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「長年一緒に働いているのに、まるで他人同士」人間関係が弱い職場にこそ必要な"飲み会とは違う"アプローチ

プレジデントオンライン / 2025年2月1日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

職場のメンバーの人間関係を良好にするにはどうすればいいのか。MIMIGURI代表Co-CEOの安斎勇樹さんは「ただ忙しく仕事をこなすだけでは、共通した体験を分かち合うことはできない。チーム単位でのリフレクションを行うといい」という――。

※本稿は、安斎勇樹『冒険する組織のつくりかた 「軍事的世界観」を抜け出す5つの方法』(テオリア)の一部を再編集したものです。

■忙しく仕事をこなすだけでは「共通体験」はできない

「同じ釜の飯を食った仲間」という表現があるように、共通した体験をお互いに分かち合えているかどうかは、精神的なつながりにとって大きな意味を持ちます。

冒険的なチームづくりにおいては、メンバーと共にした体験を振り返り、それに意味を見出すという作業が欠かせません。

体験を振り返って意味づける行為のことを、一般に「リフレクション(内省)」と呼びます。

リフレクションの重要性は、しばしば個人の学習や教育の領域では強調されますが、チームにとってもこの振り返りプロセスがきわめて大切なのです。

同じチームで働いているメンバーたちは、もちろんさまざまな体験を共にしています。しかしながら、ただ忙しく仕事をこなすだけでは、「共通体験」としての意味づけは進みません。「あんなことがありましたね」「たしかに、ありましたね! あの失敗が、いまのプロジェクトに活きているなあと感じます」――そんなリフレクションがあって初めて、それはチームの共通体験となるのです。

■「チーム単位でのリフレクション」が必須

しかし、リフレクションに重きを置いているチームは、それほど多くはないでしょう。期末とか年度末の人事評価のタイミングで、チームについての振り返りがリーダーに求められることはあるかもしれませんが、それがほかのメンバーに共有されるケースは稀だと思います。

そのため、何年も何十年も一緒に仕事をしているのに、メンバーたちのあいだに一向に共通体験が蓄積されていかず、精神的なつながりが希薄なままに留まっているチームがたくさんあります。

冒険的チームづくりの観点からは、「チーム単位でのリフレクション」が欠かせません。できるだけ実体験から時間を空けず、こまめに振り返りを行うことをおすすめします。なんらかのプロジェクトが終了するたびごとに、あるいは、ルーティン業務なら四半期ごと・半期ごとなどで、リフレクションのスケジュールだけでもまず決めてしまいましょう。

MIMIGURIの経営チームでは、「マンスリーリフレクション」という3時間のロングミーティングを、月次で実施しています。どんなに忙しくても月末に経営チームで集まって、この1カ月間をじっくり振り返るようにしているため、組織のなかでバラバラに起きていたさまざまな出来事を「共通体験」化することができています。いいチームをつくるには、“同じ釜の飯を食べ続ける工夫”が欠かせません。

■「リフレクション=反省会」ではない

「プロジェクトお疲れさま〜」「今期も無事に終わってよかった!」で終わらせず、経験したことを振り返り、自分たちの言葉に落とし込みながら、新たな「教訓」を得る――これがチームの共通体験となり、チームづくりにつながります。

「教訓を得る」といっても、「こうすべきである」「こうせねばならない」といったマニュアル的な制約や規則を増やすわけではありません。むしろ、チーム全体で未来に向けた「新たなルーティン」を構築していく活動を意味しています。

リフレクションはしばしば、失敗や間違いに対する「反省」だと誤解されがちです。しかしここで重要なのは、失敗・成功だけにとらわれることなく、すでに起きた出来事や自分たちがとった行動を客観的に見つめ直すことです。

チームリフレクションは反省会や責任追及の場ではなく、一人ひとりがリフレクションを持ち寄り、共通体験を意味づけながらチームの教訓を得る場なのです。

また、チームでのリフレクションを社内公開イベント化すると、チームレベルだけでなく、組織レベルでの「共通体験」化も進みます。なかでも、チームづくりと組織づくりを同時に実現する「社内番組」は、ぜひともおすすめしたい取り組みの1つです。

オフィスで働くビジネスパーソン
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■オンライン配信型の「社内向け番組」

すでに触れたとおり、MIMIGURIにはオンライン配信型の「社内向け番組」がいくつもあります。その1つに、終了したばかりのプロジェクトについて「公開リフレクション」を行う「まいに知たんじょうび」という番組があります。

