なぜ秋篠宮家の「皇籍離脱」説が浮上したのか…「生身の人間」発言に滲む秋篠宮さまが本当に守ろうとしているお方
プレジデントオンライン / 2025年1月18日 15時15分
■くすぶり続ける秋篠宮夫妻の「お言葉」
昨年暮から、秋篠宮の誕生日会見(11月25日)での「お言葉」が大きな波紋を広げている。
「秋篠宮が国民と訣別した日」(週刊文春12月12日号)「秋篠宮さまが吐露された『国民』『政府』へのご不満」(週刊新潮・同)
そして週刊ポスト(1月17日・24日号)は「皇室改革がなければ『秋篠宮家』一家丸ごと皇籍離脱の可能性」と報じたのである。
これまでも週刊誌が秋篠宮家を批判することはあったが、秋篠宮側は大人の対応をしてきた。だが、昨年9月、秋篠宮紀子さんが誕生日に発表した談話で、秋篠宮家へのバッシングともとれる情報について聞かれたのに対して、紀子さんは「バッシング」と断定し「思い悩むことがある」と述べたのである。
この時のバッシングとは、長男・悠仁さんの東大進学問題が念頭にあったのだろう。
昨年夏には、不確かな情報をもとに「不正な東大推薦入学を許すな」と「赤門ネットワーク」なる匿名のユーザーが、サイト上で署名活動をして、1万2000筆が集まった。
ちょうどその頃は、秋篠宮夫妻が悠仁さんの進学先をどこにするかで思い悩んでいた時期だったはずだ。
東大への推薦入学に対する反発が強いから筑波大学に変更したのではないだろうが、紀子さんにとってはつらい日々だったと推測する。
■改革が進まなければ「皇籍離脱」も覚悟の上?
長女・眞子さんの婚約を機に始まった週刊誌やSNSによる秋篠宮家への誹謗中傷ともとれる激しいバッシングは、眞子さんが結婚してニューヨークへ移り住んでも止まなかった。
中でも、悠仁さんが推薦入学制度を使って東大に入るという真偽が不確かな情報が流れると、悠仁さんが通う筑附の匿名の高校生や教師たちの談話が報じられ、週刊誌の中には、東大の推薦入試に受かる学力は悠仁さんにはないと報じたところもあった。
このままでは多感な時期である悠仁さんが平穏な学生生活を送れないかもしれない。そう考えた秋篠宮夫妻は、メディアやSNSでのバッシングに対してはっきりものをいうことを決断したのではないだろうか。
明らかに、今回の会見はこれまでの秋篠宮の発言とは異なり、言葉は荒げないが、秋篠宮の覚悟を示す言葉が随所に見られた。
そして、その先に見据えているのは、皇室改革ができないなら一家そろって皇籍離脱する可能性もなしとはしないとまで思っているのではないか。
年初早々、不穏な話で恐縮だが、それほど秋篠宮は思い詰めているという見方は、一概に週刊誌の誇大妄想的タイトルだけではないのかもしれない。
会見での秋篠宮の発言を振り返ってみよう。
■「バッシングというよりも“いじめ的情報”」
「ここで秋篠宮さまは、悠仁さまの最近のご様子について『高校3年生の秋ですから、毎日を忙しく過ごしています』と仰り、進路については『もちろん話し合うことはあります』とされながらも、具体的な言及はなさらず、『今は勉強をしているのがほとんどでしょうか』と述べるにとどめられたのです」(宮内庁担当記者・新潮)
この時はすでに悠仁さんの進学先は東大ではなく筑波大に決まっていたはずだが、秋篠宮から話すはずはなかった。
だが、以下の秋篠宮の発言が物議を醸した。
「会見で記者会は、宮内庁が4月からインスタグラムを活用して天皇、皇后両陛下のご活動を中心に発信している点に触れつつ、ご一家へのバッシングの『受け止め』を尋ねていたのだが、秋篠宮さまは『バッシング情報というのは第三者と当事者では意味合いが異なってくると思います』と切り出され、『当事者から見るとバッシングというよりも“いじめ的情報”と感じるのではないかと思います』と述べられたのです」(同)
いわば一部の国民に対して“ご不満”を漏らされた格好であり、さらに続けて、
「『情報発信の全体のうちどれぐらいの割合がそういう情報なのか、それを俯瞰しないとどう受け止めるかは難しいと思う』と述べられました。また、そうした中で宮内庁に何か求めることについては『なかなか難しい』とされつつ、『“いいね”じゃない方の、逆の、あれ(注・バッドボタン)をとにかくクリックするぐらい、それ以外には思いつかない』と口にされたのでした」(同)
■「悪手だったと言わざるをえません」
この談話について、新潮で武蔵大学の千田有紀教授(家族社会学)は厳しい見方をしている。
「秋篠宮家に批判的な書き込みをしている人がどの程度いるのかは不明ではありますが、今回のご発言は、“いじめの主体は国民である”と秋篠宮さまが仰ったと世間では受け止められることでしょう。
これまでご一家に生じたトラブルについて国民は、秋篠宮さまが十分に向き合われているとは捉えておらず、“自分たちに寄り添って下さっていない”と感じていると思われます。そこが批判の要因になっているにもかかわらず、そのような声を『いじめ』と表現なさったのだから、悪手だったと言わざるをえません」
その前の紀子さんが誕生日に際して公表した文書には、秋篠宮家に対するバッシング情報について「心穏やかに過ごすことが難しく、思い悩むことがあります」と書いてあった。
夫婦してSNS上に書き込まれている批判を熱心に読んでいるようだが、それらを国民の声として受け取り、国民が自分たちを「いじめている」と捉えているといったのだが、多くの週刊誌はそれに対して批判的だった。
■「皇族の品格が薄れてしまう」のではないか
長女の眞子さんと小室圭さんの結婚から始まり、悠仁さんの受験騒動、次女の佳子さんとの別居生活、何十億円も費やした秋篠宮邸改修などについて、ほとんど秋篠宮側から国民への説明はなかった。そのために秋篠宮家批判が起こったのだが、一部のSNSでの批判を取り上げ、自分たちが故もなく誹謗中傷されているというのでは、秋篠宮家に寄り添おうという国民さえも離れていってしまうのではないだろうかという論調が多かった。
文春でノンフィクション作家の保阪正康氏も、秋篠宮の発言についてこう語っている。
「今回の会見で秋篠宮殿下は、事実上、ネットの書き込みに接していると認めてしまった。これは率直にいえば、あまり良いことではないと思います。いわゆる皇族のディグニティ(品格)が薄れてしまうのではないでしょうか」
フェイクまがいの言動に秋篠宮が反論することで、自分も同じ次元に立ったと受け取られ、「それは皇族の“聖”性を自ら崩すことと同じです」(保阪氏)というのである。
さらに保阪氏は、
「皇族は自らのさだめを受け入れて“聖”の獲得のために努力し、国民はその“聖”を精神の拠り所として敬愛してきた。それはいわば、皇室と国民との“約束事”でした。それが、国民がネットで好き放題なことを書き込み、皇族がその都度いきり立つという構図が繰り返されれば、こうした約束事は一切果たされなくなってしまう。それは将来の日本にとって、極めて不幸なことなのです」
■宮内庁を公然と批判する場面も
本来なら、こうしたことを秋篠宮に代わって宮内庁がやるべきなのだが、秋篠宮と宮内庁の関係もあまりうまくいっているようには思えない。
さらに重大発言は続いた。
新潮(1月2・9日号)は「佳子さま30歳 加速する『皇室離脱』願望に秋篠宮さまの胸の内」と報じている。
30歳になった次女の佳子さんは、公務に忙しい日々を送っている。だが、姉の眞子さん同様、早く皇室を離れたという気持ちに変わりはないようだ。
しかし、これまでの皇族の数を確保するための協議では、女性皇族が結婚後も皇室に残る案について各党がおおむね賛同しているため、佳子さんもそうなれば、皇室という籠の中から出られなくなる可能性が大きくなってくる。
女性皇族が結婚後も皇室に残る案について問われると、秋篠宮はこう答えた。
「該当する皇族は生身の人間なわけで、(略)生活や仕事の面でサポートする宮内庁の然るべき人たちは、その人たちがどういう考えを持っているかということを理解して、若しくは知っておく必要があるのではないかと思っております」
宮内庁を公然と批判したのである。
■天皇皇后、さらには愛子さんの将来も考えてのことか
だが、これは秋篠宮家を知る関係者によれば、
「今回のご発言は一見して宮内庁に苦言を呈された格好になっていますが、殿下は宮内庁が政府の一機関に過ぎないことは重々ご存知。ご発言の真意は、ご自身や佳子さまのお気持ちを把握しないまま協議を進めていく与野党の政治家、そして、その立法府から報告を受ける政府への“痛烈なご批判”に他なりません。新たな制度が作られつつある裏で、当事者が抱く思いを世間に知ってほしいと考え、あえて“身内”たる宮内庁の名を挙げてアピールされたのです」
“生身の人間”という直截な表現で、娘の佳子さんのことはもちろんのこと、天皇の長女である愛子さんについても、天皇皇后、上皇上皇后にも考えを聞いて、愛子さんの将来を考えてあげてほしいと訴えたのではないか。
そこには、当面、ただ皇族の数だけ増やせばいいという有識者や政治家の「弥縫(びほう)策」への痛烈な批判が込められていると考えるのは、私の思い過ごしだろうか。
佳子さんと“別居”生活をしている問題については、「いずれはこの家から出ていくであろう(略)娘たちの部屋をそこに用意すること自体がある意味無駄になる」という考え方からだそうだ。
■「皇族は生身の人間」発言に潜む心からの叫び
この発言から、秋篠宮の中には、佳子さんには姉の眞子さんのような祝福されない結婚をさせたくはない、相手が決まったら皇室を去り、幸せに暮らしてほしいという気持ちがあることを窺い知ることができる。
この秋篠宮の心からの叫びを、政治家だけではなく、われわれ国民も耳を傾ける必要があるはずだ。
そしてポスト報道である。これは政治学者の原武史氏と歴史学者の河西秀哉氏との対談で、冒頭、原氏はこう切り出している。
「昨年11月の秋篠宮の誕生日会見は重い訴えだったと感じました。女性皇族が結婚後も皇室に残る案について問われた秋篠宮は、皇室の制度についての発言は控えつつも、『該当する皇族は生身の人間』と発言し、その点への理解が薄い現状に苦渋をにじませた。当事者を置きざりにして議論だけが進むことへの危惧を示唆するものでした」
河西氏はそれについて、「意見を聞いてもらえない、という戸惑いとともに、皇族が自分の意志を発する難しさが伝わりました。発言の背景には次女・佳子内親王の存在も大きいのでしょう」と話している。
さらに原氏はこう続ける。
■「なぜ中からも皇室のしきたりを変える動きがないのか」
「宮中には、男性よりも女性のほうに負荷のかかるしきたりが依然として残っています。それを温存したまま佳子内親王を皇族の制度内に縛り続けるのか。『生身の人間』という言葉には、そのような疑問が暗に込められていたように感じます」
河西氏もこう話している。
「一方で04年に始まった皇室典範改正の議論が一向に決着しない現状に『早く何とかしてくれ』とのメッセージを送ったとも感じました。政府に対する批判でもあり、国民への問題提起でもあったと思います」
河西氏は、最近の佳子内親王は公務が増えているが、これは結婚、皇籍離脱に向けた「ラストスパート」のように感じるともいっている。
それについて原氏は、
「皇族減少は喫緊の課題なのに、なぜ中からも皇室のしきたりを変える動きがないのか疑問です。例えば宮中祭祀はほぼ明治以降の“作られた伝統”です。戦後は皇室の私事になり、国民に諮らずとも変えられるはず。(中略)全部の祭祀に出るようになったのは昭和天皇からでした。その姿勢を上皇と天皇も受け継いでいます。上皇は『国民の安寧と幸せを祈ること』、つまり宮中祭祀を象徴の務めの一つとしたので、なかなか変えられないのでしょう」
■兄の代弁者である“使命感”のようなものを感じる
石破茂首相がこの問題に手を付ける可能性について原氏は、
「石破茂首相はもともと女系天皇の容認を含めて議論すべきとの立場でしたが、総裁選を僅差で勝利したため保守派に気兼ねし、石破色を封印しました。しかし今年は女性・女系天皇の議論が息を吹き返す可能性があります。石破首相が目指すのは安倍政治の終焉です。この目標を達すれば、再び柔軟な天皇論を打ち出してくるのではないか」
と、やや楽観的な見方をしている。そして原氏は秋篠宮の心の内をこう読む。
「記者会見では秋篠宮家へのバッシングについて『当事者的に見るといじめ的情報』とも語りました。非常に踏み込んだ内容です。“このままでは自分たちは持たない、現状を放置するなら皇籍を離脱します”というSOSにも聞こえました」
秋篠宮の誕生日会見を大手メディアは通り一遍にしか報じなかったが、皇室に多少でも関心のある人間には大きな驚きであった。
秋篠宮の発言は、年々、過激さを増してきているように思う。その背景には、兄の天皇が抱えている悩みを自分が代弁するという“使命感”のようなものを感じる。
長女の眞子さんの結婚が皇族のあり方に一石を投じたとすれば、次女の佳子さんの結婚や長男の悠仁さんの将来が、秋篠宮家だけではなく皇室全体を揺るがす事態に発展するかもしれない。
今年は、国民も政治家も、皇室の行く末を真剣に考えなければならない一年になるのは間違いない。
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ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任する。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『編集者の教室』(徳間書店)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、近著に『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。
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(ジャーナリスト 元木 昌彦)
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