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こうして私は会社勤めをしながら資産3億円を築いた…投資家がフル活用した「ネットにタダで落ちている情報」

プレジデントオンライン / 2025年1月28日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oatawa

資産を増やすにはどうすればいいのか。個人投資家のろくすけさんは「私は個別株長期投資に地道に取り組み、3億円の金融資産を確保した。投資先を選ぶ際にはネットにある企業情報が非常に役立った」という――。(第1回)

※本稿は、ろくすけ『大暴落の夜に長期投資家が考えていること』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

■個別株長期投資に向いている企業の探し方

註:本稿において個別企業に言及する箇所がありますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

投資してみたい企業の面白いと思った理由、評価できると感じたポイントを言語化できたら、次に取り掛かりたいのは、その企業の業績や財務の傾向をざっくりと把握することです。

文系脳であっても、ここでは数字に触れないわけにはいきません。でも安心してください、難しくならないような説明に努めます。

まず確認したいのが、上場企業ならば必ず財務局および金融庁に提出している、有価証券報告書という書類です。企業のウェブサイトのIRページ、あるいはEDINETで入手することが可能です。

その有価証券報告書の本文2ページ目に載せられた表「主要な経営指標等の推移」から5期分(可能であれば、2つつなげて10期分)の数字を拾って並べてみます。並べた数字から次の3つを確認します。

①業績が「安定」して「成長」していることを確認する
②少ない投資でたくさん稼げているか、キャッシュフローの状況から確認する
③ROEの高位安定を確認する

■「売上高の急成長」は要注意

まず、業績の「安定」と「成長」から説明します。

最初に、企業の業績が「安定」していることが確認できると、将来にわたって企業の価値と株価とが大きくブレずに並走することが期待できるため、長期投資においては大きな安心材料となります。

逆に業績の「ボラティリティ」(変化率の大きさ)は、波乗りのトレードで儲けるには重要な要素ですが、長期投資ではその不確実性ゆえに敵となることが多くなります。業績の不安定さそのものによって、企業の価値、実力に対する市場の評価が割り引かれてしまうためです。

次に、企業の実力を拠りどころにする長期投資では「成長」は必須の要素です。ただし、注意すべき点がいくつかあります。一つは売上高の急成長です。株式市場には売上高の急成長を評価する投資家も多いのですが、急成長しているということは、その市場自体が大きく伸びていることと想像されます。

そうした拡大のさなかにある市場は、新しい競合相手が次々と市場参入し、競争環境が厳しくなることで消耗戦に突入する事態も十分に考えられます。したがって、「成長」という観点では、売上高よりも経常利益、当期純利益の推移により大きな関心を向けるようにしてください。

■有益な情報はネットにタダである

また、利益面においては、新商品や新サービスを市場に投入して売上高の急拡大を目論む際には広告宣伝費などの経費をかけて一時的に利益を犠牲にすることが必要な場面もあるでしょう。しかし、株式会社において株主の経済的な取り分は唯一、純利益からのみです。ですから、5年、10年の時間軸で、その推移を注視する必要があります。

ある年に減益や赤字になるだけでなく、それが延々と続く、そうでなくても度々起こるようであれば、株主としての取り分が増えていくことは期待しづらくなります。そのような企業の株を欲しがる投資家の数も当然減っていくことでしょう。

ここで出番となるのが、さきほど触れた有価証券報告書です。有価証券報告書は全体では100ページを超えるものも多いのですが、この時点で見るのはさきほど言及した「主要な経営指標等の推移」という、その中にある1ページのみです。

これは有価証券報告書の2ページ目に必ず載せられているもので、直近の5年(5期)分の売上高、利益などが一覧できます。その企業のウェブサイトのIRページやEDINET、あるいは「株主プロ」のようなサイトで過去をさらにさかのぼることができます。可能であれば10年(10期)分の数字を拾って並べて眺めてみましょう。

■「成長」「安定」を確認する方法

ここでは、一般用(ドラッグストア等で買える)医薬品とスキンケア商品の製造販売を行っているロート製薬を具体例として取り上げます。下の表はロート製薬の2024年3月期までの直近11期分の業績です。

【図表1】ロート製薬の業績
『大暴落の夜に長期投資家が考えていること』より

2024年3月期の売上高は2708億円となっていますが、前年2023年3月期の売上高2386億円から伸びています。コロナ禍前の2020年3月期の売上高は1883億円、その翌年2021年3月期は1812億円と微減しましたが、そこから3年で50%売上高を増加させることに成功しています。

10年前、2014年3月期の売上高を確認すると、1438億円でした。10年で2倍には届きませんが、着実な成長がうかがえます。というのも、この間に売上高が前期比で減少したのは2021年3月期のみでした。成長性だけではなく安定性もあることがわかります。

当期純利益も確認してみましょう。2014年3月期は89億円でした。翌2015年3月期の純利益は86億円と減益となりますが、2016年3月期は90億円と増益します。その後、2019年3月期までは100億円近辺をウロウロしましたが、2020年3月期に純利益154億円とすると、そこからは増益を継続、2024年3月期には309億円と、2020年3月期から純利益を倍増させました。

