1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「頭が悪い」でも「努力不足」でもない…「勉強しても成績が伸びない」東大生が受験期にやった悪循環を断つ習慣

プレジデントオンライン / 2025年1月31日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

頭のいい人はどんな勉強をしているのか。現役東大生ライターの清野孝弥さんは「高校3年の時、睡眠を削って受験勉強の時間を増やせば増やすほど、テストの成績は下がっていた。その時、睡眠時間を削って勉強するのは間違いだと気づいた」という――。

■夜中に勉強を続けるべきか、寝るべきか

今は23時59分。
明後日には、受験本番が控えている。
勉強しておきたい範囲は山ほど残っているけど、そろそろ就寝時間だ。
あと少し頑張って2時間勉強するべきか……。
それとも、今日はもう寝て明日に備えるべきか……。

皆さんも、このような葛藤を経験したことがあるのではないでしょうか。受験勉強に限らず、「明日までに提出しなければならないレポートがある」「締め切り間近の仕事がある」など様々な理由から、夜遅くまで作業を強いられることがあるでしょう。

そんな場面で必ずと言って良いほど問題となるのが、この「寝るか寝ないか問題」。勢いそのままに、夜遅くまで勉強を続けた方が効率よく勉強できる気がする……。その一方で、早く寝て、翌朝から勉強を再開した方が健康には良い気もする……。

このような受験生の悩みに答えはあるのでしょうか。答えは、「はい、あります」。勉強を続けるよりも、早く寝た方が圧倒的に効果的です。その理由を、筆者が独学で東大に現役合格した実体験をもとに、睡眠や記憶に関する研究結果を用いながら解説します。

■「夜型」は効率が落ちる

まず受験生や、受験生を抱える保護者の方に理解していただきたいこと。それは、「1時間や2時間の睡眠不足でも、受験勉強には悪影響が及ぶ」ということです。

AASM(アメリカ睡眠医学会)の報告によると、高校生の睡眠時間を5時間に制限すると、注意力が散漫になったり、集中力が低下したりして、認知能力に悪影響が及ぶことがわかっています。注意力や集中力とは、まさに受験で必要とされる能力です。これらがうまく機能しなくなると、せっかく学力があっても、試験で得点に結びつけることができなくなってしまいます。

例えば、普段は24時に寝て、7時に起きていた高校生が、受験勉強のために、2時に寝て、7時に起きる生活習慣に変えたとしましょう。すると、この高校生は、慢性的に「5時間睡眠」の状態になってしまいます。この場合、常に注意力や集中力が低下しますから、マラソン選手が腰におもりをつけて走っているような状況になってしまうのです。

睡眠不足の状態で勉強すると、どれほど学習効率が低下するのか。この点については、複数の研究結果が提示されていますが、仮に20%ほど低下するという説に従って、検証してみましょう。

1日に10時間勉強をする頑張り者の受験生が、ある日、深夜24時から2時まで、2時間分追加で勉強をした場合を考えます。この場合、増えた勉強時間は、2時間です。しかし、翌日の勉強時間10時間のうち、20%(2時間)は頭が回っていません。そのため、増えた2時間と減った2時間が相殺されて「深夜勉強は効果なし」ということになります。

【図表1】寝不足状態での勉強は効果減

■内容が頭に入らず、成績が下がった

実際には、睡眠不足が翌日以降にも影響します。また、寝不足ゆえに、ストレスが増えたり、勉強するモチベーションが低下したりします。こうしたことを踏まえれば、「深夜勉強は、百害あって一利なし」と言えるでしょう。徹夜なんて、もってのほかです。

しかし、皆さんの中には「理屈として、寝た方が良いのはわかる。しかし、時には夜遅くまで勉強するという努力も大切なのではないか」と考える方もいるかもしれません。

実は、私もこのように考えていた時期がありました。東大受験生と聞くと、「とにかく勉強をしまくる」というイメージがあったため、私は高校3年生の夏休みに、周りの受験生に負けまいと、寝る時間も惜しんで、毎日10時間以上勉強をしました。睡眠時間を削った分、日中に頭がボーッとする感覚がありましたが、それでも勉強時間を確保する方が大事だと考えて、ひたすら、がむしゃらに勉強を続けました。

