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「アイスコーヒー」の頼み方で人生最後の伴侶を決めた…バツイチ婚活女性(68)が見逃さなかった"相手の言動"

プレジデントオンライン / 2025年2月7日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

結婚相談所には60代以上の相談者が訪れることも珍しくない。主宰する結婚相談所でカウンセラーを務めている大屋優子さんは「私の結婚相談所を訪れた68歳の女性は、子供を安心させたいという動機で婚活をスタートさせた。アプリの意味を知らないほどITリテラシーが低かったが、身の丈にあった婚活に励み、4カ月で成婚した」という――。

※なお、本稿は個人が特定されないよう、相談者のエピソードには修正を加えている。

■一大決心をして結婚相談所を訪れた68歳の女性

人生100年時代。

結婚してパートナーを見つけたいのは結婚適齢期の人たちばかりではない。60代でも、70代でも、幸せを求めて結婚相談所で婚活するかたは、年々増えている。

私の結婚相談所にある日やってきた、68歳のバツイチ女性。

東京から車や電車で二時間ほどの距離にある、リゾート地からはるばる訪ねてきた。聞いてみると、私のところに来るまでに一年間も悩んで、考え、迷いながら、勇気を振り絞って、やっとこの日の約束でやってきたのだという。

「人生の一大決心で来たんです」

そういう彼女は、あるホテルに住み込みの清掃員としてもう10年以上働いてきたのだそうだ。小柄で、華奢。手首は折れそうなほど細い。家事をしているに違いないその手には、たくさんのシワが刻まれている。

年齢を重ねると、痩せている人はふくよかな人より、どうしてもシワが目立つ。彼女は小枝のようにスリムだから、首や手のシワは年齢相応にあるのはしかたないこと。疲れた生活感はどうしても隠せない。

20代の初めにある地方都市で恋愛結婚し、子供を一人授かった。

当時はすでに「核家族」という言葉が日本社会に浸透していたが、住んでいる地域によっては、配偶者の親と同居という例も少なからずあったし、彼女はそれに近い形で、親世帯と同じ敷地内で新居を構えた。

そこには、元夫のまだ嫁に行かない姉も母屋で暮らしていたそうで、舅・姑・小姑に囲まれた生活は、別棟世帯とはいえ、息苦しいものであったに違いない。

■夫のギャンブル癖がきっかけで離婚

元夫は、優しい人であったそうだが、賭け事が好きだったそう。仕事は、家からほど近い小さな工場で営業兼職人として働いていた。パチンコが大好きで、休日ともなれば、朝からパチンコに出かけて行く。

当時の彼女の家では、自宅で食べる分の野菜などは、敷地内で栽培しており、水やりなどのその世話は、嫁である彼女に役割が割り当てられ、一日も休むことは許されない。

そんな暮らしのなか、彼女が授かった子どもは女の子だった。彼女は幼い頃、当時の女性にしては珍しく大学進学を希望していたのだが、家庭の金銭的な事情でどうしても大学に進学することができなかった。そうした悔しさから、娘にはそんな思いをさせまいと小学生の頃から塾に通わせ続け、高校は地元の進学校に入学し、見事現役で東京の有名私立大学に進学することができた。娘は大学卒業後、IT系の企業に進学し、職場で出会った男性と結婚したという。

この娘の結婚を機に、彼女は元夫と離婚をした。離婚理由は言うまでもなく、夫のギャンブル癖である。元夫の浪費に加え、夫の実家との関係に我慢に我慢を重ねてきた。実家の援助を受けながらとはいえ、子供も立派に巣立った。このタイミングと同じく、実家の両親も次々に他界されたというが、その時の彼女は「人生をやり切った」と思った、そうである。

