タワマン住民には「ローン+10万円」がのしかかる…住んでみて痛感した「夢の暮らし」にかかる諸経費の重み
プレジデントオンライン / 2025年1月28日 17時15分
※本稿は、竹中信勝『タワマン理事長 ある電通マンの記録』(ワニブックス)の一部を再編集したものです――。
■豪華なジムやラウンジを維持するのは住民
タワマンに住まう夢のような暮らしと引き換えに、住宅ローンの返済という現実が容赦なく迫ってくるだけでも大変なのですが、追い討ちをかけるように各種費用がつきまといます。
管理費は、マンション全体の共用部分(エントランス、エレベーター、廊下、共用施設など)の維持管理に使われる費用です。タワーマンションではプールやジム、ラウンジ、ゲストルームなどの豪華な共用施設が備わっていることが多く、それらの維持費用が管理費に反映されて高額になる傾向があります。
24時間対応のセキュリティ体制や、オートロックシステム、防犯カメラの設置など、住民が安心して過ごすための設備が整えられているため、運用コストも高くなるのです。
そして、タワマンといえばエントランスに華やかなコンシェルジュがいるところも多くあります。コンシェルジュや管理人、警備員など、人件費も他のマンションに比べると高額に。人件費も管理費に含まれるので、必然的に金額が上がっていきます。
■将来に備えて住民みんなで積み立て
修繕積立金も、管理費と並んで必要になる費用です。将来の大規模修繕に備えて蓄えておく資金ですが、タワーマンションは建物の規模が大きいため、修繕費用も高額になります。
外壁の修繕や、エレベーター、給排水設備の更新など、建物全体の大規模修繕には多額の費用がかかります。住民みんなで少しずつ積み立てて費用を出し合うにしても、なかなかにパンチが効いた金額です。修繕積立金を適切に蓄えておくことで、将来、修繕を行う際に追加負担を避けることができます。
そのために、修繕積立金も比較的高額に設定されるのです。タワーマンションでは修繕積立金が毎月数万円になることも珍しくありません。
■ローン返済だけでギリギリの人は厳しい
クルマを所有する人なら、駐車場代もタワーマンションに住む際の大きな費用のひとつです。とくに都市部にあるタワーマンションでは、駐車場の数が限られていることで争奪戦状態になり、駐車場の利用に高額な費用がかかる場合もあります。駐車場代が月数万円なんてことも珍しくありません。クルマを所有する住民にとっては大きな負担となります。
タワーマンションでは省スペースでより多くのクルマを駐車させるため、機械式駐車場を採用していることが多いです。その維持管理にももちろん費用がかかり、この費用も駐車場代に上乗せされる場合があります。
これらの管理費、修繕積立金、駐車場代を合計すると、タワーマンションに住む場合、毎月の負担が10万円以上になることも珍しくありません。都市部の高級タワーマンションでは、これらの費用が家計を圧迫します。これらの費用を合計すると、ローン返済以外に月々10万円以上の負担が生じる可能性が高いです。
タワーマンションによっては、共用施設の利用料や特殊設備の修繕費用など、先に挙げた費用とは別途お金がかかる場合もあります。
タワマンに住む際は、ローンの返済だけでなく、管理費、修繕積立金、駐車場代などの毎月の維持費がかかることをしっかりと把握しておく必要があります。いかにもタワマンの住人らしい、輝かしい生活を維持するには、こうしたランニングコストを含めた総合的な資金計画が重要です。
■「修繕積立金が安い」の落とし穴
不朽のマンションさえあれば悩みのタネは消えるのですが、現時点では残念ながら経年劣化するマンションしか存在していません。すなわち定期的な修繕と切っても切れない関係にあるのです。
そのために修繕積立金を蓄えていくわけですが、この積立金が不足していると、急な修繕で出費が発生した場合、住民全体に大きな負担がかかる可能性があります。
月々の修繕積立金が安く設定されているマンションも存在します。修繕の必要がない平時の費用負担は軽減されるため、住人としてはありがたく感じるかもしれませんが、将来的に大きなリスクを伴うことがあります。積立金が十分でないと、いざというときにさまざまな問題が発生するのです。
■修繕費が足りないと急な出費が求められる
修繕積立金の額は通常、マンションの長期修繕計画に基づいて設定されます。この計画は、通常10年から20年先を見据えて、どの部分にどの程度の修繕が必要になるかを予測し、積立金を決定するというもの。あくまで予測であるため、定期的に実際の劣化状況などをチェックしながら長期修繕計画を見直し、必要に応じて積立金額の調整が必要です。
近年では物価高や人材不足が原因で工事費用が増加している点が問題視されています。こうした修繕費用の変動も考慮に入れると、積立金額の設定は余裕を持った金額に越したことはないのです。
マンションのビッグイベントである大規模修繕や予期せぬ緊急修繕が必要になった際、積立金が不足していると、各住民に対して一時金の徴収をしなければなりません。
住民視点で考えると、数千円程度の徴収であれば住民への影響は小さいかもしれませんが、まとまった額になると住民にとって大きな負担になります。住民には住民それぞれの経済状況がありますから、マンションの修繕で急な出費を発生させてしまっては、住民に大きな迷惑をかける可能性があります。
■マンションの資産価値が低下するリスク
また、しっかりと計画を立てて修繕積立金を徴収していたとしても、マンションの劣化状況によっては修繕時期が早まることも考えられます。業者に定期的な建物の診断を依頼し、修繕のタイミングや範囲を見直すことで、適切な積立金額が算出できれば安心です。
