パン、唐揚げ、ビール、ポテチ…専門医が証言「40代から"認知症の元凶"ため込む人の食卓に並んでいるもの」
プレジデントオンライン / 2025年1月31日 10時15分
※本稿は、白澤卓二『Dr.白澤の実践メソッド 100寿をめざす認知症最新戦略』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
■認知症の大半を占めるアルツハイマー病
原因は「炎症」「栄養不足」「毒物」
認知症の原因はたくさんあります。なかには治療すれば治るものもありますが、大半を占めるのは、加齢とともに進行するアルツハイマー病です。
アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβ(※1)は、現在もまだ生理学的意義や、その蓄積がアルツハイマー病の原因なのか結果なのかなど、詳細は解明されていません。
※1 脳でつくられるタンパクの一種。健康な人の脳にも存在していて、通常は短期間で排出される。異常なアミロイドβができると排出されず脳に蓄積し、それが出す毒素によって神経細胞が死滅する。異常なアミロイドβが集まると老人斑と呼ばれる。
ブレデセン博士は、アミロイドβは「脳を守るための防御反応」であり悪者ではないと結論づけました。
脳はさまざまな要因でダメージを受けていて、それらから脳を守ろうとしてアミロイドβが発生しています。製薬会社はアミロイドβを除去する(たまらない)薬を開発しようとしていますが、問題はアミロイドβではありません。アミロイドβがたまる要因となる、脳の神経細胞にダメージを与える根本的な要因を防ぐ必要があるのです。
ブレデセン博士は36の要因があるとしていますが、それらは複雑で難しいため、私は大きく「炎症」「栄養不足」「毒物」としました。
ブレデセン博士は、アルツハイマー病を大きく「1型(炎症性)」「2型(萎縮性)」「1.5型(糖毒性・1型と2型の混合)」「3型(毒物性)」の4つに分けています。炎症は大きな要因ですし、萎縮や糖毒には栄養が関係しています。脳にダメージを与える毒物に対しては解毒が有効です。
脳で炎症が起こったり、栄養不足に陥ったり、毒物が蓄積したりすることで、神経細胞がダメージを受け、認知機能がどんどん低下していくのですから、それらをできるだけ避けることができれば、認知機能の低下防止につながると考えられます。「炎症」「栄養不足」「毒物」への対策は特別なものではありません。ふだんの生活習慣、特に食事に気をつけること、生活環境を整えることで予防できるものが多くあります。
■もうひとつ大事なことは動脈硬化予防
アルツハイマー病と並んで多いのが、血管性認知症です。
血管性認知症は、脳梗塞(※1)、脳出血(※2)、くも膜下出血(※3)など、脳の血管に障害が起こって認知機能が低下します。これらには、高血圧と動脈硬化が関係しています。実は、高血圧も動脈硬化も血管の老化です。
※1 動脈硬化で狭くなった脳の血管に血液のかたまりが詰まって血流が滞り、神経細胞が壊死してしまう。
※2 高血圧などで脳の血管が破れて出血し、周辺の神経細胞が壊死してしまう。
※3 くも膜という脳を保護する膜の血管が出血し、周辺の神経細胞が壊死してしまう。
動脈硬化は、血管壁に酸化したコレステロールが沈着して起こります。いきなり生じるのではなく、長い年月をかけて徐々に沈着していきます。
若いうちは血管を修復するシステムが優っているのですが、加齢とともにその機能は衰えます。カバーできないくらい酸化コレステロールが沈着すると、血管壁にプラークと呼ばれるコブができて血管の内腔が狭くなり、血液の流れが悪くなってしまいます。
さらに、プラークはジュクジュクとして壊れやすく、なんらかのきっかけで傷つくと血栓(血液のかたまり)となります。血栓は血液にのって全身へと運ばれ、それが血管に詰まると、脳梗塞、心筋梗塞、肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)などを引き起こします。
高血圧にはさまざまな要因がありますが、加齢とともに血圧は上昇していきます。これは、動脈硬化が進み、血管のしなやかさが失われてしまうためです。動脈硬化でかたく、もろくなった血管が破れやすくなるため、脳出血のリスクも高まります。高血圧にも動脈硬化が関係しています。
