500,000,000を三流は「いち・じゅう・ひゃく・せん・まん」と数える…「5億」と即答できる一流の頭にあるロジック
プレジデントオンライン / 2025年1月21日 15時15分
※本稿は、深沢真太郎『読むだけで数字センスがみるみるよくなる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■数字センスとは「数字をコトバとして扱う感覚」
まずは本書を通じてあなたが手にするもの、すなわち「数字センス」とは何かを定義しましょう。
数字センスとは、「数字をコトバとして扱う感覚」のことです。
この定義には、2つの重要な表現が含まれています。「コトバ」と「感覚」です。それぞれ誤解のないよう、丁寧に説明していきます。
その1 「コトバ」であること
コトバ(言葉)とはいわゆる言語のこと。つまり、数字とは言語なのです。
なぜこの定義が重要かというと、私たちが日常においてどんなときに言語を使うかを理解することに直結するからです。
私たちはどんなときに言語を使うか。実は2種類に分けることができます。ひとつはコミュニケーションしているとき。もうひとつは、考えているときです。
たとえば、昨日していたことを思い返してみてください。
どなたかとお話をしませんでしたか? そのとき、あなたは相手が発するコトバを聞き、コトバを返したはずです。たとえ短くても、コトバがなければ、コミュニケーションは成立しません。
考えるときも同じです。あなたは何かを考えるとき、「なぜ?」「ということは……」「そもそも……」といったコトバを使って答えを導いているのではないでしょうか。これらのコトバを使わなければ、あなたは考えることができません。
コトバとは、コミュニケーションと思考に必要なもの。そして、数字もコトバである。もしこれらをご理解いただけるならば、あなたは必然的に次の結論を得ることになります。
数字とは、コミュニケーションと思考の際に使う言語。
数字でコミュニケーションすること。数字で考えること。おそらくあなたが本書を通じて得たいものは、そういうスキルではないでしょうか。
■数字センスは後天的に身につけられる
その2 「感覚」であること
感覚とは何かを言語化するのは、意外に難しいものです。なぜなら誰もが、感覚というものをまさに「感覚的」に理解してしまっているからです。あえて定義するなら、「物事のとらえ方・感じ方」といった表現になるでしょうか。
ここで重要なことがあります。それは、感じ方とは一生変わらないものではなく、あとからいくらでも変わるものであるということです。
たとえば、私が子どもの頃に感じた「1年間」という時間の長さに比べて、大人になってからの「1年間」はかなり短く感じます。
年末に「もう今年も終わりなんて……月日が経つのは早いですね」などと言うのはたいてい大人です。
ですから、数字センスが「もともと備わったもの」という考え方は大きな間違いということになります。数字センスはいつからでも身につけられる。つまり、大人になった今からでも身につけることができるものなのです。
同様に、数字センスも何歳からでも身につけられる。
以上で、数字センスとは何かが明確になりました。
そこで次からは、数字センスを持った人は具体的にどんなことができるのか、裏を返せば数字センスが足りない人はどんなことをしてしまうのか、その違いを解説していきます。
数字との付き合い方を提示し、あなたに目指してほしい姿(目指してほしくない姿)を明確にすることで、あなたは読後の自分がどうなっているかをはっきりイメージすることができるはずです。
全部で5つあります。ぜひ自分だったら? とイメージしながらお楽しみください。
「数字をコトバとして扱う感覚」のこと。
■仕事のできる人は「カンマの数」で即答する
数字センスがある人の特徴①
いちいち「0」を数えない
たとえば、あなたの目の前にとても高級な宝飾品があり、そのそばにイラスト1のようなプライスタグが置いてあったとしましょう。
さて、おいくらでしょうか?
