お詫びの品を「謝罪の言葉とともに手渡し」は三流…気遣いができる一流が「渡さずそっと置いてくる」深い理由
プレジデントオンライン / 2025年1月30日 17時15分
※本稿は、諏内えみ『我慢しない、侮らせないビジネスパーソンの処世術 戦略としてのずるいマナー』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■不満を持っている相手に寄り添う
クレーム対応の鉄則は、お客様の不満を最後まで聴くこと。うなずきや相づちを適度に入れつつ、相手の言い分にじっくりと耳を傾けるのが基本とされています。
本記事では、もうひとつ大切なことをお伝えします。
それは「共感」です。
お怒りのお客様に対して、反射的に「申し訳ございませんでした」と言ってしまうこともあるかもしれませんが、まだどちらの責任なのか判断がつかない状態のときには適切ではありません。
ただし同じ言葉であっても、不満感や不快感を持っている相手の感情に寄り添う「共感」の意図であればむしろ有効です。
「この度は不快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした」
「さぞお困りのことでしたでしょう。大変ご心配をおかけしております」
など、自社のミスを「肯定」するのではなく、相手の困りごとに「共感」する言葉として使います。
相手は、どれだけ迷惑を被ったか、どんなに困ったか、どれだけ不愉快な思いをしたか、どんなに無駄な時間や金銭を費やしたかなど、溜まっていたものをとにかく吐き出したいと思っています。
ですから、こちらの共感の姿勢が伝わり「ちゃんと聞いてくれている」と感じてもらえれば、さらに不満が膨らむことはまずないはずです。
■理不尽なクレームにも「共感」は惜しみなく
これは、対面の場合であっても電話の場合であっても共通です。
「結局謝っているんだから同じじゃないか」と思われるかもしれませんが、先に挙げた言葉は、決してあなたや自社側の非を認めたということではありません。あくまで不快な思いをされたことへ共感する言葉となります。
ですから、もし理不尽なクレームを受けた場合であっても「共感」の言葉はどうぞ惜しみなく。
そのうえで、お困りの事実について確認し、解決策をご提案するといった基本のクレーム対応を行ってください。
■「誠実」だけでは不十分
「早急に確認し回答いたします」
「原因がわかり次第なるべく早くお返事をいたしますので、いま暫くお待ちいただけますでしょうか」
「追って折り返しご連絡させていただきます」
こういった返答に、どこかモヤモヤした経験はありませんか?
一見誠意のある対応のように思えますが、じつは肝心なことが伝えられていません。
それは「期限」です。
いつまで待てばよいのかがあやふやな状態なので、「『すぐに』と言ったじゃないですか!」「『確認次第』っていつのことなんだ!」と、更なるストレスを生みやすくなります。
つまり、“二次クレーム”に繋がってしまうのです。
ヒートアップしたクレーマーが「上の者に代われ」「社長を出せ!」と言うのも、この対応が甘いときの常です。
いくら誠実に対応しているつもりでも、それが相手に伝わらなければ、不満や不安を煽る結果となってしまいます。
クレーム対応は、「誠実」な心だけでは不十分。「誠実」の中に「的確」な対応を含めることを覚えておいてください。
■「クレームは宝」になる
「いつ(期限)」を明確に伝えることが、事態を悪化させないためにはとても重要です。
・いつまでに確認するのか
・いつ回答をするのか
加えて、「誰が」「どんな方法で」もしっかり添えたいものです。
「では、社内ですぐに確認し、本日の17時までに私○○から△△様の携帯電話宛てに必ずご一報を入れさせていただきます」
相手が欲しい言葉はこれなのです。
クレームは、「対応の早さ+誠実さを示す的確な言葉」が命です。この真摯な対応ができれば、その会社や製品、対応した担当者のファンになってくれることも稀ではありません。
これこそが「クレーマーを上客に」と言われる所以。そして、「不満」とその「対応」を今後にしっかり活かすことで、「クレームは宝」ともなります。
■取引先へのお詫びは何はともあれ「すぐ訪問」
自身や会社のミスなどで先方に多大なご迷惑をかけた際や、かなりのお怒りを買った場合の立ち回りについても考えておきたいものです。
できればメールや電話ですませてしまいたい気持ちもわかりますが、それは決して賢い選択とは言えません。「このあとお詫びに伺わせていただきます」と、相手先に出向くことが必要です。
仮に「来なくて結構」と拒否されたとしても、「そうですか……」と真に受けてしまうのは戦略ミス! とにかく時間を置かずに先方に足を向けることが誠意です。
あなたの行動が早ければ早いほど、心からのお詫びの気持ちを表せます。相手の怒りを少しでも鎮められる可能性があるのなら、すぐに動かない手はありません。
ここで、「かえって迷惑になるのでは?」「相手の都合を優先すべきでは?」と思われるかもしれませんが、これはビジネスマナーを心得ているがために陥ってしまう、もったいない考えです。
「承知いたしました。それでは後日、○○様のご都合のよろしい際にお詫びに伺わせてください」といった伝え方は、謝罪というシチュエーションに限っては、かえってマイナス。「あっさり後回しにされた」という印象になり、相手をさらに不快な気分にさせてしまうのです。
面会拒否をも前提で、すぐに足を運ぶ心づもりで行動しましょう。
■お詫びの品を渡すタイミング
謝罪に出向くときは、一刻を争う事態でない限り、お詫びの品を持参します。その際の品物の選び方・渡し方についても戦略をたてておきましょう。
お詫びの場合は、後々まで残らないという意味で「消え物」が適しています。
また、流行りものより老舗の銘菓。洋菓子より和菓子のほうが、真摯な思いが伝わりやすいかもしれません。包装もポップなものはNG。お詫びの品に派手さや華やかさは不要です。
そして、もうひとつ覚えておいていただきたいのが、お渡しするタイミングです。
通常、手土産というものは、お会いしてご挨拶がすんだところで差し上げるのがマナーです。しかし、謝罪の場ではこの限りではありません。「どうぞこれでご勘弁ください」という意味にもなってしまうからです。
もし、「この度は誠に申し訳ございませんでした。こちらほんのお詫びの気持ちでございます」とお目に掛かってすぐに差し出されたら?
なんとなく先手を打たれた気がしますし、まだあなたを許していない時点で、自ら手を出して品物を受け取ることは気まずくもあります。
心を込めて丁寧に謝罪の言葉をお伝えしたら、お許しの言葉をいただいても、もしもまだお怒りが収まっていなくても、「こちら心ばかりですが……」と、手渡さずに帰り際にサッと置いてくる。これがお詫びする者の流儀です。「勝手に置いていった」という大義名分があれば、相手もお詫びの品を受け取りやすいですね。
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「マナースクール・ライビウム」「親子・お受験作法教室」代表
VIPアテンダント業務を経てスクールを設立。上質なふるまいや会話、社交術、テーブルマナーが学べるオンライン講座『Class the SUNAI』を主宰。難関幼稚園、名門小学校合格率95%のお受験講座は「にじみ出る育ちの良さ」が身につくと話題に。映画やドラマで女優への所作指導のほか、テレビ出演多数。著書に『「育ちがいい人」だけが知っていること』(ダイヤモンド社)』など。
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(「マナースクール・ライビウム」「親子・お受験作法教室」代表 諏内 えみ)
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