メールを半年塩漬けにする「ほどよい人でなし」でちょうどいい…片づけのプロが実践する「人間関係の整頓術」
プレジデントオンライン / 2025年2月6日 16時15分
※本稿は、川原卓巳『人生は、捨て。自由に生きるための47の秘訣』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
■人間関係にもそのときどきの役割がある
人間関係を捨てる。
そう言うと、人でなしでドライな印象を受けると思います。
「人とのつながりはちゃんと大切にするべき」
「人間関係をおろそかにすると痛い目にあう」
「なにかあったときに助けてもらえる人がいなくなりますよ」
「人との縁を切るとか自分からしていいことじゃない」
そんな忠告を受けそうです。
でも本当にそうでしょうか? 僕からすると、いまは過剰に人間関係を大切にしようとしすぎていることで苦しんでいる人のほうが多いように感じています。そもそもライフステージによって人間関係が変わっていくのは普通のことのはず。モノにそれぞれ役割があるように、人間関係にもそのときどきの役割があります。
自分を成長させてくれる人。
自分に縁をもたらしてくれる人。
よい情報を教えてくれる人。
一緒にいて心地いい時間をくれる人。
新しい価値観を与えてくれる人。
お互いに目指すものがあって刺激を与え合える人。
あなたがそばにいたいと思う人には、なんらかの理由と役割があるはずです。別に頭で考える理由としての明確な損得がなくとも、なんとなくでもそばにいたい根拠となる感情があるはず。
■環境が変われば「一緒にいたい」と思う人も変わる
そしてあなたの環境やライフステージ、目指すものが変わっていけば「一緒にいたい」「そばにいたい」「時間をともにしたい」と思う相手も当然ながら変わります。変わらないとおかしい。
たとえば、中学時代はとても仲がよかったけど、高校に入ったら疎遠になった友だちがいます。逆に、学生時代はさして親しくなかったのに、社会人になってから急に仲良くなる相手もいたりする。
長い人生のなかではさまざまな人と出会います。かけがえのない親友になれた人もいれば、そうではなかった人もいる。たとえ親密な間柄になったとしても、それがいつまでも続くとはかぎらない。あなたと相手の距離感は刻々と変わっていきます。
人間関係は、つねに変化の渦中にある。そう考えておくべきでしょう。
■モノの片づけと同様に「役割を終えたものに感謝して手放す」
役割を終えた関係には別れが訪れます。別れはつらいものですが、別れがあるからこそ新しい出会いの余地が生じるというのもまた事実です。
以前は一緒にいて心地良かった人でも、最近はちょっと違う、ときめきを感じられない。それはなにも特別な現象ではありません。
そんなときは心のなかで「これまで自分の人生にいてくれて、ありがとう」と告げ、ひそかに離れていきましょう。
「人間関係を捨てる」と言っても、「今日からあなたには会いません」と言えというわけではありません。そんなふうにきっぱり縁を切るのではなく、「いまはこの人と近づくタイミングではないな」と考え、意識的に連絡を取らないようにする。それだけのことです。
自分自身と向き合うことで、相手の本当の役割や意味合いに気づき、役割を終えたものは感謝しながら手放す。これはお世話になったモノとの関係を手放していく「片づけ」と同じ力学です。
人間関係の片づけを進めた結果、それでもなお「大切にしたい」と思う人こそが、これから関係を築くべき相手に違いないのです。
![川原卓巳さん](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/4/1200wm/img_44eafc44af410c4eb63e017d3032d204262880.jpg)
■強いつながり、弱いつながり
ちなみに人間関係には大きく分けると2つのカテゴリーがあると言われています。それが「強いつながり」と「弱いつながり」。読んで字のごとく、親密な強いつながり(Strong Ties)は、家族や親友、長年の同僚など、頻繁に接触し、深い信頼関係や感情的な結びつきがある人々との関係のこと。
一方で、弱いつながり(Weak Ties)は、知人や偶然知り合った人々、あるいは仕事上の軽いつき合いの相手など、接触頻度や親密度が低い関係を指します。
おもしろいのは、これら2つのつながりには、それぞれ異なる役割があることです。強いつながりは、感情的なサポートや深い信頼にもとづいた助け合いの場を提供してくれますが、情報や新しい機会を得るには弱いつながりのほうが重要だと言われています。
社会学者のマーク・グラノヴェター氏はこの現象を「弱い紐帯の強さ(The Strength of Weak Ties)」と呼んでおり、弱いつながりが新しい視点や可能性をもたらす架け橋になることを提唱しています。
つまり、どちらの関係性も役割が違うだけで重要だということなのです。
強いつながりは深さを、弱いつながりは拡がりを生み出す関係とも言えるかもしれません。このバランスを意識して築くことが、豊かな人間関係とキャリアの成功につながる鍵となるのです。
