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「ヒートショック予備軍」は高齢者だけじゃない…「風呂場でいきなり倒れる」リスクを減らす"優秀なフルーツ"

プレジデントオンライン / 2025年1月27日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koni

寒い日が続く冬場に気を付けなければいけないのが「ヒートショック」だ。内科医の梶尚志さんは「高血圧や糖尿病といった基礎疾患がある人や、寒冷への感覚が鈍くなっている高齢者は特に注意が必要だが、41℃以上の高温で長風呂をする若い世代にもリスクがある」という――。

■入浴中の事故が増えるのは11~2月

今の季節、私たちの身体は気温の急激な変化にさらされます。近年、冬場の入浴中やトイレで発生する「ヒートショック」と呼ばれる現象が、大きな健康リスクとして注目されています。

今回は、ヒートショックとはどのような体の状態のことをいうのか、そして、そのメカニズムと効果的な日常生活での予防策について詳しく解説します。

ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかる現象によって、失神や心筋梗塞、脳卒中などの重篤な症状が引き起こされることです。

冬場の暖かいリビングから冷えた浴室やトイレといった空間での急激な温度の変化によって発生しやすく、高齢者や基礎疾患を抱える方々にとって致命的な結果をもたらす可能性があります。

【図表1】「おぼれる」事故による高齢者の救急搬送人員(東京消防庁管内)
消費者庁「コラムVol.4 冬に増加する高齢者の事故に注意! ― 入浴中の溺水事故」より

■日本の「寒い家」が引き金となる

日本の冬は気温が低く、屋内と屋外の温度差が大きくなります。この温度差が、身体にとって大きなストレスとなります。また、日本の住宅構造の影響もあります。

日本の住宅では、浴室やトイレが十分に暖房されていないことが一般的です。これにより、暖かいリビングルームから寒い浴室へ移動する際、身体が急激な冷気にさらされます。

国立循環器病研究センターの報告によると、寒冷環境が血管収縮を促し、急激な血圧上昇を引き起こすことが確認されています(※)

※週刊日本医事新報 4827号

このような背景から、高血圧や糖尿病、動脈硬化といった基礎疾患がある方、年齢が高い方は、血管の柔軟性の低下が、気温の変化に伴う血圧の急激な変化に耐えられないことが示唆されています。また、高齢者は感覚が鈍くなり、寒冷刺激に対する感覚が低下することもリスク要因となります。

■「熱い湯で長風呂」は体に負荷がかかる

ライフスタイルの多様化に伴い、若い方でも注意が必要です。

ある住宅資材・住設機器メーカーが行った長風呂に関する調査結果(※)によると、「体の芯から温まることができると思う」や「美容効果があると思う」というイメージからか、スマートフォンやタブレットを使用しながら41度以上の熱い湯で長風呂をした経験があると回答した10代〜20代が5割以上おり、若い人ほど体に負荷のかかる入浴をしていることがわかりました。

※LIXIL「長風呂に関する意識調査」2023年10月実施

高温での長湯は湯船から立ち上がる際、温熱効果による血管拡張や水圧による締め付けから血管が解放され、一気に血管が広がり血圧が下がることで起立性低血圧を引き起こし、立ちくらみや失神の要因となります。リラクゼーションの一つとして入浴、サウナを楽しむ傾向がある若い世代でも注意が必要です。

■ヒートショックを起こしやすい人は…

図表2に当てはまる人は、ヒートショックを引き起こすリスクが高い人です。

【図表2】ヒートショック予備軍チェックリスト

個々の体調や基礎疾患の有無によって異なりますが、ヒートショックの主な症状としては、次のようなものがあります。

①失神

突然の血圧低下により脳への血流が減少し、意識を失うこと

②心筋梗塞

血圧変動が心臓に過剰な負荷を与え、冠動脈が詰まる可能性

③脳卒中

血圧の急激な変化が脳血管に影響を及ぼし、脳出血や脳梗塞など脳卒中を招く可能性

いずれも致命的な症状に発展することがあります。

■「入浴前」と「入浴後」にやるべきこと

ヒートショックを予防するために、住宅環境の改善は重要です。浴室や脱衣所に暖房器具を設置し、室温を快適に保つことがポイントです。また、断熱性の高い住宅改修を検討することも、温度差を減らす効果的な手段です。

しかし、住宅改修や暖房器材の設置が難しい場合は、以下のポイントを取り入れてみてください。

①入浴前に脱衣所や浴室を十分に暖める
・浴槽にお湯がたまっている場合はふたを外す
・シャワー給湯をする
・浴室乾燥機を使用する
・脱衣所に小型のヒーターを設置する
②入浴時は、お湯の温度は40℃以下を推奨
③入浴時間は15分以内を目安にする
④入浴前と入浴後に適度に水分補給を行う

■インフルやコロナに罹っている人は要注意

また、図表3にある症状や状態がある方は、入浴前にご家族や同居人へ入浴すると一声かけましょう。声がけを受けた人は、入浴中、時々見に行くなど、十分な経過観察を行うようにお勧めしています。

【図表3】入浴中に注意が必要な症状・状態

■手軽に食べられるミカン、バナナで高血圧予防

ヒートショックを防ぐために、食生活からアプローチする方法があります。

まず、基本的に3食バランスの取れた食事を摂取することで、血管の血流を高めて健康を維持することが重要です。

特に、血管の柔軟性を高めて炎症を抑えるオメガ3系脂肪酸を含む魚類(サーモン、イワシ、サバなど)の摂取はお勧めです。

オメガ3脂肪酸と健康的な脂肪が豊富な食品
写真=iStock.com/samael334
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/samael334

次に、高血圧のリスクを下げ、血管への負担を軽減する減塩の調味料を選ぶことや、加工食品やインスタント食品の摂取を減らすことが大切です。

また、ナトリウムの排泄を高めて血圧の上昇を抑えるカリウムを豊富に含む果物(ミカンやバナナなど)や、生野菜(水菜やセロリなど)の摂取も有効です。

冬の定番フルーツであるミカンは、100gあたり約150mgのカリウムを含みます。ビタミンCも豊富なので免疫力アップも期待できます。バナナはエネルギー補給源として食べている人が多いかもしれませんが、実は100gあたり約360mgとカリウムを多く含んでいる食材です。どちらも皮をむくだけで簡単に食べられるというのがいいですね。

それから、血管の内皮細胞を保護する目的で、抗酸化物質であるビタミンCを多く含む食品、緑黄色野菜(ブロッコリーやパプリカなど)の摂取がお勧めです。

そして、日頃からタンパク質を多く含む肉・魚・卵料理・大豆製品を積極的に摂取するようにしましょう。タンパク質は血管のコラーゲンの合成に関わり、血管の弾力性を保ち、血圧の変動に伴う血流障害を予防します。

タンパク質源
写真=iStock.com/a_namenko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/a_namenko

■朝晩のストレッチで血圧の急上昇を予防

また、血管の血流を健康に保ち、急激な血圧変動に対処できる体を作るための適切な運動習慣も重要です。

まず、ウォーキングやヨガといった有酸素運動をお勧めします。有酸素運動は、全身の血管を拡張させ、血流を改善するだけでなく、心肺機能を高め、血圧を安定化させる働きがあります。一方で、筋力トレーニングなどの無酸素運動も、血管の弾力性を維持し、基礎代謝を上げ、日常生活での体力維持に有効です。

起床時や就寝前のストレッチや柔軟体操は、血管の緊張を和らげ、筋肉の血流を改善するだけでなく、リラクゼーション効果を高め、寒冷刺激による血圧の急上昇を予防します。

ゆっくりとした腹式呼吸を1回1分、1日数回実施する深呼吸法や、瞑想なども、心拍を整え、全身のリラックスを促進します。

■体を動かす前には必ずウォーミングアップを

これらの運動習慣は継続することが何よりも大切です。週に3〜5回、1回あたり30分程度の運動を目指すようにしましょう。

【図表4】ヒートショックを予防する運動

そして、これらの運動を行う前には、5〜10分程度の軽いストレッチやその場での足踏みなど、必ずウォーミングアップを行い、急激な温度変化による身体のストレスを軽減し、運動中の血圧変動を抑制してください。また、高齢者や基礎疾患を持つ方は、医師と相談し無理のない範囲で実施しましょう。

冬場は防寒対策が重要で、温かい室内での運動をお勧めしています。日常生活の中で無理なく続けられる運動を選ぶことが成功の鍵です。

ヒートショックは、気温差の激しい冬場に特に注意が必要な健康リスクです。基礎疾患の有無や住宅環境、日常生活の習慣がその発生に深く関わっています。しかし、適切な予防策を講じることで、そのリスクを大幅に減らすことが可能です。科学的なデータをもとに適切な行動を取り、健康的な冬を過ごしましょう。

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梶 尚志(かじ・たかし)
梶の木内科医院院長
1964年生まれ、富山県出身。富山医科薬科大学(現富山大学)医学部医学科卒業。医学博士。総合内科専門医、腎臓専門医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「体の不調」に栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行う。著書に『え、私って栄養失調だったの? その不調は病気でなく状態です!』『え、うちの子って、栄養失調だったの? その不調は食事で改善します!』(みらいパブリッシング)がある。

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(梶の木内科医院院長 梶 尚志)

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