お金でも名声でもない…ハーバード大教授の75年間の追跡調査で分かった「幸せな人生」に欠かせない重要要素
プレジデントオンライン / 2025年1月27日 8時15分
※本稿は、尾石晴『「40歳の壁」を越える人生戦略 一生「お金・つながり・健康」を維持できるキャリアデザイン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■幸せなはずなのに、なぜかすごく疲れる
私は子どもが2人いるワーママですが、会社員時代、出産を機に、時間が急激になくなりました。もちろん、24時間が消えたわけではなく、これまで自分の采配で好きにできていた時間に「子どものお世話」という大きな塊が入り、自分の時間がほとんどなくなりました。
家事・育児・仕事の繰り返しだけで、あっという間に過ぎていく日々。子どもはかわいいし、幸せなはずなのに、あれ? なんで私はこんなに疲れているのだろう?
今思えば、あれは「40歳の壁」の序幕だったのです。
・「趣味や習い事=幸せ」でも、その人間関係だけでは物足りない。
・「お金をたくさん持つ=幸せ」ではない。
・「仕事=幸せ」だと、定年で終わりが来る。
・「子育て=幸せ」でも、いつか子どもは巣立つ。
・「家でのんびり=幸せ」だと、運動不足で逆に健康を損なう可能性大。
■年齢によって変わっていく「幸せ」
「自分にとっての幸せは何か?」を考えていくと、要素は1つではない。さまざまな要素が重なるところを探すことが大事だと、「40歳の壁」を前にして気づきました。
20代は、仕事や友人が中心(お金はない、健康については考えたこともない)、30代からは仕事と家族だけ(とにかく時間がない)、40代からはすべてが重なるところを見つけられるくらい、自分の視野も思考も成長してきている(はず)。
では、40歳以降の幸せな人生の方向性は、一体どうしたら見つかるのか。自分にとって大切なことが重なり、誰かの正解ではなく、自分にとっての正解となる「あり方」とは何か。
まず、「幸せな人生には、どんな要素が必要か?」を分解してみたら、次の3つの要素が見えてきました。
・つながり(家族・友人・知人)
・健康(体力・認知力)
■なぜ私たちは「お金がほしい」と願うのか
「お金」「つながり」「健康」の3つの要素は、人間が幸せを感じる土台ともいえます。土台がないと家は建たない。強い風が吹いたり、大雨(人生あるある)が降ったりすると、すぐにグラグラしてしまう。それでは困るので、ここからは、この3つの要素について、さらに深掘りして考えていきましょう。
① お金
お金は、資本主義社会において、あなたの行動の選択を「自由」にするためのチケットです。
・上司と合わない → お金がある → 会社を辞める自由
・子どもに習い事をさせたい → お金がある → 好きな教育を選べる自由
・パートナーと性格が合わない → お金がある → 離婚できる自由
・おもしろそうな旅先を見つけた → お金がある → 旅行できる自由
多くの人は、金銭的な不安から解放されて、自由な人生を歩むために「お金がほしい」と思っています。つまり、本当はお金がほしいのではなく、自由な選択ができる状態がほしいということです。
■労働力だけで稼ぎ続けるには限界がある
自由な選択ができれば、好きなように生きていける。私たちは、自分の時間や能力(人的資本)を労働力として提供することで、お金を得ています。しかし、労働力だけでお金を得ている場合、定年や加齢によって、入ってくるお金はいつかなくなってしまいます。
ということは、労働力だけで得ている「お金」はいつか消えると考えて、お金と向き合う必要があるのです。
両親世代の多くは、貯金+退職金+年金で生活をしのいでいます。彼らが働き盛りだった当時、日本は高度経済成長に伴って貯金の金利が高く、1つの企業に40年も勤めていれば、それなりの額の退職金をもらえました。加えて、年金も自分が払った以上の金額をもらえます。
しかし、私たちアラフォー世代は、そうはならないことが目に見えています。人生100年時代で寿命は伸びているし、年金も払った以上にもらえることはなさそうです。
転職が当たり前になり、同じ企業に40年間勤める人も減っていて、退職金も期待できません。では、どうするか?
■月5万円でも定期収入があると一安心
・生涯現役で働く。
・お金が入る仕組みを持つ。
40歳以降は、この2つの方法でお金が入る経路をつくることを考えていきます。
まず、生涯現役で働くためには何をするといいのでしょうか? あなたが提供できる能力やスキルは何でしょうか?
たとえば、公民館で何かを教えている70代女性。現役の頃から培ってきたキャリアや趣味に関することを教えて、生徒20人から毎月3000円月謝をもらうと、月6万円になります。場所代を払っても、5万円は残るでしょう。年金+毎月5万円(年間60万円)の収入経路です。
細くても定期収入があるというのは、精神衛生上とても大事。このあたりは、本書の第4章でさらに詳しく解説していきます。
次に、お金が入る仕組みを持つことについて。これは、自分の労働力に頼らないで、お金が入る仕組みをつくるということです。
「投資信託を買って配当を増やしていく」という小さなものから、ビジネスオーナーになり、「人に労働を任せて、収益が入る仕組みを持つ」という大きなものまであります。
経営者(自分も働くことになる)ではなく、自分が寝ていてもお金が入る仕組みをつくるということです。難しそうですが、個人でもできます。たとえば、インスタ(Instagram)やブログのアフィリエイト(広告)で収入を得る、noteで文章を販売する、というのもこの仕組みを利用したものです。
■「サムマネー」を自分でつくるには…
お金が入る仕組みは、「こうすれば必ずうまくいく」という正解はありません。なぜなら、変数が100くらい(投資額、適性度、期間、市況、本人の資質……)あるからです。自分にとって当てやすい金脈を探すしかありません。
・小さく始めてみる。
・うまくいくなら続ける。
・うまくいかないなら改善してみる。
これを繰り返すのです。チャップリンが映画「ライムライト」で残した名セリフがあります。
「人生は、恐れなければとても素晴らしい。勇気と、想像力、そしていくばくかのお金があればいい」
意訳して「夢と勇気とサムマネー」という言葉でも知られています(以前対談した竹中平蔵さんに教えてもらいました)。ビックマネーじゃなくていい、でもノーマネーはつらい。
私が提案したいのはこの「サムマネー」をどうやってつくるかを考えることです。私の試行錯誤は本書の第5章に書きましたので、参考にしてみてください。
■良い人生の決定要素は「良い人間関係」
② つながり
『幸福の「資本」論』(橘玲著、ダイヤモンド社刊)という本に、つながりとは社会資本(家族や友人を含む人間関係)であり、幸福を考えるうえで一番重要であるといったことが書いてあります。
その理由は、「人間は共同体(職場や家族など所属するところ)の仲間から評価されたときに幸福感を感じる生き物だから」とも解説されています。
ハーバード大学教授のロバート・ウォールディンガーが、1938年から80年続いたハーバード成人発達研究の成果をTEDトークで公表しています(「What makes a good life? Lessons from the Longest Study on Happiness〈人生を幸せにするのは何? もっとも長期にわたる幸福の研究から〉」)。
「良い人生の決定要素は何か?」をテーマに724人の人生を75年間にわたって追跡調査したところ、重要項目は、「お金」でも「名声」でもなく、「良い人間関係」という結果だったそうです。
■つながりは幸せな思い出を残してくれる
私たちは、いくらたくさんお金を持っていても、死んだら使えないし、身体は老いとともに朽ち果てていく。最終的に残るのは、「幸せだったなぁ」という思い出です。
思い出は、一体何から生まれるのか? 良い人間関係です。家族と笑い合った日常や、友人たちとの楽しい雑談……。つながりは人を幸せにするのです。
「良い人間関係」といっても、優秀な人、地位の高い人とのつながりなど、大げさなものを指しているわけではありません。一緒にいてストレスを感じない人、気が合う人とのゆるく長く続く関係のことです。具体的には、家族やジム仲間、趣味仲間とのつながりなど。
また、つながりは多いほうがいいというわけでもありません。関わる人が多すぎると、人間関係のストレスや、コミュニケーションコストがかかります。
進化人類学教授のロビン・ダンバーは、人間がスムーズで、かつ安定的な社会関係を維持できる上限人数は、30〜150人(ダンバー数)だと報告しています。イメージとしては1クラス〜1学年5クラスくらいまでといった感じでしょうか。
■すぐに連絡が取れる10人、思い浮かぶ?
30人くらいの人との「何かあれば集まる」「困ったら相談できる」「雑談が弾む」くらいのゆるく細いつながりが、幸福度を高めてくれます。
皆さんは、そんな人間関係を築けていますか? 人間、年齢を重ねていくと、限られた場所にいて、限られた人に囲まれるため、新たな関係をつくるのが難しくなってきます。
積極的にさまざまなところに出向いていき、人間関係をつくっていける人は別ですが、多くの人は、固定化された人間関係に落ち着いてしまうんですよね。
頭の中に、すぐに連絡が取れる10人を思い浮かべてみてください。ここ数年で知り合った人が2人以下という人は、人間関係が固定化されやすいタイプ。年を取ると、減ることはあっても、増えにくい可能性大です。そんな人は、いろいろな人に会う機会を意識的につくることが大切です。
■カラダもココロも元気な状態が「健康」
③ 健康
健康とは何か? 皆さんはどんな状態をイメージしますか?
