和田秀樹「実は一人暮らしの認知症患者ほど症状が進みにくい」…認知症の人にこれだけは絶対してはダメなこと【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2025年2月6日 7時15分
2024年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお届けします。健康・医療部門の第3位は――。
▼第1位 マイナ保険証でがん治療断念する人が出る可能性…廃止される健康保険証に記載された最重要情報とは何か
▼第2位 がんや早死にのリスクを高めるだけ…和田秀樹が「女性は絶対に飲んではいけない」と話す危険な薬の名前
▼第3位 和田秀樹「実は一人暮らしの認知症患者ほど症状が進みにくい」…認知症の人にこれだけは絶対してはダメなこと
▼第4位 「日本人が歯を失う原因第1位」毎日3回歯を磨いているのに歯周病になる人の意外な共通点
▼第5位 「とりあえず薬を」という横柄な医師が"秒"で黙る…医師・和田秀樹が伝授「診察時に出すと効果的なアイテム」
※本稿は、和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■頭のよい人は認知症をやみくもに怖れない
病気を必要以上に怖がらないということは、シニア世代の方が、これからの人生を賢く生きていくための知恵だと思います。
高齢を迎えた多くの人、あるいはその家族が抱える悩みとして、認知症に対する不安があるでしょう。
個人的に、認知症ほど誤解されている病気もほかにないのではないかと思います。
「認知症になったら最後、何もできなくなるし、何もわからなくなる」という誤った解釈が横行していますが、決してそんなことはありません。
認知症になったからといって、すぐに人の顔がわからなくなるようなことはないのです。意外に思われるかもしれませんが、最初の5年間くらいは、それまでとさほど変わらない生活を続けていける人がほとんどです。
さらに、認知症の症状が進行した状態でも、知的な能力は残り続けます。
69歳でアメリカの大統領になったロナルド・レーガン元大統領は、退任して5年後に、自身が実はアルツハイマーであったことを公表しました。その時にはかなり症状は進行していて、自分がまだ大統領だと思っていたようです。
おそらく、大統領就任中にはすでに初期の認知症にかかっていて、記憶障害などの症状は起きていたと思います。それでもレーガン氏は人望のある大統領として活躍し、偉大な功績も残しました。
レーガン元大統領の例からもわかるように、認知症になったら一切の判断力がなくなる、何もできなくなるなどと思うのは大きな間違いで、認知症になってもできることはたくさんあります。
■認知症の人にこれだけは絶対してはダメなこと
危険を察知する能力、怖いものを怖いと思う感覚も、認知症を発症してからかなりあとの段階まで残りますし、むしろ、危険を回避するための防御反応は高まります。
私はこれまで3000人以上の認知症の方を視てきましたが、徘徊中に転んでしまった人はいても、道で車にぶつかったという人は一人もいませんでした。車にぶつかるのは危険なことだと認識する能力は残っているからです。
私が高齢者医療の現場である浴風会病院に勤務していた当時は、年間100例ほどの解剖が行われていましたが、その結果判明したのは、85歳を過ぎると、脳にアルツハイマー型の神経変性がない人は一人もいないということです。
つまり、認知症は誰もが罹患するもの。病気というより老化現象の一つです。高齢になって体の機能が衰えるのと、何ら変わりはありません。
そして老化であるがゆえ、その進行速度もゆっくりしたものですし、個人差があります。
一番避けたいのは、認知症だからといって悲観的になり、家に閉じこもってしまうことです。頭と体をしっかり使うことで、認知症の進行は遅らせることができます。
ですから認知症になったときこそ、意識的に以前と変わらない生活を送ることが重要です。無理に行動を制限するほどに、進行は早まってしまいます。
私自身、医師としてたくさんの高齢患者さんを診察してきましたが、一人暮らしをしている人ほど、認知症の症状は進みにくいことがわかりました。それは、いろいろな家事をするなかで、必然的に頭を使うからです。日常生活を送るというのは、思っている以上に脳を働かせるものなのです
認知症の方が一人で暮らすのは不可能なのでは? と思う方もいるかもしれませんが、先に述べたように、認知症になると防御反応が高くなるため、多くの場合、食事の用意なども自分でしっかり行います。食べることは自分の生存に関わることだからです。
認知症になっても、できることはたくさんあります。その「できること」を失わないように、残存機能をとことん活用し続けることが大切なのです。
■認知症のポジティブな面を知っておく
「認知症にだけはなりたくない」と、認知症になることがこの世の終わりかのようにとらえている人は多いと思いますが、認知症になってもまだまだやれることはたくさんありますし、医師の見解としては、ポジティブな面も大いにあると思っています。
認知症の症状が進んだ人ほど、嫌な記憶がなくなるせいか、ニコニコと温和な性格になり、多幸感にあふれているような印象を受けます。老人ホームなどでも、患者同士でレクリエーションを楽しんでいたり、職員とにこやかに会話をしていたりといった光景をよく目にします。
周囲がいくら不憫に思っていたとしても、当の本人が幸せでいられるのならば、それに勝るものはないのではないでしょうか。
また、かつては偉そうな態度だった人も、認知症が重くなると、いつしか誰に対しても敬語で丁寧に接するようになっていきます。
先にお伝えしたように、認知症になると防御反応が高まりますから、失敗やトラブルを起こさないように、相手が誰かわからなくても、ひとまずあらゆる人に丁重に接しようという意識になるのです。結果的に、朗らかでソフトな印象を与える、まさに理想的なシニアになっていきます。
認知症は誰もが経験する老化現象であることに加え、このような側面も持っています。であればこそ、「なったらなったでよい面もあるかも」という意識を持つことで、過度に怖れることはなくなるのではないでしょうか。
(初公開日:2024年11月2日)
----------
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
----------
(精神科医 和田 秀樹)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「とりあえず薬を」という横柄な医師が"秒"で黙る…医師・和田秀樹が伝授「診察時に出すと効果的なアイテム」【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2025年2月6日 8時15分
-
がんや早死にのリスクを高めるだけ…和田秀樹が「女性は絶対に飲んではいけない」と話す危険な薬の名前【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2025年2月6日 7時15分
-
65歳以降「幸せホルモン」が減退…和田秀樹が「シニアの病で最も怖い」と説くうつ病を防ぐために摂りたい食材
プレジデントオンライン / 2025年1月30日 15時15分
-
男性は72.6歳、女性は75.3歳でやってくる…和田秀樹「ヨボヨボ老人と元気ハツラツ老人」を分ける決定的違い【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2025年1月21日 9時15分
-
これをやると‟前頭葉バカ”になる…医師・和田秀樹「脳の老化を遅らせる睡眠の最終結論」【2024下半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2025年1月21日 8時15分
ランキング
-
1わずか3週間で人は獣になる…世界恐慌が露わにした「人間が持つ恐ろしい本性」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月6日 8時15分
-
2「チョコくれー!」で降格の危機に。「それってハラスメントですよ」職場で“冗談のつもりの一言”が招いた悲劇
日刊SPA! / 2025年2月5日 15時51分
-
3ある認知症の女性は「主役体験」によって徘徊しなくなった【認知症の人が考えていること、心の裡】#3
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年2月6日 9時26分
-
4「韓国の女性とは対等な関係を築けない」日本人と結婚した“韓国人男性のホンネ”
日刊SPA! / 2025年2月5日 15時54分
-
5「結婚したいのに、いつまでも結婚できない男性」に共通している“残念すぎる勘違い”
日刊SPA! / 2025年2月6日 8時54分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください