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65歳以降「幸せホルモン」が減退…和田秀樹が「シニアの病で最も怖い」と説くうつ病を防ぐために摂りたい食材

プレジデントオンライン / 2025年1月30日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/seven

中高年になったら何に気をつけるべきか。医師の和田秀樹さんは「いまは昔よりも見た目が若返る一方で、『心』の老化現象は昔と変わらずに起きている。実は、高齢になるほど心の病気の発症リスクが高まり、『セロトニン不足症候群』といえる患者さんはかなり多い」という――。

※本稿は、和田秀樹『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■昔より見た目が若返っても、「心」は同じように老化する

マンガ『サザエさん』(朝日新聞出版)に登場する、サザエさんの両親である磯野浪平と磯野フネの年齢をご存じでしょうか。

原作では、磯野波平は54歳、磯野フネは52歳(磯野フネの年齢は諸説あります)です。21世紀を生きる50代の人たちと比べるとだいぶ老けている印象ですが、おそらくマンガの連載がはじまった当時(1951年)は、彼らの姿が一般的な50代だったのでしょう。

磯野夫妻と同年代(52~54歳)の芸能人というと、竹野内豊さんや西島秀俊さん、石田ゆり子さんや常盤貴子さんなどが該当します。

一般的な50代の姿ではないかもしれませんが、それよりも磯野夫妻が50代、ということのほうが違和感を持つのではないでしょうか。ここ70年ほどで、人の見た目は大幅に若返っているのです。

昔よりも見た目が若返る一方で、「心」の老化現象は昔と変わらずに起きています。実は、高齢になるほど心の病気にかかりやすくなるのです。

60代以降は親や大切な人との死別、定年退職といったさまざまな喪失体験に直面します。悲しみや環境の変化によるショックが心に大きなダメージを与え、うつ病を引き起こす可能性もあります。子どもが親元を離れていくことも一つの喪失体験です。

■65歳を迎えると「幸せホルモン」が減っていく

また、親の介護をはじめる人もいるでしょう。老いた親を子が支える側に立ち、親子の関係性が変化することも、喪失感を与える大きな環境変化です。

人がうつ病にかかる割合は、65歳以下では3%ほどといわれますが、65歳を迎えると5%に上昇します。この変化には医学的な根拠があり、心を安定させてくれる「セロトニン」という神経伝達物質の減少が原因とされています。

年を重ねるごとに分泌量が減少するセロトニンは、別名「幸せホルモン」といわれ、精神を安定させる役割を担っています。

他の神経伝達物質のなかにはストレスに反応して怒りや不安、恐怖などの感情を引き起こす「ノルアドレナリン」や、向上心や快楽といった感情を引き起こす「ドーパミン」などがありますが、これらの神経伝達物質の分泌をコントロールしてくれているのがセロトニンです。

このように、環境や体の変化が大きい60代は心が不安定になりやすい年代です。どんなに見た目が若く元気な人も、「60代は変化があって当たり前」と認識しておけば、これまでにない変化にも冷静に対応できるでしょう。

「まだまだ自分は若い」と高をくくっていると、いざ心の症状が現れるとパニックになり、対応が遅れる可能性もありますので注意しましょう。

■認知症よりも怖いのはうつ病

シニアはうつ病になるリスクが上がっていきますが、老人性のうつ病の存在は社会ではさほど問題視されていません。それは、シニアのうつ病がなかなか気づかれにくいことにも一つの原因があるように感じています。

シニアのやる気が低下しても、周囲が「意欲が衰えたのは年をとったせいだろう」と考えて、深刻に捉えないケースも多いようです。また、物忘れや日常の行動が億劫になっている様子を認知症と誤診され、誰にも気づかれないままうつ病が進行してしまうケースもあります。

頭痛に苦しむ妻と心配する夫
写真=iStock.com/Boogich
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Boogich

実際に、私が診療している患者さんの6~7割は認知症、残りの3割程度がうつ病です。認知症は「多幸症」といわれることもあるように、中期以降になると本人自身が感じる辛さは和らいでいきます。対して、うつ病は悲観的になる、本人にとってつらい病気です。

■うつ病がきっかけで体も命も失う危険

正直なところ、医師である私自身が最もなりたくないと思う病気がうつ病です。

うつ病は体のだるさや食欲不振、なにかを食べても味を感じないといった症状が続きます。さらには、人に迷惑ばかりかけているという罪悪感に苛まれ、孤独になります。

しっかり治すか認知症にでもならない限り、いつまでも辛さを抱えながら生きていかなければならないのです。闘病中に喪失体験が重なり、最悪の場合、自ら命を絶ってしまうこともあります。