余談ですが、僕の人生を変えた麻理恵さんとの関係性も、元を辿れば弱いつながりでした。21歳で出会ってはいましたが、それ以降は年に一度連絡するかしないかぐらいの弱いつながりです。しかし、その弱くも長いつながりが、気がつけばつき合うようになり、結婚し家族を築き、人生をかけてビジネスを共にするパートナーになることもある。
ほんとうにわからないものです。出会った時点では、その出会いの意味がわからないことも人間関係のおもしろいところだと思います。だからこそ大切なのは「ときめき」で選ぶこと。損得や打算的なつき合いではなく、心でつながりを感じられる人との関係性をきちんと育むこと。それこそが人間関係の極意と言ってもいいのかもしれません。
■現代にあふれる「ノイズ」が自分をダメにする
テレビ、新聞、雑誌、SNS、ネットニュース――。
情報があふれ返った現代人の暮らしはきわめてノイジーです。
有名人の不倫疑惑。芸能人の恋愛事情。どうでもいい話題だらけ。それで自分の生活がどうこうなるわけではない。でもそうわかっていながらもその記事に目を走らせてしまう。時間を使ってしまう。下世話なゴシップにはどこか蜜の味がするのです。
こうしてわたしたちは余計なノイズを日々浴びながら、そこで多大なエネルギーと時間を奪われています。特にスマートフォンという文明の利器が登場してからというもの、際限ない情報の渦に現代人は飲み込まれています。
これは人類史上かつてなかった事態。SNSやネットニュースの通知が「ピコンピコン」と鳴るたびに、わたしたちの注意力はどんどん削がれていく。
すると、なにが起こるのでしょうか。思考力の低下です。
いま、TikTokのような中毒性の高いショート動画に世界中の人々が夢中になっています。現代人の脳はスマホによってハックされつつある。依存させられている。その結果、集中して思考する機会が失われているのです。
自分が自分でなくなる。人生をなんとなくの惰性のなかでやり過ごしてしまう。これ以上、不幸なことはありません。ノイズは天敵です。わたしたちは努めてそれを遠ざける必要があります。意識的に遠ざけなくてはなりません。
![チェーンが巻かれ、鍵をかけられたスマホ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/d/1200wm/img_ad67b3ca15444b610e5662ec60868a93260261.jpg)
■田舎に移り住んで変わったこと
僕ら家族(麻理恵さん、3人の子ども)は数年前に田舎に移り住みました。山に囲まれ、食べ物も美味しく、人混みともほとんど無縁です。一方で、都会で生活していたころのような刺激的な体験は相対的には減りました。
でもここに移り住んでから、意識と思考が格段にクリアになった実感があります。自分にとって大切なことに日々集中している実感がある。もちろんそれはノイズが減ったからです。
僕の友人である執筆家の四角大輔さんは、究極のノイズレス生活を実践しているひとりです。彼はかつてレコード会社のプロデューサーとしてミリオンヒットを10回も記録。当時の音楽業界で四角さんの名前を知らない人はいなかったと思います。泣く子も黙るヒットメーカーでした。
ところがキャリア絶頂時の2009年、15年間勤めていたレコード会社を退社。音楽の仕事はすべて手放しました。そして以前からの夢だったニュージーランド移住を果たします。原生林に囲まれた湖畔の森に居をかまえ、今日までほぼ自給自足の生活を送っているのです。
■田舎で暮らすことで「余計なものを手放す」
夜明けまえに起き、日没とともにベッドに入る穏やかな暮らし。毎日の食卓に並ぶのは釣った魚と、みずから栽培・収穫した野菜。仕事はオンラインでこなし午前中で終了。あとは畑仕事や釣り、そして家族との大切な時間にあてる。
澄み切った湖のほとりや、壮麗な原生林のなかを歩きながら、鳥のさえずりを聞くたびに命の鼓動を感じるのだと四角さんは言います。
あらゆるノイズを退けて、自分、家族、そして1日1日の生活の営みに向き合う。そのさまは、理想的な人生の完成形を思わせます。
2019年の年末から年明けにかけて、家族で四角さんのニュージーランドのご自宅に3週間ほど遊びに行かせてもらいました。そこで体感した圧倒的に豊かな暮らし、環境、時間はいまも忘れられません。地球と生きている。大げさではなく、そう感じる経験でした。「こんな生き方も可能なんだ……」と心の底から感嘆が漏(も)れました。
でも僕が四角さんと同じような暮らしができるかと言えばノーです。憧れはしますが、異国の大自然のなかで彼のようには暮らせません。完全なる自給自足の暮らしは僕にはハードルが高すぎる。というよりも、そこまでを求めているわけではない自分に気がつかせてもらいました。
幸せな生活のかたちは人それぞれです。でも彼のように徹底的に自分の理想を追求する姿勢には大いに学ぶべきものがあります。
余計なものを手放す。ノイズを減らす。身軽になる。そしてつねに自分自身を見つめ、自分が求めることをやる。自由と充実。本当の幸せはそこにしかありません。
■ノリのいい人間であり続けるために
ノイズを減らすために必ずやっておくべきことはなんでしょうか。それは人間関係の整理です。
メッセンジャーツールを使ったやり取り。SNSへのリアクション。多くの人とつき合えばつき合うほど、とうぜん情報のやりとりは増えていく。それがある水準を超えると強烈なノイズになります。自分にとって大切なものを見定める余裕を失ってしまうのです。
僕はどちらかと言えば、ノリのいい人間です。あらゆることをおもしろがるタイプ。そんな僕は日々さまざまな方から連絡をいただきます。
「一緒になにかしましょう!」「こんな企画やりませんか?」「今度お食事でもいかがですか?」
気にかけていただけるのは本当にうれしい。そして僕はノリのいい人間です。でもだからといってそのすべてに反応するわけではありません。むしろノリのいい人間であり続けるためにむやみな返信は控えています。
自分のリソース(時間や体力)は有限。だからこそ本当に大切な人にリソースを集中させたい。だから人間関係を過度に拡張させないようブレーキをかけているのです。
■「ほどよい人でなし」くらいがちょうどいい
もちろん分け隔てなく返信するほうが良いのかもしれません。正直、そのことで失っている機会もあるはず。
でもノイズにまみれて自分を見失ってしまえば本末転倒です。僕の人生は僕のものです。ですから「ほどよい人でなし」がベストだと割り切っています。
その点において妻の麻理恵さんは見事です。彼女は「ほどよい人でなし」でいるのがとても上手い。たとえばメールを返信するにしても長ければ半年以上放置していたりします。
最初に聞いたときは目ん玉が飛び出るほど驚きました。そんなことする人っているんだな……というぐらいに衝撃的。チャットツールでも必要最低限の返事しかしない。私だったら気になって仕方がないような状況も、平然としています。
その理由は明快で、彼女にとっては自分がときめいていられることこそが最優先で、後回しにして良いものはあとにすると決めて生きているのです。
それで困った様子があるかと言えば、ほとんどない。周囲の人もそういうタイプだよねと受け入れている。だからなにか問題が起こることはありません。
■「大切な人」とあと何回会えるだろうかを考える
人間関係にはさまざまな要素や状況がからみます。でもなにも難しく考える必要はありません。人間関係は刻々と移り変わっていくもの。難しく考えたところで答えはない。言ってしまえば時間の無駄です。シンプルにいきましょう。
この人間関係の「捨てる/残す」の判断基準はモノと基本的には同じです。ポイントは、ときめくか、ときめかないか。
![川原卓巳『人生は、捨て。自由に生きるための47の秘訣』(徳間書店)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/5/1200wm/img_35b76f613a0185f9ff749b3f45024c86153974.jpg)
人生は有限です。あなたにとって大切な人の顔をひとりひとり思い浮かべてみてください。ときめきをくれるその人たちとあと何回会えるのでしょうか。半年に1回、あるいは年に1回のペースだとして、あと何回でしょう?
実は、そう多くはないはずです。やがてお互い年を取れば、会うペースはさらに減っていくかもしれない。
余計な人間関係はノイズになる。自分をすり減らしてまで、八方美人に生きる必要はまったくないのです。
いま思い浮かべた友人、仲間との時間。そして、ときめきをくれる新しい出会い。それをなによりも優先する。となると、そうでない相手に労力を費やす暇も余裕もないはずです。みんな「ほどよい人でなし」でいきましょう。
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KonMari Media Inc. CEO
1984年広島県生口島生まれ。プロデューサー。大学卒業後、人材系コンサルティング会社に入社し、のべ5000人以上のビジネスパーソンのキャリアコンサルティングや、企業向けのビジネス構築・人材戦略を手がける。2013年に同社を退職し、近藤麻理恵のマネジメントと“こんまりメソッド”の世界展開をプロデュース。近藤の著書『人生がときめく片づけの魔法』シリーズを世界累計1400万部の大ベストセラーに導いた。2016年に活動拠点をアメリカに移し、「KonMari」ブランドの構築をさらに拡大させるとともに、日本発コンテンツの海外展開にも注力。2021年公開のNetflixオリジナルドキュメンタリー「KonMari “もっと”人生がときめく片づけの魔法(Sparking joy with Marie Kondo)」でエグゼクティブプロデューサーを務め、デイタイム・エミー賞を受賞する。2023年、「川原卓巳 プロデュースの学校」を設立し、グローバルに活躍するプロデューサー人材の育成に取り組んでいる。著書に『Be Yourself 自分らしく輝いて人生を変える教科書』(ダイヤモンド社)、『川原卓巳 プロデュースの学校〈上・下〉』(匠書房)。
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(KonMari Media Inc. CEO 川原 卓巳)
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