血管性認知症は動脈硬化(血管の老化)が原因と言っていいでしょう。その予防には、何に気をつければいいのでしょうか。
動脈硬化は血管の老化ですから、食事、運動、睡眠など生活習慣を整えることが大前提になります。これはアルツハイマー病予防と同じことです。神経細胞にダメージを与えるものは、ほかの細胞にもダメージを与えます。脳を守る生活習慣は血管の老化予防にも役立ちます。
■認知症の原因は複雑…年齢や状態によって対処法が違う
認知症は高齢者の病気と思っている人がほとんどでしょう。
これは大きな間違いで、実際には40代から認知症への道はスタートしています。アミロイドβの沈着も、動脈硬化も特別なことではありません。むしろ、現代の日本人の多くがこれらを促す生活を送っています。
朝食に甘いデニッシュパンを食べ、歯磨きせずに急いで家を出て、通勤ラッシュの電車はストレス満載、日中は車で営業しながらスマホをチェックし、ランチはハンバーガー、気分転換にタバコを吸い、仕事の休憩に甘い缶コーヒーを飲み、帰宅後は唐揚げやポテトチップスをつまみにビールや缶チューハイで晩酌して、スマホを見ながら就寝……。
こんな生活を送っているとアミロイドβはどんどんたまっていきますし、動脈硬化も進行してしまいます。しかし、これにまったく当てはまらない人は少ないのではないでしょうか。日本人の認知症患者の増加はなるべくしてなった、そう言ってもいいでしょう。
もうひとつ大きな誤解があります。
現在の日本では、認知症の診断は「要介護であるかどうか」が基準となります。認知機能がかなり低下していても、日常生活に支障がなければ認知症ではなく「軽度認知障害(MCI)」と診断されます。
一般的には、MCI)は認知症とは違うものといわれていますが、実は「認知症の末期」を迎えていると考えたほうがいいのです。自覚症状が出ているときには、脳は甚大なダメージを受けていると考えられます。
さらに、加齢に伴って現れるもの忘れや記憶力の低下も、認知機能の低下を示すサインです。認知症とは違うと安心させるような説明がありますが、そのままの生活を続けていると、脳の機能は一気に衰えて、認知機能もどんどん低下してしまいます。
もの忘れが始まるのは、早ければ40代くらいからです。そこから20年30年かけて脳にダメージが蓄積していき、やがて、周囲の助けを借りないと生活できないくらい認知機能が落ち、さらには寝たきりになってしまいます。
そうならないためには、できるだけ早く、40代、50代から脳や血管を若々しく保つための生活を始めることが大切です。
もし、すでに認知機能の低下を感じ始めていたとしても、遅過ぎることはありません。食事や運動、睡眠を見直して実践すれば、認知機能の低下を防ぐことができますし、落ちてしまった認知機能がよくなるケースもあるのです。私は、本書(『Dr.白澤の実践メソッド 100寿をめざす認知症最新戦略』)で紹介していることを、館林の介護付き有料老人ホームで実践し、その効果を実感しています。
若くして発症する若年性認知症については、遺伝が関係しているため、日常生活の改善だけでは難しい側面もあります。ただ、サイトカインによる神経再生治療という選択肢があります。
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白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長
医学博士。お茶の水健康長寿クリニック院長。白澤抗加齢医学研究所所長。テレビや雑誌、書籍などのわかりやすい健康解説が人気。『Dr.白澤の アルツハイマー革命 ボケた脳がよみがえる』(主婦の友社)、『脳の毒を出す食事』(ダイヤモンド社)、『「いつものパン」があなたを殺す』(訳・三笠書房)、『「お菓子中毒」を抜け出す方法』(祥伝社)など、著書・監修書多数。
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(白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長 白澤 卓二)
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