「邪魔しない」「油をさす」「一旦止める」…相手から濃い情報がドンドン得られる傾聴3つのポイント
プレジデントオンライン / 2025年1月26日 15時15分
※本稿は、関根雅泰『改訂新版 オトナ相手の教え方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■「良い点」と「気になる点」をセットで観察する
先の記事で、私たちは「自分の経験」「周囲の人々」「先人の知恵」という大きく3つのリソース(資源)から学んでいると述べました。
本稿ではその「学びのリソース」の2つ目、「周囲の人々」からいかに学んでいくかを考えていきましょう。「周囲の人々」から情報を獲得する「学びスキル」は、「観察・質問・傾聴」です。
まず、周囲の人々から学ぶために相手を「観察」します。ここでは、私たちに教えてくれている人を取り上げ、「良い点・見習いたい点」と「イマイチな点・気になる点」を中心に観察していきます。
「この説明の仕方、分かりやすい」「お客様への対応、この小さな気遣いが素晴らしい」など、探していけばその人の「良い点・見習いたい点」はたくさん見つかるはずです。
その反面、教えてくれる人も人間ですから、「イマイチな点・気になる点」も何かしら見えてしまうでしょう。「この説明だと、相手に伝わらないよな」「お客様にあんな態度は取らないようにしよう」など、教わる中で見えてくる「イマイチな点・気になる点」も出てくるはずです。
そうすると、私たちも人間ですから、「イマイチな点・気になる点」のほうが目につき、その人に「良い点・見習いたい点」があってもかき消されてしまうことがあります。
■イマイチなら「反面教師」「ネタにする」を
せっかく学べる機会があるのに、私たちのほうで勝手に「この人の○○が嫌だから、教わる気が失せた」といった状態になってしまうのはよくあることです。
そんな時、私たちが教える側であれば、先の記事で触れたような接し方で「改善点の指摘」をするかもしれませんが、今回は私たちが教わる側です。そういう場合は、相手に伝えるのではなく、こちらの受け止め方を工夫します。
「イマイチな点・気になる点」の受け止め方は2つ。「反面教師にする」ことと、「ネタにする」ことです。
1つ目の「反面教師」は、そういう人の「イマイチな点・気になる点」は真似せず、自分ではやらないよう気をつけるようにします。2つ目の「ネタにする」は、いつかは他の人に話せるネタとして、その人の「イマイチな点・気になる点」を記録しておきます。
「先輩にこんなイマイチなことをする人がいて」
「あの人の言動が気になって、仕方なかったよ」
このように、教える側になった時の話のネタを溜めておき、自分が教わる側になった際の糧にすればいいのです。教わる立場にならないと見えないことはたくさんあるので、「観察」という学びスキルを活かして、周囲の人々から上手に良い点とイマイチな点を吸収してみてください。
■下調べをした上で質問する
「周囲の人々」から学ぶ2つ目の「学びスキル」は、「質問」です。ここでは、誰に(Who)何を(What)どうやって(How)という3つの点から、質問について考えていきます。
まず、誰(Who)に質問すれば、私たちが欲しい情報が得られるのでしょうか。私たちが教える立場である時に使っていた「人脈マップ」がまさにそれにあたります。
私たちの周囲にどんな人がいて、誰が何に詳しいのか。それが分かれば、誰に質問をしに行けばいいのかが分かります。詳細は本書をご覧ください。
次に、何(What)を質問するかを整理します。自分が何について質問したいのかを考えた上で、まずはインターネット検索で基本的な情報をつかみ、必要であればAIに訊いてみるのも良いでしょう。
教える立場であった時に、「このぐらい調べてこいよ」「なんでもかんでも人に訊こうとするな」と思ったこともあるかもしれません。相手にもそう思わせないよう、最低限の事前の下調べはしておくようにしましょう。
その上で、その人からしか得られない情報を質問によって探っていきます。それはインターネットには出てこないその人自身の経験談であったり、具体例であったり、裏情報であったりするかもしれません。話を聞きながら、「例えば、どんな感じだったんですか?」「その後、どうなったんですか?」など、相手から生の話を引き出せるよう質問していくのです。
■「口頭で訊く」の使い方には注意が必要
最後に、どうやって(How)質問していくかということを、2つの手段に分けて見ていきます。まずはメールやチャットなど、「文字を入力して質問する」やり方です。ある程度訊きたいことがはっきりしている時に有効です。
また、相手からの回答も文字で残るので、後々まで参照が可能になります。ただ相手にとってみると、自分も「文字で返信する」ことを面倒に感じる人もいます。そういう場合は、口頭で訊くとよいでしょう。
2つ目は「声で訊く」方法です。リアル、オンライン、電話などで相手と「言葉で話す」ということです。自分でも何が分からないのかはっきりしない、もやっとしている時は特に有効です。
相手と話しながら、自分の分からない点がはっきりしてくる、質問したいことが明確になってくることがあります。その反面、相手からは「何を聞きたいかはっきりさせてから質問に来てよ」と思われるかもしれませんので、使い方には注意が必要です。
「質問が明確」なほうを好むタイプの人には「文字で質問」したほうが良いでしょう。それに対して、多少質問がもやっとしていても、話しながら相手をすることを苦に感じないタイプの人は、「声で訊く」ほうが良いかもしれません。相手に合わせて、質問の仕方(How)を使い分けていきましょう。
■邪魔しない・油をさす・一旦止める
質問をすれば、当然ですが何かしらの答えが返ってきます。それを受け止めるのが「傾聴」です。教えてくれる相手が気持ちよく話してくれるよう、まるで滑車を回すかのように聞いていきます。
滑車をくるくる回して、教える側から情報を得るために、傾聴では「邪魔しない」「油をさす」「一旦止める」の3つを心掛けます。
「邪魔しない」というのは、文字通り、相手が気持ちよく話してくれるのを邪魔しない、さえぎらないということです。逆に、相手の邪魔をするとは、こちらが話し出すことです。
こちらが話し出せば、相手は話せなくなってしまうので、せっかく気持ちよく話していたのに、私たちの話によって邪魔されて、滑車が止まってしまいます。
とはいえ、私たちが何も言わず、ただ相手にしゃべらせていれば、「ちゃんと聞いているのか」「聞き流しているのではないか」と教える側も不安になるかもしれません。そこで必要になるのが、滑車に「油をさす」ことです。
「油をさす」とは、相手が話をしやすいよう「話を促す」行為を指します。例えば、「うなずく」「あいづちを打つ」「相手を見る」「質問する」「メモを取る」などです。これらの「油をさす」行為によって、どんどん情報を引き出していきます。
■「傾聴」を使い、滑車をくるくる回す
ただ、この2つだけでも教える側はある不安を抱く恐れがあります。それは、
「この人は、こちらの説明をきちんと理解しているのか」という不安です。そんな不安を感じさせないためには、「一旦止める」が有効です。
くるくる回っている滑車を一旦止めて、「分からなかったことを確認する」「それまでの話を復唱する」という2つのアクションを行います。
「分からなかったことを確認する」では、話の途中で「すみません、先ほどの○○が分からなかったのですが、もう少し詳しく教えてもらえませんか?」といった質問で、滑車を一旦とめます。
「それまでの話を復唱する」では、ある程度まとまった話を聞いた後、「私の理解が間違っていないか確認するために、ここまでの話を復唱してもいいですか」と、こちらの理解度を示していくのです。
これら2つの「一旦止める」を使うことで、教える側は「ちゃんと分かっているな」「こちらの言いたいことが伝わっている」と安心感をもち、さらに私たちに教えてくれるようになります。教わる側として「傾聴」を使い、滑車をくるくる回していきましょう。
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ラーンウェル 代表取締役
1972年埼玉県生まれ。南ミシシッピー大学卒業後、二社での営業、講師経験を経て、2005年、研修会社ラーンウェルを設立。2010年、仕事をしながら東京大学大学院へ進学。「経営学習論」の中原研究室に参加。新人の組織適応やOJTについて研究。2013年、学際情報学修士号取得。企業研修での専門分野は「教え方」(現場でのOJTや社内講師の養成)。NBSオンライン講座「部下後輩が育つ!上手な仕事の教え方入門」、ダイヤモンド社「研修開発ラボ」等を担当。
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(ラーンウェル 代表取締役 関根 雅泰)
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