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仕事を任せられる人かどうか一発でわかる…何気ない瞬間に実力を測ることができる"キラークエスチョン"

プレジデントオンライン / 2025年1月23日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Prostock-Studio

仕事を任せられる人はどのように見極めるべきか。ビジネス数学教育家の深沢真太郎さんは「何気ない瞬間に、数字を交えた簡単なクイズを出してみて、桁を間違えず概ね実態を捉えた答えをする人物なら、普段から数字で考える習慣があるとわかる」という――。

■なぜ、あなたは部下を信じることができないのか

ある中小企業の経営者が私にこうおっしゃいました。

「部下の出してくる根拠がどうしても信用できなくて、けっきょく自分で数字をチェックしちゃうんですよね」

これは多くの経営者や管理職の本音ではないでしょうか。私自身も「わかるなぁ」と感じます。

そもそも、ビジネスにおいて根拠とは数字で表現されるものがほとんどです。もしあなたが重要な意思決定をしなければならないとしたら、そこには当然ながらファクトベースの根拠を求めるはずです。

そして意思決定の難易度や重要度が上がるほど、あなたは合理性を求めることになります。

ではなぜ多くの上司は部下が示す根拠を信用できないのでしょうか。実は部下の出してくる根拠(=数字)がどうしても信用できないという事実は、その数字そのものが信用できないのではありません。部下の数字に対するリテラシーや定量分析やロジック作りといったスキルを信用していないのです。

一方で信用できる部下がいること、あるいはそのような部下を開発することはマネジメントの観点でとても重要ではないでしょうか。

そこで本稿では「根拠の数字」を信用していい部下とそうでない部下の違いを言語化し、あなたの意思決定やマネジメント業務のヒントにしていただきたいと思っています。

■数字センスがあるかどうかという基準

まず、信じていない相手から示された数字はあなたにとって極めて疑わしいものです。結果、自分自身で分析をしなければならなかったり、ファクトチェックをしなければならなかったりします。次の2つは、多くの管理職層が感じているストレスです。

「部下に根拠(=数字)を求めているのに、その根拠(=数字)を信じることができない」
「部下に数字センスを求めているのに、その数字センスを信じることができない」

一方で、実はあなたの信頼に足りる数字センスを持っている部下も(あなたが見つけていないだけで)実はいるかもしれません。もしいるなら、今後は重要な意思決定の際に必要な情報収集やロジック作りといった仕事を任せる対象をその人物にすれば良いのではないでしょうか。

そこで今回はこの問題に対し、「信じてもOK」な部下の特徴をご紹介することにします。裏を返せば、その条件に合致しない部下の示す根拠はそのまま鵜呑みにしてはいけないということでもあります。

①大きく外したことのない部下
②数字を説明するのではなく、数字で説明する部下
③ピンポイントの数字ではなく範囲の数字で示す部下

それぞれについて詳しく解説していくことにします。

■「大きく外さない」というセンス

たとえば100円の化粧品を売ることと、1000円の化粧品を売るのではおそらくマーケティングがまったく異なります。1000円の化粧品を売らなければならないのに、100円の化粧品を売るマーケティングをすれば失敗します。

あるいは新しい事業を計画するにあたり、市場規模の見積もりをするとします。その結果が実態と大きく乖離し「桁」を間違えているとしたら、そのまま計画を進めることは悲劇しか生みません。

これらはいずれも当たり前のことですが、そこから得られる教訓は極めて重要です。ビジネスは「数字を大きく外してはならない」ということです。換言すれば、大きく外したことのある人物が示す根拠(つまり数字)をそのまま信じるのは危険とも言えます。

部下が「数字を大きく外さない」人物かどうかは、普段の仕事ぶりや何気ない対話から推測することができます。

たとえば予測値を示す必要がある仕事なら、その予測値と実績値の誤差を測定しておきます。その誤差が大きい人物と小さい人物がいたら、後者のほうが大きく外さない人物ということになります。

ビジネスの成長、計画、戦略のコンセプト
写真=iStock.com/Pavel Muravev
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pavel Muravev

