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健康診断の数値はさほど意味がない…和田秀樹がそれでも「中高年は受けるべき」と説く"2つの検査"

プレジデントオンライン / 2025年1月31日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

中高年は健康診断をどのように活用するといいか。医師の和田秀樹さんは「病気との関連性がほとんどわからない健康診断の数値に一喜一憂しても、実際はさほど意味はない。自分の体の声を聞くことのほうが大切だ。ただし、そのなかでも2つの健康診断だけは受ける価値がある」という――。

※本稿は、和田秀樹『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■「健康診断の数値が良い=健康」ではない

高齢になってから健康に不安を感じて健康診断をまめに受けるようになったという話をよく聞きます。血圧や血糖値、コレステロール値などの数値を知って予防に役立てたいという気持ちはわかりますが、健康診断を過信するのはよいことではありません。

実際、悪い数値が出て放置しているにもかかわらずピンピンしている人もいれば、正常値のA判定でも心筋梗塞や脳梗塞を起こし、生死をさまよう人もいます。健康診断の結果とちぐはぐなことが起きる理由は、日本の健康診断が相対評価で正常値を決めていることにあります。

日本では、通常は「健康だと考えられる人」の平均値を基準として、上下95%の範囲に収まっている場合を正常と診断し、その外側の上から2.5%と下から2.5%をすべて異常とみなしているのです。

血液検査を受けると何十種類もの項目の結果が出ると思いますが、それぞれが基準としている数値と健康との関連性について、実はほとんど明らかになっていない、というのが現実なのです。

実際に、健康との関連性が認められているのは血圧や血糖値などせいぜい5項目程度です。つまり、多くの数値については異常かどうかを証明することはできず、さほどあてにならないわけです。

■本当に大切なのは、自分の体の声を聞くこと

コレステロール値についても同様で、値が高いから健康状態が悪化するかどうかは不明です。少なくとも日本人の調査結果としてコレステロール値と健康状態のよしあしを関連付ける証拠は存在しません。

これが健康診断の数値が悪かった人に対して長期間にわたり追跡調査を行い、病気との関連性を調べていればよいのですが、日本では追跡調査をほとんど行っていないのが現状です。健康診断の結果で一喜一憂しても、実際はさほど意味はないのです。

本当に大切なのは、自分の体の声を聞くこと。健康診断の数値がよいからと安心し、体調不良を見過ごして対処が遅れては本末転倒です。健康診断は受けなくても、なにか体に変化や異常を感じた時点で早めに病院へ行くように徹底する。そのほうがよほど安心です。

■受ける価値がある健康診断はこの2つ

健康診断のなかでも私が受ける価値があると考えているのが、脳ドックと心臓ドックです。これらは心筋梗塞やくも膜下出血など突然死のリスクがある病気を発見するために役立ちます。

心臓ドックは心臓の周囲を取り巻く冠動脈について、動脈硬化が進み細くなっている箇所があるかどうかを診ることができます。万が一詰まりそうになっている場所が見つかれば、血管を広げる治療を受けて心筋梗塞を予防できるのです。

脳ドックで行われるMRI(磁気の力を利用して脳内を撮影する検査)では、動脈の壁が拡張して、血管が膨れ上がってしまう動脈瘤の発見に役立ちます。動脈瘤は放置するとやがて破裂し、死に至る危険があるものです。早期発見できれば予防治療を受けられます。

医療スキャン モニター
写真=iStock.com/baranozdemir
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baranozdemir

血液検査の異常値は、あくまで将来的に心筋梗塞になる可能性が「確率的に高い」としかいえません。対して心臓ドックと脳ドックは、どちらも今の状態を的確に診断するものですから、診断される側としても信頼性が高い検診だといえます。

ちなみに、日本の血管内治療の技術は世界トップクラスで、海外の要人が治療を受けるために来日するほどです。今後、心臓ドックと脳ドックの重要性がより増していくでしょう。

ただし、ステント術などを研修医など未熟な医師に担当させる病院があるので、心臓ドックを受けても死亡率が下がらないということが、日本でも海外でもいわれています。

「いい医者、うまい医者を探す」(これもAIでできます)ということとセットだということは知っておいてください。

■一番のがん予防は「我慢しないこと」

日本人の死因のトップはがんであり、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡する、といわれています。年代別で罹患率をみると70代から急増することから、特にシニアが恐れる病気です。

がんは生活習慣病といわれ、世の中には「塩分を控える」「野菜や果物を積極的に摂る」「肉よりも青魚のほうがいい」といった予防法があふれています。

シニアのなかにはがんを恐れて食べたいものを我慢して粗食にしている人が多くいますが、私の考えは逆です。70歳を過ぎたら我慢をしないほうが元気でいられるのです。もちろん、暴飲暴食は禁物ですが。

イタリアンランチを楽しむ美しい先輩女性
写真=iStock.com/kumikomini
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kumikomini

がん予防にいちばん大切なのは免疫機能の維持です。免疫とはマクロファージや白血球、NK細胞、キラーT細胞、B細胞などのさまざまな細胞が異なる役割を果たしながら体を守ってくれる体内のシステムです。最近の研究では、この免疫システムが心のストレスの影響を受けるということがわかってきました。

実際に、うつ病になると風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなり、肌荒れや疲れやすいといった症状がみられるようになります。不安な気持ちやネガティブな気持ちが免疫力を低下させてしまうのです。

■喜びを感じながら過ごし、前頭葉を活性化させる

こう考えると、人生を楽しみ、喜びを感じながら生きることが免疫力の維持、つまりがん予防には大切だといえます。人は好物を食べると幸福感を得て、前頭葉が活性化します。

過度な食事制限で日々ストレスを溜め込むよりも、好きなものを我慢せずに食べておいしいと感じる瞬間が多いほど、健康的なのです。

ただし、お酒の飲み方にはご注意ください。高齢になると会社の人付き合いも減り、一人酒の機会が増える方も多いようです。

眠れないから、気分が晴れないからとお酒に頼るようになるといつのまにか酒量が増え、アルコール依存症になる可能性もあります。ベロンベロンになるまで飲むのではなく、軽い晩酌程度にとどめるように気をつけましょう。

■老後を心穏やかに暮らすために本当に頼るべき医師の選び方

高齢になると、なにかしらの理由で通院することも増えるでしょう。老後をイキイキと過ごすには、医師選びも重要なポイントとなります。

和田秀樹『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』(日本実業出版社)
和田秀樹『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』(日本実業出版社)

医療業界ではすでにAIの導入が進んでおり、今後は画像、レントゲン、CT、MRI、心電図、眼底カメラといった大量にデータが収集できるものに関しては、AIが診断を下す機会が増えるでしょう。また、診断に基づいてどの薬を処方するかという治療方法の選択も、ある程度はAIができるようになります。

今まで医師が行っていたことの一部をAIが代替できるようになるとすれば、どこの病院に行っても、同じ基準の診断が受けられて同じような治療方法を提案される可能性があるということです。

IT技術と組み合わせれば、患者さんがどこで暮らしていてもスピーディな診断が可能になり、医師不足が深刻な過疎地などにとっては安心な体制ができるでしょう。

こうお話しすると、「それならどこの病院に行っても一緒じゃないか」と思うかもしれませんが、私はいい医者を選ぶためには、別の観点が大切だと考えます。

あなたはかかりつけ医と話をしたあと、気持ちがラクになりますか?

「ちゃんと話を聞いてくれない」「いつも杓子定規な答えしか返ってこない」など、モヤモヤを抱えることはないでしょうか。老後を心穏やかに暮らすために本当に頼るべき医師は、あなたが心を許せる医師です。

■もっとも簡単に医師を見分ける簡単な方法

もっとも簡単に医師を見分ける方法は、薬について相談してみることです。医師からすすめられた薬を飲みはじめたらなんとなく体がだるい、頭がぼんやりするというようなことがあれば、素直に相談してみましょう。

たとえば、血圧の降圧剤で不調を感じて相談をしたとします。不調を訴えても「血圧は正常ですから、問題ないですよ」「この薬をやめたら突然死ぬこともあるんですよ。それでもやめますか?」などという答えが返ってきたら、要注意です。

いい医者であれば患者さんの声を聴き、「別の薬を試してみましょう」「血圧は少し高めにコントロールしましょう」などと薬を再考するでしょう。

薬の効き方には個人差があり、特に高齢になるほどその差は顕著です。人によっては不調が現れる人もいるのですが、なかにはシニアのみなさんの身体を理解せず、教科書どおりに「血圧を下げるにはこの薬」と決めつける医師もいます。

医者と患者のイラスト
イラスト=まつむらあきひろ
出所=『AIを賢く利用して 老後を図々しく生きる』より - イラスト=まつむらあきひろ

いくら血圧が安定しても不調が続けば、生活の質が下がってしまいます。いい医者というのは患者さんが苦しまず、穏やかに暮らせるにはどうしたらよいのかを第一に考えてくれる人であるはずです。教科書通りに薬を処方するだけなら、それこそAIにやってもらえば十分な話です。

■「嫌な医者とは付き合わない」が大前提

AIの導入が進むと、医者の人間的な面がよりクローズアップされるようになるでしょう。患者さんに寄り添う心構えやコミュニケーション力が試されるようになり、教科書通りの対応しかできない医者は淘汰されていくかもしれません。

医者選びで大切なのは、シンプルに嫌な医者とは付き合わないことです。話しやすい、診てもらうと安心できると感じる医師と付き合うほうが、心の健康にもいいはずです。

生成AIが進歩すると、二流の医者(今の大学では心の医療などはまったく習いません)より、AIと話しているほうが安心感を得られることにもなっていくでしょう。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)

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