妻との「22歳差」は全然気にならない…タレント・堺正章が「三度の結婚」を経験して気づいた"夫婦円満のコツ"
プレジデントオンライン / 2025年1月25日 18時15分
※本稿は、堺正章『最高の二番手 僕がずっと大切にしてきたこと』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■「よき夫婦」の基準は大きく変わっている
家庭は、もっとも小さな社会の単位だ。結婚は、その家庭を作る、大人としての大切な一歩なのに、なぜ人はなかなか上手に結婚生活を営めないのだろうか。もちろんきちんと継続している方々も多くいらっしゃるが、僕なんかは、振り返れば人生で三回も結婚をしている。困ったことだ。
よき夫婦の基準も、世の中の動きと同じく、今と昔では大きく変わってきた。昔なら、「亭主」は外で頑張って働いて一家の大黒柱となり、「女房」は家庭の内部を守るというのが定石とされていた。
ところが今そんなことを言ったら、「昭和何年の話?」なんて驚かれてしまうだろう。奥さんに「外で働いていいよ」などと言ってみたところで、なんのポイントにもならない。だって、今じゃ夫婦でダブルインカムも当たり前なのだから。
■相性がよくても、うまくいかないことはある
僕の実家は父がほぼ不在の家だったから、僕にとっては結婚についての参考資料などないも等しい環境だった。何せ、夫婦和気あいあいの様子など見たこともないのだ。
母は若い頃、松竹歌劇団の女優だったのだが、父と出会って引退した。芸事なんかより、子どもを育てることに情熱を持った母は僕たち兄弟にとても厳しく、母がいなければ家は成り立たなかった。
最初の結婚は、ザ・スパイダースを卒業し、ソロ活動を始めてようやくひと息ついた頃のことだ。僕は28歳で、お相手は一般の方、浅草の鞄かばんメーカーのお嬢さんで、下町人情にあふれた、とても家庭的な人だった。相性はとてもよかったのに、それでもうまくいかなくなるなんて、人生とは番狂わせの連続だ。
■平和な家庭生活が芸能人生を終わらせる?
タレントという職業を持つ者が結婚をすると、まったく異なるふたつの居場所を持つことになる。居心地がよい心安らぐ家庭と、危険で孤独で、明日はどうなるかわからないエンターテインメントの摩訶不思議な世界。そのふたつは、相反する対極にあるものだ。
まだ攻めていかねばならない年齢だった当時は、不安定な場所にずっと身を置いていないと、新しいものなんて生まれないのではないかと思い込んでいた。
常に恐ろしさに傷つき、心がヒリヒリするような思いを抱えていなければ、タレントとしての命脈を保てないのではないかと。楽しく平和な家庭生活を過ごしていたら、タレントとしての僕はきっとすぐにダメになるという思いがあった。だから、家庭が楽しければ楽しいほど、あとから不安を感じるようになっていったのだ。
そんな普通じゃない考えを、結婚してから胸に抱き始めたせいで、奥さんにはずいぶん身勝手な振る舞いをしてしまったと思う。でも一方では、僕がダメになったら、家族もスタッフも、周囲の人みんながダメになるのだから、僕は僕の好きなように行動すればよいのだと、横暴にもどこかで自分を正当化していた。
■42歳で再婚、また「帰る場所」ができた
今思えば、家庭が平和で楽しいなんて貴重で素敵なことなのに、当時の僕にはそうは思えなかったのだ。そのときの時代感覚もあったかもしれないが、ずいぶんエゴイスティックだったと今なら思える。
結局、7年をともに過ごして離婚することになった。彼女にはひとつとして非がなかったのに、本当に申し訳ないことをした。
そんな思いを経て、次に結婚したのは42歳の頃。「帰る場所」があるのもいいものかもしれないと、僕でもようやく思えるようになった時期だった。
この二度目の結婚をした当初は、僕も年齢的に仕事の移り変わりがある時期で、比較的時間に余裕があったし、妻となった人や自分の趣味に多くの時間を費やすことができた。
また彼女は自分で仕事もしていたから、お互いに各々自由に過ごす時間も、またともに過ごす時間もあり、結婚してからも恋愛時代とあまり変わらないライフスタイルを貫くことができていた。たとえて言うなら、球体と球体が少し接触するような時間の合わせ方、ということだ。
■妻の意思を尊重したつもりだったが…
ただ、彼女はそんなに器用な人ではなかった。ときには、仕事でひどく疲れて見えることもあった。本音を言えば、「無理をせずに仕事を辞めたらどうかな」と言いたかった。その方が、精神的にも体力的にも安定できるのではないかと思ったのだ。
当時は、女性が男性と同等に社会に進出し、能力を活かすというのは世間的にも当たり前となってきていて、男女雇用機会均等法なども施行されたばかりのタイミングだった。いくら古い考えの男であった僕でも、彼女に「仕事を辞めてほしい」とはやはり言えなかった。
結婚してしばらく経った頃、こんなふうに言うのが精一杯だった。
「せっかく家にいるときに、“疲れた”って言うのはやめようね。もし疲れたら仕事は減らしたっていいんじゃない?」
働きたいという彼女の意思は尊重されるべきだと心から思っていた。
そして、その頃から徐々に彼女は不安定になっていった。
■「可愛いわが子」を授かった後の変化
ふたりの関係性の雲行きには、子どもの存在も影を落としていた。
僕は、最初の結婚が自分の身勝手のせいでうまくいかなかったこともあり、結婚や子育てに対して不安な気持ちを持っていた。だからこの二度目の結婚をしたときも、自分の子どもを見てみたいという期待や興味はあったものの、ものすごく欲しいというのとは少し違っていた。
