これをやると‟前頭葉バカ”になる…医師・和田秀樹「脳の老化を遅らせる睡眠の最終結論」【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2025年1月21日 8時15分
2024年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお届けします。健康習慣部門(前期)の第3位は――。
▼第1位 見た目年齢の差はあっという間に開く…和田秀樹「若く見える人、老け込む人」を分ける"たった1つ"の要素
▼第2位 10位寝言、6位歯ぎしり、3位常夜灯をつけた…40~60代1012人調査で判明「早死にした人の睡眠特徴ワースト10」
▼第3位 これをやると"前頭葉バカ"になる…医師・和田秀樹「脳の老化を遅らせる睡眠の最終結論」
▼第4位 男性は72.6歳、女性は75.3歳でやってくる…和田秀樹「ヨボヨボ老人と元気ハツラツ老人」を分ける決定的違い
▼第5位 「帰ったらまず休憩するか、それとも家事か」自律神経の専門家が推奨する"疲れにくい"行動習慣
※本稿は、和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■テレビの前でうなずく毎日ではボケまっしぐら
テレビはつまらない常識的なことしか言いませんから、そればかり見ていると、前頭葉が働かずバカになります。コロナのときみたいに偏った情報を流すために不安が募り、そのストレスが前頭葉に悪影響を及ぼします。
白黒をつけたがるのもテレビの特徴で、世の中はグレーなことだらけなのに、「敵か、味方か」「正義か、悪か」といった観点しかない。こういう二分割思考は、もっとも前頭葉に楽をさせる思考パターンといわれています。
つまり、日がな一日、テレビの前に座って、「なるほど、なるほど」とうなずいていたら、ボケの道まっしぐらなわけです。
私がテレビを批判する理由の一つは、高齢者をバカにしているところがあるからです。
高齢者は時代劇しか見ないとか、高齢者は夜まで起きていないと思っているから、夜の11時以降は若者向けの番組しかやっていない。
いまは、YouTubeやNetflixなどの配信サービスを利用すれば、テレビでいろんな種類の娯楽、つまり映画とか昔の漫才とかを視聴できますから、テレビはそうやって使ったほうがいいでしょう。
テレビでも、ごくたまに良質のドラマやドキュメンタリーを放送していますから、見ないほうがいいとまでは言いません。
しかし少なくとも、流される情報を鵜呑みにせず、反射的に疑ってみるクセはつけたほうがいいと思います。
■脳を鍛えたいと思ったら、反論してみる
「本当に、この人は悪人なのか?」「いいこともしていたじゃないか」「もっと悪い人がほかにいるのかもしれない」などと冷静に考えることを習慣づけます。
このトレーニングを重ねれば、多様性を認められる柔軟な思考ができるようになって、一つの考えに固執する偏屈老人になるのを回避できます。
基本的に、前頭葉を使うためには「反論」を考えなければいけません。つまり難しい本を読むから賢くなるわけではなく、難しい本に「その考えは間違っているだろう」などと喧嘩を売るときに賢くなるわけです。
別に難しい本でなくても、脳を鍛えたいと思ったら、反論してみるという方法があるのです。
この本だって、「いや、和田さん、そんなことを言うけど、簡単にはできないよ。世の中はそれほど甘くないんだから」と思いながら読んでみる。
そもそも私の言うことが絶対に正しいなどと私自身、考えていませんから、どんどん突っ込んでください。それだけでも、前頭葉は元気になりますよ。
■睡眠中に脳の老廃物は排出される
脳の老化を遅らせる効果的な方法の一つが、「睡眠」です。
先にも言ったように、アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβと呼ばれる不要なタンパク質が溜まり、脳の神経細胞が死滅することで認知症が進んでいくと考えられています。睡眠不足になると、この老廃物が一定量上がることがわかっているのです。
人間は生きて活動している限り、体内に老廃物が生成されます。脳以外の体の老廃物はリンパ管を通って血液に流れ込み、最終的には尿として体外へ排出されますが、脳にも老廃物を排出するシステムがあり、睡眠中に働くことが明らかにされています。
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学が行った調査によると、睡眠時間が6時間以下のグループがアミロイドβの沈着がもっとも多く、睡眠時間が7時間以上のグループがもっとも沈着が少なかったという結果が出ています。
ただ、睡眠時間が長ければいいというわけでもないようです。
睡眠時間が9時間を超える場合は認知機能に異常をきたすという研究もあるので、一日に7〜8時間が、認知症を遅らせるためには望ましい睡眠時間と言えるかもしれません。
とはいえ、7〜8時間も連続して眠れないという高齢者も多いでしょう。年を取るにつれて寝つきが悪くなったり睡眠の質が悪くなったりするため、不眠の悩みを訴える患者さんが少なくありません。
■脳の老化を遅らせる睡眠方法
睡眠は、確かに大事ですが、無理に眠ろうとすると逆効果です。眠れないというストレスがかえって体に悪影響を及ぼします。
不安障害に対する独自の精神療法として、森田療法を考え出した森田正馬(もりたまさたけ)さんという精神科医は、「寝なくちゃいけないと思うから不眠になる」と喝破しています。寝ることなんて自然現象なのですから、そんなに強迫的に考える必要はないと思います。
年を取って何が幸せかと言ったら、毎日、会社に行く義務がないことでしょう。睡眠も、眠らなければいけないから寝るんじゃなくて、眠くなったら寝られるわけです。そういう特権があるのですから、夜眠れないなら、朝でも昼でも眠くなったときに寝ればいいのです。
ちなみに私は、心不全になってから利尿剤を使っているので、夜中に目が覚めることが多くなりました。だいたい11時前くらいに寝るのですが、夜中に3〜4回、目が覚めて、6時半か7時くらいに何となくだるいなと思いながら起きるわけです。
だからベッドにいる時間は7〜8時間とっているのですが、睡眠時間は十分とは言えません。
それで昼寝を習慣にしています。医学的には、20分程度の昼寝が良いといわれていますが、私の場合は脳には良くないとされる1時間の昼寝。それより短くなると、何となくスカッとしないのです。
結局、医学的な根拠があろうがなかろうが、自分の感覚を重視したほうがいいと私は思っていますし、それで昼間働けているのですから、「ま、いいか」と。
とくに年を取ったらパーフェクトはありえないわけですから、「ま、いいか」と思うことは大事なような気がします。
(初公開日:2024年7月13日)
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精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
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