ほかにも金銭的なリスクはあります。修繕積立金が不足しているために修繕措置が遅れてしまうケースです。適切なタイミングで修繕が行われないと、建物の劣化が加速します。
その結果、マンション全体の資産価値が下がる可能性も大いにあるのです。資産価値の低下は将来の売却価格にも影響を与えるため、適切なタイミングで然るべき修繕を行うことが重要となります。
修繕積立金は、低額に設定すればよいというものではなく、マンションの長期的な維持管理に必要な資金を確保するため、妥当な金額で設定されるべきです。管理組合は常に長期的な視点を持って、マンション全体の資産価値を守るため、積極的な運営が求められます。
■「100年住める」はメンテナンスあってこそ
タワーマンションは一般的な木造住宅とは異なり、主に鉄筋コンクリート(RC)や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)で建設されています。木造よりも堅牢なつくりであることから、これらの構造物の理論上の耐用年数は約60年から100年です。
長寿命で素晴らしいと感心するばかりですが、これはあくまで理論的な数字であり、適切なメンテナンスや修繕が行われている前提で算出されています。
寿命を左右する重要な要因は、なんといっても定期的なメンテナンスです。適切に管理され、計画的に大規模修繕が実施されているタワーマンションは、100年以上の寿命を持つ可能性もあります。逆に、メンテナンスが不十分なマンションは、建物の寿命を著しく短縮させる結果となります。
■タワマンの建て替えには大金がかかる
日本でタワーマンションが本格的に建設され始めたのは1990年代以降であり、現時点ではまだ築100年のタワーマンションは存在していません。そのため、タワーマンションの実際の寿命についてはまだ経験的なデータが少ないのが現状です。
しかし予測ベースであっても、タワーマンションの建て替えには膨大な費用と複雑なプロセスが伴うと予想されています。タワーマンションの建て替えは、通常のマンションのそれよりもはるかに難易度が高いのです。
理由としては、タワーマンションが大規模な建物であり、住戸数が多いため、建て替えを決定するにあたり所有者の5分の4以上の同意が必要となることが挙げられます。同意を得て決定した上で、工事期間中の住民の仮住まいの手配や、資金調達の問題が山積みとなることもネックでしょう。
タワーマンションの建て替え費用は、マンションの規模や立地、構造によっても異なるため一概には言えないものの、一戸あたり数千万円から数億円規模になる見込みです。建物全体で考えると、総額は数十億円から数百億円に達すると見積もられます。
■住民が数百万円~千万円を支払う可能性も
タワーマンションの解体費用だけでも数億円から数十億円が見込まれ、新たに建設する場合の費用も、同じく数十億円から数百億円の規模です。その予算感をベースに、都市部の高層タワーマンションの場合、土地の価値や建築コストが高くなるため、費用がさらに増加します。
建物自体の予算問題をクリアしたとしても、建て替え期間中、住民の仮住まいを確保しなければなりません。この費用も各戸で負担することになり、場合によっては数百万から千万円以上の追加コストがかかることがあります。
仮住まいであっても、タワーマンションで暮らしていたところから、あまりにもグレードの低い物件には住み替えられない心情は確実にあるでしょう。
■建て替え問題に直面したとき、どうするか
建て替えの難しさとコストを考えると、必ずしも建て替えが唯一の選択肢とは限りません。たとえば、大規模修繕を繰り返して建物の寿命を延ばすこともひとつの方法です。大規模修繕は建て替えよりも費用が抑えられるため、マンションの維持費用を分散させる効果があります。
タワーマンションの寿命は、適切なメンテナンスと修繕が行われていれば100年以上に延ばせる可能性があります。しかし現実問題、マンションの劣化具合や建て替えをするかどうかは、建物の管理状態や住民の意向に大きく依存します。
今後数十年のうちに建て替え問題に直面するタワーマンションが出てくるはずなので、住民の同意や資金調達の問題が気になるところですが、この目で見届けられるかどうかは私自身がその時期まで生きていられるかどうかにかかっています。
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プロデューサー・作家
1961年10月生まれ。広告会社・電通に新卒入社。TVメディア、地方自治体、電力、住宅、自動車、流通、通信、金融等多数の業種を担当、新規顧客開拓で140社以上の実績。2020年12月末、35年勤務した電通を早期退職。人生100年時代における個人の多様な価値発揮を支援する仕組み=『ライフシフトプラットフォーム(LSP)』のスターティングメンバーとして活躍中。2022年3月、社会構想大学院大学実務家教員養成課程修了。タワーマンションを購入し、長い間管理組合の活動はスルーしてきたが、ある日管理組合の役員に抽選で決まり、しかも理事長を拝命する。全くの素人が悪戦苦闘しながら問題を解決していく。自分がいろんな人に聞きまわって集めたたくさんの情報や経験をブログ「タワマン理事長」として情報発信もする。幻冬舎WEBマガジン「THE GOLDONLINE」において「タワマン理事長」を連載。
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(プロデューサー・作家 竹中 信勝)
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