日本の会社員は優秀だからこれをやると独立できる…人生後半が見違える「50歳から定年まで」の過ごし方
プレジデントオンライン / 2025年1月26日 15時15分
※本稿は、藤井孝一『50代がうまくいく人の戦略書』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「自分」のキャリアを過小評価するべからず
50代までキャリアを積んだ人には、たくさんの知識、スキル、経験が備わっています。そういった蓄積を生かして活躍する余地は十二分にあります。
にもかかわらず、多くの人が自分のキャリアを過小評価しています。そのせいで、せっかくのチャンスをムダにしています。「自分がこれまでやってきたこと」に、もっと自信を持ってほしいものです。
私は起業をテーマに講演したりスクールで講義をしたりするとき、50代の人に向けてこんなふうに話をしています。
「はっきりいいますが、50歳でこんなところにきている時点で起業家の適性がありません。適性がある人は、もっと早い段階で独立しているはずです」
そうすると、聞いている人たちは一様に不機嫌な顔をします。続けて私は、次のように話をします。
「でも、ここまで会社員を続けてきたということは、組織人としては間違いなく適性があります。組織の中で、いろいろな制約を抱えながら、利害が異なる人たちの話をまとめ、成果を上げていく。それは誇るべきスキルです」
■日本の会社員には優秀な人が多い
実際にお世辞でもなんでもなく、日本の会社員には優秀な人が多いと思います。長い年月を通じて獲得してきた知識、スキル、経験には相当なものがあります。今から会社を立ち上げるのは難しくても、個人で仕事をしていくことはできます。
自分の強みや特技、セールスポイントを見つけ出すためには、「自分の棚卸し作業」が不可欠です。棚卸し作業とは、これまでのキャリアを通じて、得意だったこと、好きだったこと、究めてきたこと、人の役に立ったことなどを書き出し、それらをつなげたり関連づけたりしながら、自分がやるべき仕事のヒントを見つけていく作業を意味します。
たとえるなら、自分が背負ってきた荷物をいったん床に並べてみて、使えそうなものを見つけ出すということです。私の周りには、棚卸し作業を行なったことで自分のビジネスを見つけた人が少なくありません。
たとえば、大手証券会社で働いていた人が棚卸しをしたことで、自分が子供の頃からお金に強い関心を持っていたことに気づき、定年後は「お金の専門家」として再スタートを決意したというケースもあります。
■書き出すことで、客観的に自分を評価できる
棚卸しをする際は、頭で考えるだけでなく、手を使って紙に書き出していくのがおすすめです。書き出すことで、客観的に自分を評価することができます。
それでも自分のよさや強みが見つからないという人は「他人に聞く」というのも一つの方法です。そもそも、仕事を評価するのは自分ではなくて他人です。
どんなに自分がやりたいことでも、他人が評価してお金を出してくれなければ仕事になりません。逆にいえば、他人が必要としていることであれば仕事になるのです。
ただし、同じ会社の人に聞くのはダメです。というのも、会社員は同じような人に囲まれて仕事をしています。外に出ればすごい仕事をしているのに、社内では当たり前すぎて、その仕事の価値がわからなかったり、理解されにくかったりすることがあるからです。
自分では当たり前で人並みだと思っていたスキルが、じつは稼ぎのネタになることもけっこうあります。
「私は営業の仕事を続けてきましたけど、特別なスキルも持っていないし、ずば抜けた成果を出してきたわけでもありません」
などと自分を卑下する人がいますが、それは過小評価です。
営業マンでいうと、会社のトップセールスになれなくても、それなりの企業で評価される能力を持っていれば、外にいっても十分通用します。実際に、私が知っている中にも「営業コンサルタント」になって活躍している人がいます。
くれぐれも自分を見くびってはいけません。
■60歳までに新たな専門知識を身につける
世の中の50代の多くは、定年を迎えることは意識していても、定年後について具体的なイメージができているわけではありません。
どうやら「先のことは定年してから考えればいい」と考えているフシがあります。他人事ながらとても心配です。
特に、仕事に関して、「定年になったら独立して、これまでの取引先のどこからか新しい仕事をもらえばいい」と楽観的に考えるのは危険です。
定年後に新たなキャリアを築こうと思ったら、会社を退職してから準備をはじめるのでは遅すぎます。
というより、辞めてから準備をするのはほとんど不可能といえます。なぜなら、会社を辞めたとたんに、仕事人としての価値が一気に失われてしまうからです。
わかりやすい例を挙げれば、今、会社員であるあなたがいろいろな人に会えるのは「○○社の社員」という肩書があるからです。退職してから「元○○社の社員です」と名乗ったところで、門前払いを食らうのが普通です。
重要なのは、定年後に備えて今から準備をしておくことです。
「その会社にいることで生じている価値」を「自分自身の価値」に転換する作業が必要であり、その作業をするのが50代の時間なのです。
50歳から10年の時間をかければ、相当なことができます。
自分の専門分野を決め、専門家を名乗り、情報発信を行ない、顧客を獲得する。最初はうまくいかなくても、3~5年もかければ「週末起業」を軌道に乗せることができるはずです。幸い、無収入の時期が続いても本業で収入が得られていれば安心です。
うまくいけば、本業と同じくらいの収入を得ることも可能でしょう。そうなれば、会社にしがみつく必要はなくなります。
■あなたの「市場価値」はまだまだ高められる
お金の面でも、10年をかけて堅実に資産形成を行なえば、それなりの運用益を手にすることができます。NISA(少額投資非課税制度)などを活用して、目標額を決めて積立投資を行なうのも悪くありません。
趣味や勉強を新たにはじめるのもいいでしょう。
「一万時間の法則」という法則があります。ある分野で一流になるためには一万時間が必要だとする考え方です。逆にいえば、一万時間を費やせば、誰でも一流のレベルに達することができるわけです。
毎日三時間弱を趣味に使えば、約10年で一万時間に到達します。そこまで時間が使えなくても、10年間コツコツと継続すれば、趣味や勉強で相当な成果を出せるのではないでしょうか。
「勉強」という意味では、資格を取得して、その資格を使って経験を積むというやり方もあります。
私がワインのソムリエの資格を取ったのは50歳のときでした。ワインが好きで、もっと深く知りたいと考え、資格の取得に挑戦したのです。
おそらく50代からソムリエの資格取得にチャレンジして、そこから世界大会などで優勝を目指すのは無謀だと思います。やはり若い人の感性や嗅覚には、とても太刀打ちできません。
それでも、10年をかけて飲食店などで副業しながら地道に修行を積めば、プロとして活動するのは不可能ではないはずです。
10年というまとまった時間をどう使うか。くれぐれも「戦略」にもとづいて計画的に時間を使うことを忘れないでください。
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経営コンサルタント
中小企業診断士。1966年、千葉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、大手金融機関を経て99年に独立。著書に『週末起業』(ちくま新書)など。
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(経営コンサルタント 藤井 孝一)
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