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「入浴時間が10分超」の人は血糖値を爆上げしている…糖尿病専門医が勧める「お湯の温度」と「浸かる時間」の正解

プレジデントオンライン / 2025年1月28日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

血糖値を下げるにはどうしたらいいか。糖尿病専門医の矢野宏行さんは「血糖値の安定には、上質な睡眠とそれを実現する入浴が欠かせない。重要なのはその長さだ。短すぎても長すぎても、糖尿病の発症率が上がってしまう」という――。

※本稿は、矢野宏行『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)の一部を再編集したものです。

■太っていなくても糖尿病になる人はいる

私は糖尿病の専門医として都内にあるクリニックで日々地域の患者さんの診療を行い、年間3000人を超える糖尿病患者さんを診ています。

2022年7月からは、診療の傍らDr.ゆきなりの名義でYouTubeチャンネル「Dr.ゆきなり【〜糖尿病克服への道〜】」を開設し、薬に頼らない糖尿病の改善法を発信しています。

本チャンネルでは私の専門医としての経験を踏まえ、科学的な根拠をベースに、なるべく多くの患者さんが、間違った努力をせずに、最短ルートで糖尿病を改善できるような情報をお伝えするように努めています。

糖尿病と聞くと、食べ過ぎ、太り過ぎ、運動不足など生活習慣の影響で血糖値が上がってしまうといったネガティブな印象をお持ちの方も多いと思います。

しかし、実際はそうでもありません。食べ過ぎていなくても、太っていなくても血糖値が上がってしまう方が多くいらっしゃいます。実は糖尿病は生まれ持った体質や、血糖値が上がりやすい生活スタイルなどの原因が複雑に絡み合って発症してしまいますが、自分の努力である程度改善することができる数少ない病気のうちの一つでもあります。

■「分かっていても継続できない」そんな人のために

とはいえ、現実にはなかなか自分の努力だけでは良くなることが少ない病気であるとも言えます。「日々運動して、食事制限をして、甘い物は極力食べない」。これが糖尿病改善の常套句であり、クリニックや病院に通っているみなさんも同じようなことを今まで言われ続けてきたのではないでしょうか?

またインターネットで糖尿病について調べたことがある方であれば、自分でできる改善策をいくつか試したこともあるかと思います。やるべきことは分かっている。でも継続できない。そして結果が良くならない。あなたもこうしたジレンマを抱えていないでしょうか?

また近年の情報化社会では、スマートフォン一つですぐに情報を得ることができます。そして「糖尿病」「血糖値」といったワードで検索をすれば、Web上には病気に関する基本的な情報はもちろん、具体的な改善策や、将来に起こる合併症に至るまでこと細かに紹介されています。とくに糖尿病に関する情報は膨大で、ネット上にはさまざまな情報があふれかえっています。その中から「本当に正しい情報や自分に合った情報を探さなくてはいけない」。これは大変ですよね。

■「薬に頼らず糖尿病を克服する方法」を解説

私も日々の診療の中で、患者さんから直接疑問を投げかけられます。その多くが、「血糖値を下げるために○○茶を毎日飲んでいるんだけど、糖尿病にいいんでしょ?」「血糖値が下がると言われている○○体操をしているから、他に運動はしなくても大丈夫でしょ?」といったものです。どこで見つけてきたのか、怪しげなサプリメントをネットで購入して自慢気に私に見せてくれる方もいます。

そうした患者さんたちを日々見ていた私は、糖尿病の正しい知識をお伝えする必要があると感じていました。

そこで、拙著『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)では最新の研究や論文を根拠にYouTubeチャンネルの動画をさらに掘り下げ、実際に日常の診療の中で患者さんから投げかけられた病気や生活、食事、診察などに関する疑問にQ&A方式で回答しました。さらに実際の糖尿病患者さんのケーススタディを紹介しながら、なるべく薬に頼らず、糖尿病を克服する方法も解説しています。みなさんが大量の情報の中で方向性を見失い、右往左往することがないよう、「この本が1冊あればもう大丈夫」といった内容になっているかと思います。

「1人でも多くの方がこの本を手に取り、正しい改善法で糖尿病を克服する」。これが私の願いです。ぜひ読むだけで終わりにせず、実践を続けていただきたいと思っています。

■糖尿病リスクが高まる睡眠時間

日本は世界第9位の糖尿病大国ですが、「世界的に見ても睡眠時間が少ない国」として知られています。ちなみに、OECD(経済協力開発機構)加盟国30カ国の調査によれば「日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、世界でもっとも睡眠時間が少ない」ことが分かっています。

※OECD Gender Data Portal 2021

また、糖尿病の発症リスクと睡眠時間の関係性を調査したデータでは「睡眠時間が5時間以下のグループは7時間以上のグループと比較して糖尿病発症リスクは5.37倍になった」という報告があります。

※Kita T, et al. Short sleep duration and poor sleep quality increase the risk of diabetes in Japanese workers with no family historyof diabetes. Diabetes Care 2012; 35: 313-318

つまり、睡眠時間が短いというだけでも糖尿病には良くないのです。

そこで、糖尿病と睡眠の関係性や適切な睡眠時間について紹介したいと思います。

まず、睡眠と血糖値の関係について言えば、血糖値は寝ている間に下がるという前提があります。そのため、睡眠時間が短くなると、血糖値が下がり切らない状態で朝を迎えてしまい、高血糖の状態が続いてしまいます。

なお、睡眠不足になると血糖値を上げるコルチゾールなどのホルモンが分泌されやすくなります。

このホルモンは体がストレスを感じると副腎という臓器からたくさん分泌されるようになります。すると、グルカゴンと同様に肝臓に作用して糖新生が起こり、いくら生活改善をしても血糖値が下がりにくい体質になってしまうのです。

【図表1】血糖値を上げるホルモン、下げるホルモン
出所=『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)

■長時間眠ればいいのか

さらに、睡眠時間が短くなると食欲が増えるホルモンが分泌されることが分かっています。

研究では、「睡眠時間が短くなると食欲を増やすホルモンが増え、食欲を抑えるホルモンが減る」という報告があります。食欲が増えると、肥満の原因となり、糖尿病を発症するリスクも高まるので注意が必要です。

※Taheri S, et al. Short sleep duration is associated with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased body mass index.PLoS Med 2004; 1: e62.