■“シェルター”として機能していた「住み込み仕事」

そんな彼女が離婚したときの貯えは、ほぼゼロ。まさに丸裸状態の中年女性であった。

将来の不安、たった一人で住むところを見つけて、生活費を稼がなくてはならない。家もない、資格もない、何が自分にできるのかもわからない。

そんな彼女が行き着いた先は、北関東にある寮完備の温泉ホテル。ホテルの清掃などの仕事なら、今まで主婦だった自分にもできる。住むところが約束されていることに彼女の選択肢は、ホテルの清掃担当の一択だったという。

テーブルを消毒するホテルのスタッフ
写真=iStock.com/yacobchuk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yacobchuk

実はかつて、温泉宿の住み込みの仕事は、「わけあり」の人が仕事先として選ぶケースが少なくなかった。女性週刊誌には、「寮完備」「住み込み」「食事つき」「託児所完備」などの求人広告が多く出されていた時代があったのだ。

例えば、借金から逃れ、社会から身を隠したい夫婦や、配偶者からの暴力から逃げたい子どもを抱えた女性などといった事情を抱えた人の、シェルターのような場所であった時期もある。

温泉旅館やホテルの仕事は、朝夕の食事のお世話や、掃除など朝が早く夜も遅い。きつい仕事と考えられ、また近くに住んでいなければ、業務をこなすことはできない。人材確保の面でも、温泉宿やホテルの住み込み求人は、宿側にも大きなメリットがあるのである。

その仕事も、今では「リゾートバイト」などという言葉に変わり、かつての「わけあり」なイメージからは、時代がだいぶ過ぎたように感じる。

■再婚相手を見つけるために結婚相談所へ

離婚後は、温泉ホテルの清掃担当として、彼女は懸命に働いた。仕事仲間からも評判も良く、誠実な勤務態度で、ホテルのオーナーからも「ずっと長くお勤めしてほしい」と頼まれていたという。

ホテルの清掃業務中心の仕事は彼女の性に合っていたようで、毎日が安定した気持ちで過ごせた。それから数年もすると、休日には仕事仲間とあちらこちらに出かけたりと、この仕事は体力的には大変ではあるが、楽しくもあった。

そんななか、彼女が勤める温泉ホテルに宿泊するのは、幸せな家族が多く、特に仕事を引退し旅行を楽しんでいる老夫婦を見かけるたびに、自分自身のさびしい気持ちがどんどん募っていったという。

「私もパートナーと旅行できたら」そんな思いを抱えながら数年が過ぎた。

どんどん歳を取り、朝から晩まで掃除機や雑巾を抱えてホテルの中を駆け回る、ハードな肉体労働とも言えるこの仕事は長くは続けられない。ホテルを退職したら、当然寮は出なくてはならない。

結婚した娘も、自分の身を案じてくれている。このまま、一人でいたら、いつか娘に迷惑をかけるのではないか。その不安をずっと抱えていたという。

「再婚相手を見つけよう」

そう決心した彼女が選んだ婚活が、結婚相談所だった。

■「アプリ」の意味すら知らない状態で婚活を開始

彼女は、若くして結婚、社会経験がほとんどないまま専業主婦をしていた。その後は、ホテルの清掃という朝から晩まで時間に追われる仕事の生活をしてきたから、いろいろなことに正直疎い。

LINEやメールはかろうじてできる。だが、携帯電話にアプリをダウンロードして、などということは、彼女にとっては理解できない外国語と同じであった。何しろ、「アプリ」の意味すら知らないのだ。

スマホを使用する高齢女性の手元
写真=iStock.com/Pranithan Chorruangsak
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pranithan Chorruangsak

手取り足取り、アプリのダウンロードのやり方を指導。婚活についてのアドバイスは、昼の休憩時間に毎日のように電話で行う。ITリテラシーは低くとも、持ち前の素直さや、学ぶ気持ちはだれよりもあり、前向きに婚活していこうという気持ちがある彼女には、絶対に幸せになってほしいと心から願った。

