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お金の専門家が自己資金で検証…低い金利の定期「満期まで待つ」VS「中途解約で乗り換え」どっちが得か

プレジデントオンライン / 2025年2月7日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

日銀の利上げで銀行預金の金利も上昇が目立ってきた。すでに定期預金に預けている場合は満期まで待ったほうがいいのか、乗り換えたほうがいいのか。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「私自身、年利0.4%の定期預金を中途解約して0.8%の定期預金に乗り換えたが、思わぬダメージもあった」という――。

■想定外の、金利上昇でとった行動

先日、私は某信用金庫に預けていた定期預金(金利0.4%)を、中途解約しました。なぜなら、某ネット銀行にて、0.8%もの金利をつける定期預金を見つけたからです。

私が某信用金庫に預けたのは約2年前、当時は金利0.4%といえば、トップクラスの金利水準。ただ、この0.4%の定期預金の預入期間は5年間と長く、金利上昇リスクは気になるところでした。

1年物や2年物でも0.3%程度の(当時としては)高金利でしたが、普段から少しでも高い金利を探し求めていた私は、「いざとなれば中途解約すればいいか」と、わりと軽い気持ちで預け入れたのでした。

それが、こんなに早くに金利上昇の波がやってくるとは、そして、本当に中途解約をすることになるとは思ってもいませんでした。

■中途解約して「正解」だったのか?

中途解約した定期預金の金利は0.4%、それに対して、新たに預け入れた定期預金の金利は0.8%。預入金額は200万円だったので、この金利差0.4%は無視できないものです。

利息の金額差にすると年間で8000円(200万円×0.4%=8000円)、これは税引後、すなわち手取り額で約6400円ですから、ちょっと美味しいものが食べられる金額ですね。

前述のとおり、中途解約した定期預金は5年物。これに約2年前に預け入れ、満期まではあと3年以上もあったことから、これはサッサと行動せねばと思い、中途解約したわけです。中途解約であっても、それまでの預入期間分の利息は受け取れます。

しかし、中途解約のペナルティとして、本来の金利と比べて、ガクンと下げられた金利で計算された利息となってしまいます。ですので、(満期までしっかり保有したときの)本来の利息よりも、かなり少なくなってしまうのです。

さて、私は中途解約をして「正解」だったのでしょうか? 今回の事例を検証してみたいと思います。

■中途解約により約6000円の損失

中途解約した定期預金の「お利息計算書」を見ると、預入から中途解約までの期間は663日でした。その期間に対する金利は、中途解約のペナルティによって、本来の0.4%ではなく0.2%と大幅ダウンとなっておりました。

そして、その0.2%で計算された利息からは税金20.315%が差し引かれて、私が受け取った利息は5797円でした。

これがもし、しっかり満期まで保有していたのであれば、本来の0.4%の金利がついていたわけですから、その場合、この期間に対する受取利息は1万1594円となります。つまり、中途解約することによって、その差額、5797円の利息を受け損なったわけです。

すなわち、約6000円の損失を被ったと言えます。

金利が下がるイメージ
写真=iStock.com/Ratana21
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ratana21

■0.8%の定期預金に乗り換えで損失は1年でほぼ相殺

しかし、その中途解約による約6000円の損失は、新たに金利0.8%の定期預金に預けることで、1年間で、ほぼ相殺することができます。

なぜなら、中途解約した金利0.4%の定期預金との金利差は0.4%(0.8%-0.4%)、これは利息の金額差にすると、手取り額で年間約6400円(200万円×0.4%×0.79685)だからです。

そして、預入から1年間で相殺された後は、その金利差0.4%分の約6400円は、丸々利益となるわけです。中途解約しなければ、金利0.4%の定期預金は、満期まであと3年以上も残っています。

ですので、新たに金利0.8%の定期預金に預け入れ、預入1年目で中途解約による損失が相殺された後は、残り2年間の金利差約1万2800円(年間6400円×2年)以上の利益となるわけですね。

■定期預金を中途解約する損得を計算

つまり、今回、私は金利0.4%の定期預金5年物を中途解約して、即、金利0.8%の定期預金3年物(←中途解約した定期預金の残り期間)に預け入れることは、数字の上では「正解」だったということとなります。

※あくまでも今回の私のケースであって、実際には金利水準や中途解約利率等の条件によって、中途解約の有利不利は異なる。

そして、ここまでその詳細について、私の事例に即して説明してきたわけですが、数字が細かくて、少々ややこしかったかもしれません。そこで、以下のように数字を簡潔にしたうえで、あらためて、分かりやすくまとめてみました。

・中途解約までの期間:663日⇒2年間
・利息に対する税金:20.315%⇒20%

①中途解約しなかったときのトータルの受取利息

→金利0.4%の定期預金5年物をそのまま5年間、満期まで持ち続けた場合

200万円×0.4%×0.8×5年間=3万2000円

②中途解約したときのトータルの受取利息

→金利0.4%の定期預金5年物を2年で中途解約し、その後、金利0.8%の定期預金3年物に預けた場合

※中途解約利率は0.2%

200万円×0.2%×0.8×2年間=6400円(中途解約時に受け取る利息)
200万円×0.8%×0.8×3年間=3万8400円(その後、金利0.8%の定期預金で受け取る利息)
合計6400円+3万8400円=4万4800円

②-①=1万2800円

よって、中途解約した方が、トータルで1万2800円お得となるわけですね。

■あえて1年物を選んだ理由とは?

