猫背の真の原因は「肩」でも「背中」でもない…シャキッとした中高年が「毎日10秒だけ」ゆるめている"体の部位"
プレジデントオンライン / 2025年2月1日 16時15分
※本稿は、理学療法士キリツ『根本から体を整える 姿勢復元完全バイブル』(KADOKAWA)の一部を再編集、一部を書きおろししたものです。
■いい姿勢は「背筋が真っ直ぐ」ではない
前回の記事では、重力や重心が体に変化をもたらすことを取り上げ、ストレートネックの解消法をご紹介しました。
本記事では、姿勢に関する悩みとして、とても多い「猫背」を取り上げます。意識するべきことや、知っておくべき最新知識、そして具体的なエクササイズを紹介していきます。
そもそも、「いい姿勢」とはどういう姿勢だと思いますか。
「背筋が真っ直ぐであること」と、聞いたことがあるかもしれません。でも、これは間違いなんです。
私たちは幼い頃から「背筋(姿勢)を真っ直ぐにしなさい」と教えられる場面が多くありました。真っ直ぐであるべきだと、みんなが無意識に信じ込んでいるからです。
実際には背骨は「自然なカーブ」を描いています。
このカーブには重要な意味があります。背骨にある連続したカーブはバネのような役割を果たすことで「しなやかさを生み出し」「体重を支え」「体の動きをスムーズに」します。
真っ直ぐにすることでこのカーブが失われてしまうと、逆に体に負担がかかり、痛みや不調を引き起こす可能性があるのです。
■姿勢を良くするには「体の構造と機能」を理解する
姿勢を正そうと意識をすると、体が硬直したり、筋肉が疲労したり、動きにくくなったりする経験をされた人もいるでしょう。
リハビリや整体でも、同じように「姿勢を正しましょう」と簡易的に指導されるケースは多いです。しかし、すぐに元の姿勢に戻ってしまい、結局は「頑張ってください」という言葉で終わってしまうことも多いでしょう。
単に姿勢を正す、真っ直ぐにするというだけでは、根本的な解決にはならないのです。疲れた体や悪い姿勢により負担がかかった体をマッサージしてラクにするのも、一時的な効果しかありません。
一時的にはラクになったとしても、根本的な原因が解決されていない限り、すぐに元の状態に戻ってしまうことが多いでしょう。本来は、姿勢を良くすることで、負担を減らすことが必要です。
では、真っ直ぐにするのではなく、どうすれば良いのでしょうか。
大切なのは「体の構造と機能」を理解し、どのように改善すればいいか根本的な解決策を見つけることなのです。
■姿勢の維持は脳が行ってくれている
実は、この原因は私たちが姿勢を保つシステムそのものに隠されています。
姿勢を維持するためには、神経からの指令が必要です。しかし、神経の仕組みを詳しく見てみると、姿勢を司る経路は、意識的なコントロールとは別の場所に存在していることが分かります。つまり、私たちは無意識のうちに姿勢をとっているのです。
例えば、目の前にあるコップに手を伸ばす時を考えてみましょう。脳は「手を動かす」という意識的な指令と同時に、「姿勢を保つ」という無意識的な指令も出しています。
意識的な動作の指令は、脳の「運動野」という場所から出されます。
一方、姿勢の維持は、意識しなくても脳が行ってくれます。これは、脳幹を中心とした神経ネットワークが、体の様々な部分からの情報を受け取って、自動的に筋肉を調整しているおかげです。
脳幹は脳と脊髄の接続部分にあり、呼吸や心臓の動きなど、生命維持に必要な機能をコントロールする場所です。
姿勢の維持も、脳幹の大切な役割の一つです。脳幹は、耳の奥にある平衡感覚器や、全身の筋肉や関節にあるセンサーからの情報、そして目からの視覚情報を統合して、常に最適な姿勢を保つように全身の筋肉に指令を送っています。
立ったり歩いたりする時、あなたは姿勢を意識していますか。答えは「NO」でしょう。
私たちは意識することなく、自然と姿勢を保つことができるようになっているのです。高いものを取ろうとすると自然と背筋が伸び、低いものを取ろうとすると背中が自然と曲がる。
姿勢とは、まさに無意識のうちに起こる体の動きなのです。だからこそ、姿勢を良くしたいと意識するのではなく、姿勢に必要な体の構造や機能を高めることが重要なのです。
前置きが長くなりましたが、実際に無意識のセンサーをよみがえらせることで、猫背を改善するためのエクササイズをご紹介していきます。前回の記事と同様に、本来の機能を高めるための方法になります。
■背骨のS字カーブを知ろう
「猫背」と言っても、人によって背骨のカーブや歪み方は様々です。しかし、理想的なカーブは一つです。それは背骨のS字カーブが緩やかにあることです。
壁を使ってS字カーブを理解していきましょう。
まず、壁に背中を向けて立ち、頭、肩、背中、お尻、かかとを壁につけていきます。この時、自然と頭が壁につかない場合は、首の反るカーブが不足している可能性があります。
肩を広げて壁につかない場合は胸のあたりの背骨(胸椎)が過剰に丸まっている「猫背」の可能性があります。
頭を壁につけた時、腰と壁の間に手のひら分以上の隙間ができる場合は腰が反りすぎている「反り腰」の可能性があります。
