【追悼・森永卓郎氏】森永卓郎「私は生涯、一匹オオカミを貫く」余命宣告を受けて確信した「親友なんかつくってはいけない」理由
プレジデントオンライン / 2025年2月1日 6時15分
※本稿は、森永卓郎『身辺整理 死ぬまでにやること』(興陽館)の一部を再編集したものです。
■一匹オオカミで生きる
身辺整理の対象となる事柄の中に人間関係も含まれる。
むしろ、最重要の課題かもしれない。
たとえば私のように余命宣告をされた場合、多くの人が親しくしてくれた友人に感謝を伝えておきたい、友人と再会しておきたいと思うのではないだろうか。
あるいは険悪になっている誰かとの関係性を修復しておきたいと考える人もいるだろう。自分にとって大切な人だからこそ気になるのだ。
ただ、私自身に関して言えば、親密な関係性を持つ人はいない。
私には友人が一人もいないのだ。
知り合いは多いが、あえて仲間を作らないようにしてきたからだ。
仲間を作ると自分がスキャンダルを起こしたり、逮捕された時に人を巻き込むことになる。
その逆もあって、仲間の誰かが問題を起こした時に自分が巻き込まれてしまう。さらに、仲間を作るということは、同時に仲間外れを作るということだ。
私は、それがたまらなく嫌なのだ。
誰もが一匹オオカミで生きると決めれば、仲間に入れてもらいたいと人に迎合する必要もないし、仲間外れにされたらどうしようなどとオロオロすることもない。
世の中には「共闘」を好む人のほうがずっと多い。
私のところにも、一緒に活動してほしいとか、選挙に出てほしいという依頼がたくさんくる。
ただ、私はすべてお断りしている。
私の闘い方は、「ゲリラ」だ。
大勢で力を合わせれば、力が強まることは事実だが、その分、組織丸ごとつぶされることもあるし、裏切り者も出てくる。
だから私の役割は、一人で闘い続けることだとずっと信じてやってきた。
■1回のメールで1万円、1時間の相談で20万円を請求
私には仲間はいないが、誰にでも差別なく接してきたという自負はある。
自分の心を偽ることなく、いつの時もオープンでいることを心がけてきた。
たとえば私はホームページにアドレスを公開しているので、毎日大量にメールが届く。そのメールに対しては、基本的に一度は返信する。
しかし、二度目に同じ人からメールが来た場合には、1回のメールにつき1万円の料金を請求している。リモートでの相談を希望する人がいれば、知り合いでなくても引き受けるが、その場合は1時間あたり20万円の料金を請求している。いずれも事前振込み制だ。
そこまでして私に相談することなのか? と問いかけているわけだが、言い方を変えれば、簡単に言ってこないでほしいということだ。
歌手がカラオケでタダで歌ってくれと言われたら怒るだろう。私も経済アナリストを生業とする労働者なのだ。
もとより慈善活動をする気はない。そんな暇もない。ただし高額を出しても私に相談したいという人に対しては誠心誠意向き合うと決めている。
そうした行動に対して、「森永は、とんでもない資本主義者だ」などと批判を受けることもあるが、私は違うと思っている。
■「無料」のおいしい話には罠がある
例えば、著名な芸能人や評論家と直接話がしたいと申し込んでみてほしい。たいていの場合、あれこれと理屈をつけて、断ってくるはずだ。
私は、お金さえ支払ってくれれば、誰とでも話す。
1時間20万円のトーク料は高いと思われるかもしれないが、いま私は毎月100万円以上の医療費を投じて延命をしているのだから、むしろとても安い料金設定だと考えている。
ただ、世間はなぜかタダで私と話ができると思い込んでいる。だから、SNS型投資詐欺にひっかかってしまうのだ。
SNS型投資詐欺では、親切な著名人が、無償で投資相談をしてくれて、本も無償で送ってくれる。
冷静に考えたら、そんなことがあるはずがないだろう。おいしい話には罠がある。親切心を装ってあれこれ相談に乗るのは投資詐欺の餌食にしようという企みがあるからだ。
おいしい話に遭遇したら、「なぜ、この人は自分に親切にしてくれるのだろう」「そんなに儲かる話ならなぜ独り占めしようとしないのか」と疑ってかからなければいけない。
ところが、人間は「無料」に弱い。その結果、全財産を詐欺師に奪われることになるのだ。
一方、1回1万円の料金を請求するだけで、99.9パーセントの人は、2回目のメールを自粛する。私のアドバイスで、数千万円の詐欺被害から財産を守ることができても、たった1万円を惜しんで、詐欺師のほうに耳を傾けてしまうのだ。
料金を支払ってでも私に相談をしたい人は、わずかだがいる。
そうした人に対しては、誠心誠意向き合っている。
1万円くらいのコストなら、ちょっとした節約で捻出することは可能だろう。だから、私のやっている料金請求は、本気で話を聞きたいのかを判別する基準にもなっているのだ。
■強く生きるためには友達を作るべきではない
ちなみに私にはプライベートでも、つきあっている友人がいない。
唯一、漫画家のやくみつるさんとはコレクションの話で馬が合うので、いわば友達づきあいをしているつもりでいた。
ところがある時、テレビに出ていたやくさんが「僕には一人も友達がいません」と語っていて、私は「ああ、そうなんだ」と思った。それでいいのだと納得した。
話をしていて楽しいと感じれば友達なのかといったら違うだろう。
やくさんとはコレクションの話では盛り上がるが、それはそれだけのことで、やくさんとは、プライベートの連絡を取り合うことは一切ない。だからこそ、純粋に趣味を共有できるのかもしれない。
結局のところ、自分の問題は自分で解決するしかない。
その覚悟がない人が友達を作りたがる。
逆説的に言えば、強く生きるためには友達を作るべきではないと思う。
親友なんてものは絶対に作ってはいけない。
アイツとは互いに理解し合っているなどという発想は人を確実に駄目にする。第一、自分のことを理解しているのは自分だけだ。このことについては、余命宣告を受けていよいよ確信を深めた。
■人は、一人で生まれて一人で死んでいく
死に向き合うのは孤独な作業だ。私にとっては一人で考える孤独な時間がありがたいのだが、いずれにしても誰かと共有したところで意味がないのだ。
一人で死んでいくことが怖くなってしまうかもしれない。
また、老後生活に入ってから、現役時代の友人関係を引っ張り続けるのも最悪の選択だ。一緒に飲みに行こう、一緒にゴルフに行こうという誘いに応じていると、どんどん老後資金を食いつぶすし、何より自由な時間を奪われてしまうからだ。
その意味で私は、人はどんどん一人になる訓練をしていかなければいけないと思う。
もとより人は、一人で生まれて一人で死んでいくのだから。
(初公開日:2024年11月29日)
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経済アナリスト、獨協大学経済学部教授
1957年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。専門は労働経済学と計量経済学。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』『グリコのおもちゃ図鑑』『グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』『なぜ日本経済は後手に回るのか』などがある。
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(経済アナリスト、獨協大学経済学部教授 森永 卓郎)
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