しかし、皮肉なことに、睡眠を削って受験勉強の時間を増やせば増やすほど、テストの成績は下がっていきました。高校2年生の時に理解していたはずの内容が頭に入らなくなり、同時に、テストの点数も急降下するということが起きました。そこで、睡眠時間を削るのは良くないと思い、テスト前日くらいは十分に睡眠を取るように心がけました。しかし、それでも成績は下がり続けたのです。

学生
写真=iStock.com/DragonImages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DragonImages

■“試験前日の早寝”くらいでは取り戻せない

なぜこのようなことが起こるのか。それは、「失った睡眠時間は簡単には取り返せないから」です。

睡眠不足によって傷ついた脳は、簡単には元に戻らないと言われています。1日や2日程度の睡眠不足は、数日間、規則正しく睡眠を行えば、回復すると言われています。しかし、数週間以上にもわたる慢性的な睡眠不足は、数週間、何カ月以上にわたって規則正しい睡眠を取らない限り、回復することはないと言われています。

私の場合も、30日以上にわたって睡眠不足の状態で、勉強を続けてしまったがために、継続的に脳が傷ついた状態になっていました。テスト前日にぐっすり寝たところで、失った注意力や集中力は取り戻せなかったのです。

幸い、私の場合は高校3年生の10月頃に、本記事で紹介しているような「睡眠不足と学習効果」に関する論文を読む機会を得て、自分の勉強方法を見直すきっかけを得られました。自分自身が睡眠時間を削ったことを反省し、それ以降「1日に最低でも8時間は寝る」ということを徹底しました。その甲斐もあってか、テストの成績は順調に回復していきました。

■「寝る間を惜しんで勉強したい」気持ちもわかる

映画やドラマの世界ではよく、「寝る間も惜しんで勉強をする受験生」が描かれます。そのため、「勉強を頑張る=睡眠時間を削る」というようなイメージを抱いてしまい、夜遅くまで勉強する子供に対して、「偉いね」「頑張ってるね」と声をかけてしまう親御さんもいるかもしれません。

裏を返せば、受験直前にもかかわらず、1日に8時間も10時間も寝ている受験生がいたら、「勉強しなくて大丈夫なのか」と思って不安になってしまう受験生や親御さんもいると思います。過去には、私が指導していた受験生の保護者の方から「うちの子は毎日22時には寝ているんですけど、本当に大丈夫なんですか? 受験生って『もっと勉強しなきゃ』って焦るくらいが普通だと思うんですけど」と相談されたこともありました。感情論としては、私も共感します。しかし、理屈としては真逆のことが成り立ちます。現実には、

①睡眠時間をしっかり確保するから
②脳が十分に機能するようになり
③テストの成績が向上していく

というサイクルが働きます。結果として、テストの成績が向上すれば、その分、受験に対する不安も少しずつ軽減されて、睡眠をたっぷりとれるようになります。すると、さらに脳が機能するようになり、好循環が生まれていくのです。

勉強する子供
写真=iStock.com/Pra-chid
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pra-chid

■「24時以降の勉強」は絶対やめて

実際、私の周りの東大生も、睡眠時間はたっぷりとっていたという人が多いです。私自身も睡眠時間を削って勉強していた頃は、「成績が良いから、たくさん寝れるのだろう」と思い込んでいました。しかし、今はむしろ逆で「たくさん寝るから、成績が良くなる」という説明の方が正しいと自分の経験を通じて実感します。(もちろん、勉強あっての睡眠ですよ)