壁に近づける意識がなく自然と立った時にお尻が壁から離れてしまう場合は「スウェイバック」と呼ばれる状態かもしれません。スウェイバックの人は首の反りが少なく胸の曲がりが大きいことが多いのも特徴です。腰の反りを少なくすると頭が壁から離れる時や、または頭を壁につけようとすると腰が壁から離れる場合は「反り腰」と「猫背」を併発している可能性があります。
正しい姿勢は無理なく首の反りがあり胸椎の曲がりや腰の反りが極端でないバランスのいいS字カーブがあることとなります。それぞれのカーブが過剰にならないことで全身の重心も安定し、バランスがとりやすい体へと繋がります。
■猫背改善には「肋骨の柔軟性」が重要
背骨のS字カーブを作るためには、肋骨の柔軟性が重要です。
肋骨が硬くなると、背骨の動きも制限され、姿勢が悪くなる原因となります。そのため、肋骨周りの筋肉をリリースします。ここでは呼吸を使い肋骨周りの筋肉をゆるめていきます。
(1)背中を丸めて肋骨を閉じる
椅子に座り、リラックスした姿勢をとります。手と手を合わせてにぎり腕を前に伸ばします。
そのまま腕を前に押し出すようにしながら、背中をゆっくりと丸めていきます。
背中を丸める動きに合わせて、5秒かけて口から深く息を吐き出します。肋骨が優しく閉じられていくイメージを意識しましょう。5秒かけて息を吸いながら元の姿勢に戻ります。
(2)胸を開いて、肋骨を広げる
胸の前で両手を合わせ、5秒かけて鼻から深く息を吸い込みます。次に胸を開き、肋骨が広がるイメージを意識します。5秒かけて息を吐きながら、元の姿勢に戻ります。
■背骨周りのインナーマッスルを活性化する方法
正しい関節の位置が分かり、肋骨周りがほぐれたら次は背骨の深層部にあるインナーマッスルを活性化します。小さな動きを丁寧に繰り返し、硬くなった背骨を元の動きに導きます。骨盤の前傾(ぜんけい)・後傾(こうけい)運動をしていきます。
骨盤をゆりかごのように前後にゆっくりと傾ける動きを行います。おへそを天井へ引き上げるように意識しながら、骨盤を前傾させます。この時、腰骨の反るカーブが深くなるイメージを持ちます。腰の下が床から少し浮き上がり、お腹が膨らむように感じます。
おへそを床へ引き込むように意識しながら、骨盤を後傾させます。この時、腰骨の反るカーブが浅くなるイメージを持ちます。腰の下の部分(腰椎)が床に近づきながら、お腹がへこむように感じます。骨盤を前後に10回傾けてみましょう。
最後に四つん這いになり、息を吸いながら背中を天井に向かって反らせ(猫が伸びをして背中を伸ばすイメージ)、吐きながら背中を丸めます(猫が眠る時に丸まっている時のようなイメージ)。背骨の動きを一つずつ丁寧に感じながら行いましょう。この動きを10回繰り返します。
動かしていると動きにくいところがあると思います。その時はそこで動きを止め、動きにくい背骨に呼吸を入れるように深呼吸を数回繰り返して体を緩めましょう。
■バランスよくトレーニングすることで猫背改善につながる
ここまで、最低限やっていただきたい簡易的なエクササイズをご紹介させていただきました。
再び深呼吸をしてみましょう。前よりも呼吸が深くラクにできるようになっていませんか。肋骨や胸郭の動きがスムーズになっているのを感じられるはずです。座った状態で、もう一度背骨を丸めたり伸ばしたり、左右に倒したりしてみましょう。
エクササイズ前と比べて、動きやすさに変化はありますか。動きがスムーズになり、背骨の柔軟性を感じられるはずです。特に、硬さや違和感を感じていた部分は、ラクになっているのではないでしょうか。
これらのエクササイズを通した要素は、それぞれが独立しているのではなく、互いに密接に関係し合いながら効果を発揮します。感覚(※五感のほか、位置覚や運動覚、平衡覚などのこと)を入れることで、体の状態を正しく認識できるようになり、インナーマッスルを効果的に使えるようになります。
また、インナーマッスルが活性化することで、感覚もより研ぎ澄まされていくという好循環が生まれます。
この3つの要素をバランス良く鍛えていくことで、「感覚→神経→筋肉」という反射の経路が活性化され、最終的には「自然と正しい姿勢になる」という素晴らしい結果に繋がっていくのです。
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理学療法士
10 年以上の臨床経験を持つ理学療法士。 解剖学や脳神経学の専門知識を活かし、姿勢に特化したアプローチを確立。セミナーやレッスンを通じて、たくさんの人々の姿勢改善をサポートしている。また、SNSでの情報発信力にも力を入れており、わかりやすい解説と効果的なエクササイズの提案をし、総フォロワー数10万人(2024年12月現在)を超える支持を得ている。
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(理学療法士 理学療法士キリツ)
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