あるいは何気ない瞬間に、「うちの会社って業界シェアどれくらいだ?」などと簡単なクイズを出してみるのです。ここで桁を間違えず概ね実態を捉えた答えをする人物は、普段から数字で考える習慣がある人物です。他の場面で根拠として示される数字は信憑性があると言えるでしょう。

ビジネスには正解がありません。ですから同じように、ビジネスの根拠(=数字)にも正解はありません。しかし明らかな間違いは存在します。明らかな間違いをしないという特徴は、ビジネスパーソンのスキルとして極めて重要です。

【信用できない】これまでに大きく外したことがある人
【信用できる】これまでに大きく外したことがない人

■「数字を」ではなく「数字で」という視点

ビジネスでは数字をコミュニケーションツールとして使います。しかしその使い方には大きく2パターンに分かれることをご存知でしょうか。

パターンA 「数字を伝える」
(例)先週の売上高は200万円でした。前週比およそ110%です。以上です。

パターンB 「数字で伝える」
(例)売上高は先週から微増。要因は新製品が好調だからと思われます。数字は次のとおりです。売上高200万円。前週比110%。新製品に限定すれば前週比150%。

パターンAはまさに数字を機械的に伝えただけです。その数字から何が言えるのか、だから何なのかについての言及がありません。あなたの感想も、「そんなの見ればわかる」や「だから何なのか?」ではないでしょうか。

一方でパターンBは「全体的に微増。要因は新製品が好調」という主メッセージがあり、それを根拠づけるように数字で説明しています。

このふたつに大きな違いがないように見えるかもしれませんが、私はとても大きな差があると思っています。その差とは、数字を主役として扱うのか、脇役として扱うのかの差です。

ビジネスプレゼンテーション
写真=iStock.com/simonkr
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simonkr

パターンAは単に数字を伝えているだけであり、ある意味で数字が主役のコミュニケーションです。一方でパターンBは主役となるメッセージがあり、それを補足する形で、まるで脇役のように数字を使っています。

パターンAでコミュニケーションする人物は、数字そのものが根拠だと思ってしまうタイプです。もっとも典型的なのは、数字をただ並べてそれを機械的に読み上げるだけのコミュニケーションをする部下です。

このタイプはとにかく数字を入れて話せば説得力があると思っているタイプであり、思考停止に近い状態の人物であることがほとんどです。そのまま鵜呑みにするのは極めて危険と言えます。

一方でパターンBはその数字の意味が根拠になると思っているタイプです。意味を抽出するためには思考する必要があります。パターンAと真逆であることがお分かりいただけるでしょう。

数字の入ったコミュニケーションには2種類あり、そのいずれであるかを判別することで、その内容が考えられた結果なのかそうでないのかがはっきりわかります。考えていない人間の示す根拠を信用するのはリスクでしかありません。整理するとこのようになります。

【信用できない】数字を伝える人 (数字そのものが根拠)
【信用できる】数字で伝える人 (数字の意味が根拠)

■「範囲で説明する」という発想があるか

数字センスのある人はいわゆる統計的な感覚にも優れています。

私はビジネスにおいてもっとも重要な統計的感覚は、範囲で捉えることだと思っています。たとえば統計学では次のような表現で数値の予測を説明することがあります。

「ある数値Aは95%の確率で、○(数値)から□(数値)の範囲に入ると予測されます」
○<A<□ (95%の確率)

私はこれを「範囲の数字」と呼んでいます。今回はビジネスパーソン向けの記事ですから、ここで統計学の学問的な解説をすることはしません。あくまで大雑把で感覚的なものとしてご理解ください。

たとえばある商品がどれくらい売れるかを上司に説明しなければならない場面を想定します。当たり前ですが、その商品がどれくらい売れるかは「やってみなければわからない」という話です。

しかしビジネスでは常にどれくらい売れるかという情報が求められ、そこに根拠が必要になります。正解がないにもかかわらず正解らしき情報が必要になるのです。

そんな場面においてはピンポイントの数字よりは範囲の数字のほうに納得感があるのではないでしょうか。

たとえばポジティブシナリオによって予測した結果を□万円とし、ネガティブシナリオによって予測した結果を○万円とすれば、おそらく○万円から□万円の間になると思われ、よほどのことがない限りこの範囲を超えることはないと説明できるでしょう。