WHO憲章では、「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定義されています。
・カラダ元気
・ココロ(アタマ)元気
健康とは、この2つを満たしているということです。カラダは元気だけど、アタマが認知症の高齢者は「健康」ではないし、アタマは使えても不摂生がたたってカラダがボロボロの会社員も「健康」ではありません。
カラダの健康とココロ(アタマ)の健康を、その人らしく両立していることが大事。健康は、人的資本(自分が持っていてお金に替えられるもの)に含まれます。
人的資本は、ほかにもその人の持っている時間、体力、能力も含みます。①お金の項目でも触れましたが、多くの人は人的資本を労働力として提供して働いています。若い人が重宝されるのは、カラダもアタマも元気で、労働力があるからです。
■FIREできても、健康を保てなければ逆戻り
健康は目に見えないので、気づかないうちに摩耗していることがあります。働きすぎてカラダを壊してしまったり、ココロを病んでしまったり。しかし、自分にとってちょうどいい仕事であれば、むしろ健康を保つのに大きな役割を果たします。
・毎日決まった時間に起きる。
・定期的に食事を取る。
・(通勤があれば)歩く、動く。
・仕事関係の人と話すことで刺激がある。
・思考力を使って考える。
一度FIREやアーリーリタイアしたものの、結局復職してしまう人に多いのが、「生活が自由気まますぎて、身体を壊した」というパターンです。人間は本来怠け者なので、明確な目的を持って引退しないと、生活が乱れてしまいます。
■定年後も「不健康」にならないために
仕事をしていないので生活リズムが崩れる、動かない、好きなだけ食べる、人と話さない、考えることがない(恐ろしい!)。いくらお金の心配がなくても、不健康(死)に向かって歩いているようなものです。
仕事を持っていれば、それだけで「規律正しく生活する」という強制力を私たちにもたらしてくれます。会社員の場合は、65歳で定年が来てしまうと、この強制力が働かなくなります。そのため、「定年後も仕事を継続するには?」を考えて、準備しておくことが大事です。
もちろん仕事以外の趣味や習い事でも同じことがいえます。決まった時間に出かける、人と会う、思考力を使うことをルーチンとして日々に組み込んでおくことは、40歳以降の人生を幸せに生きるために大切です。
----------
Voicyパーソナリティ
外資系メーカーに16年勤務し、うち6年は管理職として活躍。長時間労働が当たり前の中、「分解思考」で時間を捻出。ワンオペ育児をこなしながら残業0時間を達成し、チームを社内表彰に導く。その傍ら、発信業・不動産賃貸業・ヨガインストラクター、メンタルオーガナイザー、ライフオーガナイザーなど、会社員以外での収入経路を次々と確保。2020年4月に会社員を卒業。音声メディア「voicy」では1000万回再生超えを記録し、トップパーソナリティとして活躍中。2020年にはヨガスタジオ「ポスパムfukuokaスタジオ」を立ち上げ、代表を務める。2児の母。著書に『やめる時間術 24時間を自由に使えないすべての人へ』(実業之日本社)、『「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。
----------
(Voicyパーソナリティ 尾石 晴)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
誰もがぶつかる「40歳の壁」攻略した人が強い真実 「得る」から「減らす」へ、潮目が変わる人生の分岐点
東洋経済オンライン / 2025年1月22日 7時40分
-
人生これから!50歳からの女性が人生を豊かにする生き方のコツ11
HALMEK up / 2025年1月20日 22時50分
-
「仕事と恋愛」に共通する"結果を出す人"の原動力 成否を分けるのは「能力や体力の差」ではない
東洋経済オンライン / 2025年1月16日 8時30分
-
”モテない男は幸せそうに見えない”は本当なのか…人生における「幸福」の決定要素は自分が承認されているという感覚だけである理由
集英社オンライン / 2025年1月6日 10時0分
-
幸福度トップは東海地方!その背景にある価値観 全国の男女に聞いたアンケートで意外な結果が…
東洋経済オンライン / 2025年1月4日 12時0分
ランキング
-
1「歯が痛くて夜も眠れない」“歯が突然痛くなる”原因と対処法
日刊SPA! / 2025年1月27日 15時51分
-
2外国籍でも「日本の免許」簡単に取得、なぜ? 「ホテルの住所」でOKは変わらずも…条件変わった? 「外国免許切替」の現状とは
くるまのニュース / 2025年1月27日 9時10分
-
3iPhoneでSafariを閲覧していたら「安全ではありません」と警告が……危険なサイトなのでしょうか?
オールアバウト / 2025年1月27日 20時35分
-
4【知ってる?】「風邪」と「新型コロナ」の症状って何が違う?
マイナビニュース / 2025年1月27日 16時10分
-
5「カキ」にあたる人・あたらない人、何がどう違う?→実は「あたりやすい人」には特徴があった【医師解説】
オトナンサー / 2025年1月27日 7時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください