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「間違った断熱」で電気代がかさむバカらしさ…職人社長が「一戸建てはエアコン1台で十分温まる」と断言する理由

プレジデントオンライン / 2025年1月30日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Lazy_Bear

寒さを和らげる家の断熱対策はあるのか。工務店を経営する職人社長の平松明展さんは「高度な断熱対策と通気性をしっかり確保すれば、戸建てであってもエアコン1台で十分に温まる」という――。

※本稿は、平松明展『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■快適な家とは「結露が発生しない家」

冬の時期、これから例に挙げる家がある地域の気温は5度くらいと仮定します。室内を20度くらいにするには、暖房のエネルギーコストが発生しますよね。ところが結露の発生リスクを低く抑えるWB工法である事例の家の場合、基礎と床下の温度が15度です。つまり、5度ほど高めれば快適な室温になるわけです。しかも、室内全体が一定の温度で保たれています。この理由は、床・壁・天井の断熱性と、換気ロスを減らした濃度差換気にあります。

空気の質も重要になります。湿度は空気に含まれる水分量の度合いですが、快適な湿度というものがあります。日本は一般的に冬場は湿度が低くて、夏場は高く、ともに過ごしにくい要因になります。

ただ、WB工法なら湿気が屋外と室内を出入りできる設計になっているため、自然に快適な湿度が保たれるのです。この湿度コントロールはとても重要です。湿気は建材を損傷させてしまいます。当然、耐久性が低下します。耐久性が低ければ、耐震性も持続しません。空気と湿気が自然に動く家、それは快適性を高めるとともに、家の性能を持続させる家なのです。

【図表1】住み心地最高の平屋
出所=『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)

■一戸建てでも「エアコン1台」で十分

2LDKの平屋でロフトがついた間取りです。1フロアで生活がすべて成り立つのが平屋の魅力ですが、動線を考えた間取りにすると、さらに利便性が高くなります。

事例の家は、玄関からシューズクローク、洗面所、脱衣所、キッチンという動線と、玄関からリビング、キッチンという2つの動線があります。キッチンは左右どちらからでも移動でき、家事もスムーズに行えます。

ダイニングとリビングは吹き抜けになっており、開放感があります。この吹き抜けによって1階とロフトで空気が移動します。夏はロフトのエアコンを稼働すれば、冷たい空気が1階へ。冬は1階のエアコンを稼働すれば、暖かい空気が2階へと移動します。WB工法によって湿気や化学物質も天井へと抜けていくため、常に高いクオリティの空気になっているのです。まさに「深呼吸したくなる家」といえるでしょう。

さらに太陽光発電を設置しているので、光熱費がかなり抑えられます。「人と空気がスムーズに動ける家」、これこそが住み心地のポイントです。

■エアコン1台で空調がととのう仕組みとは?

【図表2】住み心地のポイント①
出所=『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)
【図表3】住み心地のポイント②
出所=『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)

■床断熱+基礎の立ち上がり部分も断熱

耐久性について解説する前に断熱性についてお話しします。耐震性のように断熱にも等級があり、以前は等級4が最高でしたが、現在は等級7まで進展しています。建築物省エネ法の改正により、2025年4月(予定)からは断熱等級4が最低基準となります。

断熱性を高める設計は大きく2つあり、その1つが床の断熱性です。

WB工法の場合、床の下に断熱材を敷いた「床断熱」と、基礎の立ち上がりの外周部も断熱する「基礎断熱」の両方を取り入れています。これにより、基礎と床の空間部分が一定の温度となり、室内を暖めるのです。基礎と床の温度は1年を通して大きな差はなく、夏場でも20度台前半なので、必要以上に室温を高めることにはなりません。

もう1つの断熱性を高める要因が外壁です。断熱材をたくさん使えばいいというわけではありません。断熱材が多くなると、外気と室内の温度差によって結露が発生し、建材を損傷させて耐久性を損なうことになるからです。

これを解消する方法の1つが、断熱構造。具体的には、外側から耐力面材→断熱材→プラスターボード→紙クロスという構造になります。これにより、夏は屋外の湿気が入ってきても再び外に抜け(室内に湿気が入らない)、冬は室内の湿気が入っても再び室内に抜け(室内を加湿するため)、外壁内で結露が発生しないのです。

【図表4】断熱構造の比較
出所=『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)

■断熱性能を高めるには「通気性」も重要

事例の家は、夏はロフトのエアコン、冬は1階のエアコンを稼働させて家全体の室温をコントロールできることをお伝えしました。これは室内の各所に給気・換気口を設置して、より空気の流れが行きわたるようにしています。

また、空気を常に新鮮な状態にするには、外気との入れ替えが必要ですね。窓を開けての換気、換気扇の利用といった方法もありますが、室内の温度が変化してしまいますよね。ところが、WB工法の家は、なにもしなくても常に新鮮な空気に入れ替わっています。壁の中での通気です。

WB工法のWはダブル(二重)、Bはブレス(呼吸)という意味ですが、家が常に呼吸をしている状態だといってもよいでしょう。それは壁の中にある通気層によるものです。

WB工法の通気層は基礎部分から屋根まで通っています。これにより、床下の湿気も抜けてシロアリが発生しません。当然、給気口から外気が入ってきますが、室温に影響が出ない装置が採用されます。通気口に「形状記憶合金」を設置しているのです。

