男性は72.6歳、女性は75.3歳でやってくる…和田秀樹「ヨボヨボ老人と元気ハツラツ老人」を分ける決定的違い【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2025年1月21日 9時15分
2024年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお届けします。健康習慣部門(前期)の第4位は――。
▼第1位 見た目年齢の差はあっという間に開く…和田秀樹「若く見える人、老け込む人」を分ける"たった1つ"の要素
▼第2位 10位寝言、6位歯ぎしり、3位常夜灯をつけた…40~60代1012人調査で判明「早死にした人の睡眠特徴ワースト10」
▼第3位 これをやると"前頭葉バカ"になる…医師・和田秀樹「脳の老化を遅らせる睡眠の最終結論」
▼第4位 男性は72.6歳、女性は75.3歳でやってくる…和田秀樹「ヨボヨボ老人と元気ハツラツ老人」を分ける決定的違い
▼第5位 「帰ったらまず休憩するか、それとも家事か」自律神経の専門家が推奨する"疲れにくい"行動習慣
※本稿は、和田秀樹『どうせ死ぬんだから』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■80代からは老いの成り行きを味わう
「人生100年時代」という言葉が現実味をおびてきました。
いま日本には、100歳以上の人が約9万人います。2050年には、日本の女性の平均寿命は90年を超えるとも予測されています。
しかし、いまよりさらに若返りが進んで、寿命が延びていくわけではありません。栄養状態の改善はもうピークを迎えていますから、ここまで進んできた若返りも頭打ちになるでしょう。
栄養状態の改善が老化を遅らせ、日本人の寿命の延びを牽引する時代は終わり、これからは医学の進歩によって、「死なない」から「より長寿」になるのです。
つまり、人生100年時代とは、老いを迎えてから死ぬまでの時間が長くなったということです。この引き延ばされた高齢期をいかに元気に楽しく、そして自分らしく生きられるか――。
私は、「老い」を2つの時期に分けて考えることがカギだと考えています。
ざっくり言えば、70代は「老いと闘う時期」。そして、80代以降の「老いを受け入れる時期」です。
老いを受け入れるとは、老いるままにショボくれていくという意味ではありません。衰えを素直に認めて、それぞれに対応しながら上手に賢く生きようということです。
■私も愛用する「日本製のオムツ」の凄み
たとえば、耳が遠くなっているのなら素直に補聴器を受け入れる。そうすることで少しでも長く人との会話を楽しむことができます。補聴器を拒否して会話から遠ざかっていると、あっという間にボケたようになってしまいます。
杖にしても、シルバーカーにしても、拒否して転倒骨折ということになると、寝たきりに直結する可能性が高いし、歩くのが面倒になって外出しなくなると、歩行困難になるだけでなく、脳の機能低下にもつながります。
高齢者がもっとも嫌がるものの一つにオムツがありますが、日本製は吸収力がすごくいいので活動の幅が広がります。実は、私も愛用者の一人です。
数年前に心不全と診断されて、利尿剤を飲む羽目になり、トイレが近くなって困っていました。
そこで思い切って長距離ドライブのときには、尿漏れパッド付きのパンツを使うようになったら、運転中に、また出張先でトイレを探し回らなくても済むようになり、安心してドライブできるようになりました。
素直に「文明の利器」を受け入れられるかどうかで、高齢者のQOL(生活の質)は大きく変わると思います。
■「この老いを生きているのだ」と考えられるか
どんなにあらがおうと、老いを受け入れざるをえない時期が、80代以降にやってきます。個人差はあっても、遅かれ早かれ必ずやってくるのです。
そのときに、自分の老いをありのまま認めることができなければ、その後の10〜20年を生きていくのはひどく辛いものになってしまうでしょう。
100歳近くになると、寝たきりで老衰死するケースが一般的になります。だれもが高い確率で、穏やかな自然死を迎えることができるのです。