うつ病の症状は心だけでなく、体にも悪影響をもたらします。シニアは若い頃と比べて体内の水分量が減りますから、食欲不振が続けば容易に脱水症状を起こします。

脱水によって血液がドロドロになると脳梗塞や心筋梗塞のリスクとなりますし、脱水は免疫機能も低下させるため、肺炎などにかかりやすくなります。

うつ病がきっかけで体力が低下し、死を早めてしまうことも少なくないのです。

悩むシニアのイラスト
イラスト=まつむらあきひろ
出所=『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』より - イラスト=まつむらあきひろ

■60代以降は意識的にセロトニンの分泌を増やす

幸いうつ病は認知症と異なり、現代医学で治療法があります。若い人は心理性の要因が絡み、薬があまり効かない傾向が高いといわれるのですが、老人性のうつはセロトニン不足が主な要因であることが多いため、薬が効きやすいのです。

少しでも自分の異変を感じたら、なるべく早く医師に相談することをおすすめします。

私がシニアのみなさんを診察しているなかでかなり多いのが、「セロトニン不足症候群」といえる患者さんたちです。

うつ病と診断するほどではないのですが、心と体の不調が現れており、四六時中不安を感じ、体のあちこちが痛い、調子が悪いと不調を訴えてこられるのです。刺激に敏感になり、体の痛みを感じやすくなるのもセロトニン不足の影響です。

セロトニンが正常に分泌されていると、意欲的になるとともに不安が弱まり、前向きでいられます。

反対にセロトニンの分泌が減少すると、ノルアドレナリンやドーパミンが暴走し、気分が落ち込み、意欲が低下してしまいます。また痛みに敏感になり、腰痛や頭痛といった症状があらわれます。

ひどくなるとうつ病の他、パニック障害といった精神症状も引き起こします。セロトニンは心の安定に欠かせない存在です。

このセロトニン不足症候群の人たちに脳内のセロトニンを増やすうつ病の薬を処方すると、不調が治るケースがよくあります。最近では、不調の原因がセロトニン不足と考えられる場合は、整形外科などの医師も腰痛の患者にうつ病の薬を処方することもあるようです。

年をとると通院する機会が増え、薬も増える……。「これ以上病院にはかかりたくない」という人も多いでしょう。

うつ病にならず、日々を元気に過ごすために心がけていただきたいのが、セロトニンを補う生活をすることです。60代以降は意識的にセロトニンの分泌を増やすように心がけましょう。

■シニアは肉を積極的に食べたほうが良い

セロトニンを増やすためにおすすめの方法は2つあります。

1つは肉を食べること。肉にはセロトニンの材料となるトリプトファンというアミノ酸が多く含まれています。肉を積極的に摂ることで、セロトニンの生成が促進され、やる気の低下を抑制してくれるのです。

肉と聞くと、コレステロールが高くなるからと避けている方もいるかもしれません。たしかに、コレステロールは動脈硬化を促進して心筋梗塞のリスクにもなりえますが、日本人にとっては極端に避ける必要はないと考えられます。

アメリカは心疾患が死因のトップであることから、コレステロール=悪とされるのも理解できますが、日本の場合は状況が異なります。心疾患で亡くなる人がOECD諸国の中でも格段に少なく、がんで亡くなる人が急性心筋梗塞の12倍もいるのです。

また、コレステロール値が高い人のほうがうつになりにくい、免疫力が高くがんになりにくい、ということも明らかにされています。

シニアが心の元気を保ち、長生きを楽しむためには、動脈硬化の予防よりもうつ病の予防を優先すべきではないか。こうした観点から、私は肉を食べることをおすすめしています。

ちなみに、トリプトファンを多く含む食材は肉のほかにも魚や大豆製品、乳製品、バナナなどがあります。好みの食材を組み合わせるなどしながら、セロトニンを増やす食事を続けましょう。

肉を食べるシニアのイラスト
イラスト=まつむらあきひろ
出所=『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』より - イラスト=まつむらあきひろ

■散歩は毎日「一万歩」ではなく「3000歩」でいい

セロトニンを増やすもう一つの方法は散歩です。日光をよく浴びることがセロトニンの分泌を促進します。散歩が習慣づくと筋力もつきます。どうしても部屋から出られない日は、窓を開けて日光を浴びるように意識するといいでしょう。

和田秀樹『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』(日本実業出版社)
和田秀樹『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』(日本実業出版社)

日光を浴びてセロトニンがつくられると、夜にはセロトニンから睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」がつくられます。

高齢になると眠りが浅くなり、朝早く起きてしまう、不眠が続くという人が増えますが、これはメラトニンの減少が原因です。セロトニンが増えるに伴ってメラトニンが補充され、よく眠れるようになるのです。

屋外で散歩をして日光を浴びるだけで、筋力がつき、心が安定し、夜もよく眠れるようになりますから、一石三鳥です。

「毎日一万歩めざそう!」などとがんばりすぎる必要はありません。ご自分ができる範囲で続けることが大切です。私の場合は最低一日3000歩程度を目安に散歩するようにしています。

歩くシニアのイラスト
イラスト=まつむらあきひろ
出所=『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』より - イラスト=まつむらあきひろ

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)

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