業績推移を並べてみて売上高もさることながら利益がさらに伸びているのがわかったことで、この企業への関心、興味がグッと高まった方も多いのではないか、と想像します。その関心、興味が、事業の特徴や強みを主体的に調べる原動力になることでしょう。

■少ない投資でたくさん稼げているか

有価証券報告書の2ページ目には、主要な経営指標の推移とあわせて、財務状態に関する数値が載せられています。純資産額、総資産額、そして自己資本比率です。

純資産額は、株主の持分を示している一方、総資産額はその企業の全ての資産の金額を示しています。自己資本比率は総資産に対して株主の持分がどのくらいの割合を占めているかを示しています。自己資本比率の数値が大きい方が、借入金等への依存が少ないことになります。

ロート製薬の場合、2024年3月期末、総資産3461億円に対して純資産2470億円。自己資本比率は71%と非常にガッチリとした財務内容です。加えて保有の現金は865億円と十分な状態だと言えます。財務状態が健全であると評価できる企業です。

その企業が「少ない投資でたくさん稼げているかを、キャッシュフローの状況から確認する」ことも、有価証券報告書の2ページ目にある主要な経営指標等の推移からざっくりとしたイメージを持つことができます。

キャッシュフローとは企業の現金の流れを示しています。「利益は意見、キャッシュは事実」という言葉もあるくらいで、例えば減価償却費や引当金の計上方法(=経営者の意向)によって変わる利益とは違い、現金の流れ、キャッシュフローはありのままの姿であるため、ごまかしが利きません。よって、両方を見ることが大切です。

■3つのキャッシュフロー

キャッシュフローは3つに分類されます。営業活動によるキャッシュフロー(以降、営業CF)、投資活動によるキャッシュフロー(以降、投資CF)、財務活動によるキャッシュフロー(以降、財務CF)の3つです。

営業CFは読んで字のごとく、その企業が事業活動、日々の営業から新たに生み出した現金の金額を示しています。企業間の取引では現金を受け取る前に売上を認識することが通常ですし(いわゆる「掛け売り」)、また仕入れた商品が売れるまでは在庫として残るため、利益が出ていても営業CFがマイナスになることもあります。

ろくすけ『大暴落の夜に長期投資家が考えていること』(星海社新書)
ろくすけ『大暴落の夜に長期投資家が考えていること』(星海社新書)

ただ、大きな付加価値の創出を継続的に実現できている、稼ぐ力のある企業の営業CFは、通常コンスタントにプラスになります(※業種によって例外はあります)。

投資CFは企業の設備投資、事業買収等の投資活動に関わる現金の増減を示しています。積極的な新規投資を実行する企業の投資CFはマイナスになります。新規投資を行わず遊休資産や事業の売却を行った場合などは、投資CFがプラスになることもあります。

積極的に新規投資を実行する企業の場合、投資CFのマイナス額が営業CFよりも大きくなることもあります。そのような場合は手持ちの現金を取り崩すか、銀行から借入金を増やす、あるいは、新たに増資するなど資金調達を行いますが、これらの結果の現金の流れが財務CFになります。財務CFには株主への配当や自社株買いでの現金の動きも反映されます。

■投資の効果には時差がある

「少ない投資でたくさん稼いでいるか」は、営業CF、投資CFの2つの推移から確認します。ロート製薬の主要経営指標の推移をもう一度見てみましょう。

【図表2】ロート製薬の主要経営指標の推移
『大暴落の夜に長期投資家が考えていること』より

2024年3月期の営業CF342億円に対して投資CFはマイナス163億円。投資CFのマイナス額の2倍以上の営業CFとなっています。ここで注意が必要なのは、投資の効果はすぐにあらわれず数年の時差があるものです。

そこで投資CFの推移にも着目します。2020年3月期の投資CFはマイナス94億円。それ以降、マイナス102億円、マイナス164億円、マイナス131億円と多少の凸凹はありますが、極端な変化は見られません。

ロート製薬で注目したいのは、コンスタントに営業CFが投資CFのマイナスを上回っていることです。営業CFと投資CFの合計額をフリーキャッシュフロー(以降、FCF)と呼びますが、FCFがプラス基調を維持しています。

この表よりもさらに過去をさかのぼると、ロート製薬は2010年3月期以降、FCFのプラスがずっと続いていることがわかります。FCFのプラスを継続でき、かつこの表からわかるように営業CFも拡大傾向にあるということは、事業で得られた現金の範囲内で上手に投資を行い、その投資が着実に成長に結びついている企業と推測することができます。

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ろくすけ 個人投資家
投資歴約25年の個別株長期投資家。会社員として勤務しながら個別株長期投資に地道に取り組んだ結果、3億円の金融資産を確保し、2019年にアーリーリタイアを実現。かねてよりの夢であった全国各地の株主総会を巡る旅を満喫中。投資と鉄道メインの旅行をテーマとした人気ブログ『ろくすけの長期投資の旅』を運営。著書に『10倍株の思考法 「ビジネスモデル×企業価値」で考える株式投資入門』(日経BP)がある。

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(個人投資家 ろくすけ)

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