80代以降は、老いていく自然の成り行きを味わいながら、事故や大病で命を落とすこともなく、天寿をまっとうしつつあるからこそ、この老いを生きているのだ、と考えてもいいのではないでしょうか。
■70代はヨボヨボ老人と元気ハツラツ老人の分かれ道
一方、70代はまだまだ老いと闘える時期だと言えます。
長い老いの期間を健やかに過ごすためには、脳の機能をいかに80代以降も保つか、同時に70代のときに持っている運動機能をいかに長持ちさせるかということが大切になってきます。
そのポイントとなるのが、70代の過ごし方です。
70代前半までであれば、認知症や要介護となっている人は1割もいません。ケガをしたり、大病を患ったりしていなければ、中高年の頃のように、たいていのことはできるはずです。
努力すれば、効果も得られますし、日々の積み重ねが80代のあり方を大きく左右するものとなっていきます。
人生終盤の活動期と言える70代を努力して過ごすことで、身体も脳も若さを保つことができ、さらに要介護となる時期を遅らせることもできるのです。
がんの罹患率や死亡率、要介護になる率、あるいは認知症になる率を見てみると、70代で急増しています。
元気に自立して暮らせる「健康寿命」を見ても、2019年時点で、男性が72.68年、女性が75.38年です。ヨボヨボしたりボケたりする高齢者と、元気ハツラツとした高齢者に分かれるのは、まさに70代と言えます。
80代になっても活力を保ちたい、生活の質を維持したい。体も動けるほうがいいし、頭もはっきりしているほうがいい。そう思うなら、70代は老いと闘える最後のチャンスと心得てください。
■とにかく体や頭を使い続けているか
加齢とともに身体能力や脳機能が低下してくるのは間違いありませんが、そのスピードや度合いは人それぞれです。
同じ70代、80代でも、認知症が進んで会話もままならない人がいる一方で、これまでの仕事を続けられる人もいれば、ノーベル賞をもらって素晴らしいスピーチができる人さえいます。
寝たきりになったり、日常の生活に介助が必要になったりする人もいれば、水泳やゴルフなどスポーツを楽しめる人もいます。
個人差の原因は、体や頭を使い続けているかどうかの違いです。しかも、高齢になればなるほど、その差は広がります。
若い人が骨折して1カ月ほど入院したとしても、骨がくっつけば歩けるようになります。たとえその間、寝たきりで何もせず、ぼーっとしていたとしても、IQがどんどん落ちてしまうということもありません。
しかし、70代後半ともなると、そうはいきません。
骨折して入院し、本も新聞も読まず、1カ月も天井ばかり眺めて寝ていると、理解力が急速に低下して、ボケたようになってしまうこともめずらしくない。
退院したものの筋肉が衰えて、その後まったく歩けなくなってしまうということもよくある話です。
■マイナス思考に陥りそうになったとき“つぶやくべき言葉”
頭や体を使わなかったときの機能低下は、高齢になるほど激しくなります。
寝込むようなことがなくても、コロナ自粛のように活動的でない生活が長く続くと、足腰がかなり弱って、認知症も悪化してしまう。
それほど高齢者にとって、脳機能、運動機能を維持するためには「使い続ける」ということが重要なのです。
とにかく動く、とにかく頭を使う。身体と頭を使い続けることを心がけてください。使えば使っただけ、老化を遅らせることが可能です。
逆に、体が動かないとき、体調がすぐれないときに「もうだめだ」と落ち込むと、いよいよ体や脳の老化を速めます。
マイナス思考に陥りそうになったときは、「なんとかなるさ」とつぶやいてみるといいでしょう。たったこれだけのことですが、脳内にドーパミンという「やる気ホルモン」が出ます。
脳は思いのほか単純にできていて、自分の言葉を信じる性質があるため「なんとかしよう」と奮起して、意欲が高まるのです。だまされたと思ってやってみてください。
(初公開日:2024年8月10日)
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精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
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