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「部下のやる気は褒めることで高まる」はウソ…パフォーマンスの低い部下が変わる科学的に効果のある声掛け

プレジデントオンライン / 2025年1月28日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/CreativaImages

部下のパフォーマンスを上げるにはどうすればよいか。メンタルコーチの大平信孝さんは、「相手に対して『期待』するとよい。実は、『自分は期待されている』と思い込むと、人は成長するということが科学的に立証されている」という――。

※本稿は、大平信孝『感情的にならず相手を「すぐやる人」にする34のコツ』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■「あいつはダメだ」が相手のパフォーマンスを下げる

いつも仕事が遅い。やるべきことをなかなかやってくれない。

あなたは、そんな人のことを心のなかで「あいつはダメだ」「使えないヤツだなぁ」と思いながら日々接していませんか?こんな思いや印象が、相手のパフォーマンスを下げる原因になっているかもしれません。

「ゴーレム効果」という言葉を聞いたことはないでしょうか。これは、アメリカの心理学者、ロバート・ローゼンタールが提唱した「まわりの人から期待されなかったり、関心を持たれなかったりするとパフォーマンスが低下する」という心理効果のことです。

逆に言えば、あなたが「考え方」を変えるだけで、そんな相手のパフォーマンスを上げ、「すぐやる人」に変えることができる可能性があります。

具体的には、相手に対して「期待」すること。実は、「自分は期待されている」と思い込むと、人は成長するということが科学的に立証されているのです。

■期待することで相手のパフォーマンスは上がる

ローゼンタールはこんな実験を行っています。

ある小学校で、生徒たちに知能テストを受けさせます。そしてそのなかから無作為に数人の生徒を選び、担任の先生に「この子どもたちは成績が伸びる可能性がある」と伝えたところ、彼らの成績がほかの生徒に比べ大幅にアップしたのです。

つまり、担任の先生が「彼らには伸びしろがある」と信じたことで、日々の接し方や言動が変わり、結果的にその生徒たちの成績が伸びたと考えられます。

これを「ピグマリオン効果」と呼びます。「ゴーレム効果」とは逆で、「人は、他者から期待をかけられると、期待通りの成果を出そうとして成績や業績が伸びる」という心理学的な傾向のことです。

仕事でも子育てでも同じですが、「この子には無理」とか「この人には任せられない」という前提で接するよりも、「この子は、きっかけさえつかめば必ず伸びる」「この人は、信じて任せればきっと成果を出してくれる」と期待しながら日々接した方が効果的です。なぜなら、相手の自主的な行動を引き出しやすいからです。その結果、勉強や仕事のパフォーマンスが上がるのです。

■「裁量」をプラスする

では、具体的にはどうすればいいのでしょうか。「あなたには期待しているから、絶対成果を出してね!」などと過度に期待をかけるのはNG。相手は、プレッシャーを感じて、失敗を恐れ行動から遠ざかってしまいます。まずは、相手にとって「1人で確実にできることが言われなくてもできる」というレベルの期待感を持つことが大切です。

ピグマリオン効果を日々の仕事や子育てなどに取り入れる際のポイントは、相手に「裁量」を持たせることです。

「10万円の予算を渡すから、自由に使って結果を出してね」「もうすぐ定期テストだね。毎日2時間自習するとしたら、今日はいつやる?」などと、相手が自分で判断できる範囲を増やすのです。そうすると、直接的な言葉をかけなくても「自分は期待されている」と感じるようになり、その期待に応えようとすることでパフォーマンスが高まります。

逆に、1人でできるのに毎回介入したり、進捗状況を毎日確認したりすると、「信頼されていないんだな」と考えてしまいパフォーマンスが低下します。

パフォーマンスが低い相手に対して「期待してください」と言われても、「実績も経験もないのに、漫然と期待するなんて無理」と思う方もいるかもしれません。

たしかに、実績も経験もない相手に対して、「成果を今すぐ出す」ことを期待するのは現実的ではありません。だとしても、相手が潜在的に持っている才能や長所を信じ、「将来的に必ず成果を出す」と期待することはできます。

これは、本人が自信喪失しているときでも、相手に自信を植えつける有効な手段の1つですので、ぜひ試してみてください。

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写真=iStock.com/ArtRachen01
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArtRachen01

■褒めることのデメリット

「子どもは褒めて伸ばしましょう」「部下のやる気は褒めることで高まる」

子育てやビジネスをテーマにした本を読むと、よくこんなことが書かれています。

たしかに、褒められればうれしいし、モチベーションも上がります。これは、誰にでも経験があると思います。

こう聞くと、「やっぱり、人に動いてもらうためには褒めることが重要なんだ」と思ってしまいがちですが、実は褒めることには「デメリット」もあります。

1つは、褒められることが、結果的に相手の自主性を奪ってしまうことです。

たとえば、床に落ちていたゴミを拾った人に対して「えらいね!」と褒めたとします。すると、相手は、期待していないところで褒められたのでうれしくなります。しかし、その後の行動基準が「人に褒められるかどうか」に変わってしまう危険性があります。誰かが見ているときや褒めてもらえる環境のときにしか、ゴミを拾わなくなってしまうことがあるのです。

■「褒める」でなく「勇気づける」

もう1つは、褒めることで相手に過度なプレッシャーを与えてしまうことです。

たとえば、営業ノルマを達成したときにだけ部下を褒めていると、「来月もノルマを達成しなければならない」「どんなに努力しても、ノルマを達成しないと認めてもらえないんだ」と受けとる人が一定の割合でいます。

さらに、お客様を喜ばせることにやりがいを感じていた部下に対して、上司が営業成績ばかりにフォーカスをあて、褒め続けていると、行動の目的がすり替わってしまうことがあります。「お客様を喜ばせる」ことではなく、「上司に褒められること」が目的になってしまうのです。その結果、お客様のためだった仕事が、いつしか数字をとるための仕事になり、結果的に仕事が嫌いになってしまうということも起きます。

では、どうすればいいのでしょうか。

ポイントは、相手を「褒める」のではなく、「勇気づける」ことにあります。「勇気づけ」とは、アドラー心理学の重要な要素で、「困難を乗り越えていくための活力を与える行為」と定義されています。

「上手にできたね」「すごいね」「よくやった!」「素晴らしい!」などと、結果や行動を単純に褒めるのではなく、「ありがとう、あなたが○○してくれたから(私が)助かったよ」「田中さんがとても喜んでいたよ」「あのお客様、とても感謝していたよ」「チームが元気を取り戻せたよ」などと、「共同体への好影響や貢献」を指摘することが勇気づけにあたります。

一緒に街を歩く2人の若いビジネスマン
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

■勇気づけは、活力と愛着を育む

勇気づけには、「場への貢献」を促す効果があります。適切に相手を勇気づけることができれば、相手のなかに「困難を乗り越える活力」だけでなく、「共同体に好影響を与えたい、貢献したい」という意識も芽生えます。したがって、一度勇気づけをすると、その後、何度も働きかけなくても自ら動いてくれるようになることが多いのです。

ですから、ゴミを拾ってくれた人に対しては、「えらいね!」ではなく、「ゴミを拾ってくれたおかげで、ここを通るみんなが気持ちよく過ごせるね」と勇気づけすれば、その人は今後、誰かが見ていなくてもゴミ拾いを続ける可能性が高まります。

さらに、「自分の何げない行動が誰かの役に立っている」という意識が芽生え、ゴミ拾いに限らず、人の手伝いや困っている人のサポートを積極的にできるようにもなります。

同じように、営業ノルマを達成した部下がいたら、「○○商事の担当者がこの前の提案をとても喜んでいたよ」「あなたの頑張りがチームにいい影響を与えてくれているよ」と、勇気づけしてみてください。すると、「ノルマ達成」という観点だけでなく、仕事やチームへの愛着もより強くなります。

また、数字を意識しすぎなくなるので、失敗を恐れず挑戦・行動できるようになります。

■「介入の度合い」を5つに分ける

冒頭で、上司が部下の仕事に対して細かく介入すると部下のパフォーマンスが低下する、とお伝えしました。その対策として「相手に期待する」というノウハウを紹介したわけですが、「もっと即効性のある方法を知りたい」「期待するも何も、相手がまだ入社したばかりの新人で手取り足取り教えなければ仕事にならない」という方もいることでしょう。

とはいえ、その都度仕事の目的とやり方を一から説明するとなると面倒だし、いつまでたっても相手は自立できません。部下の側からしても、細かい指示に従っているだけでは、「自分もできた」という成功体験を積めず、自信を持つことができません。

そんなときは、次のように「介入の度合い」を5つのレベルに分けて、相手に合わせた指示を出すようにするのが効果的です。ここでは、「締切の近い案件を間に合わせるため、今日中に協力会社にメールを送り、回答をもらう」というタスクを例に解説します。

黄色の背景に5番の電球
写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MicroStockHub

■適宜「介入の度合い」を軽くしていく

レベル1 進捗確認のみ
【例】「そういえば、○○(具体的案件)の進捗は、どうなってる?」

「進捗確認」だけでスムーズにいく場合は、これ以上の指示、介入は不要です。上司の確認だけで行動することができれば、部下も「自分でできた」という達成感と自信を持つことができます。もし、進捗確認しても動かない場合はレベル2を試してください。

レベル2 抽象的指示
【例】「今日、○○さんに確認のメールを送ってね」

「進捗確認」だけで動かない相手には、「抽象的な指示」を出してみましょう。

レベル2では、できるだけ相手に裁量権を与えるため、「やるべきこと」のみを伝えます。「いつやるか」「このタスクのゴール」「どう伝えるか」などについては伝える必要はありません。

レベル3 指示+ゴールの確認
【例】「確認のメールを出して、本日中に返答をもらってね」

レベル2でうまくいかない場合は、「やるべきこと」のほかに、「このタスクのゴール」も伝えます。「いつやるか」と「どう伝えるか」は相手に任せましょう。

■レベル4、5はタスクの大半を上司が行っているが

レベル4 指示+ゴールの確認+締切
【例】「今日中に返答がほしいから、10時までに先方に確認のメールを出してね」

レベル3でもうまくいかない場合は、さらに「いつやるか」も伝えます。「何を」「いつ」やって「どういう結果がほしいか」まで伝えるので、実行確率が格段に上がります。

レベル5 指示+ゴールの確認+締切+内容の確認
【例】「今日中に返答がほしいから、10時までに先方に確認のメールを出してね。送る前に内容を確認するからメールの文面をつくったら一度見せて」
大平信孝『感情的にならず相手を「すぐやる人」にする34のコツ』(かんき出版)
大平信孝『感情的にならず相手を「すぐやる人」にする34のコツ』(かんき出版)

レベル4の指示でもうまくいかない場合、メールの内容に問題があることが明らかですので、レベル5ではそこまで介入します。

ただし、レベル4・5では、タスクの大半を上司が行っているのと同じです。やり方を伝えることはできても、部下に成功体験は蓄積されません。ですから、相手の経験や能力などに合わせて、適宜「介入の度合い」を軽くしていくことで、徐々に相手の成功体験を増やし、自信をつけてもらうことが可能になります。

未経験の新人や子どもにはレベル5から始め、徐々に介入の度合いを軽くしていくとよいでしょう。

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大平 信孝(おおひら・のぶたか)
メンタルコーチ
アンカリング・イノベーション代表。目標実現の専門家。長野県生まれ。中央大学卒業。脳科学とアドラー心理学を組み合わせた独自の目標実現法「行動イノベーション」を開発。現在は、法人向けに、チームマネジメント・セルフマネジメントに関する研修、講演、エグゼクティブコーチングを提供している。個人向けには「行動イノベーション年間プログラム」とオンラインサロンを主宰。近著に『やる気に頼らず「すぐやる人」になる37のコツ  科学的に先延ばしをなくす技術』『指示待ち部下が自ら考え動き出す!』(ともにかんき出版)、『先が見えなくても、やる気が出なくても 「すぐ動ける人」の週1ノート術』(PHP研究所)。公式サイト。

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(メンタルコーチ 大平 信孝)

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