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花粉症対策が受験の合否を左右する…大学・高校受験で合格する人の家の玄関に置いてある「100均グッズ」

プレジデントオンライン / 2025年2月9日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

受験シーズンは花粉症大量飛散の時期と重なる。日本気象協会によれば、2025年春の花粉飛散量は、九州から北海道にかけて例年より多く、例年の2倍以上のエリアもある。内科医の谷本哲也さんは「鼻づまり、目のかゆみ、薬の副作用による眠気は勉強の障害になり、花粉症の対策のよしあしが合否に影響する。正しい対策をすることが大切だ」という――。

多くの受験生が花粉症の不快な症状と戦いながら机に向かっています。鼻づまりや目のかゆみ、さらには薬の副作用による眠気などは学習効率を下げてしまいます。花粉症対策には多くの方法がありますが、正しい方法で早めに対処することが大切です。

内科医としての臨床の状況を踏まえ、最新の花粉症対策のポイントを解説します。

■花粉症が学習に与える影響

花粉症の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみです。

ノルウェーでの疫学研究では、花粉の量が平均的なレベルを上回ると、高校生の試験点数が数%低下したと報告されています。アメリカの小学生でも同様の研究があり、イギリスの高校生でもアレルギー性鼻炎や薬の使用で成績が低下したと発表されています。

東京都内の中高生を対象とした調査でも、スギ花粉症の有病率が約30%に達し、症状が中等度以上の生徒が9割以上を占めていました。花粉症が受験生の生活に大きな影響を及ぼし、その対処をできるかできないかが成績や合否の鍵を握ると言っても過言ではありません。

注意が必要なのは、症状を和らげるために使用される抗アレルギー薬の中には、眠気や集中力の低下を引き起こすものもあるということです。せっかく服薬しても、結果として学習効率、学業成績や出席状況に悪影響を与えるケースもあるわけです。

花粉症の症状や程度は個人差が大きく、薬の選択肢もいろいろあるので、個々人の状況を踏まえ一人ひとりに合った個別化した方法を主治医とよく相談することが欠かせません。

■さまざまある抗ヒスタミン薬の選び方

花粉症に用いられるアレルギーの薬でもっともポピュラーなのは、抗ヒスタミン薬です。多くの種類があり、自分に合ったものを服用することが重要です。

●第一世代抗ヒスタミン薬

以前からある第一世代抗ヒスタミン薬は即効性があり、症状の緩和に効果的ですが、脳の中枢神経系に作用しやすいため、眠気や集中力の低下を引き起こす短所があります。

●第二世代抗ヒスタミン薬

現在の主流である第二世代抗ヒスタミン薬は製薬各社から10種類以上販売されています。特徴は、第一世代より脳への薬の移行が少なく、眠気が出にくいこと。ただし、第二世代の中でも脳への移行の度合いはさまざまで、効果や副作用の面でも弱めから強めまでさまざま。一部は薬局で選べる市販薬となっています。

また、薬の種類によって、朝晩2回、夜1回、普通は1日1錠だけど、花粉が多く症状が強いときは量を増やして1日2錠まで飲めるものなど服用方法が異なります。副作用が少ないとはいえ、眠気が多少出ることもあり、受験生では寝る前に飲む1回タイプを選ぶことが多いです。それでも翌日眠気が残ることもあり、注意が必要です。

飲み薬には、錠剤だけでなく、口腔内崩壊錠(OD錠)、散剤(粉薬)やシロップもあります。口腔内崩壊錠とは、水なしまたはわずかな飲水のみで服用しやすく、速やかに唾液で溶けるようにした錠剤のことです。

このように選択肢が多く、使ってみないと効果や副作用が分からない面もあります。どの薬が合っているのか分からない場合は、最初は数週間分程度の少なめで薬を処方してもらい、自分に合っていたら続ける、合わなかったら別の薬に変えてもらう手順がよいでしょう。