番組内では、パーソナリティと共にプロジェクト担当者たちが振り返りを行い、「どんなことに苦労したのか?」「なにが課題だったのか?」「それをどう解決したのか?」「学んだことや気づいたことはなにか?」などを深堀りして、ナレッジ(知)を生み出していきます。

MIMIGURIが手がけている組織開発支援のクライアントは、規模や業界もバラバラです。そのため、コンサルティングにおける企業の課題やその解決アプローチはプロジェクトごとに千差万別であり、ほかのプロジェクトでなにが行われているのかがブラックボックス化しやすいという問題があります。

安斎勇樹『冒険する組織のつくりかた 「軍事的世界観」を抜け出す5つの方法』(テオリア)
安斎勇樹『冒険する組織のつくりかた 「軍事的世界観」を抜け出す5つの方法』(テオリア)

そこで、1つのプロジェクトが終わるたびに、チーム全員でこの社内番組に出演してもらい、彼らの「共通体験」を語ってもらうようにしたところ、これが社内では大好評でした。視聴は任意としていますが、番組にはエンタメコンテンツとして楽しめる工夫が凝らされているうえ、ほかのチームでの取り組みを学べる機会が貴重だからか、多くのメンバーがランチタイムの息抜きも兼ねて積極的に視聴しています。

ちなみに学びが深かったプロジェクトのうち、クライアントの許諾がとれたものは「社外番組」としてアップデートして、MIMIGURIが運営するウェブメディア「CULTIBASE」で無料公開しています。社内のリフレクションの成果を社外にも広げる活動は、営業や採用広報にもプラスになります。

■「KPT」での振り返りはあまり機能しない

最後に、チームでのリフレクションを行うときの具体的方法にも触れておきましょう。

リフレクションにはさまざまなやり方がありますが、過去の体験を次の3つに分けて振り返っていく「KPT」という方法が知られています。

・Keep――よかったこと、今後も続けたいこと
・Problem――よくなかったこと、改善すべき課題
・Try――次にチャレンジすること、具体的なアクション

KPTは、解くべき課題ととるべきアクションに主眼が置かれたフレームワークで、次の行動に迷わずに済むというメリットがあります。しかし、これが有効なのは、「Problem」の解釈が容易で、改善すべき課題が明確であるようなケースに限られます。

一方で、チームリフレクションでは、KPTはあまりうまく機能しません。というのも、本書の[KEY7]で見たとおり、チーム内では問題の解釈がバラバラになりやすく、専門的な知識・技術だけでは解決できない「適応課題」が多く紛れ込んでいるからです。モヤモヤした違和感に対して、メンバーそれぞれがKPTを使って意味づけをしていくと、解決の方向性にもまとまりが出ず、適応課題の見落としが発生しかねません。

■チーム内の問題が見つかる「KMQT」リフレクション

そこで、MIMIGURIでは「KMQT」というフレームワークを使っています。

これは当社のナレッジマネジメント責任者であり、リフレクションの研究者でもある瀧知惠美が独自に開発したものです。

・Keep――印象に残っているよかったこと、これからも続けたいこと
・Moyamoya――プロジェクト活動のなかでなんとなく引っかかっていて気になること、“モヤモヤ”すること
・Question――向き合っていきたい問い、探究していきたいこと(“モヤモヤ”を問いに変換すると?)
・Try――今後やってみたいこと

KMQTにおける発明の1つは、あえて「モヤモヤ」を共有するステップを入れて、適応課題を早期に発見できるようにしたことにあります。これがあることで、些細な違和感やうまく言葉にできない感情を共有しやすくなり、チーム内の関係性の改善にもつながります。

また、これも[KEY7]で見たとおり、問題を「問い」のかたちに落とし込むことで、解決に向けた「目線合わせ」をしやすくする工夫も入っています。

プロジェクトの終了時や期末のような節目のタイミングには、ぜひメンバーで集まってKMQTに沿ったリフレクションを行い、チームの共通体験をつくってみてください。

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安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)
MIMIGURI 代表取締役Co-CEO
1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。組織づくりを得意領域とする経営コンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」を創業。資生堂、シチズン、京セラ、三菱電機、キッコーマン、竹中工務店、東急などの大企業から、マネーフォワード、SmartHR、LayerX、ANYCOLORなどのベンチャー企業に至るまで、計350社以上の組織づくりを支援してきた。また、文部科学省認定の研究機関として、学術的知見と現場の実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高める「知の開発」にも力を入れている。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。東京大学大学院 情報学環 客員研究員。主な著書に『冒険する組織のつくりかた』『問いかけの作法』、共著に『問いのデザイン』などがある。

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(MIMIGURI 代表取締役Co-CEO 安斎 勇樹)

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