これとは反対に、睡眠時間が長過ぎてしまっても糖尿病の発症リスクを上げることが分かっています。研究でも「9時間以上睡眠時間がある場合、日中の活動不足による消費エネルギーの低下から糖尿病の発症リスクを上げる」という報告があります。

※Anothaisintawee T, et al. Sleep disturbances compared to traditional risk factors for diabetes development: Systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev 2016; 30: 11-24.

また、睡眠時間が多い方は二度寝をしている傾向がありますが、コルチゾールは目覚める1〜2時間前から急激に分泌され始めます。そのため、二度寝をしてしまうとコルチゾールを長時間分泌し続ける状態になってしまい、血糖値を上げてしまうこともあります。

■何時間睡眠が正解なのか

ここまでの解説で睡眠時間は長くても短くてもいけないことがお分かりいただけたかと思いますが、適切な睡眠時間はいったいどれくらいなのかという疑問をお持ちの方もいるかと思います。

45歳以上の成人を対象にした研究では「睡眠時間が5.5時間未満あるいは5.5時間〜6.5時間未満と短い人は睡眠時間が7時間〜7.5時間の人に比べてそれぞれ1.53倍、1.25倍糖尿病リスクが高かった」という報告があります。

※Heianza Y, et al. Role of sleep duration as a risk factor for Type 2 diabetes among adults of different ages in Japan: the Niigata Wellness Study. Diabet Med 2014; 31: 1363-1367.

さらに、アメリカ睡眠学会でも「毎日7時間は睡眠を取る」(図表2)ことを推奨しています。したがって、睡眠時間は7時間を一つの目安とするとよいでしょう。

【図表2】ベストな睡眠時間は7時間
出所=『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)

ここまで糖尿病に良い睡眠時間について解説しましたが、睡眠は量だけでなく、質も大切です。そこで、質の良い睡眠を取るために心がけておきたい習慣を解説したいと思います。

■「就寝2時間前」「10分間」がベスト

糖尿病になったら睡眠時間の確保だけでなく、質の高い睡眠を取ることも大切です。

そこで、重要になるのが入浴です。

研究によると「湯船に入浴する頻度が高い糖尿病患者はBMI、血圧、HbA1cの数値が改善した」という報告もあります。

※Katsuyama H, et al. Habitual Hot-Tub Bathing and Cardiovascular Risk Factors in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus: A Cross-Sectional Study. Cardiol Res 2022; 13: 144-153.

実は入浴には、「骨格筋への血流が良くなるのでインスリン感受性が良くなる」などの作用があることが分かっています。では、糖尿病になったら具体的にどのような入浴方法が良いのでしょうか。

まず、大切になるのが入浴タイミングです。

人間には体温が下がると眠くなるという性質があり、入浴してすぐに床につくのはお勧めできません。入浴後1〜2時間経つと体温が下がってくるので、必ず就寝の2時間前に入浴するようにしましょう。

なお、入浴時間は10分間程度を目安にして長時間の入浴は予期せぬ低血糖や脱水症状に伴う高血糖を引き起こす可能性があるので控えましょう。

【図表3】入浴は就寝2時間前がベスト
出所=『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)

■サウナはいいのか?

入浴の際にもう一つ押さえておきたいのがお湯の温度です。

38〜40度程度のお風呂に入ると、副交感神経が優位になり、ストレスホルモンの分泌も減るため、血糖値が上がりにくくなります。

矢野宏行『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)
矢野宏行『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)

これとは反対に熱過ぎるお風呂は、交感神経が優位になり、アドレナリンの分泌が増えて血糖値が上がりやすくなるので注意してください。

ちなみに、最近のブームの影響もあり、サウナに入る方も多いかと思います。

サウナをはじめとする温熱療法は入浴と同様に「2型糖尿病患者のHbA1cと血糖値を改善する」という報告もあります。しかし、糖尿病患者さんには、脱水による高血糖や、神経障害による知覚鈍麻で足を火傷するなどのリスクが伴うため、必ず医師に相談してから入るようにしてください。

※Sebök J, et al. Heat therapy shows benefit in patients with type 2 diabetes mellitus: a systematic review and meta-analysis. Int J Hyperthermia 2021; 38: 1650-1659.

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矢野 宏行(やの・ひろゆき)
糖尿病専門医
やのメディカルクリニック勝どき院長。医学博士。1981年生まれ。2006年に日本医科大学卒業後、同大学附属病院に勤務。その後、国立国際医療研究センター研究所の糖尿病研究センターで糖尿病について研究をする。2023年、やのメディカルクリニック勝どきを開院。「Dr.ゆきなり」としてYouTubeでも情報発信をしている。著書に『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(アスコム)、『自分でできる! 薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)がある。

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(糖尿病専門医 矢野 宏行)

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