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日枝久氏"外圧"で相談役辞任なら「がっぽり退職金」か…それでもフジ社員が切りたい「お台場の天皇」の行状

プレジデントオンライン / 2025年2月5日 9時15分

2014年1月21日、東京の英国大使館で大英帝国勲章ナイトコマンダーを授与されるフジ・メディア・ホールディングス会長の日枝久氏(写真=UK in Japan- FCO/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons)

フジテレビ相談役の日枝久氏は辞めるのか、辞めないのか。フジテレビ関係者に最新事情を取材した元読売新聞記者・岡本純子さんは「社員たちは日枝氏を辞めさせ院政を終焉させたいが、今のままではできないという諦めに近い思いを抱えている」という――。

■「41年間も取締役を続けるのはおかしい」でも居座れる理由

性加害問題で揺れるフジテレビの「天皇」と呼ばれる取締役相談役・日枝久氏(87)の去就に注目が集まっています。フジ・メディア・ホールディングス(HD)の株式を持つ米ファンドのダルトン・インベストメンツは、同取締役会に対し、日枝久氏辞任を求める書簡を2月3日付で送ったと発表。その書簡では「なぜ、たった一人の独裁者がこの巨大な放送グループを40年近くも支配することが許されてきたのか」と痛烈に批判しました。日枝氏こそが、今回の問題を巡る同社のガバナンス不全の最大の要因との指摘は少なくありませんが、現時点で辞任の動きは確認されていません。

なぜ、ここまでの権力を持てたのか。なぜ、社員から辞めさせる動きが出てこないのか。居座る理由を考えてみましょう。

2度目の会見が行われた1月27日、同社の嘉納修治会長、港浩一社長は、ほぼすべてのスポンサーがCM提供を止め、多額の損失を被る事態になった責任を取る形で退任しています。しかし、1月30日に開かれた同社定例取締役会で日枝氏が辞任するという話は出なかったと報じられています。

今なお「長老支配」を続ける日枝氏ですが、そもそもどんな人物なのでしょうか。

日枝氏は1961年にフジテレビに入社し、編成局長を経て、1988年50歳でフジテレビの社長に就任しました。その後、創業家出身の会長をクーデーターで失脚させるなどして、権力を掌握し、2001年63歳でフジテレビの会長に就きました。

現在は87歳という高齢にして、フジテレビの親会社であるフジ・メディアHDとフジテレビの取締役相談役という立場で、「絶対的院政」を敷いていると伝えられています。今回の事案を受けて海外投資家や、メディア、世論も一斉に批判を強めていますが、どこ吹く風の無双ぶりです。

なぜ、社長・会長を退いたにもかかわらず、権力を保持し続けることができるのか。フジテレビの事情に精通する関係者を取材すると、大きく2つの要因が浮上しました。

■「フジテレビで出世するための条件はただ一つ」

まず、人事権を駆使して、徹底した「オールイエスマン」体制を作り上げたことです。今回、フジ関係者は「フジテレビで幹部になり出世していく条件はただ一つ。日枝さんに気に入られるかどうかだ」と語りました。

「役員になるのは、日枝さんに絶対たてつかない、子飼いの人だけ。能力では選ばれないため、役員クラスは決算書も全く読めず、経営のけの字も知らない、無能な人だらけという印象です。日枝さんの首に鈴をつけられる人物はいません」(前同・関係者、以下同)

港浩一氏
撮影=プレジデントオンライン編集部
社長を辞任した港浩一氏 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

聞けば、女性の場合は、主に日枝氏の秘書をした人が昇進するという不文律があり、現在の女性役員は秘書出身者だとされます。彼女は取締役の立場でありながら、1月17日の会見直後に、「日枝氏の特命を受けて、支局の新たな移転先の視察」のためパリ出張を決行。このタイミングでの渡航に、さすがに社内からも「危機感がなさすぎる」と不満の声が上がったといいます。

■社内外のとっておきの情報を提供して"天皇"を喜ばせる

長期体制のもう一つの要因が、お金、情報、人脈の「上納」制度を確立させたことです。独裁体制の中で、お金を差配するばかりではなく、情報と人脈を利用して、その地位を盤石なものにしていきました。

「特に現執行陣の中には、報道局や系列の新聞社出身の人も多くいますが、彼らの多くが、政治家とのつながり、パイプ、人事やお金にまつわる社内外の情報を日枝さんに提供していくことで、気に入られていきました」

清水賢治氏
撮影=プレジデントオンライン編集部
新社長に就任する清水賢治氏 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

自身も政治家と太いパイプを築いているといわれますが、次々とカネとネタとコネを吸い寄せて、権力を絶対的なものとしたのです。とはいえ、社内では、常に権力者然とした振るまいをしているわけではないようです。

「日枝さんはふだんジャンパーで社内を歩き回り、社員とも気さくに言葉を交わす側面もあります。ただ、“奥の間”に入ると近づきがたいオーラを発し、報告する社員は直立不動で絶対服従、恐怖で声が震えてしまう人もいるという話はよく聞く」

“天皇”の前にひざまずく「コバンザメ管理職」や「ヒラメ上司」が、結果的に低い社内の人権意識、今回の不祥事を招いたといえるでしょう。

■「日枝さんが亡くなる日を待つしかない」社員は諦めモード

フジテレビはこれまで先進的な番組を多く制作してきたリーディングカンパニーでしたが、最近は持ち込まれた質の高い企画が通らずに他局に流れるというケースが多発。ますます社員の士気は下がり、コンプライアンス意識も低下していました。

その結果、女性を接待要員として扱ったと疑いをかけられるような昭和の常識をアップデートできないモラルの欠如したテレビマンも増えてしまった。テレビ関係者の中には、フジ=絶滅危惧種の恐竜ばかりが住み着く「お台場ジュラシックパーク」と揶揄する人も多く、今回の事案も「起こるべくして起こった」と関係者は口を揃えます。

このように、フジテレビの腐敗した風土の元凶とも言われる日枝氏ですが、現在のところ、辞職するという話は出ていません。SNSだけでなく、専門家などからもこれだけ集中砲火を浴びれば、自ら辞してCM差止めの動きをストップさせようとする考えもあるでしょうが、今のところ、その動きはありません。

関係者によれば、そもそも「日枝氏自身、問題になった事案は港前社長以下、バラエティの人たちの人権意識の欠落にあり、自分とは直接関係ないというスタンス。ゆえに、フジテレビの社員たちは『日枝さんが亡くなる日を待つしかない』とあきらめモードです」

“天皇”が崩御するしか手立てがないかのような末期的症状と言わざるをえません。

嘉納修治氏
撮影=プレジデントオンライン編集部
会長を辞任した嘉納修治氏 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

■取締役退任なら「巨額の退職金が支払われる可能性が高い」

ちなみに取締役を解任する方法は、主に3つあります。①該当する取締役が辞任する、②株主総会で解任の議決をする、③再任しない、です。

フジテレビが実施すると表明した「第三者委員会」の結果によっては、次の株主総会において、取締役候補から日枝氏を外した議案を提出する、つまり、再任しない可能性は決して低くないとみられています。スポンサー企業や東宝、NTTドコモといった株主などからの圧力も強まることが想定されるからです。

ただ、取締役を退任するとなれば、「日枝さんには巨額の退職金が支払われる可能性が高い」(金融関係者)ということで、実際にそうなれば批判の声が集まるのは必至でしょう。

コーポレート・ガバナンスという観点から特定の個人の独裁化、上場企業の私物化について今後議論を深めていく必要があるでしょう。

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岡本 純子(おかもと・じゅんこ)
コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師
「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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(コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師 岡本 純子)

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