■点眼薬・点鼻薬の併用も

●点眼薬

目のかゆみや充血には、抗ヒスタミン点眼薬が即効性を持ち、症状を速やかに和らげてくれます。花粉が飛ぶ前から使用すれば予防的な効果が期待されます。症状がどうしても強い場合にはステロイド点眼薬が効果的で、目の炎症を抑える力が非常に高いですが、長期使用は副作用もあるので使いすぎは禁物です。

受験生ではコンタクトレンズを使う方も多いと思いますが、一部の点眼薬では防腐剤が含まれており、レンズに吸着して目に刺激を与える可能性があります。そのため、防腐剤不使用の点眼薬のほうが安心です。また、原則として点眼する際は必ずコンタクトレンズを外し、薬が十分に目全体に行き渡るようにしてから、5~10分程度待ってレンズを装着してください。コンタクトレンズ使用中でも使用できる点眼薬もあります。花粉がレンズに付着するのを防ぐため、使い捨てタイプのレンズ(ワンデータイプ)がおすすめです。

目がかゆくてかいている男の子
写真=iStock.com/Cunaplus_M.Faba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Cunaplus_M.Faba
●点鼻薬

鼻水や鼻のかゆみには抗ヒスタミン点鼻薬が即効性を期待できます。点鼻薬は鼻の粘膜に直接作用し、花粉による炎症を予防します。症状が重い場合には、ステロイド点鼻薬が有効で、特に鼻づまりを伴う炎症を強力に抑えることができますが、やはり医師の指導を受け、使いすぎには注意することが大切です。また、鼻づまりを短時間で解消する血管収縮薬も便利ですが、依存性やリバウンド(再び症状が悪化すること)のリスクがあるため、連続使用は避けましょう。

■漢方薬も花粉症に効果がある

漢方薬の中にも花粉症対策ができるものがあります。

例えば、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)は水様性鼻汁やくしゃみの症状に効果的です。体を温め、余分な水分を排出する作用を持ち、特に、鼻がムズムズする症状に効きます。

他にも、体が冷えている場合や、鼻水が少ないときに効果を発揮する麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、血行を促進し鼻づまりに対して効果的な葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)、鼻の粘膜の乾燥や刺激からくる鼻血を防ぐ効果が期待できる小建中湯(しょうけんちゅうとう)などもあります。

漢方薬は、複数の生薬(しょうやく)が組み合わさって作用し、血行が促進され、免疫機能が改善されることでアレルギー症状が緩和されます。

これらの花粉症に対する漢方薬は一般的に副作用が少なく眠気も起こさないため、相性がよければ長期的な使用が可能です。

■人気の舌下免疫療法

●舌下免疫療法

舌下免疫療法は、アレルギー症状を根本的に抑え、体質改善する治療法の一つです。特にスギ花粉症やダニアレルギーに効果的です。ただし、1日1回、数年続ける必要があり時間がかかるのが難点ですが、抗ヒスタミン薬のような眠気の心配はないので、試す価値のある治療法です。最初は医師の指導のもと行い、その後は自宅で継続します。通常、2~3年以上続けることで効果が最大化されます。根気よく続けることが大切です。

この舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつ体に慣れさせることで、アレルギー反応を抑える治療法です。やり方も簡単で、舌下にアレルゲンを含む薬(スギ花粉エキス)を置いて、数分間そのままにして溶けてから飲み込むだけです。

これを毎日続けることで、体がアレルゲンに慣れ、過剰な免疫反応が起きにくくなります。アレルギー体質そのものを改善することが期待されるため、進学後も続く花粉症の悩みを減らす可能性があり、勉学に関してはいずれにせよプラスになるはずです。

将来の受験に備えて、早めに舌下免疫療法を始めた女子学生のNさんは、まだ1年弱ほどで完治したわけではないものの、「勉強に集中して早く問題を解けるようになった」と言います。

ごく稀にアナフィラキシーと呼ばれる強い副作用がでることもありますが、おおむね大きな副作用はなく、安全性も比較的高いと考えられています。多くは、口の中のかゆみや腫れなど軽い副作用程度です。

難点は、とても人気があるため、薬の生産が追いついておらず、入荷待ちの状態になることが多いこと。また、花粉シーズン中に開始はできないので、6~12月頃のシーズンオフから始めることになります。そのため今年受験する方には必ずしも向いていません。

■重症花粉症には高価な注射薬も

●注射の抗体薬

一方、従来の薬物療法では十分な効果を得られない重症の方に、新たな希望をもたらしているのが注射の抗体薬です。この薬は、特にスギ花粉症による鼻づまりや目のかゆみ、鼻水などの症状が日常生活に支障をきたすほど重い場合に用いられ、生物学的製剤とも呼ばれます。その画期的な特徴は、アレルギー反応の根本的な仕組みに作用する点にあります。

治療は皮下注射で行われ、投与量は患者の体重や血中IgE濃度に応じて決まります。一度の注射で約2~4週間の効果が期待でき、花粉症の症状がひどくなるシーズン前から治療を開始し、シーズン中に継続して投与するのが一般的です。

使用した患者の多くが症状の大幅な改善を実感しており、抗アレルギー薬や点鼻薬の使用量を減らせたケースも報告されています。症状が軽減するだけでなく、睡眠の質や日常生活の快適さも向上し、患者の満足度は非常に高いと言われています。

ただ、主な副作用として、注射部位の痛みや腫れ、頭痛、倦怠感などが挙げられます。まれにアナフィラキシーと呼ばれる重篤なアレルギー反応が起きることもあるため、初回投与後には医療機関で慎重に経過観察が行われます。

また、この薬は数万円と非常に高価であるため、保険適用には「重症のスギ花粉症で既存治療が無効」という条件を満たす必要があります。そのため全ての方に適用できるわけではなく、使用を検討する際には医師と十分に相談することが重要です。

■薬以外の自宅でできる花粉症対策

薬だけでなく、生活習慣の見直しや環境整備で花粉症の症状を和らげることも大切です。

●室内環境を整える

室内環境を整えることは、花粉症対策の基本中の基本です。花粉が室内に侵入しないよう窓を閉め、空気清浄機を活用して空気中の花粉を減らしましょう。布団やカーペットに付着した花粉をこまめに掃除し、室内の清潔を保つことも欠かせません。

こうした対策をすでに実践しているという方も多いでしょう。しかし、やり方を間違えているケースが少なくありません。

例えば、空気清浄機をあまり目立たない「部屋の隅」に置くと、かえって効果が大きく減ってしまう場合もあります。これだと空気の流れが悪くなり、花粉を清浄機のフィルターでキャッチできず、部屋の中で舞い続けてしまうことがあります。

理想的な設置場所のひとつは、人がよく行き来する「部屋の中央」や「床に近い位置」。吸引口や送風口の場所にもよりますが、室内中央なら空気の停滞する箇所を少なくして、空気をバランスよく清浄でき、落ちてきた花粉も効率よく吸い取ってくれます。花粉が侵入してくる玄関、ドア、窓付近も効果的だと言われています。

また、普通の掃除機は、排気によって床に溜まった花粉を舞い上げてしまうことがあり、できれば0.3ミクロン以上のゴミ粒子を99.97%カットするというHEPAフィルター付きの掃除機を使うとよいでしょう。床拭きもドライシートで拭くと花粉が舞いやすくなるので、湿らせたモップやウェットシートを使用すると花粉をしっかり取り除くことができるはずです。

外出時の基本はやはりマスクや眼鏡の着用です。これにより花粉が体内に入り込むのを防ぎます。帰宅後は衣服を払い、洗顔やシャワーで花粉を洗い流すことで、症状の悪化を防ぐことができます。ただし、帰宅後に家の中で上着を脱ぐと、外で付着した花粉を室内に持ち込み、家全体に花粉が広がる可能性があります。そこで、家に入る前に上着を軽く払い、玄関で100均でも買うことができる粘着ローラー(コロコロ)を使って花粉を落としたり、花粉の多い日は上着を玄関にかけたりするとよいでしょう。

●生活習慣の改善

バランスの取れた食事で免疫力を高め、体調を整えることも花粉症対策になります。十分な睡眠、適度な運動やリラクゼーションも同様で、受験のストレスを軽減することも重要です。

ただし、これらにも注意点があります。長期熟成のチーズやヨーグルトなどの発酵食品、ハムやソーセージなどの加工食品は、ヒスタミンが多く、鼻水やくしゃみを悪化させる可能性があります。受験生におすすめなのは、DHAやEPAを多く含む青魚、ビタミンCやEを豊富に含む柑橘類、ナッツ類、腸内環境を改善する食物繊維を多く含む新鮮な野菜、豆類、海藻類です。

就寝時に夜遅くまでスマホを見ないことも大事です。ブルーライトは睡眠の質を低下させ、免疫バランスを乱します。布団や枕に付いた花粉が、夜中の鼻詰まりの原因になることもあります。寝る前にはスマホを控え、寝室はこまめに掃除しましょう。

運動に関しても「体を動かしてリフレッシュ!」と、昼休みに外で運動もよいのですが、花粉のピークは12時〜15時ごろ。この時間帯の運動は、かえって症状を悪化させる場合もあります。朝か夕方に軽いストレッチや室内運動で、花粉を避けながら、がベストです。

これらの取り組みは、花粉症そのものの改善だけでなく、体全体の健康維持にも役立ちます。さらに、鼻うがいや蒸気吸入といった補助療法を取り入れることで、鼻づまりを和らげることができます。

花粉症対策では、心のサポートもとても大切です。症状が続くとイライラしたり不安を感じたりして、とりわけ受験生には大きなストレスとなることがあります。こんなときは、気持ちを前向きにする「リフレーミング」という考え方が役立ちます。

たとえば、「花粉症を完全に治すのは難しいけれど、自分の工夫次第で症状をうまくコントロールできる」と前向きに考えてみましょう。さらに、短い時間でできる瞑想や深呼吸を取り入れると、気持ちが落ち着き、リラックスすることができます。

また、家族や友人、学校の先生に自分の症状や困っていることを話すのも大切です。周りの人に協力をお願いすることで、一人で抱え込まずに安心して対策ができるようになります。

患者さんのひとり、男子小学生のKくんは、中学受験の2年前から舌下免疫療法を開始し、抗ヒスタミン薬や漢方薬、メガネ・マスクといった対策が功を奏し、模試の偏差値は56から65へと急上昇し、見事有名私立一貫校への合格を勝ち取りました。

花粉症は受験生にとって大きな試練ですが、できるだけ快適に過ごすためには、早めの対策が重要です。生活環境の整備や習慣の見直し、薬の適切な使用、そして精神的なサポートを組み合わせることで、症状を効果的に管理することができます。

特に受験生にとっては、症状を軽減しながら集中力を保つための工夫が欠かせません。花粉症と上手に付き合い、目標に向かって全力を尽くせる環境を整えていきましょう。これからが受験本番、自分の力を最大限に発揮するための準備を進めてください。

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谷本 哲也(たにもと・てつや)
内科医
鳥取県米子市出身。1997年、九州大学医学部卒業、同大学第一内科入局。宮崎県立宮崎病院、国立がんセンター中央病院などで勤務後、2007年からPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の審査専門員。その後、ナビタスクリニック立川の内科医として外来診療を担当し、2011年からはときわ会常磐病院内科非常勤として勤務を始め、現在に至る。また2012年より谷本勉強会をスタート、その成果を『NEJM(ニューイングランド医学誌)』や『JAMA(米国医師会雑誌)』、『ランセット』、『ネイチャー』等で発表している。

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(内科医 谷本 哲也)

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