まず婚活に必要なのは、どんな年齢であろうが、写真である。

一般的には、少しでもスリムに見えるような服を選ぶのだが、彼女の場合は、毎日身を粉にして働いてきた彼女の細すぎる身体が、目立たないような仕上がりにしたい。

ふんわりしたパフスリーブのブラウスに、明るい色のフレアスカートで、痩せすぎの体型をカバー。華やかなメイクもお願いし、髪もゆるい巻き髪に仕上げてもらう。婚活専門のフォトスタジオの手にかかると、68歳という年齢の彼女も、美しく写る。

■お見合いの場で知れる情報はごくわずか

彼女がシステムに登録するや否や、年齢の近い男性10数名からお申し込みが来た。

年齢的には65歳から79歳。ほとんどの方が、仕事を引退し、年金暮らしで、配偶者に先立たれたとか、離婚を経験した男性である。

結婚相談所には、80代の方の登録も少なからずある。誰もが老後一人は寂しいのだ。

彼女がこれからの人生を共に過ごしたいのは、年齢が近く、賭け事をしない穏やかな方。10歳以上年齢が上の男性からもお申し込みをいただいたが、彼女はこれからの人生を二人で健康寿命を延ばし、一緒に楽しみながら過ごせる方を望んでいた。

ホテルの仕事の休みを利用して、そのお申し込みいただいたなかから、5名の男性と彼女はお見合いをした。お見合いは基本的にホテルのラウンジが多く、コーヒーやお茶を飲みながら1時間ほど会話をするのが通例となっている。

お見合いの基本的なルールとして、申し込みの際に閲覧できる基本的な情報以外についての質問以外はしてはいけないことになっている。たとえば、職業の具体的な内容や、詳しい住所、ファーストネームすら聞くことはできない。なので、お見合いの場というのは相手の情報を引き出す場というよりかは、実際に会った感じた相手の印象や、振る舞いなどを確かめる機会になっている。

■「店員さんへの態度」に相手の“素”があらわれる

彼女も、お見合いをした5名の男性の立ち振る舞い、とくに店員さんを交えたやり取りをじっくりと観察したようだ。

直接会って会話をしたとしても、“よそ行き”の対応をされてしまい、相手の素の部分というのはなかなか見えてこないもの。そこで、相手の本性を見極めるためには、普段の態度が出やすい「店員さんへの振る舞い」がとても参考になる。

とはいっても、高級ホテルのラウンジで極端に横柄な態度を取る人はほとんどいない。ただ、注意深く言動を見ていくと違和感に気づくこともあるという。

たとえば、店員さんの呼び止め方や、お水を運んできてくれた際に「ありがとう」などの感謝のひと言があるか、注文をする際に「アイスコーヒーをひとつお願いします」ではなく、「アイスコーヒー」と不愛想に商品名だけを伝えていないか、など、細かい仕草から相手の普段の振る舞い方が透けて見えてくる。

アイスコーヒー
写真=iStock.com/Wako Megumi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wako Megumi

離婚を経験し、68歳になって最後のパートナーを探すために再婚を決意した彼女にとって、一つひとつの言動が見逃せないものだった。お見合いを重ねていくなかで「この人なら一緒になっても自分のことを大切にしてくれるかもしれない」と思った二人の男性と仮交際することにした。

■「老後の収入」をどう見極めるのか

二人の方は、いずれも彼女と同じくバツイチだった。年齢も近く、現役時代は、しっかりした仕事に就いていた男性。彼女は二人と3回ずつデートした。食事をしたり、ドライブに出かけたり、若者と変わらないデートである。

お見合いとは違い、仮交際まで進めば仕事の詳細や、住んでいる場所など、詳しい情報を確認することができる。彼女は、相手がどこに住んでいるのか、持ち家か賃貸か、結婚後はどこに住みたいか、これまでどんな仕事をしてきたか、離婚経験があればその理由、子どもの有無と現在の状況、どんな持病があるか、などパートナーとの資質にかかわるポイントを聞いていった。