そのため、私が東大受験生などに勉強習慣を指導する際には、必ずと言って良いほど「24時以降には勉強するな」ということを伝えています。一生懸命勉強しようとする真面目で勤勉な受験生ほど、睡眠時間を削りたがるものです。そのため、苦しい気持ちもありますが、頑張り屋な受験生にこそ、心を鬼にして「勉強するな!」というメッセージを伝える必要があるのです。

自分の夢に向かって一生懸命努力する、睡眠時間を削ってまでも勉強を頑張る受験生には、ぜひその頑張りが報われて欲しいと願っています。

しかし、努力する方向を間違えれば、最悪の結果を招いてしまうことがあります。では、その努力はどこに向けたら良いのでしょうか。本当に減らすべき時間は睡眠時間ではなく、他のところにあります。それは、「無駄に使っている隙間時間」です。睡眠時間を削る代わりに、次のような時間を有効的に使うのです。

■活用できる“隙間”は2時間以上ある

家に帰ってから、ご飯を食べるまでの時間。(例:19時から19時30分までの30分)
ご飯を食べてから、勉強を始めるまでの時間。(例:20時から20時30分までの30分)
勉強を終わりにしてから、寝るまでの時間。(例:23時から24時までの60分)

日常生活には名前もつかない隙間時間が、ありとあらゆるところに転がっています。このような時間は、すべてかき集めると「2時間以上」になることが多いです。

【図表2】受験生の勉強スケジュールの実例

先ほど紹介したように、24時以降も勉強したいという受験生から相談を受けたら、私の場合は必ず、日中の時間の使い方について確認するようにしています。すると大概は、ただYouTubeやSNSを眺めていたり、スマホのゲームで遊んでいたり……と時間を無駄にしていることが発覚します。

私の母校である神奈川県立横浜翠嵐高校では、このような指導を受けました。「8時間寝て、8時間部活をしても、8時間は勉強できる」と。

現実的には、移動時間や食事の時間があるため、このようなスケジュールは成り立ちませんが、それでも「8時間寝て、8時間勉強しても、8時間は自由な時間がある」というのは驚きです。(一体私たちは、この自由な隙間時間を何に使っているのでしょうか)

■「睡眠を削る」のは正しい努力ではない

睡眠時間を削ることは簡単です。それに、夜遅くまで勉強をしていると、努力している感覚すら出てきますから、「寝るのは怖い」と感じる方もいるかもしれません。しかしここまで述べてきたように、睡眠を削ってまで勉強するのは正しい努力とは言えません。より成績を上げたいと思うのであれば、睡眠時間を削ることに力を割くべきではなく、日中の隙間時間を有効活用するべきです。

ただ、頭では分かっていても、実際に行動を変えるのは至難の業ですよね。「いくら理論的には寝た方が良い」とわかっても、自分の進路がかかっていると思うと、そう簡単には行動に移せないことも、実体験を通じてわかります。だからこそ、受験生の周りにいる人たちの支援や声かけが大切になると思います。

受験生は常に進路、合格・不合格というプレッシャーと闘っています。だからこそ、夜の23時59分になっても、「あと2時間は頑張ろう」と思ってしまい、無理をしてしまうのです。そんな時に、周囲にいる人たちが「もう寝て良いんだよ」と声をかけてあげたら、どれだけ気持ちが楽になるでしょうか。

「睡眠を取ることは甘えではありません」。むしろ寝ないことがリスクなのです。せっかく勉強を頑張ったのに、成績が下がるなんてもったいないですよね。もし受験のプレッシャーと、睡眠不足のストレスに苦しむ受験生がいれば、このことを伝えてあげてほしいと思います。

----------

清野 孝弥(せいの たかや)
現役東大生ライター
2003年生まれ。東京大学法学部の現役学生。公立高校から塾や予備校に通わず、独学で東京大学の文科I類に現役合格。独学で培った勉強法や各科目のノウハウをYouTubeなど数々のオンライン媒体で公開し、授業動画は100万回再生超え。現在は、明豊高校九大専科コースなど全国の高校現場で学習指導や進路指導などを提供している。

----------

(現役東大生ライター 清野 孝弥)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください