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お金が貯まる理想の「預金&証券口座」の数はいくつか…老後の残高を最大化する口座管理ガイド

プレジデントオンライン / 2025年1月30日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/masamasa3

資産運用に励むための理想的な口座づくりとは何か。エコノミストの崔真淑さんは「預金口座を3つに分けること。ただし、50代以降はそこにもう1つ加えるのがおすすめだ」という――。

■全世代におすすめの口座づくり

「理想的な、銀行口座のつくり方を教えてください」

最近、年上の方からこんなアドバイスを求められました。役職定年を前に、自分の預金口座の見直しを始めたい、と。その方は、普通預金と定期預金の2口座で30年ほど1つの銀行に自分の全収入を預けているとのことでした。

私はファイナンシャルプランナーではありません。この連載でもお伝えしているように、畑作がおしえてくれるアグリエコノミクス(農業経済学)の視点からお金について日々考えているイチ消費者です。そこで、こう答えました。

「口座を3つに分けること。それが、全世代におすすめしたい口座づくりです。ただし、50代以降はそこにもう1つ加えるのがおすすめです」

まず、3つの口座の違いは何か。

それは「短期」「中期」「長期」。短期は普通預金で日常使いと緊急時用、中期は定期預金で将来の支出に備える用、長期は証券口座で、投資信託や個別株を買いつける投資用です。

特に投資は、長期口座が理想です。時間を味方にすることで資産が増えるからです。20代の方には、最初の口座づくりのタイミング、40~50代の方には定年生活への離陸としてのタイミングで、証券口座の開設をおすすめします。

3つのバランスはその方の年齢によって決めるべきですが、投資用の長期口座に入れる金額は、5年先まで手をつけずにいられる額が理想です。必要に応じてリバランスできるように、総額をしっかりと把握しておくことも大事です。

■ほったらかし投資の長所とは

投資を始めると、株価の変動に一喜一憂して売買したくなることがありますが、基本は「ほったらかし」、つまりよほどのことがない限り放置するのが賢明です。

投資の最大の利点の1つは複利効果です。投資した資金が増え、その増加分がさらに運用されることで、長期的に資産が増加します。ひんぱんに売買するとこの効果が失われ、しかも売買の手数料や税金などのコストでリターンが圧迫されます。

そればかりではありません。投資を「ほったらかし」にする利点は、市場を始終チェックする必要がなくなり、他の大事な活動(仕事や自己投資、趣味など)に集中できることです。これにより、投資以外の生活の質が向上するのは言うまでもありません。プロの投資家でないかぎり、あくまでも投資は“財布の1つ”として捉えるべきです。

重要なのはポートフォリオをバランス良く維持すること。株、債券、外貨を均等に持つのが理想です。

「お金の神様」といわれた邱永漢(きゅうえいかん)氏の「財産・資産三分法」では株式、債券、不動産を均等に分ける方法が提唱されていますが、今は不動産価格が高騰しているので、不動産を持ちたい場合、不動産投資信託(REIT=リート)を活用するのが現実的だと考えます。私はこれに、金とビットコインを加えてリスクを分散しています。

■自己投資こそリターンが大きい

では、人生の中で3つの口座をどのように使い分けていくと良いでしょうか。

例えば20~30代の時期は長期の資産形成をめざしつつも、短期や中期の口座に多めの額を確保し、自己投資に充てることをおすすめします。

月々1万~2万円を投資に回すことも重要ですが、その資金を国家資格取得のための講座に使えば、将来の年収が増える可能性があるからです。例えば、会計士や税理士の資格などは独立開業が可能であり、自分なりの働き方を選べる自由度の高い資格です。

私自身、30歳から大学院に通い始め、そのリターンの大きさを実感しました。「自己投資が収入につながるかわからない」と悩む人もいますが、結果を出せるかどうかは自分次第です。勉強する場では人との縁も生まれ、そこから新しい仕事に結びつくこともあります。

コインと角帽
写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MicroStockHub

■老後資産の取り崩しは「定額」か「定率」か

40代を超えたら短期・中期・長期のバランスを意識し、50代以降は出口戦略を考えましょう。いわゆる資産の“取り崩し”計画です。

資産の取り崩しとは、老後に備えて蓄えた資産を、生活費やその他の必要な支出のために計画的に使い減らしていくことです。老後は収入が減少または無くなる場合が多いため、年金や貯蓄を取り崩して生活していくのが一般的です。

老後資産の取り崩しには、大きく分けると「定額」と「定率」、この2つの選択があります。

毎月末に同じ金額を取り崩す「定額」と、各月末の残高の一定割合の金額を取り崩す「定率」です。資産残高をより多く残したいなら定率、安定した金額を常に取り出したいなら定額が向いています。

私の提案は「65歳から80歳までは定率」「80歳以降は定額」にする方法です。

80歳を切り替えの目安とする理由は、健康寿命です。

日本人の健康寿命は、男性は72.57年、女性は75.45年(2022年厚生労働省)。そして、78歳で老化が急激に起こるとも言われます。2019年に米スタンフォード大学の研究チームが発表した論文では、老化は一定のペースで進むのではなく、34歳、60歳、78歳という3つのポイントで急激に進むことが示されています。

■定額と定率のいいとこどりをする具体策

同時に気をつけたいポイントは、資産運用の悪化です。要するに、運用成績によって元手となる資産が下がってしまったときのこと。そうなれば、定額であれ定率であれ、資産の取り崩しは難しくなります。

日興リサーチセンターの資産運用研究所主任研究員・本山真氏のレビュー(「投資信託の取り崩し方法の比較」2020年5月)によると、過去30年の日経平均に連動する投資信託を買った場合、定率で取り崩せば、毎月の取り崩し額と最終的な残高は、定額よりも残るけれど、パフォーマンスの良いときと悪いときで入る差額が大きい。つまり取り崩し額が不安定になるデメリットを指摘しています。

利益と損失の天秤
写真=iStock.com/SERSOL
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SERSOL

そこで私からの提案は、NISA口座とは別にもう一つ投資用の口座をつくり、2つの口座を運用することです。NISA口座は非課税のため、値上がりが期待できる株式や成長型投資信託の運用。新しい口座(特定口座もしくは一般口座)は、配当収入や価格変動が少ない資産(債券や高配当株式など)を運用する。ただし後者は、利益の20%が課税されるため、ひんぱんに売買せずに長期保有で税効率を高めることが必要です。

■非課税口座と課税口座の取り崩しテクニック

取り崩しの優先順位は次のようにすると、税負担が抑えられます。

非課税口座(NISA)の利用
利益に課税されないため、まずNISA口座の資産を活用。

課税口座の低リスク資産の取り崩し
値動きの少ない資産を優先して売却。

課税口座の高リスク資産の取り崩し
値動きの大きい資産はタイミングを見て売却。

「わざわざ別の口座をつくるのが面倒」という人もいらっしゃるでしょう。もちろん1つの口座内で分散投資を徹底させても問題はありませんが、口座を分けると取り崩すときにわかりやすい。“取り崩し用のスペア口座”があれば、安心感がさらに増すのではないでしょうか。

ですから、50代以降の口座づくりは計4つ。冒頭で述べた年上の方にも御納得いただいた次第です。

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崔 真淑(さい・ますみ)
エコノミスト
2008年に神戸大学経済学部(計量経済学専攻)を卒業。2016年に一橋大学大学院にてMBA in Financeを取得。一橋大学大学院博士後期課程在籍中。研究分野はコーポレートファイナンス。新卒後は、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)でアナリストとして資本市場分析に携わる。債券トレーダーを経験したのち、2012年に独立。著書に『投資一年目のための経済と政治のニュースが面白いほどわかる本』(大和書房)などがある。

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(エコノミスト 崔 真淑 構成=池田純子)

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