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「休日はどう過ごしているの?」は三流の質問…40代上司が20代部下と雑談するときの"理想の声かけ"

プレジデントオンライン / 2025年2月4日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/suksao999

上司と部下のコミュニケーションを円滑にする秘訣はあるのか。人材開発コンサルタントの堀井悠さんと松本悠幹さんの共著『優れたリーダーはなぜ、対話力を磨くのか?』(クロスメディア・パブリッシング)より、理想の対談事例を紹介する――。

■ランチタイムに部下と同席、さてどうする?

<問題>
あなたが社員食堂で昼食をとろうとしていたところ、新しくチームに加わった部下が一人で食事をしていました。普段はあまり個人的な会話をすることがなく、この機会に部下との関係性を深めたいと考えています。
この状況で、部下の興味関心を引き出し、より深い関係性を構築するために最も効果的な問いかけは、次のA〜Dのうち、どれでしょうか?
<選択肢>
A 最近の業務で、特に力を入れていることはありますか。
B 休日はどのように過ごしていますか。何か趣味はありますか。
C そういえば、この前のレポート作成はありがとう。私もあのようなまとめ方をしたいなって影響されましたよ。
D 山田さんの仕事の振り方が雑で、最近困っているようですね。

■「仕事はどう?」はプレッシャーになるだけ

食堂とはいえ、突然隣り合わせになっても何を話していいかは思いつかないものです。

そのまま挨拶程度で黙々と食事だけの時間となっては、関係性は深まりません。無理に対話の入口を開こうとして、上司・部下の関係からスタートすると「仕事はどう?」「頑張ってる?」といった言葉しか出てこず、「ええ、まあ」くらいの返事しか戻ってきません。部下からしてもプレッシャー以外の何物でもないのです。

休憩時間や就業時間後は、相手にとっては公私の「私」の時間です。まして食事をしながらであれば「楽しく過ごす」が大前提であり、リーダーといるのは、「何のためにやっているのかわからない1on1」と同じです。課題や問題点を話題にするのは避けましょう。

仕事を話題にする場合も「最近、この仕事が楽しかった」「一番面白いと思った仕事」など、業務や成果とは異なる問いかけを心がけてください。

リーダーとメンバーの前提をなくし、「そう考えるのか」「そう感じるのか」を交換し合いながら、お互いに共通すること、異なることを知り合う機会と捉えるのがいいでしょう。

■プライベートな話題、他人の悪口は避ける

各選択肢の具体的な解説は次の通りです。

【A】
・特に力を入れていること……具体的な接点や相手からの影響に触れておらず、一般的な業務の質問に留まっています。そのため、相手の価値を認める要素が欠けています。

【B】
・休日は……仕事に関する具体的な接点がなく、プライベートな質問に突然飛躍しています。関係性ができていないメンバーからすると、唐突にプライベートのことを聞かれるのはあまりいい気がしないものです。

【C】
・この前のレポート作成……相手との具体的な接点に言及しており、会話の糸口を自然につくっています。

・したいなって影響されましたよ……相手の過去のプロセスから影響を受けたことを伝えることで、相手の価値を認めています。さらに、相手の行動から受ける「学習」「影響」に関心を示すことで、モチベーションを引き出す機会をつくっています。

・ありがとう……直接的な質問ではなく、感謝と称賛を通じて相手の反応を促しています。

【D】
・山田さんの仕事の振り方……この場にいない第三者を話題にして対話の糸口を探していますが、明らかにネガティブな話題を提供しています。一般的には「悪口」と捉えられます。田中課長と山田主任の関係性がどれだけ構築できていようと、メンバーからすると「裏では私も悪く言われているのかな?」と懐疑的になり、安心して働けない環境になります。

・困っているようですね……無理やり同情を求める言い方で危険です。メンバーは愛想笑いを浮かべて、その場はやり過ごしますが、冗談なのか本音なのかがわからない上司の態度に、信頼を失っていくでしょう。

■部下の「興味関心」を引き出す効能

<正解>
C

現状の関心や課題を明らかにする「興味関心」のステップです。対話の入口では相手との接点や影響について話します。

対話の型「きっかけ砂時計モデル」
出所=『優れたリーダーはなぜ、対話力を磨くのか?』

Cの問いかけを用いることで、具体的な接点をもとに会話を始め、相手の価値を認めつつ興味関心を引き出すことができます。これにより、より自然で深い関係性を構築する機会が生まれ、相手の意欲や成長にもつながる可能性があります。

また、リーダー自身も学ぶ姿勢を示すことで、双方向のコミュニケーションを促進することができます。

■「仕事ぶりをちゃんと見ている」とアピール

ランチタイムにおける理想の対話事例を紹介します。

レストランでランチを食べる2人のビジネスマン
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

田中課長(45歳男性) 吉田さん、隣でご一緒してもいいですか?

吉田係員(22歳男性) お疲れ様です。もちろんです。

田中課長 最近、仕事の調子はどうですか?

吉田係員 そうですね、まだ学ぶことが多くて大変ですが、なんとか頑張っています。

田中課長 最初のうちはいろいろと覚えることが多いから大変ですよね。でも、吉田さんの、わからないことを納得いくまで調べる姿勢は、いつも素晴らしいなと思って見ていますよ。

仕事の評価ではなく、「ちゃんと見ている」は、成長実感の自覚や心理的安全性の実感につながります。

吉田係員 ありがとうございます。その言葉を聞くと少し安心します。

■ネガティブな仕事の話は場所を選ぶ

田中課長 ところで、最近の仕事の中で特に楽しかったことや面白かったことは何かありますか?

業務を離れた場でする仕事の話は「楽しい」「面白い」など、ポジティブな感情レベルの事柄に留めます。

吉田係員 最近、新しいプロジェクトに参加させてもらっているのですが、そこで新しい技術を学ぶ機会があって、それがすごく楽しかったです。

田中課長 それはいいね。どんな技術を学んだの?

吉田係員 クラウドコンピューティングの基礎を学んだんです。初めての分野で不安もあったんですが、実際に触れてみると面白くて。チームの先輩たちも親切に教えてくれたので、すごく勉強になりました。

田中課長 クラウドコンピューティングか。私も見習わなきゃな。先輩たちが親切に教えてくれたっていうのもいいね。どんなことが自信になりましたか?

■「すごい」と思ったら素直に伝えていい

吉田係員 そうですね。プロジェクトのミーティングで、自分の意見を発表する機会をもらったことです。緊張しましたが、みんなが真剣に聞いてくれて、自信がつきました。

田中課長 それは素晴らしい経験だね。自分の意見を発表するのは勇気がいることだけど、しっかりやり遂げたんだね。自分の意見をきちんと伝えることや学ぶ姿勢って、いくつになっても忘れちゃダメだって思うよ。

メンバーの新たな一面、リーダーの心を動かすような努力を知ったら、ありのままの感想を伝えることが信頼関係の醸成につながります。

■プライベートの話を聞くときは自然に

吉田係員 ありがとうございます。これからも自分の意見を持って貢献できるようにしていきたいです。

田中課長 いいね。一方で、仕事で疲れちゃって体力がしんどいとか、そういうときはどうしているのですか?

吉田係員 実は最近、登山にハマっていまして、週末に友人と一緒に山に登ることが多いです。

田中課長 登山! 素敵ですね。どの山に登ったの?

堀井悠、松本悠幹『優れたリーダーはなぜ、対話力を磨くのか?』(クロスメディア・パブリッシング)
堀井悠、松本悠幹『優れたリーダーはなぜ、対話力を磨くのか?』(クロスメディア・パブリッシング)

吉田係員 先週は高尾山に行ってきました。景色がすごくきれいでリフレッシュできました。

田中課長 それは素晴らしいね。仕事で忙しい分、プライベートで積極的にリフレッシュできているのは流石だね。

吉田係員 ありがとうございます。田中課長は何か休日にリフレッシュしていることはありますか?

田中課長 そうだね。腰を悪くしちゃって、整体に通ってばかりだね。

吉田係員 そうなんですね。腰、お大事にしてくださいね。

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堀井 悠(ほりい・ひさし)
人材開発コンサルタント
アンドア株式会社代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。組織の対話の質向上に特化した人材開発コンサルタント。スターバックスコーヒージャパン、リクルートなどを経歴し、会社のパーパスと個人の主体性を意味づける対話について豊富なファシリテーションの経験を持つ。大手自動車メーカー、製薬会社、内閣府、大阪市など累計500社以上で人材開発を支援し、「腹割り対話」「きっかけ砂時計対話」などの独自メソッドを開発。マネジメントの失敗事例をデータベース化し、組織の問題を構造的に示す論理性と、落語を思わせる共感的な語り口で講師満足度平均96%をマーク。ミッションは、誰もが「本来の力を、思いのままに」できること。

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松本 悠幹(まつもと・ゆうき)
人材開発コンサルタント
アンドア株式会社取締役。山梨県出身。山梨大学教育人間科学部卒業後、コミュニティカフェの経営を経て、人材組織開発コンサルティング会社に入社。スタートアップから大手企業までの若手・中堅向けリーダーシップ開発や組織の対話風土改革を手がけ、その後、新規事業開発部にて事業開発マネジャー、営業マネジャーを兼任したのち、アンドア株式会社へ参画。自社内の事業構造改革から営業戦略・マーケティング戦略まで幅広く携わり、その知見を人材・組織開発へ転用することを得意としている。モットーは、「本来の力が発揮できる対話力と環境づくりを引き出す」。

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(人材開発コンサルタント 堀井 悠、人材開発コンサルタント 松本 悠幹)

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