老後の安定した生活を構築していくにあたって、やはり重要なのは経済状況だ。

シニア婚活では、収入のほとんどを年金でまかなうことが大半なため、基本的にはこれまでどれだけ貯蓄をしてきたのかが大きなポイントになる。また、大手企業に勤めていた方であれば、企業年金などのいわゆる「三階建ての年金」を受け取っている方もいるため、そのあたりも確認しておく必要がある。ほかにも、不動産や金融資産などの不労所得を持っていれば好印象だ。

ほかにも、基本的にバツイチの方はお相手もバツイチのほうが安心する人が大半だ。異性と一緒に暮らした経験のある人のほうが、生活に関するさまざまなことに対して柔軟に対応する力を身に付けていることが多い。

彼女がバツイチの方と仮交際に進んだのもこうした理由があってのことだった。

■「持病の有無」だけで判断してはいけない

持病については、60代後半だということもあって、ある程度の疾患を持っていてもしょうがないとは思っていたようだ。これくらいの年齢になれば、なにかしらの持病を抱えていることは当たり前のこと。

もちろん、がんや重度の精神疾患などとなれば別だが、「持病がない人と結婚したい」というのは非常に難しい。二人とも臓器に関する持病は持っていたが、がんの経験はなかったため仮交際に進んだそうだ。

二人ともお人柄も穏やかで、優しい男性であったが、彼女は持ち家を持っているほうの男性を選んだ。彼女は長い寮暮らしの経験から、持ち家という安住の地への憧れもあったのであろう。

持ち家のある男性と、真剣交際に進むことになり、彼の住まいも見せてもらった。

真面目で穏やかで、ギャンブルは一切しない。現役時代の堅い仕事からの、年金収入も安定している。まさに彼女が理想としているパートナーである。

見た目のオジサン臭さは否めないものの、そんなことは「お互い様」と彼女は笑顔で笑い、あっという間にこの男性からのプロポーズを受けた。

この間の時間は、わずか4カ月。結婚する覚悟を決めての婚活だから、決断が早い。

手を握り合うシニアカップル
写真=iStock.com/kckate16
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kckate16

■「選ばれた中から、最良を選ぶことができる」

完璧な人なんかどこにもいないのに、あの人のここが嫌、この人のあそこが条件に合わないなど、相手を選り好みする30~40代の方とは、背景も条件も違う。シニアでも、金銭的なゆとりがあり、「結婚出来たらしてもいいかも」と思う方とも、彼女は状況が違う。

いつまで現役でいられるかわからない仕事、老後の不安。そして何より、娘に心配をかけたくないという強い気持ちが、彼女の婚活の原動力だった。

婚活は「選ばれなければ選べない」のに、「選んでやろう」と大きな誤解をしている男女が多数いる。婚活が長期化している男女は、自分が上から目線で選ぶつもりでいるのだ。何しろ、システムには目のくらむような高年収男性や、見目麗しい女性がたくさんおり、結婚相談所で婚活を始めると、自分の結婚相手に大きな妄想と期待を抱いてしまうのである。

大屋優子、現代洋子『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)
大屋優子、現代洋子『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)

結婚相談所に入会したからと、自分が選んだ相手と結婚できるわけではない。「選ばれた中から、最良を選ぶことができる」のが婚活なのだ。もうじき古希に手が届きそうな彼女は、身の丈をわきまえていた。

「絶対に結婚するという覚悟を決めての婚活」ほど強いものはない。彼女は腹をくくって婚活していたのだ。

彼女は多くは望まない。安心して残りの人生を暮らしていける男性で「自分を望んでくださるかたなら、どなたとでも結婚しよう。何よりも娘を安心させよう」そう最初に決意していた。

そのうえで、身の丈にあった自分なりの価値基準を定め、的確に判断することができたからこそ、4カ月でパートナーと結ばれることができたのではないだろうか。

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大屋 優子(おおや・ゆうこ)
結婚カウンセラー
1964年生まれ、株式会社ロックビレッジ取締役。ウエディングに特化した広告代理店を30年以上経営のかたわら、婚活サロンを主宰。世話好き結婚カウンセラーとして奔走。著書に『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)がある。

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(結婚カウンセラー 大屋 優子)

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