ノートの真ん中に「1本線」を引くだけ…書くのが遅い人でも「誰が読んでもわかるメモ」を作れるシンプルな方法
プレジデントオンライン / 2025年1月24日 7時15分
※本稿は、佐野雅代『その場で言語化できるメモ』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■他人の意見に引っ張られるときは、メモが有効
ここからは、実際に1本線メモを使って「言語化」していく流れを、いくつかのシーンに分けて説明していきたいと思います。
1本線メモは大きく分けて3つの種類があります。
②学んだことを言語化して自分のものにするためのメモ
③自分とのコミュニケーションをするためのメモ
それでは、早速、書きはじめてみましょう。
まずここでご紹介するのは、
・その場ですぐに言語化して発言するためのメモ
です。
あなたは、「他人の意見や様々な情報に引っ張られて、自分の考えや気持ちに確信が持てない」「相手の発言にモヤッとするけれど、その原因がわからなくて言い返せない」といった経験はないでしょうか。私はよくありました。
こんなとき、即座に自分の意見が言えたらいいのに……と思いながらも、的外れだったら嫌だなと思って言い出せなかったり、モヤッとしたまま結局うまく言葉にできずに終わってしまったりして、本当にもどかしい気持ちになります。
■左側:他の人の発言、右側:自分の考え
このもどかしさを解消するためのコツは、まず左側に「他の人が話した内容」を書いていき、それから右側に「自分が考えたことや感じたこと」を書いていくことです。
はじめのうちはうまく分けられなかったり、右側がなかなか出てこない、ということがあるかもしれません。でも慣れてくると、その場でメモを取りながら、自分の考えや意見を整理して「言語化」できるようになります。
この方法は、会議で意見を伝えたり、セミナーや研修で感想を述べたり、面談やインタビュー、誰かの意見をまとめて報告するときなど、様々な場面で使えます。
ここでは、会議を例にとって、説明していきたいと思います。
会議の事前の準備
まず最初に、真ん中に1本線を引きます。
会議なので、あらかじめ一番上に次のようなことを書いておくとよいでしょう。
左側に
・日付
・議題
・参加者(どんな人でどんな関心を持っているのか)
・自分の役割
右側に
・会議の目的、目指すべきゴール
■2時間の長丁場でもさらさらとメモを取れる
私が裁判所書記官として法廷に入っていた頃、証人尋問や本人尋問などで当事者が話したことをメモに取り、調書にまとめる仕事をしていました。
そのときは、事前に事件記録を読み込んで、どういう事件か、誰の、何のための尋問なのかを簡単に書いておくようにしていました。そうすることで、2時間近くある長い尋問でも要点を意識してメモを取ることができ、あとで調書にまとめやすくなるのです。
会議も同じで、事前に上記のようなことを確認して、ある程度流れを予想しておくと、メモが取りやすくなります。場合によっては、意見やアイディア、必要な資料などを用意して臨むこともできるようになります。
また、会議には、必ずその日の目的や目指すべきゴールがあると思います。右側の一番上には、たとえば、「次のプロモーションの方向性と役割分担、スケジュールを決める」「新しい商品について、AとBどちらの企画で進めるかを決める」など、具体的な目的を書いておきます。もし複数あるなら、全部書いておきましょう。
目的さえちゃんと把握しておけば、たいていの意見は的外れにはなりません。
会議では、いろいろとアイディアを出していくうちに、いつの間にか、目的から離れていってしまうこともよくあります。そんなとき、すぐに本題に戻れるようにするためにも、メモに「目的」を書いておきましょう。
■左側は「自分の考えや判断をはさまずに書く」
準備ができたら、いよいよ会議に臨みます。
まずメモの左側に「事実」や「他の人の発言」を書いていきます。要は、自分で感じたこと、考えたこと以外のすべてです。
左側を書くときの基本的なポイントは、「自分の考えや判断をはさまずに書くこと」です。
言語化が苦手な人は特に、「自分は何を話そう」「これを言ったらどう思われるかな」などと、意識が自分自身へ向きがちになります。ですが、自分のことをあれこれ考えながら、話を聞いて書くのは難しいですよね。大事な話を聞き逃さないためにも、他の人が話す場面では、しっかり相手の話を聞いてメモを取ることに集中することが大事です。
最初は「話している内容をもれなく書く!」くらいの勢いで向き合うのがよいと思います。大事な部分だけをうまくまとめようと思う必要はありません。そもそも何が重要な情報なのかを判断しながら書くのは、かなり難しいことだからです。
まずは質より量。話が一区切りつくまで、あるいはある程度考えるための情報が出そろうまでは、左側のスペースを埋めることに集中しましょう。
■スピーディかつ正確にメモを取るコツ
とはいえ、聞いたことを一字一句全部書こうとするのは大変です。話すスピードが速いと、ついていけなくなります。
そんなときは、次の3つのポイントを意識してみてください。
①「議題」「キーワード」「結論」を中心に書き留めておく
話題が変わるたびに、今何について話しているのかを見失わないよう、「議題」を短く書いておきましょう。
中身については、「キーワード」と「結論」を中心に書き留めておいて、足りないと思った部分は、一息ついたところで補充します。
たとえば、
「今回の販促案ですが、人気タレントに依頼するのは反対です。予算的に厳しいのと、それに対応する労力が大変だからです」
という発言があったとすると、
「販促案
人気タレント反対 予算 労力NG」とだけとりあえず書いておけば、だいたい何の話かわかりますよね。
その後、一息ついたところで、「労力だけだとわかりにくいかな?」と思ったら、「対応大変」と書き足しておく、といった具合になります。
■難しい漢字、固有名詞が頻発するときは?
②略語を使う
頻繁に出てくる言葉を毎回漢字で書いたり、長い単語をそのまま何度も書くのは面倒です。
そこで、法廷に立ち会っていた頃よくやっていたのは、原告は「X」、被告は「Y」、裁判官は「J」といったふうに略語を用意しておくことです。ほかにも、人の名前や、長くて複雑な固有名詞なども、略語を作っておくようにしていました。
たとえば、渡邉さんという人が、
「前年度は、サウンドイングリッシュ初級講座の売上が予想以上によかったので、その分、今期は文科省プロジェクトへの予算をアップしてもよさそうですね」
と言ったとします。
そこで、
・渡邉さん→(ワ)
・サウンドイングリッシュ初級講座→SE初
・文科省プロジェクト→文P
という略語を使って、
(ワ)「SE初の売上◎→今期、文Pの予算アップOK」
とだけ書いておけばわかります。
このように、名前の頭文字を取ったり、部署名、商品名、プロジェクト名など、よく出てくるキーワードについて略語を使うと、かなり素早くメモすることができます。
③問いと答えで話が進む場合は「答え」を優先して書く
質疑応答やパネルディスカッションなど、「問い」と「答え」で話が進む場合、全部をメモしきれないと思ったら、まず「答え」のほうを書いておきます。答えがあれば、どんな質問をされたのかがだいたいわかるからです。その後、一区切りついたところで、必要に応じて質問を補充します。
■「問い」は書かなくても意外と読める
たとえば、
回答者:3~8歳くらいまでのお子さんを持つ、子育て中のお母さんをメインの顧客層と考えています。昨今の物価高などを背景に、高額セット教材の購入を見送るご家庭が多いようです。そのため、オリジナル教材もすべて含めたパッケージ型の講座ではありながらも、そこまで価格が高くない講座を目指しています。
質問者:リリース時期はいつ頃を考えていますか?
回答者:来年4月以降を考えています。これまでテスト的にやってきた、いくつかの単発講座をまとめる形で、できるだけ早くリリースしたいと思っています。
というやりとりは、
「3~8歳のママがメイン。物価高など→高額セット教材見送る家庭多い。パッケージ型だが価格が高くない講座にする。
来年4月以降。テスト講座をまとめ、なる早で」
とだけ書いておけば、まずは必要なことがわかります。
その後、
「音もじ講座顧客層」
「リリース時期」
といった感じで、質問内容を一言補充しておくと、全体の内容がよりわかりやすくなります。
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元裁判所書記官、英語発音指導士
神奈川県出身。上智大学法学部国際関係法学科卒業。裁判所書記官として、横浜地方裁判所の民事部にて年間約2000件の裁判に立ち会い、法廷内でのできごとを調書にまとめる仕事を行なう。「公証官」とも呼ばれる、いわば「国家が認めたメモのプロ」。 また、最高裁判所の秘書課で海外出張のサポート業務などをする中で、企画書やプレゼン資料、会議の議事録、世界各国の裁判所や大学へ提出する依頼文書や履歴書、司法制度に関する調査報告書、お礼状にいたるまで、書記官としての約12年間を通じて様々な種類の文章を作成する。現在は、「音から言葉の力を伸ばす英語発音指導士」として、歌と絵本で学ぶ発音講座、おうち英語講座、英語の読み書き講座、女性のためのライティング講座などの運営や、講師の育成を行なっている。無料コミュニティ ことばのちから未来ラボ
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(元裁判所書記官、英語発音指導士 佐野 雅代)
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