温度によって通気口が開閉し、冬は通気口が閉まり外気を入れず、夏は通気口が開いて空気を外に出す仕様になっています。

■耐久性を高める=耐震性を持続させる

空気に含まれているのは、湿気だけではありません。におい、二酸化炭素、化学物質など、体に悪影響を与えるものが含まれています。断熱性と通気性を兼ね備えることで耐久性が高まります。耐久性が高ければ、耐震性も持続します。高性能を追求することで、安心な暮らしと快適な暮らしの両方が成り立つわけです。

【図表5】通気層の構図
出所=『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)

建築技術は日進月歩で、高性能を実現する工法がさまざまに生まれています。高気密・高断熱においても同様で、それぞれの工法を否定するものではありません。また、熱交換や換気においても同様であり、熱交換換気システムという機械設備も誕生し、日々進化しています。

■ポイントは「間取りと空気の流れ」

WB工法も高性能を実現する手段の1つ。ほかの工法と最も違うところは、特別な設備や電力を必要とせず、自然に空気クオリティを高められることです。ただし、WB工法にしたところで、その機能性を損なわせてしまうこともあります。

窓の大きさや数などの面積、屋根のひさしの大きさ、屋根や外壁、内装の建材などが適しておらず、施工精度が悪いと、断熱性が悪くなり、内部結露や暑さ・寒さを招き、耐久性と耐震性を低下させることにつながってしまいます。こうした阻害点をいっさい排除し、さらなる高性能を追求することに時代は向かっています。ポイントは間取りと、空気の流れをアシストする機能です。

【図表6】家族の健康を守る家
出所=『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)

■換気がいいから部屋干しでもしっかり乾く

1階は1LDKとお風呂、トイレの間取りです。回遊性のある間取りで動線がスムーズです。1階だけで過ごすこともできる、平屋のような要素を取り入れた間取りです。

屋根の勾配で天井が低くなる部分を吹き抜けにして開放感もあります。2階は屋根裏スペースと17.4帖(じょう)のフリースペース。壁をつくれば2部屋にすることもできます。建物面積が30坪ほどとは思えない開放感で、床や天井の無垢材(むくざい)も心地よさを助長しています。

快適な空間の真骨頂は、湿気をまったく感じないこと。脱衣所の隣に室内干しスペースを設けていますが、寝室でも2階でもどこでも年中、洗濯物が乾きます。クローゼットもまったく湿気がありません。お風呂には窓を設置していませんが、湿気の心配はなし。

むしろ、乾燥した冬は扉を開けておくと加湿効果があります。回遊性のある間取りが、空気の移動も容易にしているのです。繰り返しお伝えしますが、WB工法なので自然に換気されており、空気は常に新鮮です。

家でリラックスした兄弟
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■「素足で過ごしたくなる家」はこれだ

【図表7】住み心地のポイント③
出所=『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)
【図表8】住み心地のポイント④
出所=『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)

■戸建てなのに月々の電気代は1万円

事例の家は、月々の電気代を平均すると1万円未満です。その理由は、熱損失が少ないから。外皮平均熱貫流率(UA値)という値があります。わかりやすくいうと、室内から外部へ逃げる熱量を外皮(外壁、屋根、窓など建物の外周)全体で平均した値です。

平松明展『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)
平松明展『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA)

この値が小さいと省エネ性能が高いことになります。一方で断熱性の基準でもあります(国土交通省が定める省エネ住宅のUA値の基準は、関東地方から九州地方までは最低基準が0.87以下で、断熱性能等級は4)。なお、このUA値は、2025年に義務化される省エネ性能の適合にも含まれる値です。2030年までにはその基準がさらに高くなる予定です。

室温と湿度を家全体として快適にするには、空気を拡散させること。快適な温度の空気を遮断するものは壁や扉ですが、それらを解消するのが間取りです。事例の家のように吹き抜けになっていれば、空気は1階と2階を行き来できます。家が完成して暮らし始めたとき、みなさん、この快適性に驚かれます。

もちろん、すべての部屋の扉を開けっぱなしにしておくことはできません。その場合、「ブースターファン」を活用する方法があります。エアコンを設置した部屋に換気口を設け、そこから給気した空気がファンの力で壁を伝って、別の部屋へ送り込まれるシステムです。

シーリングファン(天井に取りつける扇風機)も空気を拡散させるのに有効です。

これが事例の家の電気代を年中削減できている要因の1つなのです。光熱費の削減は「住んでよかった」という思いを助長することでしょう。

【図表9】断熱性能等級によるUA値
出所=『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』(KADOKAWA

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平松 明展(ひらまつ・あきのぶ)
職人社長
平松建築株式会社代表取締役。建築歴23年。19歳から大工として10年間で100軒以上の住宅を解体、修繕し、住宅の性能の特徴を理解する。2009年創業。会社経営を行いながらもドイツを訪れて省エネ住宅を学ぶほか、地震後の現地取材を行い、気候風土に合った家づくりの研究を行う。YouTube チャンネル「職人社長の家づくり工務店」(登録者数は9万人以上)も配信中。

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(職人社長 平松 明展)

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