休職中の旅行は主治医の許可があればOK、ただし…産業医が休職者に伝えている「やってはいけない3つのこと」
プレジデントオンライン / 2025年2月9日 18時15分
※本稿は、武神健之『未来のキャリアを守る 休職と復職の教科書』(ディスカバー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■休職中にメールの返信をしてはいけない
私は休職に入った社員との最初の面談では、次の3つのことについて約束をしてもらっています。
会社との連絡はしない
1つ目は会社のメールを見たり、家から自分の会社アカウントにログインしたりしないことです。
仕事を休むと周りに迷惑がかかるのではないか、自分がいないと回らないのではないか等々、心配する人が多くいます。
しかし、休職中にメールを見ていると、結局気持ちが職場から離れることができず、本当の意味での休職にはなりません。メールに返事していると、休職を知らない同僚や取引先は、普通に仕事をしていると思い、いろいろとやり取りが続いてしまいます。これは在宅勤務状態と同じで、休めず、せっかくの休職期間が無駄になります。一方で、ログインやメール返信は「休職者自身が(勝手に)やっていること」になるので、自己責任、自己管理ができていないと捉えられる可能性もあります。
会社支給のスマホやパソコンは、電池が切れたら再充電しないことをおすすめします。自分のスマホで会社のメールが見ることができるアプリが入っている場合、そのアプリの通知設定はオフにして、未読メールの数も表示されないようにすること。そして、そのアプリを第一画面から後ろのほうに動かし、目に入らなくすることは心の安らぎにとても大切です。
そのようなことをしたら業務が回らなくなり皆に迷惑かかるのではないか、と思われるかもしれません。しかし、はっきり言って、その心配は不要です。
■職場の同僚からLINEで連絡が来たら…
最初の2週間は多少の混乱があるかもしれませんが、いずれ落ち着きます。これが落ち着かなくてビジネスに影響が出るとしたら、それはあなたの責任ではなく、事業継続性がなっていない会社組織の問題・責任ですから気にしないでいいでしょう。
人事にはあなたのプライベートEメールアドレスを伝えて、休職に関するやり取りはそれでお願いするようにしましょう。
すでに職場の同僚たちとLINEやSNSの交換をしている場合、そちらから直接連絡が来てしまうこともあります。業務連絡が来た場合は、具合の良いときに「すみません。業務連絡等についてはこちらではやめてください。必要な場合は人事にお伝えください」と返事しましょう。その後も来る場合は、見なくて問題ない(返事しなくても結構)です。
業務連絡ではなくて、友人として、同僚として心配するメッセージが来た場合は、具合が良ければ返事をしていいと思います。しかし、多くの休職者には返事をすることすら負担ですので無理して返事せず、既読スルーにするかもしくは「心配してくれてありがとうございます。私の方から連絡できるようになったら連絡しますのでそのときまでは返事がないことをお許しください」「連絡を控えていただけると幸いです」と伝えましょう。
■休職者の「一番多い間違い」
自分で復職日を決めて、そこから逆算した生活をしない
2つ目の約束は、自分で復職日を決めて、そこから逆算した生活をしないことです。実はこれは休職者の一番多い間違いです。
少しでも体調が良くなると、すぐに復職したいと考える人が多くいます。診断書に対する勘違いもあり、診断書の日付が切れる日に復職することを勝手に決めて、「その1週間前から日中はずっと図書館に通おう」「2週間前からは半日通おう」「そのためには来週からは朝7時にアラームをかけてしっかり起きよう」など、復職日から逆算した生活を送ろうとします。
![カレンダーページのクローズアップ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/7/1200wm/img_07b267caf1499e1acd5d43d3dbd8c898399493.jpg)
しかし、逆算して立てた計画は、その人の体調を無視してできたものです。仮に体調が改善していて、計画通りにできればいいのですが、多くの場合、一度決めたことだからと、自分の体調に無理をして頑張ってしまいます。結果、計画通りにできたとしても、復職日には、もう心にも体にも疲労がたまってしまうことになります。その状態は、言い換えれば、伸び切ったゴムの状態で復職することになるので、すぐにゴムは切れてしまい、再休職になりやすい状態なのです。自分の体調を無視して頑張り続けてしまうという、休職になった頃と同じことを繰り返してしまっているのです。
■復職日を自ら設定して行動計画を立てるのはNG
では、どうしたらいいのでしょうか。
まず、診断書の日付は、あくまでその日までは休むというだけの意味なので、勝手に復職日を設定して行動計画を立てることはやめましょう。
休職に入った直後は、寝たいだけ寝て、食べたいときに食べたいだけ食べて、どんどん昼寝もしていいのです。そうやって、電池残量ゼロになった体に再びエネルギーを充電してあげてください。
休職が始まると、今まで張っていた気持ちが切れて、どっと疲れが出てくる人もいます。だいたい2〜8週間ぐらいはこの“ダラダラ”過ごすのが最適な休息期が続きます。真面目な人にはとても苦手な時間ですが、慣れるしかありません。
まずは、復職のための何かではなく、素直に自分がやりたいことをして過ごしてください。つまり、好きなことをする、趣味をする、です。
趣味が見つかるまでの間は、掃除や家の片付け、洗車など、生活のルーティンを大切にして過ごしましょう。
1日の半分以上を何か活動して生活できるくらい元気になったら、それから復職準備に入りましょう。その頃には睡眠も安定していると思います。それまでは、好きなことをして生活してください。
繰り返しますが、復職日を自ら設定して逆算する生活は禁止です。
■主治医の許可があれば旅行はOK
SNSでの発信は慎重に
休職中の3つ目の約束はSNSへの投稿についてです。
休職中に、病気になった土地を離れることを精神医学の用語で遠隔治療法といいます。人はストレスを感じていた場所を離れると、なぜだか気持ちが楽になります。休職中は主治医の許可があれば、日常生活=働いていた街から離れて、実家に帰ったり旅行に行ったりすることはいいことなのです。
実際、私のクライエントでもそうしている人たちもいます。田舎に帰って畑を手伝っていたら元気になった。昔留学していた国や街に帰ったらそこでホストファミリーに会って、しばらく暮らしたら元気になった。そういう人たちもいます。休職中はハワイでもイタリアでも、軽井沢でも箱根でも旅行はどんどん行きましょう。休職中の旅行は禁止されるべきではありません。
■SNSを人事に報告する人も…
しかし、それをSNSに投稿するかどうかになると別問題です。
あなたが旅先で楽しんでいる様子を投稿したら、それを見て同僚たちはどう思うでしょうか。あなたが休職したため業務量が増えた状況の人もいます。嬉しく思わない人たちもいる可能性があります。
![武神健之『未来のキャリアを守る 休職と復職の教科書』(ディスカバー・トゥエンティワン)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/d/1200wm/img_6d3d19f11313ed2b9efc7dfb89c6c119204821.jpg)
復職したあと、そのSNS投稿を快く思わなかった人たちと一緒に働く可能性もあります。
実際に私のクライエントでは、休んでいる人が旅行に限らず、充実した暮らしをSNSに上げていると、人事に報告する人たちもいます。悪意や告げ口というニュアンスではなく、働けないくらい具合が悪いのに、どうして楽しそうにランチをしたり、ゴルフやクラブに行ったりしているのか。もう働けるのではないかと疑問に思ってしまうのです。
決して、休職者は家にずっといなければいけないわけではありません。元気になるためにいろいろな活動をしていいでしょう。しかし、休職中のSNSとの付き合いは注意するようにしましょう。
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医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ、ムーディーズ、フォルクスワーゲングループ、BMWグループ、エリクソンジャパン、テンプル大学日本校、アドビージャパン、テスラ、S&Pといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト
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(医師 武神 健之)
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