しかし私は、新たに預け入れた金利0.8%の定期預金は3年物ではなく、1年物にしました。

前述のシミュレーションのとおり、3年物にしておけば、中途解約の判断は「正解(金額的には有利)」となったわけですが、1年物にしたことにより、「正解」であるかどうかは分からなくなってしまったわけです。

なぜなら、1年物であれば、また1年後には、そのときの金利水準で預けることになるからです。

もし、1年後に金利が下がってしまい、世の中の定期預金のトップクラス水準でも金利0.4%を切るような状況となってしまえば、「中途解約なんかしないで、そのまま金利0.4%で預けておけばよかった」となるからです。

ちなみに、現在の金利水準であれば、3年物だと0.8%超の金利を付ける定期預金もあります。そちらであれば、前述のシミュレーション以上に有利となるわけですが、それでも、私は1年物を選びました。

その理由は、私は今後、金利はさらに上昇すると予想するからです。

もちろん、金利の動向についてはいろいろな意見はあるでしょうが、昨今の円安・物価高の流れは10年単位の大きなうねりであり、そして、これは間違いなく経済的な転換点であることから、それに伴う金利上昇は避けられないだろうというのが私の見立てです。

世の中の金利が上昇すれば、今後、金利2%、3%といった定期預金が続々と出てくることでしょう。そうなれば、金利0.8%の定期預金は相対的に見劣りすることとなり、それに3年も縛られることで、また悔しい思いをするのは嫌だからです。

■今後の金利上昇に備えるために…

でも、とりあえず3年物に預けておいて、もし金利が上昇してくれば(より高い金利の定期預金が出てくれば)、そのときには中途解約して、より高い金利の定期預金に乗り換えればいいじゃないか、と思われるかもしれません。

たしかに、中途解約をすることによって、本来の金利より下がりますが(本来受け取れる利息よりも少なくなる)、それでも、新たにより高い金利の定期預金に乗り換えたほうが有利となる可能性は高いわけです。実際、今回の私のケースが、まさにそうでしたから。

しかし、(中途解約することなく)しっかり満期まで保有して、本来の利息を受け取ったうえで、新たにより高い金利の定期預金に乗り換えることができれば、もちろん、そちらのほうが良いわけです。

約2年前、私は金利0.4%に目を奪われて(少し長いなぁと思いつつも)5年物に預けたわけですが、そのとき、金利0.3%であっても2年物にしておいて、しっかり満期まで保有しておいた方が、(中途解約により引き下げられた0.2%よりも)有利だったわけです。

■金利上昇で中途解約による損失は拡大する

まだ、「超低金利」と言える現状においては、中途解約による損失は微々たる金額かもしれませんが、今後、金利が上昇することとなれば、無視できない金額となってくるかもしれません。

今後、金利上昇トレンドが濃厚であると考えるのなら、これは意識しておきたいところですね。銀行によっては、5年物や10年物であれば、金利1%超も出てきているようですが、金利の高さだけに目を奪われることなく、その預入期間は慎重に考えたいものです。

私自身、前述のとおり、金利はさらに上昇すると予想していることから、どれだけ金利が高くても、預入期間3年以上は避けて、1年物もしくは2年物を選択するようにしています。

あと、中途解約については、これは私がそうだったのですが、とくに(ネットではなく)窓口での手続きの場合には、心理的な負担も無視できません。

中途解約とは、いわば、銀行との(満期まで預けるという)約束を破るわけですから、少し後ろめたい気持ちになってしまう人もいるでしょう。そして、窓口での手続きでは、中途解約の理由を聞かれたり、また、場合によっては引き止められたりすることもあるので、これを煩わしいと感じる人も多いかと思います。

■実際に経験した金融機関の想定外の引き止め

私の場合、中途解約の理由は、「もっと高い金利の定期預金に預けるため」だったわけですが、それを面と向かっては言いづらいので、「子どもの学費のため」と言いました。

すると、「学費を振り込まれるのはいつ頃ですか?」と聞かれ、これに対して「いや、まだハッキリとは決まってはいなくて」と答えると、「では、振り込まれる直前まで解約は待たれてはいかがですか?」と食らいつかれました。

金融機関側としては、当面の資金流出を防ぎたい意図があったのでしょうが、この想定外の引き止めには、少々面食らいました。

その後、いろいろと問答があったわけですが、こちらは中途解約するという負い目もあるため、それは尋問のように感じてしまい、苦痛な時間を過ごすこととなりました。そして、今後、できるだけ中途解約はしたくはないな、と思った次第です。

もっとも、人によっては、中途解約による心理的な負担などまったく感じないかもしれませんが、金融機関や窓口担当者によっては少々面倒なやり取りが必要となるかもしれないことは、多少は、心積もりはしておきたいものですね。

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藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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(ファイナンシャルプランナー 藤原 久敏)

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