「ごはん抜き生活」は逆に糖尿病リスク大…「最初は野菜から」より効果的な血糖値を上げない"食べ方"の大正解
プレジデントオンライン / 2025年2月7日 18時15分
※本稿は、矢野宏行『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)の一部を再編集したものです。
■カロリー制限では血糖値は下がらない
血糖値をコントロールするには食事選びだけでなく、食事方法にもポイントがあります。
糖尿病になると医師から食事制限を勧められる方が多いと思います。
確かに、肥満※になると、血糖値が上がるリスクが高まるのは間違いありません。しかし、私が毎年3000人以上の糖尿病患者さんを診てきた中で、カロリー制限中心の食事指導で血糖値が思うように下がった方は残念ながらほとんど見たことがありません。
※BMIが25以上だと肥満と判定される。BMI=体重(kg)÷(身長〈m〉×身長〈m〉)
実はそれには理由があります。
まず、消費カロリーと摂取カロリーの差が直接体重の減量につながるわけではないということです。
糖尿病患者さんの多くが運動でカロリーを消費したり、食事制限をしたりすれば瘦せるとお考えかもしれませんが、実は消費カロリーには各自の基礎代謝量が大きく関係しています。基礎代謝量は年代、性別などによって個人差があり、食事量によっても変化します。これを上げるには全身の筋肉量を増やす必要があります。そのため、血糖値を下げるサイクルに入るまでに大幅な時間がかかってしまうのです。
■ではどうすればいいのか
そこで、血糖値を下げるためにお勧めしたいのが糖質制限です。
糖質制限した糖尿病患者を対象にした研究によると、「糖質制限は血糖降下薬を服用していない2型糖尿病患者の体重を減らし、HbA1cを改善した※」ことが分かっています。つまり、糖質制限をすれば、血糖値が下がるだけでなく、肥満を解消する効果もあるのです。
※Dorans KS, et al. Effects of a Low-Carbohydrate Dietary Intervention on Hemoglobin A1c: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open 2022; 5: e2238645.
糖質制限の対象となる炭水化物は、エネルギー源となる糖質と食物繊維とで構成されています。炭水化物はさまざまな食べ物に含まれていますが、とくに主食となる白米やパンなどに多く含まれています。そのため、主食を中心に炭水化物の摂取を控えれば、血糖値は上がりづらくなります。
■「炭水化物をやめよう」は逆効果
これを聞いて「炭水化物をなるべく摂らないようにしよう」と思われる方がいるかもしれませんが、極端な糖質制限はかえって逆効果になってしまうことがあります。
糖質制限で糖質が不足した状態が続くと、筋肉を分解して糖質に変換してしまい、肝臓で糖新生が起こってしまいます。
この状態が続くと、筋肉量が次第に減っていくので、糖代謝が悪化し、かえって高血糖が引き起こされてしまうことになります。では、血糖値を上げない糖質の量とはどれくらいなのでしょうか?
私のクリニックの患者さん約30名を対象にして炭水化物の摂取量と血糖値の関連性を調べたデータでは、「1食当たり糖質40g程度であれば、目立った高血糖は起こらない」ことが分かりました。
ちなみに、おかずにも1食当たり平均10〜20g前後の糖質が含まれています。したがって、主食の糖質量は1食当たり20g前後を目安に抑えるように心がけてください。
例えば、白米なら50g(お茶碗半分)、食パンなら50g(8枚切り1枚)、ゆでたパスタなら50g(1人前の半分)、そばなら90g(1人前の半分)になります(図表1)。
![【図表1】糖質制限の目安となる1食当たりの主食の量](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/4/1200wm/img_b407fa82c3c73fd8cb139c5af48f781c277431.jpg)
■夕食の「時間帯」を見直してみる
ここまで糖尿病の食事制限について解説しましたが、食事の方法を変えるだけでも血糖値が下がることをご存じでしょうか?
これについて解説していきます。
血糖値を下げるには糖質制限が効果的であることを紹介しましたが、それでも血糖値が下がりづらいという方が一定数います。実は血糖値を下げるためには食事の方法についても注意したいポイントがあります。もし、糖質制限で血糖値が下がりづらければ、一度食事方法を見直してみましょう。
血糖値は食後に大幅に上昇します。そのため、食後の血糖値の上昇を緩やかにすることが糖尿病を克服するうえで大切になります。そこで、注意したいのが食事の時間です。
女性を対象に食事の時間帯による血糖値の違いを調べた研究では「21時に夕食を摂るグループでは18時に夕食を摂るグループと比較して、有意に食後血糖のピークが高い※」という報告があります。
※Kajiyama S, et al. Divided consumption of late-night-dinner improves glucose excursions in young healthy women: A randomized cross-over clinical trial. D iabetes Res Clin Pract 2018; 136: 78-84.
■■朝・昼・夜、“量配分”の正解は…
したがって、血糖値が下がらないと感じている方は、最低でも20時前には夕食を済ませ、食後2時間は寝るまでに空けるようにしましょう。20時前に夕食を摂ることが難しい方は夕食を分割することもお勧めです。そして、翌日の朝食までの間隔を10〜12時間空けるようにしてみてください。
例えば、食事の時間を朝は7時、昼は12時、夜は19時などとしてみるとよいでしょう。
また、みなさんの多くが朝食を軽めにし、夕食をたくさん食べるという食事の摂り方をしているのではないでしょうか。
具体的には朝1:昼2:夜3という分量の方が多いように思います。しかし、この食事方法は寝ている間の血糖値を上げやすくしてしまいます。したがって、血糖値の変動を緩やかにするためにも朝3:昼2:夜1の割合で食べることを意識しましょう。
■■食べる“順番”を変えてみる
さらに、血糖値を下げるうえでお勧めしたいのが「カーボラスト」という食事方法です。
![【図表2】カーボラスト](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/4/1200wm/img_048c8229319d9c903d46354a18652454348277.jpg)
これは炭水化物を最後に食べる食事方法です。
研究によると、「炭水化物を最後に食べた群はそうでない群と比べて食後のインスリン変動が小さく、食後の血糖値が抑えられる※」ことが分かっています。
※Shukla AP, et al. Carbohydrate-last meal pattern lowers postprandial glucose and insulin excursions in type 2 diabetes. BMJ Open Diabetes Res Care 2017; 5: e000440.
カーボラストを実践すると、自然と満腹感を得られるようになり、無理なく炭水化物の量を減らせるのでお勧めです。いつもはおかずと白いご飯を交互に食べている方には違和感があると思いますが、血糖値を下げる効果があるので試してみてください。
■食事前にやってはいけないこと
さらに、食事をよく噛むことも血糖値を下げるためには重要になります。
![矢野宏行『薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/1200wm/img_ab784baea60562507bec0d7474e2d7e1321813.jpg)
食べ物をよく噛むと食事に時間がかかり、その間に血糖値が上がって食欲も抑えられるので肥満を予防する効果もあります。
食事の際に噛む回数を一口当たり10回と40回に設定し、食後の血糖値の変化を比較した研究によると、「10回の咀嚼では食事時間帯による血糖値の変動はなかったが、朝食に40回咀嚼したところ、30分後にインスリン分泌が大幅に増加した※」という報告があります。ぜひ朝食の際は試してみてください。
※Sato A, et al. Morning Mastication Enhances Postprandial Glucose Metabolism in Healthy Young Subjects. Tohoku J Exp Med 2019; 249: 193-201.
なお、食前に運動をする方がいるかもしれませんが、これはお勧めできません。食前は血糖値が下がっており、運動をするとさらに血糖値を下げてしまいます。この状態で食事をすると、飢餓状態のため食後の血糖値の急上昇を招き、血糖スパイクや過剰な糖新生を引き起こすことにつながるので注意してください。
----------
糖尿病専門医
やのメディカルクリニック勝どき院長。医学博士。1981年生まれ。2006年に日本医科大学卒業後、同大学附属病院に勤務。その後、国立国際医療研究センター研究所の糖尿病研究センターで糖尿病について研究をする。2023年、やのメディカルクリニック勝どきを開院。「Dr.ゆきなり」としてYouTubeでも情報発信をしている。著書に『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(アスコム)、『自分でできる! 薬に頼らない糖尿病の大正解』(ライフサイエンス出版)がある。
----------
(糖尿病専門医 矢野 宏行)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
お餅、大福が「受験のトイレ対策」になる? 医師に聞くうわさの真相
毎日新聞 / 2025年2月5日 10時0分
-
日常の「やめられない」が全身不調を招く!いつも“だるい、ツラい”は要注意の「かくれ低血糖」
週刊女性PRIME / 2025年2月2日 9時0分
-
「入浴時間が10分超」の人は血糖値を爆上げしている…糖尿病専門医が勧める「お湯の温度」と「浸かる時間」の正解
プレジデントオンライン / 2025年1月28日 18時15分
-
「ベジファースト」は意味がない? 医師が教える「健康にいい食べ方」
オールアバウト / 2025年1月26日 20時45分
-
やせる糖尿病薬「SGLT2阻害薬」サルコペニアが心配な高齢患者に使って大丈夫?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月23日 9時26分
ランキング
-
1「女性との会話がなかなか続かない男性」が知っておくべき5つのこと
日刊SPA! / 2025年2月7日 15時54分
-
2ケンタッキーのオリジナルチキンは5種類ある⁉ SNSで話題の“ウワサ”を公式に直撃「社外秘のマニュアルに該当する内容になりますが…」
集英社オンライン / 2025年2月7日 17時0分
-
3クルマについている「謎の角」何のため? あるだけで「めちゃ便利」な“サメひれ”っぽい装備に注目! 意外な役割とは?
くるまのニュース / 2025年2月7日 12時30分
-
4子どものADHD治療アプリ、厚労省承認へ…ゲーム形式で不注意改善
読売新聞 / 2025年2月7日 12時14分
-
5124歳まで返済を続けることになる…5歳児を轢いた高齢ドライバー(60代)がたどる「無保険事故」の悲惨な結末
プレジデントオンライン / 2025年2月7日 8時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)