大切なのは「話のネタ」でも「オチの面白さ」でもない…「人前で堂々と話せる人」がトーク中に考えていること
プレジデントオンライン / 2025年1月23日 19時15分
※本稿は、芝山大補『お笑い脳』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■「人と話すのが怖い」の対処法
人前に立ったときに、「自分の力をうまく発揮できなかった」経験はないですか?
実はその悩みを解消するヒントは、自分の考え方にあるんです。
5年ほど前、コミュニケーションの悩みを解決するコンサルをしていたとき、「人前が怖くてうまく話すことができない」という悩みを持った女性と出会いました。その女性は「誰も私の話になんて期待していないし、みんなから喋るなと思われているはず。だから話すのが怖い」と言うのです。
「誰もそんなこと思ってないよ」と伝えたら、
「……気を遣わないでください。本当はあなたもそう思っています」とのこと。
「どうして僕があなたに対して『話すな』と思うの? 理由がないでしょ」
「……私がブスだから。『ブスが喋んな』って思っているはずです」
僕は「あなたはブスではないし、そもそも容姿の好き嫌いで『話すな』なんて思わないよ」と返しました。
しかし、彼女は納得がいかないようで、話はずっと平行線のままでした。
■「他人も同じ考えを持っている」と思い込んでいる
そのとき、僕はふとあることを思いついて、こう尋ねてみたのです。
「もしあなたが自分より容姿が劣っている人を街で見かけたら、どう思う?」
するとにらんだ通りの回答を口にしたのです。
「『ブスが街を歩くな』って思います」
僕はこの考え方に、人が力を発揮できなくなる法則があると思いました。
人は「他人も自分と同じ考えを持っている」と思い込みやすい生き物です。
だから、誰かに放った言葉は「自分にも同じ言葉で返ってくる」ように感じてしまう。
昔から「人に悪口を言うと、自分にも返ってくる」と言いますが、まさにその構図だと。
■人前で堂々と話せる人が、考えていること
思えば僕も芸人時代にエピソードトークをするときに、緊張してしまって力を発揮できないことがありました。その緊張の原因は他人から「話すのが下手」だと思われたくないからでした。
しかし、その「思われたくない言葉」は、人が話しているときに僕が心の中で「他の人に放っていた言葉」だったのです。
ある日、人前でも堂々とトークができる友達に「自分が話してるときに、聞いている人にどう思われていると感じてる?」と聞いてみると、その友達はあっけらかんとこう言いました。
「え? みんな応援してくれてるでしょ。俺の話を聞きたいって思ってるはずだから」
それを聞いてハッとした僕は、続けて「じゃあ、君は人の話を聞いているときは、どう思ってる?」と尋ねました。
するとその友達はこう答えたのです。
「『もっと話を聞きたい。頑張れ!』って思って聞いているよ!」
■“ちょっとでもいいところ”を探してみる
そのとき、初めて気づきました。
僕が話すときに緊張していたのは、人の話を聞いて「この人、話すのが下手だなぁ」と思ってしまうことがあったから。
つまり「人の話を聞いているときに思っていることは、自分が話すときに返ってくる」のではないだろうかと。
人の失敗をあざ笑うような人は、自分も笑われることに怯える。
人の容姿をバカにする人は、自分も容姿でバカにされることに怯える。
これはきっと全てに共通すると思います。
とはいえ、この原因がわかっても改善するのは一筋縄ではいきません。そこで僕はこの法則を応用できればと思い、先程の女性の方にこうお願いしました。
「『ブスが街を歩くな』と思ってしまったとしても、『せやけど、服はちょっと可愛いやん』と良いところを探すクセをつけてみて」
■発言のハードルを上げているのは自分自身
それから1年後に彼女から連絡が来ました。
「おかげさまで人生が変わりました。今では人と話すのが楽しいです」
人の良いところを探して寛容になることで、自分自身への意識も変わり、人前で話すときの恐怖心がなくなったそうです。
僕自身も、この法則がわかって以降、人が話しているときは「頑張れ!」と応援することにしました。そうすることで、自分が話しているときも、聞いている人が「頑張れ」と言ってくれている気がして、堂々と自身を持って話せるようになったのです。
人の話やアイデアを聞いているときに「くだらない発言をするな」「つまらない話をするな」と思うと、自分の発言へのハードルも高くなってなかなか話せなくなる。人が失敗したときに「ダサい」と思うと、自分も失敗を恐れて行動できなくなってしまう。
もしあなたが「うまく力を発揮できない」と悩んでいるならば、その原因は「自分の放っている言葉」なのかもしれません。
■「ショックなことを言われたとき」の対処法
さて、紹介が遅れましたが、僕はこれまで芸人300組以上にネタを提供してきた、作家の芝山と申します。
お笑いのネタ作りの他にも、養成所の講師、芸人の技術を言語化して伝える仕事など、世の中に笑顔を増やすための活動に取り組んでいます。最近ではありがたいことに、企業様での社員研修や、大学での講義などもさせていただくまでになりました。
僕は「人間関係の悩みは、芸人の技術によって解決できる」と思っています。
ある日、SNSで生配信をしていると、こんな悩みを打ち明けてくれた子がいました。
「学校で『ゴリラ』って言われて、ショックで何て返せばいいのかわからず困っています。どうしたらいいですか?」