答えは……もちろん5億円です。しかし、面白いことにその答え方は大きく2つに分かれます。
A 「,(カンマ=位ドリ)」の数ですぐに答えられる人(時間にして1秒)
B 「いち・じゅう・ひゃく・せん・まん……」と数えて答える人(時間にして5秒)
もうひとつ似た例を。
私が担当する企業研修などのワークでは、ホワイトボードにそのプロセスや結論を書かせることがありますが、たとえばこんな文章表現ひとつでも差が出ます。
A 本年度の売上は34.5億円を見込んでおります。
B 本年度の売上は3,450,000,000円を見込んでおります。
どちらが一瞬で金額を理解できるか、そしてどちらが数字センスのある人が書いた文章か、おそらくあなたにも想像がつくことでしょう。
これまで多くのビジネスパーソンを見てきた私が断言できるのは、数字に強く、成果も出している優秀なビジネスパーソンは、ほとんどがAだということ。換言すれば、数字センスがある人は、桁の大きい数字と仲良くできているということです。
■気分よく数字と付き合うコツ
具体的には、以下のような知識を使って素早く数字を把握しています。
数字センスのある人は、このロジックがインプットされているので、先のプライスタグの問題でも、「,(カンマ)」が2つあり(百万)、その100倍だから5億円、あるいは「,(カンマ)」3つ(十億)からひとつ桁を小さくしたものだから、5億円だなと一瞬で把握することができるのです。
「0」をたくさん数えることも書き並べることも、正直言って面倒くさいですよね。つまり、あなたを不快にさせてしまう行為です。
一方、上の知識さえあれば桁をあっさりとらえることができますから、数字に対してイヤな気分になることはありません。
数字センスのある人は、このようなちょっとしたコツを使って不快を排除し、気分よく数字と付き合っているのです。
「いち・じゅう・ひゃく・せん・まん……」は厳禁。
■「12.5%の人」は「8人のうち1人」と一瞬で答える方法
数字センスがある人の特徴②
とにかく「%」と仲良し
前項の「0」の話は、セミナーや研修で余談としてお話しすると、とても反応がいい(笑)。それだけ「あるある」な話なのでしょう。
続いてご紹介するエピソードも、「ああ……それワタシだ」なんて声が聞こえてくるかもしれません。
たとえば「10%の人が不満であると回答しました」なんて表現、よく耳にしますよね。そこで質問です。
◯に入る数字は何でしょうか?
もちろん「10人のうち1人」ですね。
では、次はどうでしょう。
先ほどはとても簡単でしたが、今度は途端に難しくなったように感じませんか?
正解は「8人のうち1人」。
数字センスのある人は、このような数字の変換がアッサリできてしまいます。それは、次のようなロジックと数字が、すでに頭に入っているからです。
「50%の人」とは、「2人のうち1人」と同じこと
「25%の人」とは、「4人のうち1人」と同じこと
「12.5%の人」とは、「8人のうち1人」と同じこと
このような数字が頭に入っていると、たとえば「視聴率17%」なんて数字を聞けば「ああ、だいたい6世帯のうち1世帯が見たってことね」と認識できますし、「投票率66%」という数字は、「ああ、だいたい3人に2人が投票したってことね」と認識できます。
■できるだけ不快を排除する選択を
そういえば「日本人男性の60%、女性の40%ががんになる」という事実を、「日本人の2人に1人はがんになる」なんて表現しますよね。
そして多くの人が後者の表現を「わかりやすい」と感じると思います。「わかりやすい」とは、ピンとくるということ。だから、後者の表現が好まれるのです。
つねに「◯のうち1」と変換する。
「割合(%)」は、日常生活でもビジネスシーンにおいても頻繁に登場する数字です。ところが、「数字が苦手」と思い込んでしまっている方は、どうやらこの「%」という数字の扱い方に不慣れなようです。
ならば割合を「◯(数量)のうち1」といった表現に変換し、ピンとくるコトバとして扱ってはいかがでしょうか? 私はこれを、身近な存在になってもらうという意味を込めて「割合(%)と仲良くなる」と表現しています。
一般論として、「ピンとこない」というのは不快です。「仲良くない」も不快です。できるだけあなたの不快を排除する選択をするようにしましょう。
数字の不快を排除しよう。
本書にはこのほか数学センスのある人の3つの特徴が掲載されています。是非ご一読ください。
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ビジネス数学教育家
日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。予備校講師から外資系企業の管理職などを経て研修講師として独立。その独特な指導法で数字や論理思考に苦手意識を持つビジネスパーソンの思考とコミュニケーションを劇的に変えている。大手企業をはじめプロ野球球団やトップアスリートの教育研修まで幅広く登壇。SMBC、三菱UFJ、みずほ、早稲田大学、産業能率大学など大手コンサルティング企業や教育機関とも提携し、ビジネス界に数学教育を推進。2018年に国内でただ1人の「ビジネス数学エグゼクティブインストラクター」に就任し、指導者育成にも従事している。著書に『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)、『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』(ダイヤモンド社)、『数字にだまされない本』、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(ともに日経ビジネス人文庫)などがある。
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(ビジネス数学教育家 深沢 真太郎)
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