なぜなら、自己中心的な僕が父になったら、子どもにどういう悪影響を与えてしまうかわからないという怖さも感じていたからだ。
ところが、いざ子どもを授かってみると本当に可愛くて愛しくて、「目の中に入れても痛くない」という言葉の意味が初めて実感できたほどだった。
その頃には、僕の仕事も再び増えてすっかり忙しくなっていた。僕が不在がちで目が行き届かないぶん、日頃から子どものことがなにかと心配だった。やがて僕は、仕事や金銭面は僕が頑張るから、家のことはできれば彼女にすべて任せたいと思うようになっていった。
■娘たちと離れ離れになり、涙が止まらず
コンビというものは、ひとりがまったく違うことを強く主張し始めると、いくらすり合わせをしようとも、軌道修正が難しくなっていく。結局、お互いの考えも気持ちも、そしてともに過ごす時間もずれていき、お別れすることになってしまった。
身を切られるようにつらかったのは、まだ小さかったふたりの娘と離れることだった。娘たちには、「ママと別れてもパパはいつまでも君たちのパパだからね」と話し、できる限りのことをしようと心に誓った。子どもたちが家を出ていくうしろ姿を見たときは、もう、言葉にできないほど切なく、涙が止まらなかった。
これまでの二度のつらい経験は、僕にはきっと必要なことだったのだろう。そう思えるまでにはかなりの時間が必要だったけれど、縁があって今の奥さんと結婚して12年。その前に交際していた8年間も含めればもう長いこと一緒にいる。22歳の年の差も気にならない。
■「二度あることは三度ある」にはしない
僕は二回も失敗して傷つき、自分は結婚には不向きだと感じていたけれど、それでも今の奥さんと結婚するのを決めたのは、彼女がとても愛情深く、僕とセンスや波長が合うことが気に入ったからだった。物の見方やアートへの感じ方がとても素敵なのもよかった。
それに彼女は、僕の家系のことをとても大切に思ってくれている。趣味がお墓参りなのかというほど、まめに先祖へのご挨拶に赴いてくれるのだ。
結婚する前は、僕と結婚することがいつか彼女を傷つけることになるのではないか、と心配だった。ところが、僕の事務所の川村会長に彼女と結婚することについて相談をしたら、こう言ってお墨つきをくれたのだった。
「彼女はすごくいいよ。お前を本当に思ってくれる素敵な人だと思うよ」
これが三度目の正直だと思った。「二度あることは三度ある」には決してならないようにと心に誓った。
間違いなく、彼女は神様が僕に出会わせてくれた特別な人だ。
彼女との結婚生活は、今のところうまくいっている。これで結婚が三度目の僕には、結婚生活を成功させる秘訣のようなものを語る資格はないのかもしれないが、三度の結婚を通じて会得したものがないわけでもない。
■「小さな戦い」を乗り越えた先に安寧がある
結婚は、したときから長い交渉が始まる。「感覚のすり合わせ」と言ったらいいのだろうか。ふたりの生活をどう送っていくかは、小さなすり合わせを重ねて決めごとを設けていくことによって、徐々にスタイルが決まっていく。
それは日々のちょっとした戦いでもある。そういう戦いの末にいつのまにか、ふたりにとって居心地のいい「あ、うん」の呼吸が生まれるのではないだろうか。
だから、すり合わせのための小さな戦いの間に疲れてしまったり、めんどうくさくなってしまったりしたらいけない。そのあとに、安寧の時代がやってくるのだから。
もうひとつ大事なのは、「やってもらって当たり前」と思うことなく、常々感謝の思いを伝えることだ。
三回目にしてようやくわかったことが、こんなふうにいくらかはある。ただ、それでもまだなお、自分には言葉が足りないと思うときがある。
■とはいえ、まだまだ修行中の身である
概して男というものは、女性に対して十分な言葉を尽くさないところがある。とくに僕は、やせ我慢をするタイプときているから厄介だ。家に帰っても仕事の話はほとんどしないし、たとえ外で嫌なことがあったとしても、今の若い人と違って、奥さんにいろんなことを逐一話す、ということがない。
自分に近い人に弱いところを見せるのが苦手なのだ。悩みを家族に吐き出したところで解決しないだろうし、愚痴を言って巻き込む方がつらいから、ネガティブなことは共有しないようにしている。話しただけで楽になる、とはとても思えないのだ。
そんなドライな僕は、できれば言わずに察してほしいといったタイプだ。だから、何を考えているかわからないときもきっと多々あるんじゃないだろうか。子どものときから、思ったことを心の奥底にしまうような癖がついているのだ。いちいち細かい話をするのは素敵じゃない、と思ってしまう。
そうは言っても、口にしなければ思いはきっと伝わらないということはわかっている。
それも含めて、僕はまだまだ修行中の身なのだ。
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タレント
歌手、俳優、司会者とさまざまな分野で活躍し、幅広い世代から愛される国民的エンターテイナー。16歳でザ・スパイダースに加入し、1965年「フリフリ」でデビュー。1971年の解散後、ソロ活動に転向し、同年「さらば恋人」で日本レコード大賞大衆賞を受賞した。俳優としては「時間ですよ」「西遊記」「ちゅらさん」など多数のドラマに出演、司会者としても高い人気を博している。
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(タレント 堺 正章)
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