都心の「安い家」と「賃貸暮らし」どちらが幸せなのか…職人社長が解説「100歳生きてもコスパ最強の家」の正解
プレジデントオンライン / 2025年1月28日 7時15分
※本稿は、平松明展『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■“人生で一番高い買い物”は難しい
「住んでよかった家」の事例を紹介していく前に、お伝えしておきたいことがあります。家を手に入れるのは、ほかの買い物とは別の感覚を持つことが必要です。高額である、目に見えない特性がある、住んでみなければわからない……と検討すべき点が多いわりに、手に入れたあとのことを想像するのが困難だからです。
家づくりは、いくつもの課題に対して1つずつ自分の答えを出していく過程がともないます。それを可視化するのがライフプランです。ライフプランにはマネープランのほか、さまざまな要素があります。
ここで向き合ってもらいたいのが「人生の豊かさとは?」という課題。これは「どのように暮らしたいか」ともいい換えられます。その次に「どんな家にするか」と進むわけです。ライフプランができれば、さまざまな課題に対しての判断力が高まります。
また、マンション、新築戸建、中古住宅など住まいの形はさまざまにありますが、どの住まいがライフプランに合うでしょうか?
■初期費用が高くても「戸建て」が絶対にいい理由
戸建てとマンション、持ち家と賃貸のどの住まいを選ぶかは、個人の判断によるものです。それぞれにメリットとデメリットがあります。ただ、戸建てを求めているのにリスクを感じて躊躇(ちゅうちょ)したり、見合わせたりする人にお伝えしたいことがあります。もちろん、戸建てを手に入れようと決めている人は、より前向きになっていただけると思います。
気になるのが、お金ですね。以下の表は住宅に発生する支払いを比較した参考例です。最終的に1カ月間の支払い額で比較すると、耐震性や耐久性、断熱性などに優れた高性能住宅が最も低くなります。ローコスト住宅は初期費用を抑えられたとしても、結果、賃貸とほとんど同じ支払い額になります。
また、引っ越しをすることになった場合は、表の出口売却の部分を見ていただければわかると思いますが、高性能ならば家に価値があるため貸したり売ったりすることが可能です。自分が望む利便性、快適性、デザイン性といった暮らしの豊かさは、注文住宅による高性能住宅が最も得られやすいといえるでしょう。
■建売・規格・フルオーダー、平屋・総二階…
すべての家が高性能であることを前提にお話しします。完成(完成間近)の建物と土地をセットで購入できる建売住宅は、土地探しや住宅会社とのやりとりの手間が省けます。構造設計や建材の費用を抑えられるため、初期費用も低めというのも魅力です。
一方、規格やフルオーダーを注文住宅といいます。規格はいくつかの種類が設けられ、変更やオプションをつけることもできます。フルオーダーはあらゆるものに要望を出しながらつくり上げていくものです。
■「高性能住宅」を実現する6つの要素とは?