■ネタ作家がアドバイスしたこと
僕はこうアドバイスしました。
「怒っているフリをして、『あのな! ゴリラじゃない! ゴォリィラァァァア(ネイティブな言い方で)だから!』と言ってみたら?」
すると後日、その子からコメントで「教えてもらった返しをやってみたら、ウケました。ゴリラって言ってきた子も笑っていて、ゴリラって言われることが全然気にならなくなりました。ありがとうございます」と報告してくれたんです。
僕はこの相談がきっかけで「お笑いの技術でもっとたくさんの人の悩みが解決できるんじゃないか」と考えるようになりました。
この子はここだけを見れば、人生で「ゴリラ」と言われたときにうまく返せるようになっただけかもしれません。
しかし、笑いによって解決できると知った経験で、この先の人生でまたツライことがあったときに、「あのときのように解決できるのでは?」と、活路を見出せるようになれるかもしれません。
■人間関係の悩みは「お笑い」で解決できる
そして先の話のように落ち込んでいる心の悩みを解決することも、いじめで悩んでいる人に笑いの技術を教えて解決することも、会話で笑いを取れる技術を伝えていくことも、全てこの世界の笑顔が増えることに繋がると思っています。
コミュニケーションは人が生きていく上で当たり前にするものです。それゆえ技術を学ぶメリットには気づきにくいですが、当たり前にするものだからこそ、うまくできるようになればたくさんの得が生まれます。
「イヤミを言われても何とも思わなくなる」「失敗をしても雰囲気が悪くならない」「営業が取れるようになる」「ママ友が作りやすくなる」「困ったときに頼れる人や、相談できる人が増える」
コミュニケーションの技術を学ぶことは、あなたの人生の悩みを解決し、ツライ時間を笑顔の時間に変えてくれるものではないでしょうか。
■すごいものと比較したらおもろくなる
ゴリラの話、特殊すぎて使えないよ! と思ったあなたに、ひとつだけ。誰でも使える「ヒドいいことを言われたときの対処法」を拙著『お笑い脳』(KADOKAWA)から紹介します。
「すごいものと比較する」という方法です。
事例➀「○○って、つまんないよね」
A「Bってさ、つまんないよね〜!」
B「ヒドいな……」
A「あ、ごめん!」
とても痛々しい空気になってしまっていますよね。
では、この状況ですごいものと比較してみましょう。
A「Bってさ、つまんないよね〜!」
B「まぁ、ダウンタウンと比べたらそうかもね」
A「誰と比べてるんだよ(笑)」
こんな感じで、つまんないと言われたら「おもしろい人」のTOPと比べることで、比べる対象に違和感を作りおもしろくします。
事例②「身長が高すぎる」
A「Bってさ、身長高すぎだよね」
B「でもスカイツリーよりは低いですよ」
A「そりゃそうだろ!(笑)」
こんなふうに、「高さ」をイジられたときは、「高さ」のTOP=スカイツリーと比較しておもしろくします。
■あらかじめ防衛策を考えておく
こうした負けて当たり前すぎるものと比べると、「そりゃそうだろ!」というツッコミを言いたくなるものです。では、何が起こっているのか整理しますね。
「言われたもの」と「逆のすごいもの」と比較する
→「○○と比べるとそうかもね」
例1)「つまんない」と言われた→おもしろい人=ダウンタウン
「ダウンタウンと比べたらそうかもね」
例2)「絵が下手だね」と言われた→絵がうまい人=ゴッホ
「まぁ、ゴッホと比べるとね〜」
「言われたもの」で「もっとすごいもの」と比較する
→「でも○○と比べるとそうでもないよ」
例1)「身長が高すぎ」と言われた→もっと高いもの=スカイツリー
「でもスカイツリーよりはそうでもないよ」
例2)「足が短い」と言われた→もっと足が短いもの=ドラえもん
「でもドラえもんよりは長いけど?」
あらかじめ、自分がよく言われる「気にしていること」を、このどちらかのフォーマットに入れるとどうなるかを考えておくと楽になります。
A「お前って、喋りすぎだよな」
B「まぁ、○○と比べたら口数は多いかもね」
A「あれ無口キャラだろ(笑)」
回答例)カオナシ
A「お前って、喋りすぎだよな」
B「でも○○よりかは静かだよ」
A「そりゃそうかもだけど(笑)」
回答例)明石家さんま(さんまさん、すみません)
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ネタ作家
1986年兵庫県生まれ。2007年、NSC大阪校に入学。2009年、2011年にはキングオブコント準決勝進出。現在はネタ作家に転身し、賞レースのファイナリストなど、芸人300組以上のネタ制作に携わる。2019年からは、「笑いの力で人間関係に悩む人を救いたい」という想いから、お笑いの技術を言語化して伝える「笑わせ学」に取り組む。講義やイベントでの指導、YouTubeやTikTokでの活動を通じて、多くの人に芸人の技術を伝えている。著書に『おもろい話し方 芸人だけが知っているウケる会話の法則』(ダイヤモンド社)、『お笑い芸人が教える みんなを笑顔にしちゃう話し方』(えほんの杜)、『お笑い脳』(KADOKAWA)。
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(ネタ作家 芝山 大補)
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