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「休職すると転職活動で不利になるのか」産業医だから知っている精神疾患で休んだ社員の"その後"

プレジデントオンライン / 2025年2月7日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuto photographer

休職するとキャリアに傷がついてしまうのか。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の相談を行っている産業医の武神健之さんは「長期的に考えた場合、休職したことがキャリアにネガティブに影響することはほとんどない」という――。

※本稿は、武神健之『未来のキャリアを守る 休職と復職の教科書』(ディスカバー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■休職明けすぐの社内異動は厳しい

Q.社内のキャリアに傷はつくのか

精神疾患はあくまでも病気です。高血圧や糖尿病、がんのように、一定の人数の大人がいれば、一定の人数の精神疾患を患う人がいて当然です。高血圧や糖尿病の人を仕事で差別しないように、精神疾患によって差別されることがあってはなりません。一昔前よりもそのような意識は多くの会社に根付いてきていると感じます。

私のクライエントにおいての話であれば、この質問に対する答えは「短期的には影響はあるが、長期的には問題ない」となります。

キャリアに傷というわけではありませんが、短期的には、休職明けすぐの社内異動は厳しいでしょう。

休職明けに社内異動を希望する方がたまにいらっしゃいます。しかし、異動は本人の希望だけで叶えられるものではありません。そのタイミングで、異動先があるかどうかも大切ですが、異動希望先の部署が復職した人を欲しがるかどうかということが最も大切です。

■1年も経てば休職したことはみんな忘れている

正直なところ、休職していた人を復職と同時に採用するのはリスクと考える人のほうが多いと言えます。私の経験では、復職後1年間しっかりと元の部署で働き、継続的に以前と同等レベルの仕事ができることを証明することが、社内異動へのまず一歩となると言えます。

社歴が長く、すでにその人の人柄や仕事の出来具合を周囲が昔から知っている場合は例外です。病気さえ治れば期待できることがわかっているときは、復職後でもすぐに異動できることがあります。

長期的に考えた場合、休職したことが、働く人のキャリアにネガティブに影響することは、ほとんどないでしょう。

第一の理由として、過去の病気のことよりも、「今のあなた」が、仕事ができる人なのか、パフォーマンスはどうなのか、そのほうがより大切だからです。おそらく、あなたの同僚たちはあなたが復職して3カ月もすればあなたが休職していたことを覚えていません。あなたの上司ですら半年もすれば忘れているでしょう。1年も経てば、あなたにとっても休職したことは0.1秒以下の記憶でしかありません。つまり、誰もあなたが休職したことなど覚えていないのです。

■休職経験があっても管理職になれる人もいる

実際に私が10年以上産業医をしている会社のなかには、休職経験のある若手社員でも、復職後順調にキャリアを伸ばし、今では管理職になっている会社も複数あります。経験上、多くの会社は、社員が病気になったとしても、しっかりと治療に向き合っているのであれば、一度休職することには目くじらを立てることはありません。それよりも、復職してからどれくらい働けるかのほうを重視しています。

ただし、二度三度と休職するようでは、その人に仕事をどれくらい任せていいのか計算できなくなります。そのため、その部署の負担となってしまうことが多く、同じ会社では、良いキャリアはもう望めないことを否定はできません。メンタルヘルス不調の原因が職場にあって二度三度と休職するのであれば、転職することがその人の健康のためには最適解と言えるでしょう。

■休職経験者が残るのは会社にもメリットがある

また、私はクライエント会社の人事には、休職経験のある人がその会社に残ることができるのはとても良いことであると説明しています。

会議で話すスーツ姿の青年
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

第一に、メンタルヘルス不調者や休職者が、社内でのキャリアに対して絶望的な気持ちにならないからです。メンタルヘルス不調や休職経験者がその後も働けている場合、会社は休職者も治りさえすれば公平に評価してくれていることの何よりの証明になっているからです。

第二にメンタルヘルス休職を経験している人だからこそ、そのあとは職場にいる他のメンタルヘルス不調者に気づいてくれるからです。私は休職経験者たちに、「気づいたメンタルヘルス不調者を元気づける必要はない。ただ気づいているよと声をかけて、人事や産業医面談につないでほしい」とお願いしています。私の経験上、これはとても有効な社内でのケアになります。

■「先方の企業にバレてしまう」は考えづらい

Q.転職活動は不利になってしまうのか

「休職したという事実は、転職活動のときに先方の企業にばれるのでしょうか?」

たまにこういう質問を受けます。

私の経験上、わざわざあなたの会社があなたのメンタルヘルス休職歴を次の会社に言うことはなく、積極的に同業界に知れ渡ることはありません。なぜならば、休職者が復職ではなく転職を考えたとき、多くの会社はそれを歓迎する場合が多いからです。

これは休職者が復職して同じ部署に戻ってきたら、再発するリスクが否定できないことからくる心配心です。だからこそ健康のためには、あなたが新しい環境に行ったほうがいいのではないかと、多くの人は考えます。なので、わざわざメンタルヘルス休職の事実を新しい会社に伝え、あなたの転職活動の妨げになるようなことをするはずがありません。

■転職活動では「あえて言う必要はない」

「転職する際、先方の会社には、メンタルヘルス休職の事実を言わないといけないのか?」

これもよく聞かれる質問です。

この答えは、「あえて言う必要はない」です。法律では病気を理由に転職を断ったり、退職を迫ったりすることは禁じられています。転職の面接のときに、「あなたはメンタル休職の過去がありますか?」という質問はまずされません。仮にそのようなことを聞いてくる会社(そのようなことを聞いている人事が働いている会社)であれば、そこはあなたが転職すべき会社ではありません。

武神健之『未来のキャリアを守る 休職と復職の教科書』(ディスカバー・トゥエンティワン)
武神健之『未来のキャリアを守る 休職と復職の教科書』(ディスカバー・トゥエンティワン)

転職理由について、あえて病気や休職のことを言わなくても、他の理由を言えばいいでしょう。

「メンタルヘルス休職する人は、転職したとしても、もう順調なキャリアアップを望めないのか?」

そんなことありません。私の経験上、メンタルヘルス休職のあと退職、転職し、その後その会社の部門長や社長にまでなった人もいます。この方の元の会社も、転職先の会社も名前を聞けば多くの人が知っている会社です。私は転職先の会社の産業医ではありませんが、きっとメンタルヘルスに理解のある上司・社風となっていることを願ってやみません。

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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、フォルクスワーゲングループ、BMWグループ、エリクソンジャパン、テンプル大学日本校、アドビージャパン、テスラ、S&Pといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト

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(医師 武神 健之)

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