会議で「独演会」をする上司は幸せになれない…部下の本音を引き出す「優秀な上司」の3つの共通点
プレジデントオンライン / 2025年2月2日 7時15分
■アンテナを張るべき「部下のひとこと」
メンバーとの対話において、リーダーが果たす役割は「メンバーの本音を引き出す」ことです。ここでも「引き出す」という言葉が先行すると、リーダーが何か特別なことをしなければいけないのかと、身構えてしまうかもしれません。ご安心ください。その真逆のことが起きるのが、本来の対話の姿です。
1on1や会議、ミーティングの場で、メンバーとの対話がうまくいっていると感じる瞬間があります。それは、メンバーから「実は……」という言葉が出たときです。メンバーの自発的な発言でもある「実は……」は、「本音を話します」のサインです。このサインを見逃さないようにしましょう。
これまでのメンバーとの対話を思い出してください。メンバーに何を聞いても「ええ、まあ」「はあ、そうですね」といった返事か、「わかりました」と指示伝達の復唱しか返って来ないことがあったかもしれません。それ以上、互いに何も話すことなく、気づけばリーダーの独演会となっていたこともあったでしょう。
■本音を話してくれた部下に感謝を伝える
けれども、対話を通じて信頼関係が深まると、メンバーから「実は……」と話し出し、リーダーはあれこれ考えることが少なくて済みます。一緒に散歩をしているかのような気楽さこそ、本来の対話が成功している状態です。
「実は……」の続きはさまざまです。顧客との商談の感想、仕事上の困りごと、新たなステップアップの相談、今後の展望など、メンバーの「自分の仕事に関する話を聞いてもらいたい」があふれ出します。リーダーから見れば、組織をマネジメントするうえで貴重な情報を次々に聞くことができる状況です。心から「聞かせてくれてありがとう」と言いたくなる気持ちでいっぱいになります。
そんなときは、その気持ちを心にしまわず、「そういうふうに考えていたんだね。聞かせてくれてありがとう」と、声に出してメンバーに伝えてください。メンバーも「こちらこそ、話を聞いていただき、ありがとうございます」と思うはずです。ここにはリーダーとメンバーの信頼関係があります。
お互いの新しい発見や理解の深まりは、信頼関係をさらに強くさせます。そして、対話→連携のフェーズを経て、共創のゴールへとたどり着けるのです。
■「自分が正しい」は信頼関係を遠ざける
メンバーから見て「本音を引き出してくれる=話を聞いてくれるリーダー」には、次の3つの特徴があります。
①認知のズレに気づく
メンバーとの対話の場面が独演会の場にならないように、リーダーが謙虚さを伝えることが、メンバーの心理的安全性を毀損しない配慮を示すことになります。
×「昔からこうやってうまくいっているのだから、こうすればいい」
○「私はこれが正しいと思ってきたけれど、みんなはどう思うかな?」
このように、「自分の正論に自信はあるけれど、それを押しつける気はない。メンバーには別の考えもあるだろう。互いの認知にズレがあれば、それを知り、学びたい」という謙虚な対話の姿勢を常に示すようにしましょう。自分が正しいとは思い込まないことが、メンバーとの信頼の入口になります。
■上司が先に心の内を晒すことが重要
②ありたい姿と不安を開示する
実は、「自分には特段やりたいことも、こうありたいと思う姿もない」というリーダーは一定数います。また、リーダーとして、「不安を見せたらメンバーになめられる」と虚栄を張るリーダーもいます。リーダーが本音を隠していて、メンバーの本音を引き出すことはできません。
リーダーだからこそ、「こうなりたいんだ」とありたい姿を開示し、さらに不安があれば、それも開示することがとても大事です。
「みんなと一緒に目標達成するために、○○なチームを目指したい。けれど、今の段階ではこういう不安がある。みんなはどう思うかな?」と、リーダーが本音を話せば、メンバーは自分にできることを考え、「実は……」と話し出します。
そして、「それなら私にはこういう考えがあります」と、メンバーたちの既知がどんどん出てきて、連携のフェーズへとつながっていくのです。
■傲慢で横柄な上司には本音を言いたくない
③謙虚に学び取ろうとする
リーダー自身がありたい姿がない、不安でいっぱいでもいいのです。リーダーという立場であっても、自分にあるのは自分の既知のみです。メンバーは、それぞれ異なる既知を持ち、「自分×メンバー」や「メンバー×メンバー」の既知の掛け合わせによって、「このチームだからできること」が増えていきます。
リーダーが謙虚であれば、メンバーは萎縮せずに済みます。自然と各自の本音が引き出され、チームは対話で満ちあふれます。
■「管理職に向いていない」と悩む理由
読者の皆さんの中には、「優れたリーダーになるために」と言われても、「そもそも自分はリーダーをやりたいのか?」「向いていないのではないか?」と悩んでいる方がいるかもしれません。
なぜ、そうなってしまうのか。それは、自分が育ってきた環境と、リーダーになった変化の激しい現在とでは、働き方や職場の文化が大きく変わったことが背景にあります。
1990年代までの管理職は文字通り、部下の仕事をチェックして管理する存在でした。当時は、米国の経済界さえも学ぼうとした強固なトップダウン体制の象徴的存在です。それが2000年代になると、マネジメントとプレイヤーを兼任する働き方に変化します。いわゆるプレイングマネジャーの誕生です。
そして、2010年代以降はプレイヤーとしての仕事の量がどんどん増えていきます。時には部下のミスを挽回するために停滞する仕事を巻き取ったりしなければならず、管理職の仕事は多忙を極め、罰ゲームとまで言われるようになりました。こうした状況において管理職が疲弊するのは当然ですし、孤立感すら抱いてしまうこともあるでしょう。
リーダーの「困った」は、環境の変化と求められている役割の変化という外的要因を自分の内部に抱え込んでしまうことで起きます。その結果、「自分は自分の仕事に専念したい」「リーダーなんて向いていない」と思ってしまうのです。
一方、「仕事を通じて自己幸福感が高まった」「負担は確かに感じるけれど、面白いことばかり」という声も多く聞きます。そうした人たちを見ると、ネットワーク型組織のチームをつくりあげていることがわかります。
そうした人の共通点は、「困った」をオープンに表明しつつ、周囲に助けを求めて既知と既知を結合し、新しい価値を生み出します。まさに、”対話力”があるのです。
■対話力のあるリーダーは幸せになれる
対話はメンバーのためだけのものではありません。対話を通じたメンバーとの信頼関係によって、リーダーも仕事に対する幸福感ややりがいを持てるようになります。マネジメントの仕事が嫌になるのは、メンバーの「自分でなくても」「この会社でなくても」という孤立感と同じなのです。
ここで、読者の皆さんにはっきりさせておきたいことがあります。それは、対話とは「メンバーを組織にとって都合のいい戦力にする」「組織づくりの役割を果たさせる」ために行うものではなく、リーダーを含むメンバー一人ひとりの結びつきを強固にして、互いに「このチームで働けてよかった」という納得感ややりがいを維持していく仕組みをつくるために行うものだということです。
それを常に念頭に置いて欲しいと思います。
対話力を磨き、メンバーの本音を引き出し、メンバーに本音を伝えることができるリーダーになることは、自分自身を幸せにします。
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人材開発コンサルタント
アンドア株式会社代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。組織の対話の質向上に特化した人材開発コンサルタント。スターバックスコーヒージャパン、リクルートなどを経歴し、会社のパーパスと個人の主体性を意味づける対話について豊富なファシリテーションの経験を持つ。大手自動車メーカー、製薬会社、内閣府、大阪市など累計500社以上で人材開発を支援し、「腹割り対話」「きっかけ砂時計対話」などの独自メソッドを開発。マネジメントの失敗事例をデータベース化し、組織の問題を構造的に示す論理性と、落語を思わせる共感的な語り口で講師満足度平均96%をマーク。ミッションは、誰もが「本来の力を、思いのままに」できること。
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人材開発コンサルタント
アンドア株式会社取締役。山梨県出身。山梨大学教育人間科学部卒業後、コミュニティカフェの経営を経て、人材組織開発コンサルティング会社に入社。スタートアップから大手企業までの若手・中堅向けリーダーシップ開発や組織の対話風土改革を手がけ、その後、新規事業開発部にて事業開発マネジャー、営業マネジャーを兼任したのち、アンドア株式会社へ参画。自社内の事業構造改革から営業戦略・マーケティング戦略まで幅広く携わり、その知見を人材・組織開発へ転用することを得意としている。モットーは、「本来の力が発揮できる対話力と環境づくりを引き出す」。
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(人材開発コンサルタント 堀井 悠、人材開発コンサルタント 松本 悠幹)
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