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会社の研修で得られる学びは1割にすぎない…「いつまでも成長し続ける人」がしている効果的な学びの手段

プレジデントオンライン / 2025年1月25日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

学びを得るために効果的な方法は何か。人材育成事業を展開するラーンウェル代表の関根雅泰さんは「私たちは『自分の経験』『周囲の人々』『先人の知恵』という大きく3つのリソースから学んでいて、そのうち経験からの学びが7割だと言われている。まずはやってみることが必要になるため、教わる立場になった場合は、自分から能動的に意思表示をし、そのうえで相手の不安を軽減できるよう、相談や報告の頻度を増やしていくといい」という――。

※本稿は、関根雅泰『改訂新版 オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■教える立場から、教わる立場へ

私たちは何歳になっても、正解が分からないことばかりなので、自分が教わる立場になる日は突然やってきます。しかし、普段教える立場にいると、いざ学んだり、教わったりする立場になった時、少しの抵抗感が生まれます。

「いつも偉そうに教えているのに、今さら分からないとも言いづらい」「相手も教える際に気を遣うのでは」と思ってしまいます。特に年が上だったり、役職が上だったりすると、素直に「教わる」という行為が取れない人もいます。

普段「教える」立場の人間が、いざ「教わる」立場になった時、どうすればいいのか。本稿では、上手な「教わり方・学び方」について考えていきます。

筆者は研修講師として、新入社員研修や中途採用者向けの研修を担当しています。彼・彼女たちは、別の環境(学校・前職)から新しい環境になじんでいくために、周囲から上手に教わり、学んでいく必要があります。

新入社員、中途採用者の中でも、上手に教わり学んでいける人と、そうでない人がいます。「教わり下手・学び下手」は、例えば前職でのやり方に拘ったり、周囲から助言を聞き入れなかったりします。

それに対して「教わり上手・学び上手」は、周囲から上手く情報を引き出し、環境に早くなじみ、結果を出していきます。その違いは何なのでしょうか。

私は、それらの違いを「学びマインド」「学びスキル」「学びエナジー」という言葉で表現しています。1つずつ見ていきましょう。

■「巨人の肩の上に立つ」心構えで

教わる側としての「心構え」を、ここでは「学びマインド」と呼びます。素直に、謙虚に、前向きに学んでいこうとする心の持ちようです。ここでは「謙虚さ」を取り上げます。

自分には知らないことがあり、それを知っている人から素直に学ぼうとするのが謙虚さです。その逆が「傲慢」で、自分は全てを知っている、自分のやり方が最も正しいと思い込む。そういう傲慢さがあると、人から学ぶことはできませんし、学ぶ必要性すら感じないでしょう。

研究者が論文を探す時に使うGoogle Scholarの検索窓の下には、「巨人の肩の上に立つ」という言葉があります。先人たちが研究し蓄積してきた文献から学ぶことができれば、それはまさに「巨人の肩」に乗ることであり、さらに遠くを見ることができます。

自分には知らないことがある。ただ、それはすでに先人たちが知っていることかもしれない。そう謙虚に考え、先行研究を調べ、学んでいくのです。常に謙虚であること、これは「教わり上手・学び上手」が持つマインドの1つです。

さらに押さえておきたい「学びマインド」は、「アンラーニング」です。ラーニング(Learning)が「学習」だとすれば、アンラーニング(Un-learning)は「学習棄却」となります。

これまで学んできたことや、自分の経験にこだわり過ぎると、新しいことを学べなくなります。例えば中途採用者で「前職ではこうやってきた」「自分は○○のやり方で上手くやってきた」と固執してしまうと、新しい会社になじみにくくなります。

ノートパソコンで作業しているビジネスマンが指を振りながらダメ出し
写真=iStock.com/Andrii Iemelyanenko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrii Iemelyanenko

■これまでの経験を少しほぐして、新しいものが入る余裕を作る

以前の成功パターンや達成経験は重要ですし、それを「棄却する」「捨て去る」となると、心理的ハードルも高いでしょう。これまで培ってきた経験を捨てるのはもったいないですし、やっぱり怖いものです。

私も1社目が個人向け営業で、それなりの売上を上げていたのに、2社目の法人営業では全く上手くいきませんでした。個人向け営業では例えば「元気の良さ」が売りになったのですが、法人営業では通用しません。2回目のアポが取れないのです。