上司の立場にしても、このように範囲で説明されたほうが「最悪のケースがどれくらいか」を想定できるので助かるのではないでしょうか。実際、私は「常に最高のシナリオしか考えていない」という楽観的な経営者や管理職に会ったことはありません。

彼らは常に「最悪のケース」を想定し、それに備える施策を考えている人種です。そして私はそれが健全な姿だと思う立場です。

また、一般論としてビジネスは極めて不確実な世界で行う営みです。ですからあなたも自分の会社の明日の売上高がどれくらいになるのかを正確に(!)予測することは極めて難しいはずです。

数字センスのある人はそのことをよく知っています。ですからそもそも正確に数字を捉えようとは最初から思っていません。ピンポイントの数字ではなく、範囲の数字で説明するほうが自然であり、納得感もあるとわかっているのです。

【信用できない】ピンポイントの数字を根拠にする人
【信用できる】範囲の数字を根拠にする人

■それでも信用できない場合

以上の3つが、「根拠の数字」を信じていい、信じてはいけない部下の特徴でした。

最後にひとつ、重要なことをお伝えします。実は経営者や管理職の中には、このような考えを持つ人もいます。

「やっぱり自分で分析したい(確かめたい)。そうでないと気持ちよく、納得して意思決定できない」
「現実の話、重要な意思決定は部下の示す情報をまったく信用していない」

これもまた、偽らざる本音であろうと共感します。あなたは部下の示す数字を信じたい派か、それとも信じようとは思っていない派か、どちらでしょうか。

私はこのテーマはどちらが良い悪いという問題ではなく、シンプルな選択の問題だと思っています。どちらも正解なのではないでしょうか。

ただし重要なことは、もしあなたが「信じたい派」なのであれば、部下に対して徹底的に数字のリテラシーを求め、粘り強く啓蒙と教育を続けていく覚悟が必要だということです。

ぜひこの記事でご紹介した3つのポイントや、私の提唱するビジネス数学をしっかり学ばせてあげてほしいと思います。

参考までにお伝えしておくと、数字に強い人材・組織を開発できている企業は例外なく、その企業のトップが「数字センスの必要性」を口を酸っぱく言い続け、粘り強く啓蒙を続けているということです。

深沢真太郎『読むだけで数字センスがみるみるよくなる本』(三笠書房)
深沢真太郎『読むだけで数字センスがみるみるよくなる本』(三笠書房)

うまく育成が機能すると、現場の従業員はマネジメントクラスよりずっときめ細かく数字を追いかけ、新たな発見をし、魅力的な提案を(数字の根拠も揃えて)してくるようになります。

逆に「信じない派」なのであれば、部下に数字センスを求めることはいますぐ諦めることです。部下の示す数字を信じるつもりがないのに、部下に数字の入った根拠を求めるのは矛盾します。「そこ」はすべてあなたが仕事として責任を持ってやることです。

どちらを選ぶにせよ、覚悟が必要でしょう。

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深沢 真太郎(ふかさわ・しんたろう)
ビジネス数学教育家
日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。予備校講師から外資系企業の管理職などを経て研修講師として独立。その独特な指導法で数字や論理思考に苦手意識を持つビジネスパーソンの思考とコミュニケーションを劇的に変えている。大手企業をはじめプロ野球球団やトップアスリートの教育研修まで幅広く登壇。SMBC、三菱UFJ、みずほ、早稲田大学、産業能率大学など大手コンサルティング企業や教育機関とも提携し、ビジネス界に数学教育を推進。2018年に国内でただ1人の「ビジネス数学エグゼクティブインストラクター」に就任し、指導者育成にも従事している。著書に『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)、『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』(ダイヤモンド社)、『数字にだまされない本』、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(ともに日経ビジネス人文庫)などがある。

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(ビジネス数学教育家 深沢 真太郎)

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