50代で「忙殺」されているのは二流…本当にいい仕事をする人ほど「ゆとりある生活」をしている納得の理由
プレジデントオンライン / 2025年1月28日 15時15分
※本稿は、藤井孝一『50代がうまくいく人の戦略書』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「忙殺」されている50代は二流
人間、持って生まれた能力は人それぞれ違います。苦手なことを頑張ってもうまくいきません。時間を有効に使うためには、もう苦手なことは人に任せて得意なことに集中するのが一番です。
私にはもともと自分の能力が突出して高いという自覚がありません。他の人のほうができると思うことは、「任せすぎ」といわれるくらいに他人に仕事を任せてきました。
任せることでずいぶんラクをさせてもらいましたが、それ以上に人が育ったのではないかと密かに自負しています。
仕事を任せるときには、まず「本人にやる気があるかどうか」に着目していました。本人にやる気があって、この人なら絶対にできそうだと思える仕事を任せることを徹底していました。
やる気がない仕事を押しつけても本人を苦しめるだけですし、効果も期待できなくなります。人に仕事を頼むにあたっては、日頃から相手の興味・関心を理解しておき、相手が興味を持ちそうな仕事を用意してあげる必要があります。
仕事を任せたら、余計な口出しはせず、しかし責任は取るという姿勢も大切です。
私も任せた以上は、失敗しても叱らないと心に決め、失敗の責任はすべて取るつもりでいました。
■仕事を任せることは一種の社会貢献
仮に途中で口を出したところで、自分の思いどおりにはなりません。だったら、のびのび好きにやらせたほうがいい結果につながります。
今は、仕事を任せることは成果を出すためだけではなく、一種の社会貢献であると感じています。
すべての仕事を自分でこなせば、自分に負荷がかかる代わりに取り分はすべて自分のものとなります。
でも、みんなに仕事を分け与えれば取り分もシェアすることができます。
たとえば、何かの記事の執筆依頼がきたとき、全部自分で書くこともできますが、あえてライターにインタビューと執筆をお願いすれば、ライターさんの仕事が生まれます。それが経済を回すことにつながります。
そんなふうに、いろいろと仕事を任せることで、処理できる仕事量がどんどん増えていきます。結局、前よりも自分の取り分も増えました。
■本当にいい仕事をする人はゆとりのある生活をしている
だから、私は起業を目指す人たちにも「全部自分でやろうとするのはやめましょう」と教えています。忙しくて勉強会に出られないとか、交流会に参加できないという起業家は仕事を抱え込む人です。成長は見込めません。
本当にいい仕事をする人は、仕事をどんどん任せることでゆとりのある生活をしています。プライベートも充実しているから、相乗効果でクリエイティブな仕事ができるのです。
今は働き方改革で仕事の属人化を解消し、お互いに情報を共有しながらチームで成果を出す働き方が求められるようになっています。
あなたの職場でも情報共有ツールの活用や、マニュアルの整備が進んでいるかもしれません。
50代がこの流れに抵抗して「自分でやったほうが正確で速い」「このお客さんは自分にしか対応できない」などとしがみつくのは時代遅れです。
独立・起業するにせよ、会社に残るにせよ、50代になったら、「自分でやる」働き方から「人に任せる」働き方にシフトしていきましょう。
結果を出す人は、上手にいろいろな人の助けを借りています。仕事を抱えて汲々としているなら、人に任せる力を磨くべきだと思います。
■50代から「次の世代に何が残せるか」は重要な使命
50代になって「テイク」一辺倒というのは、ちょっとさびしい生き方です。残りの会社人生で何を「ギブ」できるかも考えてほしいと思うのです。
過去に学んだ知識やスキルを活用して問題を解決する「結晶性知能」を生かす視点に立てば、自分の経験や知識を次の世代に伝えていくことは重要な使命といえます。
日本能率協会が実施した「2023年度 新入社員意識調査」によると、理想だと思う上司、先輩の第一位は、「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」(79.0%)となっています。
私が新入社員だった頃は「仕事は見て盗め」という言葉が使われて、上司は部下に仕事を見せて教えるマネジメントが主流でした。
でも、今の若者は丁寧に教えてほしいと思っています。言葉を尽くして教えてあげる必要があります。
幸いなことに、今の私は、起業をしたいと考える人に対してコンサルティングや勉強会で教える機会を得ています。こちらから知識や経験を押しつけるわけではなく、人から「教えてください」と請われてから教える仕事なので、とてもやりがいがあります。
また、こうして次世代の読者に向けて本を書くことができているのも、本当にありがたいことです。本は残り続けますから、過去に執筆した本を読んでくださった読者から「あの本を読んで勉強になりました」と声をかけていただく場面もあります。これほど嬉しいことはありません。
たくさん本を書いてきた経験から、「どうすれば本の出版ができるのですか?」と相談を受けることも少なくありません。
あえてビジネスにはしていませんが、目次の書き方やプロフィールのつくり方、企画書の書き方などについてアドバイスを行なう活動もしています。過去には、出版を目指す人を集めて勉強会を開催していたこともありました。
■50代は煙たがられて当たり前
「昔とは時代が違うのだから、自分が何をいっても煙たがられるだけ」
「役にも立たない教訓を垂れるのはみっともない」
同世代には、そんなふうに萎縮している人が少なくありません。50代にもなったら、若者には口を出さずに金を出すのがいい。でも、あんまり縮こまりすぎるのも考えものです。ときには、嫌われるのを覚悟して、いうべきことをいう必要もあります。
私の経験上、若い頃に「うるさいな。余計なお世話だ」と思っていたアドバイスが、今になってじわじわと効いてくるのを感じることがあります。どうせ50代は煙たがられて当たり前なのです。伝えるべきことがあるなら、遠慮せず、萎縮せず、伝えておくべきではないでしょうか。
大事なのは「伝え方」だと思います。上から決めつけたり、偉そうであったり、説教じみていたりするのはNGです。謙虚に、丁寧に伝えることが重要です。
自分が話した内容の、何が下の世代に刺さるのかはわかりません。
私はいろいろなコンサルタントの発言を聞くのが好きなのですが、著名なコンサルタントの中には、とにかくいろいろな場で多種多様な発言をしている人がいます。
あとになってから、現実になったことだけを切り抜いて「ほら、私がいったとおりでしょ」と語っているケースが多々あります。そのコンサルタントを非難したいわけではなく、そういうものだと思います。
私自身も、自分ではいつ話したのか、どの本で書いたのか忘れているようなことを、感謝されるときがあります。
「この藤井先生の言葉が心に響いて、今も大切に守っています。この言葉で人生が変わりました」
と。
面はゆいですが、嬉しいことには変わりありません。
いずれにせよ、向こうが必要に応じて勝手に解釈してくれたのです。チャンスがあれば、“自主規制”をせず、そのとき伝えたいことを伝えておけばいいと思います。「残そう」なんて思わなくても、残る言葉は残ります。
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経営コンサルタント
中小企業診断士。1966年、千葉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、大手金融機関を経て99年に独立。著書に『週末起業』(ちくま新書)など。
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(経営コンサルタント 藤井 孝一)
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