上司や先輩から「前のやり方に拘らないよう」指導されても、なかなか前職の経験を捨て去ることができませんでした。

そんな時、このアンラーニングの考え方を知りました。しかも、アンラーニングとは「捨て去る」ことではなく、「学びほぐす」ことであると。例えば、ぎゅっと握った拳では、新しいものを入れることは難しいですが、少し緩めてほぐしてあげると、隙間ができます。その隙間に、新しい学びを入れることができるのです。

これまでの経験を全て捨て去る必要はなく、少しほぐして、新しいものが入る余裕を作る。それが、学びマインドとしてのアンラーニングなのです。

■人は「自分の経験から学ぶ」が7割

私たちが教わる立場になった時に改めて考えてみたいのが、「人は何から学ぶのか」ということです。私たちは、大きく3つのリソース(資源)から学んでいると考えられます。「自分の経験」「周囲の人々」「先人の知恵」です。

これら3つの「学びのリソース」のうち、どのリソースが最も影響が大きいのかというと、それは「自分の経験」になります。よく引用される数字に「70:20:10」というものがあります。

これは、人は「経験からの学びが7割、他者(周囲の人々)からの学びが2割、研修(先人の知恵)からの学びが1割」というものです。

元々は1990年代に行われたアメリカでの調査で、「リーダーシップを発揮できるようになるために、有益だったことは何か」という問いを考察したことで明らかになったものです。

【図表1】学びの3つのリソース(資源)
出典=『改訂新版 オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)

ちなみに、2010年代に大規模調査が行われ、この割合は「55:25:20」になるという結果が出ています。どちらの調査にしても、「自分の経験」からの学びが他の2つのリソースに比べて大きいことが明らかなのです。

私たちが学ぶ際にも、「周囲の人々」から教わるだけでなく、また「先人の知恵」を読んだり聞いたりするだけでなく、「自分の経験」を積むことが必要です。何事もやってみないと、学べないということです。では、これら3つの「学びのリソース」から、いかに学んでいけばよいのか、それぞれに対応した「学びスキル」を見ていきます。

「自分の経験」←試行・内省・外化
「周囲の人々」←観察・質問・傾聴
「先人の知恵」←内化・外化

「自分の経験」から学ぶためには、まずはやってみる(試行)ことが必要であり、やった結果をふり返り(内省)、必要に応じて振り返った内容を書き残しておく(外化)ということをしていきます。

「周囲の人々」から学ぶためには、身近な人々を「観察」し、その良い点や見習いたい点、逆に自分が気を付けるべき点を見つけ出していきます。さらに、疑問点や不明点を「質問」し、その答えを「傾聴」することで自分の知識を増やしていきます。

■経験を積む機会を作り、飛び込んでみる

まずは、「自分の経験」からいかに学ぶかについて考えていきましょう。「自分の経験」を増やすためには、経験を積む機会を作り、その機会を得られたら飛び込んでみることです。

私たちが教える側にいる場合、やはり仕事を任せる相手は信頼できる部下、後輩、仲間になるはずです。ミスや失敗をされると周りに迷惑をかけますし、結局は私たちが巻き取ってフォローをしなければならなくなります。

そのため、「失敗経験があったほうが、本人のためになる」「経験から学べるよう、機会を与えるべきだ」と言っても、なかなかそういうチャンスを作りづらいのです。

お客様からの要求も厳しく、納期も短い中で、新人や未経験者に「失敗してもいいから経験させよう」とは簡単にはならないのです。

■相手の不安を軽減できるよう、相談や報告の頻度を増やす

そんな状況を理解している私たちが、いざ教わる立場になった時、それでも「自分の経験」を積む機会を得るために、どうしたらよいのでしょうか。

まずは、こちらから意思表示をする必要があります。「やってみたい」「やらせてもらえませんか」と。与えられるのを待っているのではなく、自分から能動的に働きかけていくのです。教える側も、言われるまで待っている人よりも、自分から来てくれる人の方が、経験機会を与えやすくなります。

それでも、私たちにとっては未経験の仕事、不慣れな内容かもしれません。だからこそ、ミスや失敗をするのではないかという相手の不安を軽減できるよう、相談や報告の頻度を増やしていくことが大事です。

さらに、分からない点が出てきた時は、他のメンバーにも聞くようにして、早めに対処していくことを伝えていくのです。これは、私たちが教える際に「人脈マップ」を使うのと同じです。経験機会を与えてくれる上司、先輩だけに頼り切らず、他のメンバーからも学んでいくのです。

こういったことを、自分から積極的に発信し、経験機会を得ていくのです。

■恐る恐るの「試行」で構わない

経験機会を与えてもらえたのなら、怖くてもいいので飛び込んでみてください。自信を持っての実行というよりも、恐る恐るの「試行」になるはずですが、それでも構いません。

私たちが普段行っている仕事は、おそらく「コンフォートゾーン(快適空間)」の中にあるものが多いはずです。そこから教わる立場になって、新たな仕事や不慣れな内容に取り組むというのは、いわば「ストレッチゾーン(挑戦空間)」での行動になります。見知らぬ世界で初めてのことに取り組むわけですから、恐る恐るの試行で良いのです。

【図表2】
出典=『改訂新版 オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)

実際にやってみて、上手くいくこと、上手くいかないこともあるでしょう。そういう時には一旦立ち止まり、振り返る「内省」を行うことをおすすめします。

「上手く行っていることは何か?」「上手くいってないことは何か?」「その原因は?」「どんな対策が取れるか?」について、立ち止まって考えてみるのです。それらを紙に書きだしたり、メモに入力してみたりなど、「外化」をしておくことで、次に経験機会をもらった時に参考にすることができます。

■「この人なら次に機会を与えても大丈夫」という信用を勝ち得る

上手くいったことがあれば、それは意図的に再現することができるでしょうし、上手くいかなかったことがあれば、次はその失敗を避けることができるでしょう。

そうは言っても、せっかく上司や先輩から経験機会を与えてもらいながら、失敗するのは怖いはずです。期待して信じてもらったのに、その期待や信頼に応えられなかった時の精神的ダメージは大きいですし、周囲への迷惑度も高くなります。

上司や先輩、周囲は「気にしなくていい」「次に活かせばいい」などと励ましてくれたとしても、タイムマシーンで過去に戻って、失敗をなかったことにすることもできません。どうしたらよいのでしょうか。

まずは失敗体験を振り返って内省し、「何がまずかったのか」「どう対処すればよかったのか」「次があったらどうするか」を考えます。その上で、レポートなどにまとめ(外化)経験機会を与えてくれた上司、先輩と話をする機会を作るのです。

自分の失敗を振り返るのは簡単ではないですし、人に話すのは嫌でしょうが、それでも次の経験機会を得るためには避けては通れないことです。

最悪なケースは、この1度の失敗で次のチャンスをもらえなくなることです。だからこそ、相手に「この人は失敗からもちゃんと学んで、次に活かそうとしている」と思ってもらい、「この人なら次に機会を与えても大丈夫」という信用を勝ち得るのです。

■失敗経験は、周囲と新たな信頼関係を築く大きなチャンスに

失敗した後に、その人がどんな対応をするのか、周りの人は必ず見ているものです。そこで逃げるのか、周りのせいにするのか、自分で受け止めて対処するのか、その姿勢を周囲は見ているのです。

関根雅泰『改訂新版 オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)
関根雅泰『改訂新版 オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)

筆者は論語の「過ちて改めざる、これを過ちという」という言葉を大事にしています。自分が失敗したり、間違っていたりしたら、素直に認めるようにしているつもりです。年長者がそういう態度でいると、おそらく若い人もそういう行動をとりやすくなるでしょう。

先日もマーケティング施策で大きな失敗をし、ショックを受けたのですが、その日のうちにその失敗(原因と対策含む)をSNSで発信(外化)しました。教える側にいる私たちが、失敗経験から学ぼうとしている姿勢そのものを周囲に示したいがためです。

失敗経験は、周囲と新たな信頼関係を築く大きなチャンスにもなります。その時に逃げずに、周りのせいにせず、自分に向き合えるか。そこを問われることになりますし、「教わり上手・学び上手」な人であれば、きっと上手に失敗経験から学び、次に進んでいけるはずです。

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関根 雅泰(せきね・まさひろ)
ラーンウェル 代表取締役
1972年埼玉県生まれ。南ミシシッピー大学卒業後、二社での営業、講師経験を経て、2005年、研修会社ラーンウェルを設立。2010年、仕事をしながら東京大学大学院へ進学。「経営学習論」の中原研究室に参加。新人の組織適応やOJTについて研究。2013年、学際情報学修士号取得。企業研修での専門分野は「教え方」(現場でのOJTや社内講師の養成)。NBSオンライン講座「部下後輩が育つ!上手な仕事の教え方入門」、ダイヤモンド社「研修開発ラボ」等を担当。

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(ラーンウェル 代表取締役 関根 雅泰)

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