もちろん、費用面も無視できません。ただ、必ずしもフルオーダーが最も高い買い物になるとは限りません。例えば、窓数を減らす、ベランダをつけないというように費用を削減することもできるからです。また、建売でもオプションや少しの変更を受けていることもありますが、割高になる傾向があるようです。
どのタイプが適しているかは、十人十色。先述の「どのように暮らしたいか」という要望に答えてくれるタイプが最適ですよね。暮らし方に対する家の特性を知ったうえで見極めてください。本稿ではさまざまな事例を紹介していきます。
「高性能=快適」、「高性能=家の価値が継続」と捉えてよいと思います。ただし、耐震性・耐久性・断熱性・通気性・気密性・省エネ性のどれか1つでも低いと計算式が成り立ちません。性能は住んでみないとわからない、また耐震性は災害が起こらないとわからないかもしれません。その際は法律で設定されている基準で理解することになりますが、断熱性と通気性は、家に入った瞬間に感じられる性能です。
■本当に「いい家」は100年たっても住める
室温はもちろん、湿気を感じない空間は、これらの性能が高いです。逆に不快に感じたら性能が低いかもしれないと疑ってもよいでしょう。
建材や設備の価値、デザイン性、利便性は人それぞれで感じ方が違います。家を手放すとき、その家の価値を出口価値といいますが、これは性能によって決まってきます。高性能住宅は“いい家”と捉えてよいでしょう。長期優良住宅は、“いい家”の状態が100年先まで継続される家。その期間の住み心地が保証され、さらに売る価値が残り続けているのです。
■初期費用が+1000万円でも20年で回収できる
家づくりはトータルコストで考えるべきです。初期費用を抑えるために性能の高さを追求しないと、メンテナンス費や修繕費が発生し、光熱費にも影響してきます。図表2の「住宅に発生する支払い比較表」を見てください。高性能住宅はローコスト住宅よりも、メンテナンス費、光熱費が1カ月間換算で2万5千円も抑えられています。太陽光発電を導入すれば、売電収入などでさらに2万円の経済効果を見込めます。
これは初期費用がローコスト住宅より1000万円高かったとしても、約20年間で回収できることになります。その期間は快適に過ごし、それ以降も住み続けるとコスパはさらによくなります。
また、ある程度の年月が経ってリフォームしようと思っても、高性能にするには大きな費用がかかり、構造上、対応できないこともあります。物価の上昇で光熱費も高くなることが想定されますから、省エネ性の優劣はもっと大きな差が出てくるでしょう。将来的に「住んでよかった」と感じるには、やはりライフプランをしっかり作成しなければならないのです。
■間取りと生活動線も頭に入れておく
家は建てたらゴールではありません。家は人生の目的を果たすための1つの要素です。高性能住宅は、室温や湿度が調整され、耐震性や耐久性が高いことで安心して暮らせます。ただ、性能だけを満たしていれば暮らしやすいわけでもありません。
利便性と性能以外の快適性も考える必要があります。
間取りは生活の役割ごとの場所を設定するものですが、移動しにくいとか、移動の無駄があるという間取りは利便的とはいえませんよね。例えば、洗濯をする場合、脱衣室と洗濯機置き場、干す場所、収納場所の動線がスムーズであれば、とても楽になります。
■玄関、キッチン、クローゼットの配置もチェック
玄関のシューズクローク、キッチンのパントリー、ファミリークローゼットなどが適切な場所とサイズになっていれば、収納しやすく、きれいな空間になって快適ですよね。エアコンの設置場所、照明の配置や種類、食洗機の性能など、設備においても選択次第で快適性は変わってきます。また、利便性や快適性には、家の性能も関与しています。例えば、日射を計算した間取りにすると断熱性が高まりますよね。性能、利便性、快適性はセットにして考えましょう。
家づくりを請け負う業者は、大きく分けてハウスメーカーと工務店。その間に位置する業態もあります。選ぶ際の目的や考え方は人それぞれです。大切なのは、“自分が理想とする家”を手に入れられるかです。もし、選択の判断に迷ったら次のことを確認してください。
■優良なハウスメーカーを選ぶ5つのポイント
①現場の品質管理のシステムやマニュアルがあるか
②ていねいなヒアリングをしてくれるか
③自分ごとのように考え、データに基づいた提案をしてくれるか
④メリットだけでなく、デメリットも伝えてくれるか
⑤建築中の現場視察や見学(構造見学)をさせてもらえるか
これらに対応してくれる業者は、お客さまにとっての“いい家”を追求しています。また、モデルハウスの見学は、間取りやデザインだけでなく、空気の質も確認できて有意義です。断熱性や通気性を見極めやすい夏場や冬場がおすすめです。
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職人社長
平松建築株式会社代表取締役。建築歴23年。19歳から大工として10年間で100軒以上の住宅を解体、修繕し、住宅の性能の特徴を理解する。2009年創業。会社経営を行いながらもドイツを訪れて省エネ住宅を学ぶほか、地震後の現地取材を行い、気候風土に合った家づくりの研究を行う。YouTube チャンネル「職人社長の家づくり工務店」(登録者数は9万人以上)も配信中。
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(職人社長 平松 明展)
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