で大きな失敗をしたり、家庭で居場所がなくなるようなことがあっても、「あそこにいけば仲間が支えてくれる」という場所、心のよりどころがあれば安心につながります。
最近は、職場でも家庭でもない自分の落ち着く場所、アイデンティティを保てる場所をサードプレイスと呼んだりしますが、そういった場所があれば、セルフケアの手法の1つである「相談相手を持つ」ことにもつながります。
趣味や気分転換を持つことはいい食生活や睡眠の基盤となり、規則正しい生活に繋がります。会社には他人の言動に影響を受けやすい人、暑い季節は食欲がなくなる人、季節の変わり目は睡眠が不安定になる人、いろいろな人がいます。しかし、心身ともに安定している人こそが、日々の仕事にエネルギーをしっかり向けることができることができ、パフォーマンスの安定に繋がるのです。
他人と自分を比べず、比べるのは過去の自分だけにすること、趣味や気分転換の時間を意識的にもつこと、ぜひこの2つ意識して過ごしていただければと思います。
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医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、フォルクスワーゲングループ、BMWグループ、エリクソンジャパン、テンプル大学日本校、アドビージャパン、テスラ、S&Pといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト
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(医師 武神 健之)
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