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なぜ日本でもこれができないのか…「墓じまい」に苦労した92歳女性が驚いた「スウェーデンの超合理的な霊園」

プレジデントオンライン / 2025年2月10日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Roger Wimmer

弔いの形が変わってきている。評論家の樋口恵子さんは「25年には団塊世代がすべて後期高齢者になる。10年、20年たてば、さらに変わっていくだろう」という。最期をどう迎えるべきなのか。樋口さんが老いの悩みに答えた『そうだ!ヒグチさんに聞いてみよう 92歳に学ぶ老いを楽しく生きるコツ』(宝島社)から一部を紹介する――。

■最期をどうむかえるか

Q1)「海洋散骨」「樹木葬」や「墓じまい」に対して、どのような思いを抱いていらっしゃいますでしょうか?

日本は狭い国土に人口密度が高い国です。これまでのように家族ごとに石のお墓を建てる形でお墓が増えていけば、墓だらけになってしまうかもしれません。

2025年に日本で人口が突出している団塊の世代が、すべて後期高齢者になります。

2022年1月の段階で団塊の世代を含む70歳~74歳の人口は964万人。総人口に占める割合は約7.6%とかなり大きな集団です。

この方たちが、ここ10年から20年でお墓に入ると考えると、伝統的なお墓の形が続くとは到底考えられません。

葬儀もお墓も「弔う」形は変わっていくと思います。

■すでに変わっているものもあります

墓石には「○○家之墓」と刻まれますが、すでに家族はバラバラです。悪い意味ではなく、かつてのように家族や親族が同じ地域に住んでいて、何かといえば集まって助け合っているという風景は、特に都会では見られないのです。

法事で親戚が集まったら、知らない人ばかりだったということも笑い話にならない時代です。

現在ではお墓のアパートのようなものも一般的になりつつあり、故人の個人としての弔いの形になっています。

遺骨はこのアパートで供養するのですが、よく見る大きな骨壺では入りません。小ぶりの骨壺に移して安置してくれます。はみ出た遺骨はお寺なりが処分することになります。

さらに、告別式後の焼き場で、お骨を拾う際に初めから小ぶりな骨壺に入れる形も増えているそうです。

■生前に選択できる弔いの形

これからの亡くなった方への供養の形は、家に縛られず、個人の考えによって決まると思います。

もちろん信仰心の篤い方は、それぞれの宗派、教団の考え方や様式もあると思いますので、それに倣うことも自由です。

最近の皆さんのお話によると、人気が高いのは海洋散骨と樹木葬です。それぞれの実態を見てみましょう。

海洋散骨は遺骨が自然に還る感覚が魅力ですね。それぞれの提供会社により様々な企画が考えられているようです。

クルーズ船を借り切って、その定員だけ乗船すれば一定の料金です。一例をあげれば、定員6名で12万円ほどです。代理散骨だと散骨には立ち会えませんが、5万円で済みます。会社によって、ハワイで散骨するとか様々なプランがあります。

メリットは、一度セレモニーをしてしまえばお寺などに払う納骨後のお布施は必要ないことです。デメリットは、お墓のように供花や手を合わせる場所がないことです。海にも散骨スペースがありますから、海を見つめて手を合わせることでよいのではないかとも思います。

■樹木葬は少しお高め

樹木葬もイメージは大木の根もとに散骨してもらい自然と一体になるというものですが、霊園やお寺の中に墓石に代えて植物を植え、そこに散骨するという形も多いようです。東京の相場は30万円から50万円と少しお高いです。地方都市などでは20万円台もあるようです。

ご自分の最期を生前に決めておいて契約することもできます。ご自分の最期は自分で決めるのは気分のいいことです。

■コロナが変えたお葬式の風景

Q2)最近のお葬式は、以前のように大人数が集まるものは少なくなっているようです。私も葬儀は家族葬でいいとも思っていますが……。

最近訃報をいただくと、「葬儀は家族葬で済ませております」と書いてあるものが多いようです。コロナ下では大勢の人が集まるのは好ましくないと、強制的にお葬式は血縁だけが集まる少人数のものになりました。

そして何だか「この形でもいいんじゃない」という気持ちが社会の中に生まれたように思います。

お葬式は故人を弔う風習なのですが、弔うとは「人の死を悼み、その喪にある人を慰める」両方の意味があります。故人だけではなく、故人の遺族に対しても行う行為です。いつしか弔うことが形式的になってしまっていたように感じます。

昔ながらのお葬式は、自分が参列した伝統的なお葬式のイメージや業者の勧める形にとらわれて、弔いの本質を見失ってはいなかったでしょうか。

葬儀の祭壇
写真=iStock.com/dreamnikon
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dreamnikon

■統計上も増えています

2024年3月の調査では、新型コロナが下火になった2022年以来、家族葬が約半数になっています。一方で大勢が参列する一般葬は約3割と家族葬が逆転しているのです(鎌倉新書調べ)。

まだ、業者は旧来の形を〈一般葬〉というようですが、今や家族葬が一般になっていることが統計でもわかります。

コロナが本当は下火になってはいないのですが、大勢が参列するお葬式もできるようになってきました。でも、これが主流に戻ることはないのかもしれません。周りの方の意思も確かめておきましょう。

相談者さんは、こういったことをよくわかって、家族葬を選択しようとされるのでしょう。

ただ、お葬式について伝統的な形が当たり前と信じているご親戚もいらっしゃるかもしれません。「何かケチくさい感じがして世間体が悪い」と思われているかもしれません。そういった方との軋轢を避けるためにも、よく話をすることが大切です。

そんなときのために、前掲のような統計や弔いの意味を話題にするのもいいと思います。

■「相互扶助」としての役割

大勢集まるお葬式にもメリットはあります。

かつて人が多く村社会に住んでいた頃は、お葬式は助け合いの気分に満ちていました。お清め会食などのお手伝いからお香典までの相互扶助です。家族葬にすると、この恩恵は受けられません。

でもお香典をいただいても、半返しなどのこともあって気持ち的に面倒です。

また、お別れに来てくださる参列者の方々には、お葬式を機会に故人の知り合いが集まって旧交を温められるという期待があるかもしれません。それは故人の功徳でもあります。

遺族の悲しみを和らげるため、相談者さんのご友人も駆けつけてくれるかもしれません。

でも、これらはお葬式の時にしかできないことではありません。

このために莫大な費用をかけるのも考えものです。故人のご友人のためには会費制の偲ぶ会を企画することもあるようです。

相談者さんのご友人とは、別に会う機会をもてばよいでしょう。故人の思い出などを聞いてもらいましょう。

■墓じまい、しました

Q3)70代後半です。父が建てたお墓があります。父は三男坊で、実家のお墓は栃木県にあります。父は東京に働きに出て、そのまま住みついたので、お墓は生前に都内に建てていたのです。亡くなった際には、このお墓に入ったので、父は満足したと思います。でも私は子どもがいないので、墓じまいしようかどうしようかと考えはじめています。何か考えておくべきことがあったら教えてください。

昔ながらのお墓は、〈先祖代々の墓〉でした。でも近年は、家族ごとにお墓を建てる形になっているので、このまま家族の墓が増えていけば、狭い国土に人口が多い日本は、墓だらけになっていくかもしれません。そんな中で、墓じまいという考え方が出てくるのは当然のことかもしれません。

実は私も実家の墓じまいをしました。

私は、早くにきょうだいを亡くした、実質「一人っ子」です。自身の子どもも一人っ子のため、自らを「一人っ子のベテラン」と称しています。相談者さんも一人っ子のようですね。

私の実家である「柴田」家の墓は都内の寺にあります。両親と、私が生まれる前に亡くなった姉と中学生の頃に亡くなった兄ら、計5人の遺骨が納められています。このお墓を「一人っ子」として守り続けてきました。

でも、お寺から「合同慰霊塔を作ったので、お墓を移したい方はそちらに」という話を聞き、娘は墓守りを受け継ぐのは嫌だと言いますので、いろいろ考えて墓じまいする決心をしました。

■先祖代々の墓となるとかなりの金額に

実際に経験してみると金額は、お寺によっても違うらしいのですが、私の場合、遺骨1柱あたりに費用がかかり、5柱だと結構な金額になりました。でも後顧の憂いを残さないよう契約しました。先日墓じまいの法要を行い、無事5柱を合同慰霊塔に納めました。

私自身もそこに入れてもらうことになります。

高齢社会をよくする女性の会では、葬儀やお墓の話がよく話題になります。

新潟で墓じまいをされた方のお話をうかがいました。

新潟なので1柱あたりの金額は東京より少しお安かったようですが、お墓の中には知らない先祖の遺骨を含めて18柱あったので、総額はかなりの額になってしまったとのことです。先祖代々の墓ですと、こういったこともあるので気をつけなければなりません。

墓参り
写真=iStock.com/Masaru123
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masaru123

■スウェーデンでは行政がしてくれる

10年ほど前に、高齢社会をよくする女性の会役員5人で北欧を旅しました。ノルウェーやスウェーデンの福祉事情を見聞したのです。その時、お墓事情も聞く機会がありました。お墓の前で、お棺に入るというパフォーマンスもいたしました。「不謹慎です」と叱られましたが。

スウェーデンでも墓じまいは行われていました。ただ、行政がするのです。

街には公営の霊園がありました。そこと契約し、埋葬されたあと20年から30年、つまり一世代の年月がたつと墓じまいとなり、新しい方が埋葬されます。

受け継ぐ意思をもつ子孫がいれば延長できます。非常にスムーズにいっているようです。

樋口恵子『そうだ!ヒグチさんに聞いてみよう 92歳に学ぶ老いを楽しく生きるコツ』(宝島社)
樋口恵子『そうだ!ヒグチさんに聞いてみよう 92歳に学ぶ老いを楽しく生きるコツ』(宝島社)

人は、地域で育ち、地域で働き、地域で眠る。「育つ」「眠る」は行政が配慮すべきことだと思います。霊園の場所を提供して、地域住民と契約し、管理する、そういうことを市区町村でやっていただきたいと考えています。これからは、地域とお墓という考えが一般的になるのではないかと、今後も研究して提案していきたいと思います。

東京都では多磨霊園などの公営だと、もう少し墓じまい費用も安いようです。

もっと身近に公営の霊園を作っていただきたいところです。

相談者さんも情報を集めて、損のないように考えてくださいね。

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樋口 恵子(ひぐち・けいこ)
東京家政大学名誉教授
1932年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、時事通信社、学研、キヤノンを経て、評論活動に入る。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。

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(東京家政大学名誉教授 樋口 恵子)

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